どうしてこんなことになったんだ? オレは普通の男子高校生からちょっと脇道に逸れた不良だったはず。 それがなんで、どうして―― ふりふりのワンピースを着て、女子大生の家に上がりこんでるんだろう。
「あ、あの。先輩?」 オレは戸惑いながら先輩に声をかける。 部屋に通されてから、しばらくは他愛のない雑談をしていたが、 先ほどから2人とも言葉をなくして見つめ合っていた。 沈黙に耐えられなかったオレは、何かを言いたげな先輩に先を促すよう問いかける。 すると、彼女はオレを正面から捉え、答えた。
「はは。ごめん。いざとなると緊張するもんだね。 ……よし。覚悟は決まったよ。 私は君のことが好きだ。今まで出会った誰よりも。」 彼女は真摯な瞳で見つめ、そのままオレを抱きしめた。
端から見れば女同士の抱擁。俗に言う、百合っていうのか? 女装するにあたって仕入れた情報の1つだが、オレにはよく分からない。
ただ一つ分かることは、彼女がオレを『好きだ』と言ってくれたこと。 この3ヶ月、ずっとその言葉が欲しくて、彼女の気持ちを手に入れたくて 女装までした努力が、ついに報われようとしていた。 彼女の気持ちが嬉しくて、胸の高鳴りが押さえられない。
いや、それだけじゃなくて… 抑えておきたい欲望までもが高鳴っていく。 このままじゃオレがオトコだって事がばれちまう! 先輩は、女好きの女性…オレがオトコだと分かれば、 たちまち変態扱いして警察に突き出しかねない。
どうする……神岡美貴(かみおか みき)。 正体を明かすか、このまま彼女をだまし続けるか…? オレは一体、どうすればいいんだ!
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