20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:斧がおちるとき 作者:ケシキタロウ

第1回   1
斧が落ちた。
小野が落ちた。
なぜ小野は斧を持っていたのか。
馬鹿みたいな言葉遊びのために小野は死んだのか。
それからしばらくはみんな噂話ばかりしていた。
本当は小野は斧で殺されたあとだったとか、
本当は小野は斧で儀式をしようとしていたとか、
本当は小野は斧で誰かを殺そうとしていたとか、
本当は斧なんて無かったとか。
でも、あの時小野の姿を見た人はほとんどいなかったし、
一緒に落ちていたらしい斧も警察が持って行ってしまった。
ちょうど退屈していたみんなは噂話に沸き立った。
小野はどちらかというと明るい性格だった。
友達はたくさんいたし、学校はほとんど休まなかった。
小野が死んだと聞いて教室で泣き始めた子もいた。
自殺なんてするようなやつじゃない。
みんなそう言った。
すこし経つと小野はニュースになった。
異常な自殺。
ニュースキャスターは無表情に言っていた。
現代社会の象徴。
コメンテーターは眉をしかめて言っていた。
小野の名前は出なかった。
僕の名前も出なかった。


次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 244