1週間後、私は彼を探し当てることに成功した。彼は人の感情に飢えている。それを考えればおのずと行き先は限られる。 それに加えて、彼は非常に端正な顔立ちで目立つ容姿をしていたので、何件か聞きに回ったところで目撃情報を得た。
まだ彼は近くに居る。
彼は性暴力の被害者セミナーに参加していた。怒りと悲しみ、絶望とそこから救われようとする感情。それを慰めようとする人の優しい感情。 一度に、色々な感情を観察することができる。
私が彼を見つけた時、彼は別段驚いた表情をしなかった。
「奇遇ですね」
彼の横に座る瞬間、彼の方から話しかけてきた。
私は、とりあえず周りに居た人間だと思うすべてを隠し持っていたナイフで殺して話を進めた。 彼は別段驚いた表情をしなかった。
面倒事は嫌いなので場所を変えて話しましょう、と言うと、彼は、分かりました、と承諾した。
「人間の振りを教えてやろうか」
と私が言うと、彼は初めて嬉しそうな表情を見せた。
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