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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第81回   獣姦
アンナとセルティがふたたびエデンの園に現れたとき、
何かを覗いている二人の天使たちの背中が見えた。

彼らがルシュファーの手下であることは、何となく
すぐ分かるのだが、彼らが果たして何をみているのか?

夕闇の中で、彼女たちはその先にあるものを、すぐには認識でき
なかった。でも、聞き覚えるのある女性のあえぎ声からして、
さしずめイブがルシュファーに犯されているのでは、と想像できた。

天使たちの背後に近づくと、彼らの会話が聞こえた。



「おい、もう2ヶ月近くだろう。ルシュファーさまが、
 あの女に入れ込んでから…」

「ああっ、まったく、よくやるよな。毎日夜昼なしだぜ」

「あの女、いまだにルシュファーさまにだまされたといって、恨み
つらみ言ってるけど、ほら、見ろよ。自分から腰振ってねえか?」

「本当だ。あの女、かなりの好き者じゃねえか、ハハハ…
 まあ、何だかんだ言っても、身体は正直だからな」

「そういえば、この間、ルシュファーさまが言ってたんだけどな。
あの女、表面は被害者ヅラしているけどよ、本当は違うんじゃない
かって言う話だ」

「えっ? どういうことだよ?」

「だから、表向きは『私は、あのルシュファーにだまされた可哀
想な女』だけどよ。内心じゃあ、神やアダムへの不満でいっぱい
らしい。アダムがちゃんと自分を愛してくれないから、こんな事
になった。それに、わざわざ面倒な戒めを自分たちに課した神様
が悪い…、なんて思ってるらしいぞ。とんだ被害者だよ!」

「アハハハ、それってルシュファーさま、そのものだな」

「シッ! 静かに! 俺もそう思ってるけどよ、
 ルシュファーさまに聞かれたら大変だぞ」

「そういえば、俺も思い出したよ。この間、あの女、ムチで他の
天使をぶってやがった。しかもルシュファーさまに命令されて…」

「ああ、俺もそれは見たことがある。ルシュファーさまに訊いたら、
あの女に『サド』っていう加虐的な性向を持たせるための訓練だって
言ってたぞ」

「サド?」

「ああっ、もともと人間の女は受身的にできてるらしい。それを
ルシュファーさまは利用して『マゾ』っていう被虐的な性向を、
あの女に植えつけたらしい。簡単に言えば虐めれて快感を感じる
ってヤツだな。それが、あの女にはうまくハマったらしくてな、
それじゃあ、次は真逆の『サド』を仕込むって話なんだよ」

「ふうん、人間にはそんな性質が最初からあるのか?」

「いいや、要はルシュファーさまお得意の『洗脳』らしい。
もともとはサドもマゾもないのに、あたかも先天的に人間は皆、
そんな性質をもってるぞ…みたいな思い込みを持たせるんだよ」

「そんな面倒な事を、なぜ、ルシュファーさまはあの女に?」

「まあ、話せば長いけど、ルシュファーさまはあの女とアダムに
セックスさせて、子供を産ませるつもりらしい。サドだのマゾだの
ワケの分からない性癖を遺伝子に組み込ませて、夫婦仲や代々の
家系がまともに行かないように、遺伝情報を狂わせるんだとさ」

「遺伝情報か…、そりゃ、すごい世界の話だな」

「ふふふ、おい、今ごろ、そんな事で驚くなよ。
 ルシュファーさまとあの女の淫行だって、すでに獣姦だぜ」

「獣姦?」

「たとえば、あそこの馬とか鳥とか、あいつらは肉の体しかない
動物だろう。逆に俺たち天使は、姿形は人間とそっくりだけど、
霊的な身体だけをもつ動物さ。だから、天使と人間の女がセックス
するのは立派な獣姦なんだよ」

「へえ、そうなのか…。じゃあ、あの女がルシュファーさまと淫
行したら、あの女の家系から産まれた人間には、獣姦を志向する
可能性もあるってことか?」

「まあ、その可能性はあるな。普段はそんな事はまったく考えない
人間でも、何かの拍子に、変態まみれの嗜好が意識にあらわれて、
一気にそんな世界にのめり込むことだってあるかも知れない」

「あっ、それでか…。今、思い出したよ。ルシュファーさまから、
あの女の膣口に入りそうなペニスをもつ動物、いつでもいいから
探しておけって言われてたんだ。うっかり忘れてたよ」

「おい、大丈夫かよ。じゃあ、これから一緒に行くか?」



彼らの会話を聞きながら、アンナとセルティは暗澹たる気持ちに
なった。ルシュファーがイブに対して一片の愛情もなく、神への
復讐に利用するだけ利用しようとする悪どさに言葉をなくした。



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