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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第87回   氣のトレーニング
午前2時頃、ススムはベッドの上で、ふと目を覚ました。
誰かが自分のことを、じっと見てるような気がしたのだ。


目を開けて、何気なく顔を左に向けると、
セルティがじっと彼の顔を見つめている。


「あっ、セ、セルティ…。どうかしたの?」
「ごめん、起こしちゃった? 私、目の保養してたの」
「目の保養?」

「そう…。私、あなたに夢中なのね。いつまでも見ていたいの」
「それは、光栄ですね。僕も君をいつまでも見ていたいよ」
「えっ? 見てるだけでいいの?」

「あはは、すごい殺し文句だね。我慢できなくなるよ」
「うふふふ、ダメよ、今はよく寝てて…」
「君もね」


ススムがセルティの手を握ると、
彼女は急に睡魔に襲われ、深い眠りについた。


どうしてなのかは分からないが、
ススムの身体の一部の触れながらだと彼女はよく眠れる。
彼女の寝顔を見ながら、ススムも再び深い眠りについた。



朝5時すぎにセルティが再び目をさましたとき、
彼女の横には、ススムの姿はなかった。


彼女はガウンを被って、庭の方に面した2階の大きなガラス戸を
開け、ベランダに出る。ひんやりとした気持ちのよい潮風と、
その匂いが彼女の身体を覆う。


思ったとおり、ススムは長イスに座って目を閉じている。


鼻で息を吸い、オナカに空気を貯める。一見すればそれは普通
の腹式呼吸だが、肛門を閉めて、それをさらに、おヘソよりも
下の方に落とす。さらに背中(脊髄)を通じて、頭部にまで氣
を到達させているのだ。


セルティは静かに彼の左に座った。


天地の理(ことわり)は、上から下、右から左、陽から陰とい
う流れであるから、男性のススムが右に座り、女性である自分
は彼の左に座る…


少なくとも、神様がそのような道理をお決めになったのなら、
自らもそれに従ってみよう、セルティは、日本に来て、そうし
た生き方を愉しもうと決めていた。


外は少し寒いのに、ススムの隣に座ると、近くにストーブが
あるような温かさを感じる。きっと、ススムの氣が自分に
流れているのだと彼女は思った。


「セルティ、もしかしたら君の背中、氣が通ってるんじゃない?」

「うん、自分でもよく分からないけど、最近、ちょっとそんな
気がしてたの。以前のようにイメージだけじゃなく、何かが脊
髄を通って頭の方に抜けていく感じなの」

「セルティ、君、すごいよ。まだ何ヶ月も経ってないのに…」

「あ、ありがとう。でも、何って言うのかしら。私の背中を通
っていくのは、吸った息じゃなくて、エネルギーみたいな感じ
なのよ」

「ああっ、そうだよ。息がエネルギー化しているんだよ」

「それに…」
「それに?」

「うん、息を吸うとき、両足からも空気が身体に入ってくる感
じなの。下半身が熱くなってね。それに手を上下に振ると、手
の真ん中に穴が開いてるような感じもするの」

「それは僕もだよ。まるで長い象の鼻みたいに、手を上にあげ
ながら息を吸い、逆に手を下げるときには息を吐く感じだ」

「そうそう、私もそれと同じ感じがしたわ」


ススムは満面の笑みを浮かべて、セルティの方を向くと
待ってましたとばかりに、彼女はキスを繰り返した。


それからススムは、下腹部にある丹田に氣が溜まることと、
それをさらに腹式呼吸で氣を練る方法をセルティに話した。


セルティは、ちょっと照れ笑いをしながらススムに話しかけた。


「ねえ、ススム。あなた、私とセックスしながら氣を流していた
でしょう? あなたのが私の中に入るときって、すごく熱くなるの。
子宮だけじゃなく、クリトリスの裏側辺りも燃えるみたいに熱くて…」

「ごめん、君の身体にはキツかったかな?」

「いいえ、そんなことない。ただ、もう頭の中が真っ白に
なって、自分が自分じゃないみたいになって…。すごい快感。
それに…」

「それに?」

「あなたと愛し合って、何度も氣を通してもらったから、
 私の身体が、あなたの氣の美味しさを覚えちゃったの」

「おいしさ?」

「そうよ。それで今度は、私があなたに、私の氣の美味しさを
味あわせてあげるわ。今、私のしたキス、ちょっと氣が流れて
たでしょ?」

「ああっ、流れてた。正直、ビックリしたよ」

「ホント、やった! うれしいわ。ねえ、これからベッドで本
格的に氣のトレーニングしましょう。日の出の前後15分間の朝
陽も浴びたし、気力が充実したところで、ちょうどいいわ」

「ああ…、あの…。朝ご飯が、まだ…」

「日本人は『朝飯前』に、ひと頑張りする伝統があるって聞い
たわよ。アイスランド人もそれには、すごく敬意を表してるの。
さあ、いつまでも座ってないで、行きましょう。ススム!」


結婚したら、自分は確実に尻に敷かれるだろうなと、ススムは
彼女の後ろ姿を見ながら思う。まあ、それも小林家の伝統かと、
あきらめの気持ちもあったのだが…



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