セルティは夜中、べッドの上で目が覚めた。 横を見るとススムが軽く寝息をたてている。
薄明かりに見える時計の時刻は11時をすぎている。、 ゆうに30分くらいは気を失っていたのかもしれない。
子宮口を突き上げられ、精液を浴びせられた 感覚までは覚えているが、そのあとの記憶がない。
いつものようにススムが、彼女の身体をタオルできれいに 拭いて、毛布をかけてくれたのだろうと思った。
彼女はほかの男を知らないが、ススムとつきあい出してから、 セックスで毎回気絶するほど感じるのは、当たり前のことだ と思ってきた。
あるディスカッションで、テーマが「恋人とのセックス」に なったとき、ススムがどんなふうに彼女を愛しているのか。 それを彼女は皆なに話した。
その場にいた女性たちは、 皆な信じられないという顔をしていた。
彼女たちの情報を基にすれば、勃起した際のススムのサイズは それほど大きいわけではないらしい。でも、ほかの男性と比べ ると、信じられないほど、ていねいな愛撫をパートナーに施し ているのは、たしかだった。
ディスカッションのメンバーの中には、セックスで 一度もイッたことがないという女性も少なくなかった。
それに「あなたの恋人を一晩借りていい?」と、 何人かにせがまれたときには、さすがにススムの愛し方を 具体的に話すべきではなかったと少し後悔した。
そんなことを思い出しながら、ベッドの上で、セルティは少し 起き上がって、ススムの寝顔を見つめた。彼女はその角度から みえる彼の顔が、大のお気に入りだった。
彼女は、ふと彼との愛の行為を思い返した。
心を見透かしたような力加減と、絶妙なポイントをついた 彼の愛撫に、彼女はいつも翻弄され、深い喜びと快感を覚えた。
「もしかしたら、彼は私の心が読めるのだろうか?」 そう、思わせる瞬間がたびたびある。
セックスも、男女間の重要なコミュニケーションといえるが、 少なくとも、この男のそれは、相手を喜ばせるために、 全身全霊を注いでいる。
セルティは、ススムの顔を眺めながら、そう思った。
彼は嬉しそうに彼女の身体中をキスする一方で、両手両足も休 みなく彼女の身体を愛撫しつづける。また、その仕方もバリエ ーションに満ちている。
基本的には、できるだけ性感の弱いところからはじめ、小さな 官能の炎をていねいに点火していき、次第に性感の強いところへと 移動していく。決して自分の欲求だけを満たそうと焦ったりしない。
それに性的なテクニックを見せびらかしたり、 自慢するような風でもない。
大学で同級生だった彼女の友達は昨年離婚したが、 前戯もほどほどに、相手の気持ちを無視してガンガン突っ走る ようなセックスは、女性の身体を使ったマスターベーションの ようなものだと、電話でこぼしていた。
それに比べれば、ススムは、その手の男たちとは、まったく 正反対な愛し方をしていることになる。彼のセックスは 愛情と同時に「自己犠牲」と「奉仕」が感じられる。
そういえば、あのエデンの園で、イブを犯したルシュファも、 また、その仲間の天使たちも、誰一人彼女を愛の対象として 見ていなかった気がする。
ひとことで言えば、自分の性的欲望さえ満たせれば、 何でもあり、というセックスのありさまだった。
セルティはあることに気づく。
天使は、あくまで霊的な動物であり、万物である。 所詮、彼らは物質レベルの愛しか持ちあわせていなかったのだ。
つまり、女性を「モノ」みたいに扱う男性は、 あの天使たちの性情を、そのまま受け継いだ者たちなのだと…
利己主義と利他主義、その人生観は、 セックスという家系存続の重要な場面でも 否応なく現れるものなのかもしれない。
いや、もしかしたら、そんな重要な場面だからこそ その人のすべてが、あらわれるのにちがいない。 そして、それがその家系の未来に影響するのだ。
セルティは、そんなことを思いながら、 ススムがいとしくてならなくなった。
できれば今すぐにでも彼をおおう毛布をはいで、 裸のまま抱きつきたい気分だった。
でも、しあわせそうに眠る彼の顔をみて止めた。
彼女はシャワーを浴びようとバスローブを着て 階下に下りると、ダイニングに灯りがついている事に気づいた。
ドアを少し開けると、ススムの義母である沙知子が、 ブランデーを愉しみながら、ブログの書き込みをしている。
沙知子はセルティに気づくと嬉しそうな表情で こちらへおいで!と手招きする。
おしゃべりする相手を見つけた喜びに、 ふたりとも顔がほころんでいた。
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