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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第13回   大飯原発が再稼働前に警報
ホテルの一室で青野素子は
先に寝てしまった岡島の顔を眺めていた。


当初は二人とも日帰りの温泉旅行のつもりだったが、
素子が岡島に一泊しようと提案したのだ。


岡島が喜んだのは言うまでもないが、彼は素子が心配するくらい緊張
してしまった。仕方ないので、お酒でも少し飲んだらという素子のア
イデアで、女性に人気の果汁系のカクテルを少し飲んだ。


ところが、アルコールに弱い岡島はちょっとの仮眠と言ったまま熟睡。
素子はなんどか彼を揺り動かしたが全く起きる気配がない。


せっかく、ふたりでホテルにまで泊まって、これから…
と思う素子だったが、こうなってはどうしようもない。


とりあえず、彼女は岡島の着ている服を着替えさせることにした。
服を脱がしてみると、意外に胸板も厚く、しっかりした体格である
ことに素子は気づいた。


「着やせするタイプみたい。でも、いい体格してるのね」


素子は彼の胸板に顔を寄せてスリスリしてみた。
むかし、寝ている父親に同じようなことをしたのを思い出した。


そういえば、5歳頃、父親の下半身に大きな棒があるのに、自分は
ないと言って大泣きしたらしい。父の三回忌に彼女の母が話した。


それを思い出した素子の心には、ちょっとした好奇心が頭をもたげて
くる。彼の下着をめくってみると、それは寝ている本人と同じくクタ
ッ〜となっているが、少し手で撫でているとムクムクと大きくなる。


「お父さんのより、ずっと大きい! びっくりした…」


ちょうど岡島が寝返りを打とうとしたので、あわてて下着を元に戻し、
何事もなかったように毛布をかけた。


素子はテーブルにある岡島のパソコンを立ち上げ、ススムとのチャッ
トを試みようとした。残念なことに彼はオフライン中だった。たぶん、
どこかに出かけているのだ。


彼女はデスクトップにある画像ファイルが気になって開いてみた。
ススムとセルティ・セジョスティアンが仲良さそうに並んでいる
写真だった。


「この女性がススムさんの彼女…、本当にきれいな人ね」


素子がそう思った瞬間、コンピューターの画面にススムのチャット
がオンラインになったという点滅が現れた。


「やあ、青野さん。そちらはこんばんは…でしたね」
「はい。ススムさんの方はお昼ですよね、ランチ食べてたんですか?」
「そうです。でも、一人だと何を食べても美味しいって思えませんね」
「彼女は今いないんですか?」
「今、故郷で両親の看病で留守なんです」


素子は何かをひらめき、パソコンを持ち上げ、ウェブカメラでベッド
に眠る岡島が映した。それから彼らがホテルにいたるまでの経過を素
子は話すとススムは大いに笑った。


「あれっ、どうしたんです。素子さん」
「今さっき、敬一郎さんが寝言で私の名前を呼んだんです」
「きっと、夢の中であなたを愛しているのかも知れませんね」
「まあっ」


顔を赤くしながらも、うれしそうな反応をみせる素子に、できたら彼
の隣に寝てあげて、とススムは提案した。素子はその言葉に従ってみ
ようと思った。


「ところで、関西電力の大飯原発3号機は、まだ再稼働の準備を進め
る段階なのに警報が鳴ったそうですね。深刻なトラブルはなかったも
のの、発表は半日遅れだったとか。日本でも相当な騒ぎになっている
んじゃないですか?」


素子はそんな話、テレビやラジオのニュースなどでも聞かなかった。
遠く離れたドバイにいるススムの方が、日本国内にいる自分よりも、
よく知っていることに驚く。彼女は“情報統制”という言葉の意味を
実感として感じた。


ススムはついでと思い、ヨーロッパを中心に、トップレスでの抗議活
動を続けるウクライナの女性社会活動家グループ「FEMEN」の画像を
見せた。

今年3月にキエフで、脱原発と福島の人たちへの激励の意味を込めた
抗議活動の画像をチャット・ウィンドウにアップしたのだ。


「すごい、大胆ですね。皆なトップレスで道路封鎖ですか…」


その後、素子はテレビ映画『ダーク・ナイト』を見てから岡島の隣に
寝るのだが、勇気を出してトップレスで岡島に寄り添った。おそらく
ススムとのチャットが、彼女の意識に影響を与えたのかも知れない。






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