ベルホルトとエマの協力ではじまった媚薬の治験は、デヴの部下 である2人の女性助手により、データの収集が行われた。
しかし、ベッドの上で愛し合うベルホルトとエマに、特別な計測器を 装着する必要はなかった。彼らの体内に配置された複数のチップが、 脳波や心拍数をはじめ、あらゆるデータをコンピューターに送信している。
「まだ、あまり変化はないようね。デヴ」
「はい、一見するとそう見えますが、ちょっとエマさんの手や足 など見てください。まずは、胸や性器といった性的に敏感なところ から遠いところ…。つまり、愛撫しても、なかなか性感の上がり づらい部位から、少しずつ作用しているのがデータでも分かります」
ヴァレリーはエマの手や足に、ほんのりとだが、赤みが帯びて いることを確認すると、愛撫する部位を変更してとベルホルトに、 合図する。ベルホルトは目でOKのサインを出すと、舌をはわせ る場所を変えた。
まだ、はじめてそう時間は経っていないのにも関わらず、エマは 指の一本のを舐められるだけでも、明らかに快感を感じている。
「すぐには性感の上がらない場所ほど、いったん火がつくと、 なかなか火が鎮まらないのよね。でも、ふつうなら相当な時間と ていねいな愛撫が必要だわ。それなのに、こんなに早く…」
「実は私…、女性の事はよく分からないのですが、大学時代に 友達になった日本人の男がいまして、そいつがマッサージの仕方 とか、女性の愛撫の仕方とか、いろいろ教えてくれたんです。 それが私の開発したテクノロジーのヒントになっているんです」
「へえ、そうなの…。ねえ、デヴ。この二人に使った 媚薬はどのくらいの時間効くのかしら?」
「そうですね、今回は少なめにしてますから、おそらく6時間 くらいは、お二人とも官能の渦の中におられると思います」
「これから時間が経つにつれて、 媚薬の効果も強くなっていくのかしら?」
「はい、そのとおりです。ただし、感じすぎても絶対に気絶でき ませんから、ひょっとしたら『悦び』と『苦痛』の境を行ったり 来たりする状態になるかも知れませんが…」
「ウフフ、それはそれで、ちょっと残酷かしらねえ」
ふと、ヴァレリーは、デヴの顔がほてっているのを感じた。
「どうしたの? 顔が赤いようだけど…」
「実は、さっきほどヴァレリーさまが、ご自分のオデコを、私の オデコに合わして下さいまして…。あれから、心臓がバクバクしてる んです…。えっ! ヴァレリーさま、な、何をなさるんですか?」
ヴァレリーは、いたずら心に火がついて、デヴの心臓の鼓動を聞こうと 彼に抱きつき、胸に耳を押し当てた。たしかに彼の鼓動は激しかった。
デヴは、ひそかにヴァレリーに心を寄せていた。その憧れの女性が、 今、両腕を伸ばして自分に抱きついている…。彼はその光景が夢 のようで信じられなかった。
「ねえ、デヴ…。お願いがあるんだけど…、聞いてくれる?」
デヴは、あこがれの女性に抱きつかれながら、上目づかいでお願 いされ、心臓が爆発するくらい高鳴っている。果たして彼女は自 分に何をお願いしようとしているのか? 彼の心は期待に胸がふ くらんだ。
「はい、ヴァレリーさまのおっしゃることなら、何でも」
「じゃあ、これから私の部屋でマッサージをしてもらえるかしら?」
「ああ…っ、はい? マッサージ…ですか。はい、わかりました」
デヴが一瞬気落ちした表情を見せたとき、ヴァレリーは、ちょっと イタズラが過ぎたかしら…と思いながら、笑いを堪えた。間違い なく彼は違うことを期待していたのが分かる。
ところが、ヴァレリーの部屋に入ったデヴは、今度は別のカタチで、 予想を裏切られることになる。ヴァレリーが突然、彼に自分の服を 全部脱がせてほしいと言い出したのだ。
デヴは、興奮でパニックになりかけたが、 手を震わせながら彼女の服に手をかけた。
デヴは媚薬をつくる技術班に移動したものの、女性と特別な関係を 持たずに、33歳になろうとしていた。それが突然、全裸にして くれと彼女に言われ、ドギマギし続ける。
何とかヴァレリーの服を脱がそうとするが、 あせって、ボタン一つも、うまくはずせない。
あまりに時間がかかる。
さすがにヴァレリーも苛立ち、自分から服を脱ぎ始めた。 デヴは自分がドンくさいので、彼女を怒らせたと気落ちした。
だが、下着だけの姿になったヴァレリーは、残りの二つは あなたに脱がせてほしいと微笑みながら話しかけてくる。
「うふふふ、可笑しいわね。わざわざ脱がせやすいブラジャーを 選んだのに、どうしてそんなに手間取るのかしら。そうそう、 できたわ。次はショーツよ。大丈夫、こっちは簡単だから…」
ヴァレリーはデヴが自分の胸を見て、ボッーとして いることに気づくと、彼女はちょっとあわてた。
「そんなにジロジロ見ないでよ! ちょっと失望したかしら? もう私も40歳よ。オッパイも萎んで垂れてきたし、シワみたい なものも出てきて、まるで、おばあさんみたいでしょう?」
「いえいえ、ヴァレリーさまの胸は、本当にお美しいですよ。 いつまでも見ていたいです。私などはベッドで横になると、 いつもヴァレリーさまのことを思い浮かべて興奮します」
デヴは、余計なことを口にしてしまったと後悔したが、ヴァレリ ーは少しも気にせず、彼に近づき、微笑みながら、目をつむって 腰を突き出し、最後の衣服を脱がせてと催促する。
デヴは無我夢中で彼女を抱き寄せ、お姫様だっこの状態でベッド に運び、大切なものを扱うように、あおむけに寝かせてから、 ゆっくりとショーツを脱がせ、さらにうつぶせにした。
自分は、あくまでマッサージをするために、ここに来たのだと、 デヴは自分に言い聞かせ、基本通り、肩と腰から指圧を始めた。
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