出口の手前で僕は静かにその時を待っていた。人が一人通れる正方形の形をした回廊の先で、目の前にかすかに見えるレフリーの手をずっと見ていた。前の戦いはもう終わったみたいだったから、まもなく僕の出番のはずだ。レフリーがこちらに招くような仕草をしたら、炎天下に出ていかなければならない。 レンガでできたこのひんやりした空間からそこへ飛び出すときが僕はあまり好きではなかった。このままここにずっと居れたらいいのにといつも思ってしまう。別に戦うのが嫌いなわけでも、死ぬのが怖いわけでもないのにそう思ってしまうのが不思議だった。この自分の感情を、いつも戦う前に考えてみるけれど、どうしても原因はわからなかった。 でもそれは不思議なことではないと、また別の自分が思っていることも自覚している。答えのない問題なんてそれこそ山のように高く積み上がっている。 意識を現実に戻すと、豆粒ほどしか見えなかったが、審判の手が動いた。僕はゆっくりと背中の羽を動かして、光の方へ出た。
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