プロローグ
風がゴウゴウと吹きつけ、時折その塊が窓ガラスにぶつかり、ガタリ、またガタリと音を立てる。風にはちらりほらりと雪も交じっている。 俺の名前は三森直行、八溝(やみぞ)山の麓の伊王野というところで生まれた。しばらく実家を離れていたが、長男が親の面倒を見るという古い習慣に縛られ、再び家に帰ってきた。
俺は今、二階にある自分の部屋の窓から八溝の山波を眺めている。
俺は、ずっと昔、ジョギングの最中に立ち寄った米沢の空き地で、いつの間にか眠りにつき、不思議な夢を見た。内容は覚えていない。以来その夢は、なぜか自分の脳裏にまとわり付いていて離れなかった。今日のような、風の強い日に少しずつ思い出す。俺は、夢の内容が明らかになるたびにノートに記録していた。とても長い時間がかかったが、とうとう今日完結した。 夢をフラッシュバックのように思い出すたびに、自分の心に何かズシリと重いものがのしかかってきた。俺はこの夢が、本当に夢なのか、それとも実際にあった事なのだろうか分からなくなってきた。夢が単なる夢でなく、夢が何かを訴えているような気がした。 もしかしたらあそこで何かが起こっていたのかもしれない。昔、その空き地で何かあったのか知りたくなった。
…そうだ、米沢には、村の長老のヒサ爺が住んでいる…彼なら何か知っているかもしれない…彼の所へ行けば何か分かるかもしれない…
早速、長老に電話を掛け、簡単に夢の内容を伝えた。すると、遊びに来いとのこと。電話をきり、書き終えたノートを持ち、自転車で家を出た。
…それにしても、爺さん、ひどく興味を持ってくれたなあ。こちらから申し出をする前に、詳しく夢の内容を聞きたいと、向こうから言くるなんて…
俺は、自転車を飛ばした。
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