今日は待ちに待ったスマートフォンが届く日だ。 雅(みやび)は胸の高鳴る鼓動を押さえきれなかった。 東京都荒河区第七工業高校、通称:七校。に通って、2年生になったばかりの 不二野 雅(ふじの みやび)は、高校二年になって、ようやく念願のスマート フォンを手に入れる事が出来、喜びに満ち溢れていた。 クラスメイトで幼馴染の鈴本 活未(すずもと かつみ)と一緒に、わいわい騒 ぎながら帰宅していた。
カツミ「よかったね。ようやく、雅もスマホ デビューじゃん。」
雅「ホントだよぉ。うぅ、やっぱ良いわ。スマホって♪」
カツミ「これで雅が好きだった日本史の資料なんかも、一発検索で出せるんじゃ ない?」
雅「そうだよ!!そういうのも、アレもコレも何だって出来ちゃうさ♪」
雅は両手を上にガバッと伸ばし、手に持ったスマホを嬉しそうに見つめながら 歓喜の雄たけびを発した。
カツミ「それでさ。まず、最初は自分が使いたいアンドロイドとか決めておいた方 が良くないですかい?」
雅「そーそぉ!アンドロイドとか取らないとね。」
雅「で、あんどろいど??ってどこで取るの?」
カツミ「あ〜。まずは、このアンドロイド ストアってトコをタッチして・・・」
カツミ「でもって・・・」
雅「あ〜、なるほど。」
カツミ「・・・で、ダウンロードを選択すると・・・。」
そんなこんなで帰宅時間中、雅とカツミはスマホの使い方をああだこうだと
話しながら家路に着いた。
雅の家とカツミの家は、幼馴染と言うだけあって歩いて2〜3分もすれば
お互いの家にたどり着く。
雅「いやぁ〜。カツミが居てくれると、常に最新の情報が入ってくるから助かる ね。俺はこういう情報に疎いもんな。」
カツミは幼い頃から周りへの観察力が高く、情報に敏感である。 常に事の成り行きを冷静に観察し、的確な判断を下す。 カツミが「尊敬している諸葛孔明の様になりたい。」と以前語っていたのを雅は思 い出した。
もともと、カツミと雅が仲良くなったきっかけもお互い歴史好きという共通の趣 味があったからだ。
ひとつ違うのは、カツミは中国史が好きで、雅は日本史が好きだということだ。
カツミは前述したように諸葛孔明を尊敬している。
一方、雅は宮本武蔵が一番好きだった。
お互い歴史好きなので、いつも一緒にああでもない。こうでもない。と議論してき たのだった。
家に戻った雅は早速、アンドロイド探しをしていた。
(うんと。そういえば小説が読めるアンドロイド、あるって言ってた なぁ・・・。歴史物の小説とかもあるのかも。宮本武蔵で検索してみよっと。)
雅「うわっ。少なっ・・・!!15件かぁ・・・。」
(う〜ん。歴史小説っぽいもの無いなぁ。)
雅はスマホのパネルを下にスライドさせてみた。
雅「・・・うん?」
(一番下にある”銀河図書館ネット”って何だ?まあ、図書館ってくらいだから、 小説とかもコンテンツにあるのかな・・・?無料みたいだし・・・。)
雅「レビューを見たほうが良いって、カツミ言ってたよな・・・。」
レビューを見ようと雅は”銀河図書館ネット”をタップしてみた。
説明 お気に入りの歴史上の偉人を選んでください。 ダウンロードが完了しましたら、イヤホンを耳に付けて下さい。 アンドロイドが起動し、歴史上の人物を楽しめます。
(う〜ん。どういうことだ?イヤホン・・・ってことは音声再生型の歴史小説なの かな?レビューは書かれてないが・・・。)
面白そうだなと思った雅は、カツミに”銀河図書館ネット”っていう興味深いアン ドロイドを見つけた。とメールで送った。 カツミからは”うぃ。”とだけ返信が来た。
「早速、ダウンロードすべし。」とつぶやくと雅は”銀河図書館ネット”をダウン ロードし始めた。
このアンドロイドを手に入れたことにより、多くの人の人生が変わってゆくことを 雅はこの時は知る由も無かった。
”銀河図書館ネット”をインストールした雅は、すぐにアンドロイドを起動した。
パッと画面が起動した。
”はじめてのかたへ”を必ず読んでから”歴史上の人物”をお楽しみ下さい。
雅はこういった取扱説明書を読むのを面倒くさく思ってしまうタイプなので、無視 して”歴史上の人物”をタップした。
「こういうのは、体で覚えるタイプなんだよね、俺は。」と雅はつぶやいた。
エラー
”マジック エンチャント”をセットしていないので”人物エンチャント” を上乗せエンチャント出来ません。先に”マジック エンチャント”をダウンロー ドしてセット下さい。
(う〜ん?マジック エンチャントって何だ?とりあえずダウンロードしとく か・・・。ってか、エンチャントって何なの・・・。まぁ、体で覚えるべし!)
雅は”マジック エンチャント”をタップしダウンロードした。
・雷化 (レア)[単体発動 必要スロット数:1]
(なんだろう?マジック エンチャントって。かみなりか?らいか?って読む の?トレーディング カード的な何かかな?・・・とりあえずセットしよう。)
”雷化”を選択して”セット”をタップした。
さっそく雅は”歴史上の人物”を選択し”宮本武蔵”をダウンロードした。
「”宮本武蔵”を上乗せエンチャントしました。」
「イヤホンを装着してお楽しみ下さい。」
と表示が出た。
雅「早速、聴きますか。」
雅はイヤホンを付けずにスマホにジーっと耳を傾けた。
何も音が流れてこない。
(イヤホン付けたときにしか再生されないのかも・・・。)
面倒くさい気持ちもあったが、せっかくダウンロードしたアンドロイドだし興味の あることだったのでイヤホンを引き出しから取り出し、両耳にイヤホンを付けて 聴いてみた。
シーン。
何も音声が流れて来ない。
せっかくいろいろ手間をかけて、ようやく歴史小説が聴けると思ったのに何も始ま らなかったので少しイライラがこみ上げてきた。
雅は軽く机を叩こうとした。
その瞬間、力を入れ振り下ろそうとした右手がピカッと光った。と思ったら ピシャ〜ッ ド〜ンと物凄い音が右手から出た。 気づくと右手は机を貫通して宙に浮いていた。何の感触も無かった。 机は焦げて手の大きさと同じくらいの穴が開いていた。 焦げ臭い匂いが部屋に立ち込めている。
(どうなったんだ。今の一瞬で!?)
激しい動悸とともに疲労感が右手を襲う。 今の音を聞きつけて家の誰かがドタバタと走ってきた。
「何かやばいなぁ・・・。」と雅はつぶやいた。
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