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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第60回   サンディエゴからの旅行者
沙知子は、市内のうどん屋に皆なを案内した。
そこは姉の好枝が生前よく来たという店だった。



「好枝姉さん、姉さんが大好きだった天ぷらうどん、食べて…」



沙知子は注文した天ぷらうどんの丼に割り箸を裂いておいた。他の
3人は運ばれてきた自分の丼に手をつけず、その光景を見ながら驚いた。


沙知子が声を発した途端、やや斜めに流れていた天ぷらうどんの湯気が、
まったく反対側に座る沙知子の方に向かって流れ出したのだ。


奇妙なことに、他の3人の丼から
昇る湯気の方向はまったく変わらなかった。

4人は目をパチクリさせながら、その丼を見続けていたが、
しばらくしたら、湯気は他の丼と同じ方向に流れを変えた。

皆な何も言葉にしなかったが、霊となった好枝が沙知子の準備した
天ぷらうどんを食べたのを感じ、二人の姉妹の間に通い合う
愛情を感じた。



「霊界って、あの世って、あるんだね」



ススムの言葉に、沙知子とセルティは
ハンカチで涙をぬぐった。



「仏壇にお花を飾るとね、不思議なんです。お供えする前はすごく
いい匂いがするのに、仏壇からお下げするときには、匂いが薄くなって
るんです。それは食べ物でも同じで、味気がなくなってるんですよ」



沙知子の言葉に、他の3人はうなづいた。おそらく、単に物質としての
“お供え物”を食べるのではなく、供えた者の真心を受け取って喜ぶ
のだろうと彼らは感じた。



4人はこんなに充実した気持ちを
お墓参りで体験できるとは思わなかった。



四国では香川県の讃岐うどんが最も有名だと沙知子は話したが、スス
ムとセルティにはあまりにスープの味が薄すぎて、ただのお湯の中に
うどんが入っているだけのようにしか感じられなかった。


邦彦は以前、関西国際空港のレストランで
同じ経験をしたことを彼らに話した。


彼はあまりにスープの味がしないので醤油がほしいと料理人にお願い
したが、断られたという。日本人の場合、関東の味に慣れた人は、
関西の塩味をベースにした旨味を感じることが容易ではないらしい。


しかし、邦彦は西日本で暮らすことに慣れてから、
次第にその味わい深さを感じられるようになったという。



そのとき、店内で騒々しく英語で話しかけている男女の外国人の声が
聞こえた。彼らも店員にスープの味がないので何とかしてほしいと
話しかけていた。どうやら二人ともアメリカ人らしい。


残念なことに、店内には英語を話せる人がいないらしく、店員たちも
どうしたものかと戸惑っていた。それでススムとセルティが席を立って
助けに行こうとしたら、邦彦がひと足早く先に席を立って、間に入った。


事情を知った店主は、外国人の男女に最初のうどんのお金は要らない
ので、別のうどんを食べてみてほしいと提案した。彼らに出されたの
は釜揚げうどんと呼ばれるもので、いわば、ざる蕎麦のうどん版だった。



「yum-yum!」
「It tastes good.」



その声を聞いて、店主も、そして邦彦たちも喜んだ。


そして、邦彦は彼らにどこの出身なのかと尋ねると、
彼らは二人ともサンディエゴから来たと答えた。


サンディエゴ (San Diego) は、アメリカ最南西端に位置する街で、
カリフォルニア州に属し 、西は太平洋、南はメキシコに面している。



「サンディエゴか。ねえ、君たちの街、最近ロシア人が多くない?」



彼らは邦彦の言葉にうなづいた。サンディエゴはロシア人であふれ
かえっていて、ひいきの店のウェイトレスまでロシア人だという。


しかも戦車や装甲車も路上にある。明らかにロシア兵だと分かる。
さらに中国人らしい兵士も見かけたことがあるという。これから
アメリカで何かが起こることだけは分かると彼らは言った。、


不安そうな邦彦の顔を、ススムとセルティは見た。



「あなた…、アメリカはロシアと中国に乗っ取られるのかしら…」



沙知子の言葉に、
邦彦は少しうつむいたまま思案した。



「今はまだ、どうなるか分からないよ」





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