『ヒラリーの予言』という言葉を聞いた岡島敬一郎は、手にしていた スマートフォンをタッチしながら、該当するサイトを開いてテーブル に置いた。
「きっと、セルティさんがおっしゃってるのは、これじゃないですか? ヒラリー・クリントン米国務長官がハーバード大学で演説したものです。 えっと…、今年の7月の初めですね」
「あっ…、たしか、そう。7月の4日か5日頃よ。私の友達からメール きたの。これ日本語なので分かんないけど…。20年後には中国が 最も貧しい国になると言う内容だったわ」
「じゃあ、間違いないです。皆さんもどうぞ見てください」
皆なが岡島のスマートフォンをのぞき込んでみると 中国が20年後に転落する、その根拠が書かれていた。
1. 移民申請の状況から見て、中国9割の官僚家族と8割の富豪が すでに移民申請を出した。またはその意向がある。一国家の指導層と 既得権益階級がなぜ自国に自信をなくすのか理解しがたい。
2. 中国人は社会の個体として、国家と社会に対して負うべき、責 任と義務がわかっていない。国際社会に対して負うべき責任はなおさ ら分かっていない。受けた教育或いはメディアの宣伝はほとんどが憎 しみと他人または他国を歪曲した内容で、人々の理性と公正な判断力 を失わせる。
3. 中国は世界で数少ない信仰のない恐ろしい国で、全国民が崇拝 するのは権力と金銭のみだ。利己的で愛心のない、同情心を失った国 家が国際社会の尊重と信頼を得られると思うか?
4. 中国政府の所謂政治は人民を騙し人間性に背く以外の何物でも ない。人民大衆は過去の権力の奴隷から今は金銭の奴隷に変わった。 このような政権がいかに人民の尊重と信頼を得られるか。
5. 大多数の中国人は「面目が立ち」、「尊厳のある生活」とは何 か全くわかっていない。民衆にとっては権力と金銭の獲得が生活の全 てで、成功なのだ。全民腐敗、堕落といった現象は人類の歴史上でも 空前絶後だ。
6. はばかることのない環境破壊と資源の略奪、贅沢と浪費の生活 方式は何個の地球だと供給できるのだろか? 他国が危惧するのも当 たり前だ。中国政府はいつも民衆の注意力を他国にそらし、敵を造り、 自分の圧力を外部に転嫁させようとするが、時代の流れと人類文明の 趨勢に従い、自ら変革を起こし、民生に関心を払い、民主を重視し、 無責任な抑圧をやめるべきだ。でないと、中国はますます不安定にな り、将来大きい社会動乱と人道災難が出現し、20年後 中国は世界 で最も貧しい国になるだろう。これは全人類と災難であり、米国の災 難でもある。
「ちょっとキツい言い方だけど、至極まともな事を言ってるよ」
「でも、岡島君。中国が最貧国家に転落するのに20年なんて掛かるかしら?」 「ウフフ、セルティさんの方がヒラリー長官よりキツいわ」
「まあ、でも中国から外資だけじゃなく、中国人自身が逃げ出す ようでは、20年もかからずに中国経済は崩壊するかもしれませんね」
「そういえば、米国は、中国には日本の方が先に潰れると言ってたよ」 「ススムさん、それって『ダブル・スタンダード』っていうんじゃない?」
「さすが、義母さん。よく知ってますね。でも、それが米国外交の基本です。 彼らは政治家ではなくビジネスパーソンですから、それぞれの国に応じて 話の内容を変えるんですよ」
その言葉で一同はドッと笑った。
「まあ、それにしても1番の中国9割の官僚家族と8割の富豪が すでに移民申請を出したっていうのはスゴいと思うな。つまり、 その人たちが、かなりの外貨を国外に持ち出したわけでしょう?」
「機械で人民元をバンバン印刷して、米ドルと交換しただけだから簡単に 大金が入ったのよね。その後、いろいろなカタチでその米ドルを共産党内 でネコババし合って、不動産を買ったり、ビルやマンションを建てたり してたわけでしょう」
「日本もヨーロッパも中国のお蔭で潤ったので喜んでいたけど、もう、 それも限界かも知れないわね。外資は逃げていくし、唯一投資してく れた日本には暴力を振るって出ていけでしょう。中国って自滅するん じゃない? たしか輸出に依存してるんじゃなかったかしら?」
「岡島、中国の輸出依存度は何%? だいたい25%くらいかな?」 「えっ…と、ちょっと待ってください。そ、そうです。24.5%です」
「ねえ、ほかに輸出依存度の高い国は?」 「はい…、か、韓国が43.4%、ドイツが33.6%で…」
「あらっ、日本って11.4%に過ぎないじゃない。日本の新聞では輸出 がダメになったら、日本は終わりみたいな話だったけど、その数字なら 全然その根拠になってないわよ」
「ねえ、ススム。中国って13億人の人口っていうけど、実際の市場規 模はどのくらいだと思う? 商業価値のある都市人口って考えると、 すごく少ないような気がするんだけど…」
「それなりに安定した収入があって、いろんなモノが買える人口なら… おそらく、一億人なんていないと思うよ。結局、共産党員でなければ 人間らしい生活は出来ないような国だと思えばね」
彼らがちょうどソフトクリームを食べ終える頃、南国サービスエリアに 降る雨は大粒になりはじめた。皆な急いでそれぞれの車に戻り、邦彦と 沙知子が暮らす高知市内の家に向かった。
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