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作品名:ピロと被害者の会 作者:しろ

第5回   被害者の会の男、自問自答する
将来収入はおいといて
ピロの、逮捕までの収入。これが問題だ


さて、その金はどこから出てきたんだ?
ピロの収入は他から奪い取ったもの?不正に得たもの?


大学入学枠を一人の人間から強奪して
自分のネームバリューに使って莫大な収入をえた。
ほかのタレントがするはずだった仕事を奪ってギャラを得た。
他の女がいただくべき男を奪って精神的満足を得た。
他人の彼氏の精神に入り込み、男女の快適な生活をうばって、
彼女に精神的損害を与え・・

なんだか、ピロが、まるで泥棒みたいな言い草だが・・
だが、これてほんとなのか?


たとえば
”彼氏が買った五百円の写真集一冊で、彼女に一万円の精神的損害を与えた”
こんなケースがあるとする。

これも、よく考えたら
彼氏がピロによって精神的満足を余計に得たとしたら
彼氏が彼女に金払えば済むことだろうが・・

これを無制限に認めてしまえば、
補償額は無限に広がってしまって、きりがなくなる。

ピロの補償範囲は、せいぜい
ピロがいままでかせいだかねの範囲内に限定されるべきだろう。
”ピロの補償すべき被害総額=ピロ逮捕までの総収入”だ。
ピロは、稼いだ金以上の損害を与えてはいないはず
ピロは戦争とはちがうのだ。


でも、ピロがそうならば、他はどうなんだ?
というか、ピロの逮捕前の仕事と逮捕後の仕事は、どう違うのか?
やってることは同じじゃないか?


とすると・・
”予想されるピロの生涯収入=ピロが他から奪ったと予想される被害総額”
となるわけか。
おい、俺達債権者だって、ピロの将来利益を債権で所有してるんだぞ。
じゃあ俺達も泥棒の仲間かよ!



じゃあ、結婚したり、働いている者はみんな、
収入と同額の被害を、社会に対して与えているとでもいうのか?


生きてりゃみんな地球資源を奪い取ってることになるから
地球と神様に対して弁済しましょうね・・


あーあアホくさいわ!キリストの原罪について
説教している坊主じゃあるまいし!


たとえば俺は年収3百万の妻帯者だが、
確かに俺がいなければ、他人がその職についたはずだ、
妻も他の男と結婚したはずだ

だからって、果たして
おれが年間3百万の被害を社会に与えてるっていえんのか?
男から一人の女を奪って、もしかしたら俺がいなかったら
妻と結婚したであろう男一人に、損害を与えたとでもいうのか?


ということは、社会全体の被害総額はGDPと同額か?
んな、バカな・・
おれだって、税金や年金収めて
家族のために、一生懸命働いてるってえのに。

でもこの論法からいくと
俺の行為は、社会から泥棒扱いされても仕方なくなってしまう。


ありえねえ!俺が泥棒なんかでは決してない!


ということは、ピロも泥棒なんかじゃないんだよ


てことは、
ピロは、誰にも損害なんてあたえちゃいなかったんだよ!
そして誰も、ピロに損害なんてうけちゃいなかったんだよ!



でも、なんとなくそう感じてた。

でも、これって多分、
”なんとなく感じるってだけ”の
心理的な圧迫感とかそんな類のもので、
一種の錯覚だったんだろう


学問的にいえば、社会全体の鬱憤、不平不満の総合体が、
たまたま目立っていた、ピロ一人に向けられた・・・と


不満の原因となるものは、何もピロ一人だけじゃないし、
しかも、ピロ自身だって、本当は社会に何の損害も与えちゃいない。

普通に仕事をしている市井の人間が
社会に何の損害も与えていないように・・


ああ、バカバカしい。今までなんでこんなことに
心煩わされていたんだ、俺達は・・



俺達は構わない、問題はピロだ。
俺達の勘違いのせいで
ピロにどれだけ損害を与えてしまったことか・・・


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