ススムは仁川に向かう飛行機の中で、CAにミネラルウォーターを もってきてくれるように頼んだ。セルティは彼の左隣の席でミステリー 小説を読んでいた。
「そういえば、ススム。日本と韓国が戦争したらどっちが強いの?」 「実際、両国が戦争することはないと思うけど、韓国が日本を攻める ことを前提にすれば、日本が圧倒的に強いだろうね」
「そんなに日本は強いの?」
「海軍力と空軍力で勝るから、いくら韓国の陸軍が強くても海を 渡って日本にやってこれないんだよ」
「日本が韓国を攻める、というのは今の段階じゃなさそうだしね」
「もちろん、陸軍だけを比較すれば韓国が強いと思う。韓国軍兵士 469万人の大半が陸軍だし、それは半端な数じゃない。もともと北朝 鮮という陸続きの敵と戦うのを前提にした軍隊だからね」
「だから、逆に韓国は海と空に力をそれほど力を注がなかったのね。 それに土地もそんなに広くないから戦闘機が離着陸できる場所も限ら れるわけか…」
「日本の自衛隊員は27万人だけど、戦闘機に乗るパイロットは世界屈 指の錬度95でアメリカやイスラエルと同じ。たしか韓国は60前後だっ たと思う。それに戦闘機の数は韓国は50機くらいなのに対して、日本 は300機以上あるから、質と量の両面で圧倒してる」
「それじゃあ、中国と日本なら?」
「尖閣諸島を前提にしてるなら、日本が有利だと思う。理由は韓国軍 の場合と同じ。何より中国共産党もそう考えているらしいよ。直接戦 ったら相手にならないのは分かってる」
「そうなんだ。日本のような島国を攻めるのって難しいのね」
「それにもし、中国が自慢の空母を登場させながら、簡単にやられた ら、一気に世界中の笑い者にされるよ。だから戦闘以外の方法で日本を 攻めなければと必死なのさ」
「戦闘以外のやり方?」
「たとえば、第二次世界大戦中、中国の南京で日本が大虐殺を行った というデマを流したりして、日本がいかに野蛮な国であるかと宣伝し ているんだよ」
「あっ、私、その話アメリカで聞いたことがあるわ。あれはウソなの?」
「まったくのデタラメさ。中国が言うには1937年12月に日本軍が南京 へ侵攻した際、約6週間の間に30万人の市民や捕虜を虐殺したって話 なんだけど、日本軍が来る前の南京市の人口は約20万人だったんだよ。 20万人しかいない所で、どうやって30万人を殺せるの?」
「それはそうよね、でも、証拠はあるの?」
「あるんだよ、南京攻撃の約1週間前、1937年11月28日に、警察庁長官 の王固磐が南京で開かれた記者会見で『ここ南京には今なお20万人が住 んでいる』と発表したんだ」
「それに日本軍が南京を占領したのが12月13日だったんだけど、5日 後の12月18日に、南京国際委員会(南京の住民が集まっていた安全区 を管轄する委員会)が同じく20万人の人口だと発表し、12月21日には、 南京外国人会が『南京の20万市民』と言ってるんだよ」
「さらに1ヶ月後の1月14日には、国際委員会が25万人に南京市の人 口が増えたと公表しているんだよ。それはオランダも調査して公表し てるんだ」
「それじゃあ、韓国も中国もウソをついて日本を孤立させる作戦なのね」
「そういうこと、世界中で日本の評判を落とそうと必死らしい」
「最近の事件では何かあるの?」
「あるよ、イタリアのローマで中国人が経営している日本料理店で、 日本料理の伝統として『女体盛り』を紹介し、イタリアの全国紙に 登場させているらしい」
「女体盛り?」
「横たわった女性の裸(水着を着ている場合も)の上にすしを盛りつ ける『ボディー・スシ』と呼ばれるものだよ」
「まあ、いやらしい」
「『女体盛り』なんて、日本人の僕だって聞いたことがないよ。在イ タリア日本大使館は商売目的で、でっちあげられた迷信だと抗議してい るらしいけど…。う〜む、人肉を食べる中国なら、そういう食文化 だってあるかも知れないなあ」
「中国って人間の肉を食べるの?」
「唯物論の国だからだろうね…。人間は動物が進化してできたもの、 という考え方だから、豚や牛の肉を食べるのと同じように、人間の肉 だって食べれると思うんだろうな。いつだったか韓国が輸入した肉の 中にも人肉が混ざっていたとニュースで大騒ぎになったことがあるよ」
セルティは“もう、その話聞きたくない”という顔で、ミステリー小 説の読書に戻っていった。ススムは手にしたミネラルウォーターを 一気に飲み干した。
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