口に溜まっていた唾をごくん、と飲みこみカプセルを渡された。凪十は考えていた。
(これさえあれば俺は能力者になれるかもしれない、それにこれがあれば今の現状も打開できる、可能性を、自分を信じるしかない。)
覚悟を決めた凪十は目をつぶってカプセルを飲みこんだ。
「そこにいたか女!こんなところに隠れていたか、かっかっか」
煙から姿を現した犯人は、やせ衰えていて眼鏡をかけていた。左腕は熊にでもひっかかれたような二つの傷が刻まれていた。右手にはなにか小さな玉をいくつか持っていた。そして距離は3メートルと狭まり男は右手を差し出し構えた。
「死にたくなければ、お前が所持しているアレを渡してもらおうか、かっかっ」
「それならついさっきこちらの男にあげてしまったわ。もう所持してすらいないけどね。」
煙の中から拳が飛んできて男は数メートルふっとんだ。男は怒鳴った、少女に。
「おい!なにが強制能力発動のカプセルだよ!なにも起きないじゃないか!!」
「だから言ったでしょ、未完成だって。死なないだけマシでしょうが。」
「なんっ・・・」
どうやら凪十はとことん能力とは無縁のようだ。カプセルですら能力が発動しなかったので、相当なショックを受けて放心していた。 しかしそんな状態を続けることは男は許してはくれなかった。
「かっかっか、飲んだら飲んだでそいつを殺して解剖して分析すればいいと踏んでいたが、とんだ失敗作だなお前は。才能なさすぎだろ。」
ぷつんっと頭の糸が切れた凪十は我を忘れてバカ正直に真正面から男に殴りかかった。男は身のこなしで拳をよけて右わき腹を拳で突いた。
「がはっ・・・くそが・・・」
「かっかっか、冥土の土産に特別に教えてやるよ俺の能力。」
男は右ポケットからビー玉のような小さい玉を取り出し、笑みをこぼしながら非力な二人の前で堂々と能力を説明した。
「俺の能力は、ビー玉を爆弾に変える力がある。ビー玉のなかにあるわずかな気泡を蒸発させて一気に破裂させ威力を上げるのさ、かっかっか」
「なるほど、てことは時限式は不可能で、お前がそれを爆発させるまでロスタイムがあるな。その間に奪っちまえばいいことッ!!!」
凪十は男にとびかかりビー玉を奪おうとした。しかし、男はビー玉を狙ってくる凪十の顔に拳を一発いれた。
「馬鹿が、このビー玉はお前らにとってはただの玩具、ならそっちに意識がある内に俺がお前に拳をいれればいいだけ。能力すらフェイントに使えるんだよ、無能力者には頭に入ってなかったか、かっかっか」
「だまれえええええ」
「かっかっか。死ね。」
研究所がとてつもない爆発を起こし黒い煙と激しく燃え盛る炎に包まれた。
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