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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第22回   EU首脳会議の後
岡島と素子はバスルームではしゃいでいた。


さすがにお互いが自分の着てる服を全部ぬいで、相手の前に立つのは
気恥ずかしかったが、向き合ってみると岡島は彼女の美しさにうっと
りし、素子も彼のたくましい身体に魅せられた。


しかし、ちょっとした素子の悪戯が発端となって、二人は泡だらけになり、
お湯をかけ合う騒ぎとなる。


途中、ボディーソープが大量にこぼれ、つるつるになった床でムーン
ウォークを岡島が披露すると、素子も教えてと遊びはじめた。傍目に
は男と女というより、兄と妹、あるいは幼馴染という関係にも思える。


素子が少し足をすべらせそうになったとき、岡島は素早く彼女を抱き
とめ、何か大切なものを置くように、そのままゆっくり床に寝かせると、
彼は両手にボディーソープをつけて彼女の全身をさすり始めた。


「優しくしてね」と素子は岡島に声をかけたものの、
その後、彼女の言葉はあえぎ続けて意味にならない。


ただ、その手が素子の下の肝心な部分に差し掛かったとき、さすがに
岡島も躊躇した。だが、彼女は自ら両脚を開きながら彼の手を導いた。


目を閉じて自分の身体が彼の手や指の動きにどのくらい反応するのだ
ろうかと思ったが、次第に頭の中が真っ白になってしまい、身体が
ふわふわ宙に浮いてるように感じた。


素子が次に意識がハッキリしたとき、彼女は彼の腕の中にいた。


これから彼との幸せな毎日がつづくことを彼女は願い、彼も彼女を一生
愛して守ってあげたいと願う気持ちでいっぱいになっていた。


                    ☆


ススムはボスである中村喜一から電話を受けた。


「悪いな、休みの日に…。ドバイは今、朝だったかな?」
「はい、ボス。ドバイは朝です」
「早速ですまないが、ESMについて何か聞いてるか?」
「ESM? もしかして、European Stability Mechanismですか?」

「他にあるのか?」
「たぶんないと思いますが、でも、それなら欧州のメンバーに聞いて
くれた方が…わか…ると思いますが…、あ〜ワ〜ウ〜」

「そうか、寝てたか…。あくびばかりだな」
「まだ、5時半ですからね」

「欧州の派遣員たちに聞いたら、お前の方が自分たちより詳しいだろ
うと言ってたんだ。悔しいが一つの情報から何かを引き出す力が、
お前は群を抜いてると言ってたぞ。そう、インテリジェンスってヤツだ」


「どうしたんですか? 珍しく部下を褒めるなんて気持ち悪いですよ」
「いやあ、将来、娘の再婚相手になるかも知れない男だそうだからな、
少しはゴマでもすっておかんとな、ハハハ…」


「ボス、美奈子さんには本当、参りましたよ」
「夜中に全裸でお前のところに抗議しに行ったらしいな」
「えっ〜、それも話したんですか…」

「よく我慢できたな、自分の娘ながらあれだけの女はいないだろう」
「あの後、そのまま僕のベッドに入ってこようとしたんですよ、彼女…」
「いっしょに寝たのか?」

「寝てませんよ、あれだけの美人に裸で密着されて、そのまま我慢で
きるはずないでしょ。自分の部屋に戻って寝なさいって追い返しましたよ」
「そ、そうか…それならいいんだ」


ススムは電話器の子機で話しながら、コンピューターを立ち上げた。


「ご存知のように、ESMはEFSF(欧州金融安定ファシリティー)を引
き継ぎ、2013年7月に始動予定で5000億ユーロまで融資可能です」

「ああ、そこまでは知ってる。EFSFは2013年6月までだからな」

「ただし、今回のEU首脳会議の後にフランスのオランド大統領が、
記者会見で今までのように全会一致で決めるのではなく、多数決で
決める方式に変えたなどと言い出したんです。それじゃ約束が違うと
外交官が怒ったですよ」

「お偉いさんたちが会議した後で、実務担当者がその内容を確認
したら話がまったく違ったってヤツだな」

「そうなんです。すぐ国に戻ってEMSをつぶそうって騒ぎなんです。
ドイツのメルケル首相にいたっては『ドイツは何も譲歩しなかった』
なんてインタビューに答えてるんですから、何を合意したのか…」

「メルケル首相のことだから、お金を出すだけじゃなく、
その使い道までドイツが口を出すと言い出してるんじゃないのか?」

「そうですよ。ドイツ議会は拒否権を捨てないそうです。事実上、
ユーロ諸国はドイツ議会という信用調査機関の了承を得なければ
EMSからお金を引き出せないわけです。たとえ出しても引き続き
ドイツからの監視を受けなければならない」

「それじゃあ、まるでドイツが金で欧州を支配するようなものだな」
「当然、そう思われるでしょうね」
「ドイツ人は一度決めたら頑として変わらないからなあ」

「たしか、ボスの奥様も…」
「そう、ドイツ生まれだよ。娘たちの気質は皆な母親似だと思う」
「じゃあ、僕との再婚話は…」
「まあ、運命だと思って受け入れてくれ、私は決して望んではいないがね」


ススムは何か悪い夢をみている気がしてならなかった。







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