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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第18回   データ消失事故
週明け、岡島はデータ消失事故を起こしたファーストサーバの顧客企業と
連絡を取った。しかし、対応した担当者も何が起こったのか理由が分からず、
自社のコンピューター・システムが故障したのだと思い込んでいた。


むしろ、岡島が説明して、初めて事の重大さを理解したらしい。しかし、
状況を把握しても顧客の電話番号さえ分からず、混乱は増すばかり。


「ススムなら何かしらの情報を持ってるにちがいない」。

岡島の勘は正しかったが、肝心のススムはチャット
どころか珍しく電話にさえ出なかった。


イライラする岡島の頭の一部は、なんとか週末、青野素子とゆっくり
過ごせる時間が確保できるかどうかを心配していた。

一方の素子も同じように岡島を思った。お蔭でいつも偉そうにしてい
る上司の嫌味も気にならず、むしろ、周りが素子の勢いにのまれた。


「わたし、初恋のときより、ドキドキしてるかも…」


岡島に愛撫してもらった感触を思い出すだけで彼女は幸せだった。


                    ☆


ススムは彼のボスの娘、中村美奈子から頼まれて、彼女の友だちの荷
物運びに駆り出されていた。急いで作業服に着替えて出たので携帯電
話を忘れたのに気づかなかった。


「まったく、ボスに特別休暇もらおうかな」
「はい、ススムさん、いつまでも休まない!」
「はい、はい。君はお父さんに似て人使い荒いね」
「『はい』は一回でよろしい」
「はい…」


美奈子は嬉しそうにススムをはじめとした男性陣を指揮している。
ほかの女性たちは荷物の整理に忙しそうだった。やっとできた休日を
ススムは丸一日作業で終えた。


「ご苦労様、助かりました」
「いえ、お役に立ててよかったです。では、僕は帰りますので…」
「待って、私も一緒に帰るから」

「えっ? 教会で誰かにプロポーズされたとか聞きましたけど…」
「あっ、聞いてた? 実は、まだ返事してないんだよね」
「そうなんですか? 私はてっきり彼とラブラブで帰ってこないものと…」

「それで私に電話してこなかったのね、許さないから! 帰るわよ」
「はい…」


ススムはホテルに帰って岡島から電話があったことに気づくが、汗だ
らけなので、とにかくシャワーを浴びてから連絡を取ることにした。

ススムが浴室から出るとコンピューターを立ち上げ、岡島を呼び出すと
彼はすぐに応じてきた。


「何かあったのかい?」
「ああ、先週レンタルサーバーのトラブルがあったって聞いてる?
 そのトラブルについて何か情報つかんでないか?」
「噂なら聞いたよ、ちょっと待って…。ワッ!」


コンピューターのデスクに座るススムに裸の美奈子が後ろから飛びつ
いてきたのだ。彼女はうれしそうにススムの頬にキスする。その光景
に一番驚いたのはウェブカメラの向こう側の岡島だった。


「たけうちゆう…、竹内結子さん? 女優の…」
「ちがう、ちがう、別人だよ。ちょっと離して、美奈子さん」
「美奈子さん? えっ? ボスの娘さん? なぜそこに裸でいるの?」

美奈子はその言葉にびっくりした。ススムがウェブカメラとマイクで
相手と会話していることに気づいた。ススムはススムで美奈子の裸が
ウェブカメラで誰かにさらされるのを気使った。


「美奈子さん、離れないで、僕の後ろに隠れて…」


そう叫んだ瞬間、ススムは偶然マウスをクリックしてしまい、マイク
のスイッチを切ってしまった。上半身裸のススムと全裸の美奈子のや
り取りを理解不能な思いで岡島は見ていた。日本の戦後にあった無声
映画というのは、こんな感じなのかも知れないとボーッと眺めていた。


“それにしても、やっぱり竹内結子に似てるよな、それに胸もデカい
し…。すごく魅力的だ。イカンイカン、僕には素子さんしかいない。
でも、なぜ彼女がドバイに?”


ススムと美奈子は落ち着いたらしく、改めてチャットに応じてきた。
一応、ススムがこれまでの経過を説明して岡島も状況を把握したものの、
バスローブを羽織っただけの美奈子がススムから離れない。


美奈子が後ろから抱きつくカタチで、ススムはある噂を話しはじめた。






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