神は霊的世界を創造された後、ひどく疲れた。 しかし、彼は休むことなく宇宙の創造に着手した。
しかも、その創造のみ業は実に精力的だった。 一方でそんな神の姿に大天使ルシュファーは当惑していた。
ところで、フォトン(光子)と呼ばれる素粒子の交換によって 電磁気力が発生するのだが、陽子や中性子、電子はバラバラ。 一般的にはそれがプラズマと呼ばれる状態なのだが、 宇宙はほとんどそれで出来ている。
それらの素粒子はただ単に不規則な運動を繰り返すのみだったが、 やがて一部の原子核と電子が規則的な運動をはじめるのを、 ルシュファーは不思議な思いで見ていた。
素粒子が結合して原子を形成し、 さらに、それらは分子となって物質を構成していった。 ルシュファーは神が最終的に何をつくるつもりなのか、 まるで想像できなかった。
「動物が現れたときのルシュファーの表情をみてよ、 彼、すごくショックを受けたような顔してない?」
アンナがそう言うと、セルティは静かにうなずいた。
微生物や魚、昆虫や小動物、大きい動物を彼が目にしたとき、 ルシュファーはひどいショックを受けた。自分がコントロール できないものが現れたことに、ひどく腹が立った。
植物が創造された頃、彼は少なからず動揺はしたものの、 それらは自分の意志で動くこともなく、それほどの脅威 とも思わなかった。
ただ、それらが天使と違って繁殖することには驚きを隠せなかった。 その後も、自らの意志で動くものが次から次へと現れては彼を驚かせた。
神は以前と同じように彼を愛したが、たくさんの物たちが創造される中で、 彼は全体の中の一部のような愛しか受けていないような気持ちになり、 言葉にならない淋しさを感じた。
自分に対する愛が減ったように、彼には感じられたのだ。
「そういえば、ホラっ、人間でも先に産まれた子供が次に生まれた弟に すごく嫉妬するような感情ってあるじゃない。彼はそれに似たような感 情を抱いたのかも知れないわ」
今度はセルティの言葉にアンナがうなずいた。
「なぜあなたは私が手に負えないものをつくるのですか?」 彼が小さくつぶやく声を二人は聞き逃さなかった。
「もっと私に注目して、ほかの誰よりも私を愛して、 そんなつぶやきが囁かれている気がするわ」アンナがそう言った。
「あらあら、アダムとイブの誕生は、さらに彼の心にダメージを与 えてるみたいね。『俺のようなエリート天使がこんなガキのおもり をしなければならないのか?』っていう表情をしてない?」
セルティの言葉にアンナはうなずいた。
二人がその表情から推測したように、彼は完全に神から見捨てられ たと思い込んでしまい、その怒りと不満は増すばかりとなった。
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