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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第15回   格付け会社の攻撃前
岡島は青野素子の首筋から腕、脇の下や指先、背中、バストのふくらみ
や乳首まで、キスしながら舌先でなめたり突つくなど、自分なりに
思いつく方法でいろいろと愛撫してみた。


素子は岡島の愛撫にくすぐったくて堪えられない箇所もいくつか
あったものの、意外な場所で感じてしまい、自分でも驚く。


「脇の下って、最初くすぐったかったのに、
 後からだんだん感じてきてびっくりしたわ」

「乳首の周りもそうだけど、鎖骨の辺りや背中にも、
 すごく反応してたね」

「耳たぶの辺り、触れるか触れないかの感じがよかった。
 それに息がかかる感じも」

「女性の性感帯って、いろんなところにあるのかも知れないね」
「ただ、個人差って、きっとあると思う」
「そうだね、女性一人一人で感じるところが違うだろうね」

「えっ? ほかの女性で性感帯が違うことを確認してみるの?」
「いや、絶対そんなことはしないですよ」


素子は岡島を言葉で追いつめながら彼を可愛いと思う。彼女は以前
付き合っていた男性たちと、こんなふうにコミュニケーションを取り
ながらの愛撫などなかったことを思い出した。


彼らにとっての素子は、結局は性の捌け口でしかなかったのかも知れ
ない。あるいは仲間にこんなに可愛い女性を俺は彼女にしているぞ、
と自慢するためのアクセサリーだったのかも知れない。

素子の内なる自分は、私は道具やモノじゃないと心で叫びつづけていた。


それに比べ、今、目の前にいる岡島は、自分を一人の女性として真摯
に向き合ってくれている。それだけでも彼女はうれしかった。


「敬一郎さん、もしかしたら性感帯って、開拓していくものなのかな?」
「えっ?」
「たとえば、以前はぜんぜん快感でもなかった場所が、だんだん快感
 に感じるようになることだってあるんじゃないかと思ったの」

「それはあるかも知れませんよ、先生」
「じゃあ、夫婦って一生涯かけて、お互いの性感帯を探すものなのかしら」
「まあ、人間の細胞は60兆個ありますから、一生では足りないかも知れません」


そのとき二人共お腹の虫が鳴って、岡島と素子はくったくなく笑った。


「素子さん、素子さんのバスト、全体的にちょっと上を向いてません?」
「あっ、本当だ。何かさっきより少し大きくなった気がします」
「僕には輝いて見えますよ、素子さんの身体が…。ちょっと鏡見てください」


岡島はサイドテーブルにある鏡を素子に向けた。


「すご〜い、私の胸、張りがあって光ってる。乳首も上を向いて…」
「人間の細胞って、愛されると光輝くって本当なのかも知れませんね」
「敬一郎さん、私、うれしい」


素子は岡島に抱きついたものの、再度お腹の虫が鳴ったので
朝食を食べようと、二人は着替えてホテルのレストランに向かった。


                    ☆


ススムはムーディズがユーロ、特にスペイン中の銀行を攻撃するとの
噂を聞いていた。セルティ・セジョスティアンはおそらく今週末まで
にスペイン政府が資金調達ができずに白旗をあげると予測している。


「きっと寝ぼけたようにEUはヨーロッパ共同債でも発行しようか、
 なんて 言い出すんじゃないかしら。スペインを救うにはすぐに
 お金がいるのにね」

「結局はドイツ次第だね、もうイヤになってユーロを離脱するかな?」
「残念だけどドイツが生き残るには、選択肢があまりに少なすぎるわ」

「セルティ、ごめん。ちょっと出かける時間になっちゃた」
「分かったわ、私もそろそろ皆なの食事を準備する時間だわ」


ススムとセルティは名残惜しむ気持ちで
お互いチャットを終えて席を立った。






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