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作品名:石田村のけんちゃん 作者:晴夢

第1回   物語のはじめに
僕の名前は魚住弘。中学1年生だ。香留那郡青陸町字石田という所に僕たち家族は行った。

両親と僕と妹の4人で石田村の祭りに行ったのだ。僕らは石田村の54人の大人の名前全員を知っている。そして、生まれたばかりの赤ん坊も含めて石田村の子供たち13人の名前も全員知っている。

でも、彼らは僕たちのことを知らない。だからよそ者の僕らがいきなり彼らの地域行事に参入したことに驚いていた。

僕ら家族が石田村に興味を抱いてしまったのは、一人の男の子が原因だ。その子の名前は、けんちゃんと言う。

けんちゃんは僕と同じ年らしい。けんちゃんは5つのときに両親を亡くして一人ぼっちになった。そして、ある理由でけんちゃんも両親と一緒に死んだことになっていて、お墓に名前まで一緒に彫られてしまったのだ。

そのことがわかったのは、けんちゃんと僕の家族がすっかり仲良くなった後のことだった。けんちゃんは戸籍から消された子だったので、学校にも行けなかった。

そして村の家29軒全部を1ヶ月に1回ずつ泊まり歩いている『村の子』なのだ。
けんちゃんは僕たちの家族と仲良くなったとき、石田村の人たちのことをいつも話してくれた。だから僕達は石田村のことに詳しいのだ。

でも、けんちゃんはこの石田村からいなくなった。僕達は香留郡銀海町に住んでいて石田村とは10キロくらい離れているけれど、けんちゃんは泊りがけで遊びに来てくれていた。

けんちゃんが何処に行ったかは誰にもわからない。でも僕たち家族はけんちゃんのことが忘れられず、石田村の人たちと交流してけんちゃんのことを教えてもらおうと思ったんだ。石田村の人たちは事情を知って、僕たちを温かく迎えてくれた。

そして、けんちゃんのことを色々と教えてくれた。僕達はけんちゃんのことを色々沢山知ることができた。僕たち家族は満足して、またこれからも石田村に遊びに来ることを村の人たちと約束して町に戻った。




私は坂野昌、石田村の自治会長だ。魚住さん一家が石田村の祭りに急に来たときは驚いた。

村の人にけんちゃんのことを色々聞いて行ったようだ。息子の尚樹からけんちゃんが魚住家に出入りしてたことは知っていた。

魚住家の人たちは、私たちのことをすごく詳しく知っていた。きっとそれはけんちゃんが教えたせいだと思う。また、けんちゃんが追われている身であることも知っていた。

だが、魚住家が知らないで、石田村の全員が知っていることがたった1つある。そのことはけんちゃんのためにも言わない方が良いということで、村の全員が一致した。それ以外のことは快く教えてあげても構わないと思うということも。

けんちゃんを両親と一緒に事故で死んだことにしたのには訳がある。けんちゃんの一家は悪い奴らに追われていたのだ。

石田村はけんちゃんの父親である近江敦の実家がある場所だったが、実家の両親は離婚すると敦を父方の祖母に預けて出て行ったのだ。祖母が死ぬと中学を卒業した敦は村を出た。

そして5才のけんちゃんを連れて妻の美保と一緒に戻って来たのは7年前のことだった。彼らは家族ごと悪い奴らに追われていた。その晩は酷い豪雨で私の家にけんちゃんを預けると、自分達は古い実家に泊まって翌日隠れ家を捜しに行く予定だった。

だが、その晩土砂崩れで近江の実家は潰れて二人は死んだ。私の家で預かっていたけんちゃんは追っ手に見つかると連れて行かれるので、二人と一緒に埋葬したことにして、役場にもそのように届けた。

後から追っ手のやくざ者たちが来たときには墓碑銘を見せて帰ってもらったのだ。やくざ者同士でも派閥があるらしく、そういう風にするように暗に助言してくれたのは別のやくざだった。新岡長治という親分だった。

新岡長治はその後も気にかけてくれていて、7年後に再び村を訪れた。彼は、12才になったけんちゃんをこれ以上ここに置いておくと危険だと言って、どこか遠くに連れて行ったのだ。

5才のときのけんちゃんは両親を失ってショックが大きく、回復するまで私の家で預かっていた。その後、村で相談してけんちゃんを村の子として全員で育てることにしたのだ。これから紹介するのは6才から12才までの石田村でのけんちゃんの生活の様子である。

なお、この内容はけんちゃんを家族同様に可愛がってくれていた、魚住家の人にも伝えて行く積りだ。たった一つのことを除いてはすべて……。


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