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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第11回   シリアがトルコ軍機を撃墜
青野素子と岡島敬一郎のキスのレッスンは一時間ほど続いた。
でも、二人はほんの10分程度と思っていた。

彼らは車に荷物を積むと急いで四国に向かったが、
信号で停まる度、お互い無言のうちに短いキスを求めてしまう。

国道2号線から四国に渡る高速道路「しまなみ街道」に出る頃には
運転する岡島に寄り添い、左腕に抱きつく素子の姿が見えた。


「ススムさんって、本当にいいアドバイスをしてくれたと思う」
「ああ、たまに、いい事を言うんですよ。アイツ」

「次は何のレッスンがいい?」
「あっ、はい、あの〜、先生のお好きなように…」
「じゃあ、ちょっと大胆なのにしましょうか?」


岡島は顔を紅潮させながら、車の速度を上げた。


                     ☆


ススムは商品相場の下落に備えていたため、大きな損失を被らずにす
んだ。ドバイ原油は大幅に反落し、鋼材もアジアで下落。アルミ地金
も2年ぶりの安値となる。中国は家電向けを中心に需要が弱く、供給
過剰が続いている。


彼はセルティと出会ってから“読み”がほとんどはずれていない。以
前、彼は彼女を「好運の女神」と呼んだが、それは決して冗談ではな
かった。


世界は事実上デフレが進行してるため、余分な在庫を持つことは企業
にとっては命取りになる。早め早めに手を打たなければ、あっという
間に潰れてしまうのだ。


ドバイでの早朝、ススムは日本のニュース・サイトを見た。



『<大飯再稼働>撤回求め官邸前でデモ 列は700メートルに』


主催者によれば約45,000人がデモに参加したらしい。警視庁は11,000
人が参加と発表しているが、10,000人以上参加のデモを300人と報道
した新聞報道よりはマシかも知れない。


                     ☆


ススムのパソコンにチャットを要望するマークが点滅しはじめた。相
手の名前は「Motoko Aono」。彼女がススムにアクセスしたのだ。
クリックすると最初から彼女と岡島がキスしている画像が見える。


「さっそく、レッスンを始めたんだね。あれっ? 二人とも浴衣なの?」
「はい、今、温泉地に来てるんです。ふたりで…」
「それはそれは、うらやましい」
「ススムさんのアドバイスのお蔭です」
「はいはい、お幸せに…」


もう勝手にやってくれという思いで、ススムはチャットの画面を閉じた。


冷たいものを飲もうかと思い、何気なくリビングのテレビをつけると、
シリアがトルコ軍機を撃墜したというニュース画面が流れている。

トルコ南部の地中海沖を偵察飛行中だったF4戦闘機が撃墜されたも
のの、幸いにも二人のハイロットは無地だったらしい。一方のシリア
国営メディアも領海内で戦闘機を撃墜したと発表している。


トルコはNATO軍であり、シリア空爆のための口実をつくろうと必死な
のだろう。2012年6月、米国、イスラエル、英国の3か国がイランの核
施設に大規模なサイバー攻撃を仕掛ける計画も暴露されたばかりだ。


シリア政府が非道であるとテレビや新聞で大々的に騒がれてはいるも
のの、シリア反政府組織がCIAから武器・弾薬を受け取り、シリア
住民を虐殺していることは先進国首脳や各マスコミも熟知している。


そのため、シリアに対する抗議行動に先進国のモチベーションが、
今ひとつ盛り上がらないのは当然といえば当然ともいえる。


そんな茶番劇のために名もない女子供が殺害されるのは愚かとしかい
いようがない。ウソがばれたら、その上塗りのために別のウソをつき、
そのために新たな街が破壊され、多くの人々が犠牲となるのだ。



「こうまでして聖書の預言を成就しなければならない理由は何なんだ?」



ススムは堪えられない思いで、
テレビのリモコンのスイッチを切った。





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