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作品名:ときどき占い師の日常 作者:Sharula

第8回   8
日曜日の午前中、圭介はネット上でチャットをはじめた。
相手は元同僚の泰子だった。


彼女は結婚生活3年を迎えようとする昨年離婚した。


以前、圭介は二人の命式をみて結婚は止めた方がいいと話したが、
熱愛中のカップルには何を言ってもムダだとあきらめた。


傷官を2つもつ女と、正官を3つ持つ男が結婚してどうなるのか?
圭介にしてみれば、ちょっとした興味をそそる組み合わせではあったが、
夫の不倫が発覚したため、圭介の予想より早く彼らは破綻した。


「うん、私? 今は一人で暮らしてる。一応はジャーナリストなのよ」
「そうなんだ。それでどうしたの? チャットしたいなんて連絡くれて」
「じつはね、圭ちゃん、マヤ暦とか詳しくない?」
「残念だけど、僕は専門外だよ」


圭介は以前、マヤ暦を研究している人物と会い、
東洋の占いで用いる暦と相通ずることが分かって驚いた。

しかし、彼はマヤ暦にいくつもの流派や異なる暦があることを知って
それ以上深くは立ち入ろうとはしなかった。


「そうなんだ。でも、あなたのリポートが注目されてるのよ」
「えっ? そんな、僕、何か書いた?」
「アハっ、そっか。知らないんだ」


何年も前、圭介は都内で開かれた占いの勉強会に呼ばれ、
当初は講師をする予定などなかったが、突然彼がマイクを持つハメになった。

そのとき、適当に何かを話したが、それが記事になって広まったのだ。
彼女はしばらくそのリポートについて説明した。


「僕、そんな話したんだ…」


彼自身は自分が話した内容をまったく覚えていなかった。
だが、それが家系やマヤ暦を研究する人たちは参考になったらしい。


「世の中、何がどうつながっていくのか、分からないものだね」

「本当ね…。でも、男と女だって同じようなものかも知れないわよ」
「ああ、離婚した件?」

「そう…、でも私、離婚してから思ったんだけど、
 結婚する前、相手の年収や社会的地位とかって気にしてたんだよね」

「女性って、それが普通みたいだよ。男性はロマンチックな出会いで
 一目ぼれってするけど、女性はやっぱり現実的だものね」


ふと、泰子は結婚相手として選ぶべき男を間違えたと思った。


「しあわせの青い鳥は、すぐ傍にいたのかも知れないわね」
「えっ? 何の話?」
「あっ、ただの独り言、こっちの話…」


突然、パソコンの画面に映る泰子の顔が笑いに変わった。


「どうしたの?」
「もしかして、あなたの彼女、フランス人なの?」
「えっ? フランス人? あっ、あれは変わった弟子でね」
「うふふ、とてもただの弟子とは思えないわよ。彼女」


泰子の言葉に、圭介が振り向くとケイトがすぐ後ろに立っている。
しかもシャツのボタンをいくつかはずしてブラジャーを露わにしている。

泰子にはパソコンのライブカメラに映るケイトの姿が、
セクシーというより、少しコミカルな感じに思えた。

ケイトは友達と出かけた途中で
サイフを忘れたことに気づき、取りに戻っていたのだ。


「ダーリン、浮気はダメよ」
「だ、だれがダーリンだ。それに浮気っていうのはだな…」


泰子はパソコン越しの二人のやり取りを見ながら、
もう一度くらい結婚してもいいかなと思いはじめていた。




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