セルティが朝起きたとき、ススムは洗面台で顔を洗っていた。
「いつもは、なかなか起きない人が今日は早いわね」 「うん、ちょっと悪い夢を見てね」 「あらあら、ずいぶん汗をかいてるわね」
彼女が彼のパジャマを触ると、ひどく濡れていた。
「何の夢を見たの? 教え・な・さ・い」
セルティのやさしい声に彼は仕方ないなという顔で話し出した。
「以前、ある米軍の将校と会ったことが2回ほどあってね、彼が夢に出て きたんだ。福島第一原発事故で、東京を含む東日本地域が壊滅するはず だったのに、失敗して、すごく悔しいと言ってたのさ」
「ふ〜ん、それって気のせいじゃない?」 「そうだよね、オペレーション・トモダチがそんな事するはずないよね」 「そうよ、本当はそうじゃなくても、そう信じればいいのよ」 「ずいぶん意味深な言い方をするね、セルティ」
彼女はススムの濡れたパジャマを両腕の途中まで 脱がせたままにして、彼の唇にキスをした。
「『愛するハニー、おはよう!』が先に言う言葉じゃない」 「ごめん、愛するハニー、おはよう」
二人はしばらく洗面台の大きな鏡の前で笑った。
「私も米国には何人か友だちがいるの。すごくいい人たちなんだけど、 黄色人種に対する偏見は多少なりともあるかも知れないわ。差別され てきた歴史をもつアフリカン・アメリカの間でさえ…」
「そういえば、米国に留学していた中国の学生もそんな事を言ってたよ」
「昔、米国人は中国移民に対しては見下げた人種としてバカにできた けど、日本移民の仕事ぶりを見たら、その合理性と技術革新を巧みに 組み合わせる能力に驚かされたって…。いずれ日本人が世界を支配す るんじゃないか?…と戦争する前の人たちはそう思ったらしいわ」
「ルーズベルト大統領が日本を太平洋戦争に引きずり出したのも、日 本人に対する恐怖があったのかも知れないね。奴隷も同然の低俗なア ジア人が大国ロシアに勝利するなんて想像できなかっただろうから…」
「きっとそうかも知れないわね、日本と戦争するために『オレンジ計 画』を合衆国が立てたのも日露戦争の後だものね」
「ただ、福島原発事故から出た放射性物質によって、日本人の多くは 遺伝子が破壊されてしまうだろうね。ロズウェルに墜落した宇宙人と 同じ遺伝子をもつ日本民族は消滅させられるのか…」
「だいじょうぶよ、ススム。神様はいらっしゃるわ。悪い動機で打つ 者を、日本人たちが「あの人たちはよい人だ」と信じれば、いずれ 打つ者が打たれるし、日本の人々にはきっと希望が残るわ」
「そうだね、セルティ。君にそう言われたら、そうなる気がしてきたよ」
セルティはススムの両腕まで脱がせたパジャマをそのままに、彼のパ ジャマのズボンと下着に手をかけて一気に脱がせた。彼女の突然の行 動にススムは驚いた。
「仕事でね、自分の責任なのに、それを誰かになすりつけて逃げるような 男性ってどうなるか知ってる?」
「えっ? どうなるの?」 「勃たなくなるらしいの、ここが…」 「イ、インポ?」 「そう、インポテンツ。ED、勃起障害、勃起不全ともいうのかしら」
ススムはそんな話を初めて聞いて驚いた。彼女は友人のドクターたち からセックスに関するさまざまな症例を聞いていた。
「インポテンツの治療相談に来る男性たちの中で、 超お金持ちって部類の人たちって意外に多いらしいのよ」
「へえ〜、それは本当に意外だね」
「彼らはルックスもいいし、話は面白い人も多いって…。おまけに立 派な車を乗り回し、素晴らしい食事にも誘ってくれて…。それから豪 華なホテルの部屋に入るとなれば、最後は決まってるでしょう」
「まあ、やることは一つだね」
「でも、彼らがそのまま寝てしまうので、女性にしたら『何なの?』 って事になるわ。それで彼らは別の女性を誘わざるを得なくなるの」
「人間として正しくない生き方や過度な物欲に奔走すると、宇宙のル ールに背いた者として処分されるのかも知れないね。結果、子孫に恵 まれないとか、奇妙な病気に見舞われるのかな」
「でも、あなたのはいつも元気。ステキだわ」
セルティは彼女の舌先で勃起したススム自身の先っぽをくすぐる。 ススムはほとんど裸のまま洗面台に座らされ、好き放題にセルティ の愛撫に翻弄されたが、ついには彼女も我慢できずに服を脱ぎ、 彼を受け入れた。
「実はね、今朝私も夢を見たの。あなたの精子と私の卵子がダンスし ながら泳いで、最後はプチッと音を立てて一つになったの。それでそ の次の瞬間、可愛い女の子が出てきて『ママ』って私を呼んでくれた のよ」
「そ、それは素晴らしい夢だね、セッ、セルティ」 「うっ、その夢、ふたりで実現しましょうね。 で、でも、もう、もうちょっとだけ我慢して…」
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