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作品名:本当かどうかは別として 作者:Sharula

第1回   スペインの国債が7%台に
今日のドバイは最高気温36度に達した。
6月の半ばなのにこう暑くては何もやる気がしないとススムは思う。

テレビからはシリアのダマスカスが41度になると聞こえる。

バスルームから出たセルティ・セジョスティアンはドアの隙間から
顔だけ出してススムに話しかける。ソファーに座るススムからは
ちょうど真後ろにあたる。


「ねえ、イランやイラクって、45度を越えるところも多いみたいね」
「本当? そんなところに派遣されたら日射病で死んでしまうなぁ」
「日本は今頃、暑いの?」
「雨が多い時期で蒸し暑いよ」


セルティはバスローブだけを軽く羽織って、
上半身裸のススムの背後から抱きつく。


「蒸し暑いって、こんな感じ?」
「おっと、びっくりしたあ。あれっ、セルティ裸なの?」

「バスローブ、今、落ちちゃった。でも、直接肌が触れ合うのって気
 持ちいいと思わない? ススムの背中に私の胸の感触伝わってるかしら?」
「うん、最高。背中だけでも、こんな快感を味わえるんだね」

ススムはセルティの柔らかなバストの感触に幸せを感じる。


             ☆


セルティはそのままススムのパソコンの画面を覗きこんだ。


「あらっ、スペインの国債、金利が7%台になっちゃたの!」

「ムーディーズが昨日スペインの国債の格付けを3段階引き下げたか
ら、こうなるかなと思っていたけど、心配なのはドイツのクレジット・
デフォルト・スワップ(CDS)が拡大していることだよ」

「ホント、恐ろしい話ね。欧州の債務危機がドイツ国債の安全神話ま
で破壊しちゃうなんて…」


セルティはススムの肩越しに腕を伸ばし、
ノートパソコンの画面をいくつかクリックする。


ドイツ国債が少しずつ売られてる。以前はユーロ圏からドイツ国債に
資金が流れ、それが今や米国債に資金が再移動しているように思える。


ススムはソファーから立ち上がって、裸のままのセルティを抱きしめ、
床に落ちているバスローブを彼女に着せながらキスした。


「王女さま、どうかその濡れた髪をお乾かしください」
「ススムって面白いわね、私はセルティ。王女さまではないわ。でも…」
「でも?」
「でも、何だか気持ちいいわ。そう呼ばれると」


にこやかに笑う彼女をみると、
ススムは何物にも替えがたい幸せを感じる。


「では、王女さま、お飲み物でもお持ちいたしましょうか?」
「それよりもススム。あなたもシャワーを浴びてきなさい」
「承知しました」
「それでシャワーが終わったら、私をマッサージすること」
「はい、王女さま、承知しました」


セルティとススムは微笑みながら、目線を合わせた。


ススムと入れ替わりにソファーに座った彼女は、いくつかの指標や経
済動向を眺める。ふと、英デイリー・メール紙が6月初めに掲載した
記事に彼女の目がとまる。





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