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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第61回   メキシコに待機する中国軍
うどん屋から出た4人はワンボックスに乗り高知をめざした。いったん
助手席に座った沙知子は、邦彦にお願いして運転を変わってもらった。
車は国道33号線の松山インターから、高速道路にのって東へと向かった。



「義母さんの運転は、いくら飛ばしても安心だろう?」

「本当だよね。僕が小学生の頃、ドイツのアウドバーンで義母さんが
運転したのを覚えてるよ。たしか200kmでもぜんぜん怖くなかった」

「あれ? 沙知子、あのとき、もっとスピード出してたんじゃないか?」



沙知子は、もうそれ以上言わないで、という顔をしながら運転を続けた。



「そういえば、父さん。さっきのうどん屋でアメリカが危ない
って言ってたけど、詳しくはどうなの?」


「これは、ただの噂として聞いてほしいんだが…」


「うん、分かってる」


「以前、アメリカの軍事衛星がメキシコからカリフォルニア州に向か
って移動する5万人規模の軍隊をキャッチしたニュースがあってね。
ススムはそれ、知ってるかい?」


「覚えているよ。ただ、何が目的なのかは分からないって…」


「あれは、メキシコに駐屯している中国陸軍の軍隊なのではないかと
いう噂らしい。5万人〜6万人にも及ぶ規模で、どうやら中国とメキ
シコ政府の間には秘密裏に結ばれた軍事条約があるという噂だよ」


「でも、それだけ大規模なら、ペンタゴン(合衆国・国防総省)が
見逃すはずがない。少なくとも1万台ぐらいの武装車両や、それを
メンテナンスを担当する兵士だって数千人くらい必要なはずだよ」


「ああっ、おそらく十分把握しているだろうね。メキシコには合計で
12か所の中国軍基地があるって噂でね。アメリカにアクセスする
ための高速道路や鉄道すら整備されてるらしいぞ」


「それは、中国が台湾を手に入れるための準備で?」


「それもあるだろうね。いったん中国が台湾を手に入れても、アメリ
カほどの軍事力があれば、簡単に奪還されかねないからね。米軍の
絶大なパワーを中国はよく知ってるからね」


「じゃあ、すでに中国はアメリカ国内に武器や弾薬、食糧や軍事車両も…」


「おそらくスーパータンカーと呼ばれる巨大な船を改造して、大量の
軍隊や戦争に必要な物資なんかを、ゆっくり運んだんじゃないかなあ」


「そういえば、日本の商社マンに、あるメキシコ人が言ってたらしい。
何の検査も受けない貨物コンテナがメキシコの港の次々運ばれてくるって。
しかも、それを運ぶのは皆な中国人で、メキシコ人を近寄らせないとか…」


「中国がメキシコ政府に対して交わした約束がね…。まだ、大した事は分
かってないらしいんだが、とにかく中国がアメリカを侵略したらテキサス州、
アリゾナ州、ニューメキシコ州をメキシコにあげるって噂を聞いたよ。
ただ、カルフォルニア州については、どう扱われるか分からないとか…」



車内がちょっと重苦しい雰囲気になったところで、セルティが缶ビールを、
邦彦とススムの手にそれぞれ渡して会話の間に入った。



「少し前、シアトルの友達が電話で言ってた。今、シアトルにはとても多く
のロシア人がいて、売春婦も多いし、地下組織もあるんじゃないかって…。
とにかく、アメリカのあちこちにロシア移民がたくさんいるらしいわ」


「アメリカ政府は何もしないつもりなの?」


「それが不思議なんだ。いくらペンタゴンが危機を訴えても、ワシン
トンは動かないらしい。おそらく米軍そのものが、ワシントンへの不満
でいっぱいなんじゃなかな?」


「でも、合衆国大統領の命令がなければ、軍隊って動けないんでしょう?」


「そっ、そうなんだよ」


「日本の自衛隊だって、内閣総理大臣が命じなければ何もできない」



そのとき、ハンドルを握って運転する沙知子が、クーラーの中のペット
ボトルの紅茶がほしいと言いつつ、そのタイミングで邦彦に尋ねた。



「さっきのお店の新聞に載ってましたけど、尖閣問題を原因に中国で
反日デモが起こってるらしいじゃないですか。もし、日本の自衛隊と
中国の軍隊が戦ったら、どちらが強いんですか?」



邦彦は、結局、缶ビールはプルトップさえも開けもいないまま、
クーラーの中の緑茶のペットボトルと交換した。それから、
ちょっと困ったような顔をして沙知子の質問に答えはじめた。




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