セルティが目を覚ましたとき、外は少し薄暗かった。 朝までずっと寝てしまったのかと思ったが、 何となく雰囲気が違うことに彼女は気づいた。
窓から見える景色は、朝ではなく、夕方だった。 買い物袋を手にした子供連れの家族が、のんびり歩いている。 よく覚えていないが、丸一日くらい寝てたのかも知れない。
広いベッドの端に腰掛け、気だるそうに首を振りながら 今まで見ていた、ものすごく長い夢を思い出そうとしていた。
"Where am I?"(ここはどこだっけ?)
自分が日本に来て、今、恋人であるススム、彼の両親が住む 高知にいることを、ようやく思い出していた。彼女の疲労は 移動に関するものだけではなかった。ヨーロッパや中東とは、 まったく違う景色や文化に戸惑いがあったのは、たしかだ。
彼女は、部屋のドアを開け、階段をゆっくり降りると、 その先にあるダイニング・ルームで人の声がする。
ススムと彼の義母である沙知子が, 夕食の準備をしていた。
「おっ、おはよう。セルティ、よく寝たね」 「もしかしたら、私、一日寝てたのかしら?」 「そうだよ、びっくりしただろう?」 「私、何度か起こされたのかしら?」 「ああっ、何度か声をかけたんだけどね。ぜんぜん 起きないし よく寝てたから、そのままにしてたんだ」
沙知子はにこやかな顔をしながら、包丁で野菜を刻み、 ススムに、もう手伝わなくていいわよ、と目で合図した。
「ススムさん、よかったらセルティさんとシャワー浴びたら?」 「そうだね、そうしようか? セルティ」 "Great! Let's go."(いいわね! 行きましょう)
ススムは沙知子の方を振り返り、彼女は大丈夫そう、 という思いを込めて両手を広げるジャスチャーをした。
"Have fun!"(楽しんでいらっしゃい) "Sure, consider it done!"(ええ、喜んで)
沙知子は久しぶりに英語で会話できて、なんだか嬉しくなった。
ススムにすればバスルームで恋人とじゃれ合っていらっしゃい! という雰囲気にも受け取れるが、実際、沙知子は自分たちに遠 慮せずに、好きなだけ愛し合ってほしいと思っていた。
妻として十分に愛されている女性には、そうした心の余裕が あるのかな…、ススムは義母の言葉からそんなことを思った。
二人はいったん部屋に戻ったが、ススムは先に準備しようと、 一人で階下に降りた。
でも、セルティがなかなか来ないので、ススムはどうしたのか と思って廊下をみると、広い家の中で、バスルームを探しなが らウロウロしているセルティを見かけた。
"Sure then I'm here!"(こっちだよ)
"I looked for you, but I couldn't find you!" (あなたを探したけど、見つからなかったのよ)
ススムは安堵した顔のセルティと脱衣所でキスを交わしながら、 二人はお互いの服を脱がせ合った。そのとき、セルティはさっき まで見ていた夢のことを思い出した。
"Hey, guess what! I met Jesus Christ in my dream." (ねえ、聞いてよ! 私、夢の中でイエス・キリストに会ったのよ)
"Really!? That's quite a story." (本当!? そりゃ、すごい話だね)
"Do you believe me?"(信じてくれるの?)
"Absolutely. Yes. Can you tell me your dream later?" (もちろんさ。あとで、君が見た夢、話してくれる?)
"Sure! I can't tell you how happy I am." (いいわよ!うれしすぎて言葉がでないわ)
それから二人は服をぜんぶ脱ぐと、熱めのシャワーをかけ合い、 ボディーソープのついた手で、お互いの身体を洗っ合った。 小さな子供が風呂場で、じゃれあって遊んでいるような、 そんな満ち足りた空間を彼らは楽しんだ。
ふと、セルティはススムの下半身が大きくなるのを見ながら、 ちょっと切なそうな顔をする。
"I can't wait."(待ちきれないわ)
"I know. But, we'll do it after dinner was over." (分かるよ。でも、夕食が終わってからにしよう)
"OK! I feel so happy!" (いいわよ! 最高にうれしいわ!)
二人はシャワーを浴びてサッパリした後、沙知子のつくったカ レーライスを食べて大満足だった。セルティにとってはヨーロ ッパや中東で食べたカレーとは異なる味だが、本当に美味しい と感じた。
"This curry rice is the best ever." (このカレーライス、最高だわ)
"Thanks. That's great compliment. Make yourself at home." (ありがとう。ほめてくれてうれしいわ。気楽にくつろいで)
沙知子は食後の片付けをした後、ダイニングルームの広いテー ブルの上にノートパソコンを広げて、日記代わりのブログに書 き込みをはじめた。彼女の友人やネット上の知り合いは、彼女 の投稿を楽しみにしている。
一方、ススムとセルティは、すでにベッドの上で抱き合い、キ スを交わしながらも、セルティが夢でイエス・キリストに出会 うまでの話で盛り上がっていた。
女性の話をよく聞いてあげることも、大切な愛撫の一つなんじ ゃないかなと、ススムは思っている。だが、自分も同じような 夢を見たため、彼女の話に共鳴してしまい、悲しくもないのに 自然と涙が流れて止まらなかった。
"He was never the person who should be killed." (彼は殺されるべき人ではなかった)
ススムが話の途中で口にした、 その言葉にセルティも涙が止まらなくなった。
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