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作品名:感情 作者:ひるあんどん

第4回   4
 普通、数か月もすると他人の良いところや悪いところ、癖や人柄などが見えてくるものである。しかし、神無からは何も読み取れない。感情の起伏が著しく乏しいのである。

 多少怒るような素振りを見せても、私にはどうもそれが本当に怒っているのかが判別つかなかった。どこか嘘くさいように感じる。

 彼のこの変化のなさに気が付けるのは、いつも一緒にいた私ぐらいなものだろう。周りは何も感じていないようであった。

 一度、彼にどうしていつも同じ表情でいられるのか聞いたことがある。途端、常に笑顔を絶やさなかった彼の表情がなくなった。

 「やはり、そう見えますか」

 納得しているのか、していないのか、怒っているのか、悲しんでいるのか。今の彼からは何の感情も読み取れない。

 その日から彼は姿を消した。

 なぜ彼が姿を消したのか、私はこう推測する。
 神無は、実験をしていたのだ。身近な人間を使っての実験。彼がよく言っていたことを思い出した。

 「人間の心理だけは本を読んでも、分かりませんでした」

 彼は私を使って実験をしていた。

 常に一緒にいる人間に対して、人の感情を持っている振りをして近づき、だまし続けられるかどうか。だまし続けられたら、彼は人の振りを完璧にこなせている証明になる。
 
 彼が私を選んだ理由がなんとなく分かる気がした。
 私は、とても平凡な人間で、感情もすぐに顔に出てしまう。彼は私を真似ようとしていたのであろうか。

 私は彼を探すことにした。なぜ探そうと思ったのか、使命感みたいなものを感じていたからなのだと思う。


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