20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第68回   イブにつきまとう天使
アンナは目を閉じた。
セルティも彼女にならって目を閉じた


セルティが再び目を開けたとき、彼女の目の前には
一組の男女が二人の子供たちと遊ぶ光景があった。


「実は、あの大人たちはプロトタイプなんですよ」
「プロトタイプって…。えっ? 試作品? 人間の?」


アンナによれば、彼らと遊んでいる子供たちこそ、
聖書に登場する人類始祖であるアダムとイブだという。


「彼らはたくさんのプロトタイプの中から、神様が選ばれた優秀な男
女でね。彼らがあの子供たちを産んだ親なのよ。不思議なことに彼ら
は肉体だけなのに、あの子たちは霊的な体も持っているの」


「それにしても、彼ら、子供たちをすごく可愛いがってるわね」


「本当ね、でも、いずれはあの子たちと別れなければならないのよ。
それは聖書に書かれている通りなんだけど、いくらプロトタイプでも
あの二人が自然淘汰されると思うと、ちょっとツラいわ」


「アンナ、あなたが言うのは創世記第2章24節の『こういうわけで、
男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる』という聖句でしょ。
アダムとイブに肉親がいない方がむしろおかしいわよね」


「それじゃあ、私たち、次の場所に行きましょう」



アンナはそう言うとセルティの右手を握った。
次の瞬間、彼女たちの周りに見えていた景色は一変した。
温かくのどかな野原がどこまでも続く。



「霊界は不思議なところでしょう。心の中でイメージしたらそのとお
りの場所に行くことができるんだから…。たとえば、私が兄に会いたい
と思えば、私はすぐに兄の目の前に行けるのよ」


「あの〜、私みたいな者でもイエス・キリストにお会いできますか?」


「もちろんです。兄はあなたを歓迎するに違いありませんよ。ただ、
兄はちょうど今、お友達のマホメッドさんや釈尊さんとお出かけして
いるはずです」


「お友達…ですか。あっ、ところであの女性はイブですか?」
「ええっ、そうです。あの女性は思春期を迎えたイブです」


「それと、あの男性は誰ですか?」
「あの人は人間ではありません。ルシュファーという大天使です」



アンナの口からその名前を聞いた彼女はおびえた。その名前がキリス
ト教会で“悪魔”の別名で呼ばれていることを彼女は思い出した。



「なぜ彼がイブの身辺にいるのですか?」

「彼はアダムとイブの教育担当で、
神様から二人の世話をするよう命じられていたの」



その天使がときどきいやらしい目つきで
イブを見つめているのをセルティは見逃さなかった。



「あらっ、彼がイブに欲情を抱いていることに気づいたのね、そうよ。
聖書に出てくる蛇とは彼のことよ。彼はいつも影のように彼女に付き
まとっているの。ねえ、彼って獲物を狙う蛇のように見えない?」


「ええ、おそらく私が今住んでいる時代なら、彼はストーカーと呼ば
れるでしょうね…。そうか、分かった。彼がストーカーの起源なの
かも知れないわ」


「実はね…、現時点で、すでに彼はアダムとイブの担当からはずされ
ているの。神様と大勢の天使の前で彼はその命令を謙虚に受け入れた
のよ。でも、イブの前では神様の悪口ばかり言ってるの」


「まさか、イブはそんな言葉を真に受けてないでしょうね?」


「ところが、彼女、彼に同情してるのよ。よくいるでしょ、ダメな男
なのに面倒みたり尽くしてあげる女って…。そんな感じかも知れない」


「そういえば、イヴって、あの山の方ばかり眺めてるわね」


「アダムがあそこにいるよ。彼、いつも彼女を残して出かけるの。
それで彼女、一人ぼっちで淋しくてたまらないのよ」


「もしかしたら、イブのアダムに対する不満と、首にされた
大天使の神様への反抗心が共鳴したのかも知れないわね」


「そう言えば、不平不満をこぼすと、
悪魔が迎えに来るって、私の兄が言ってたわ」



セルティは迂闊に不平不満を口にすることの恐ろしさを感じた。


彼女は目の前にいるイブと天使の次の展開を心配しながらも、
アンナの呼ぶ声に従い、そこをあとにした。



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 183