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作品名:TYPE-勇者。 作者:葟

第7回   覚醒。
外に出ても、皆、無我夢中に仕事をこなしているだけだった。
螺旋階段の上を見ると、博士がいた。

「博士!」
「ん…あぁ、君か」

やる事も特にないので、博士について行く事にした。
丁度、博士も俺に用があったらしく、そのまま真っ白な部屋に連れて行かれた。
何もない、真っ白な空間。
距離さえも、並行感覚さえも狂いそうな空間だった。

「スーツを着用していない時の運動神経をテストするよ」
「はい」

博士は部屋から出ていき、俺はポツンと取り残された。
突然、床に《デザートイーグル》が現れた。

「その銃を拾いたまえ」
「わかりました」

やはり、普通の銃より重い。
腕がプルプル震える。

「射撃訓練だ、弾数は一発、敵の数は10体、君ならどうする?」

データコードの様な物が周りを取り巻き、バーチャルで組み立てられた感染者が現れた。
俺は、弾数一発で敵10体を倒す方法を考えていた。
浅い考えが思いついたが、これ以外に思いつきがないため実践した。

「こっちだ!!」

真っ白な空間を走り回り、感染者共を誘導する。
足が速い為、なかなか厄介だった。
でも、これならいける。
全力で走って、適度な距離を保ちつつ後ろを確認すれば絶対できる。

「(ここだ!)」

後ろを振り向き、銃を構える。
俺と、感染者の位置関係は、《一直線上》だった。

      ドォンッ

辺り一帯に銃声が響き、普通のハンドガンでは鳴らない程の音を立てた。
感染者を全て撃ち抜き、そのバーチャルは再びデータコードの様になり、消えた。

「…全て倒すとは…、射撃能力も良し、判断力も中々、行動力は文句のつけようが無いな」
「ふぅ〜…、ありがとうございます」
「…だが、今の判断は実戦では止めろ」
「なんでですか?」
「実戦では危険な上に、仲間を危険に曝すだけだ」

その後、色々と怒られたり褒められたりしたが、殆ど内容は覚えていない。
それから二週間位経っただろうか。
やっと、最初の任務が与えられた。
余談だが、普通、立派な兵士を一人育てるのならば三年以上はかかるとは言われている。
だが、スーツの機能がそれを補助しているのか、一人でグリーンベレー5人分の力が出せた。
グリーンベレーは一人につき、陸軍の歩兵200人程度の力。
つまり、俺達は一人で歩兵1000人分の力を出すことができる。
そして俺達は《オスプレイ》に乗り込んだ。

カチャン    カツン   カツン

金属の擦れる音、そして周りには名前も顔も声さえも分からない仲間達。
乗り込んだ順番から奥に座る。
席にはパックに入っている《フライングスーツ》があり、簡単にスーツに取りつけられる物だった。
それをパック内から取り出し、装着する。

「ブリーフィングを始める」

同じスーツをきた隊長格の人物が話し始めた。
内容は、敵地上空で降下し着地次第各個撃破で、マスクのバイザーに表示される《VOLDVIRUS係数》が高い場所を目指すという作戦だ。
単位は《VOLD》、10VOLDが最高である。

「以上だ」

無言で壁に収納されている銃をとる。
勿論、自分専用武器もある。
俺が手にした武器は、《M82A1》だった。
フルオート改造、軽機関銃用のボックスマガジン仕様の、唯の人間にはとても使いこなせない代物だ。
それと、チェーンブレードも。

「準備は整ったな?……行くぞ!!」

オスプレイの下降口が開き、次々と飛び降りていった。
俺も武器を背中に背負い、勢いよく飛び降りた。
風の抵抗が思ったよりも激しく、夜のせいか空気が冷たい。
降下場所は、アフリカ大陸のサハラ砂漠。
衛星では、そこに《クイーン》がいる事が分かった。

ヒュゥゥン…

風を切りながら、山の間や林の中を突き抜けて行く。
そして数kmも飛んでいると、砂漠地帯が見えてきた。
着地するため、フライングスーツを脱着する。
そのまま勢い良く地面に突っ込み、体を翻して両手両足で着地する。
スーツの機能が働き、体にくる反動を殆ど消してくれた。
スーツ未着用なら、全身の骨が砕ける程の反動だ。

「【一号、着地しました】」
「【了解、これから《第一次VOLDVIRUS殲滅作戦》を始めてくれ、見方も後々到着するだろう】」
「【了解】」

バイザーで情報を確かめると、サハラ砂漠の気温が氷点下まで下がっていた。
砂漠は昼と夜との温度差が激しいと聞いたが、ここまでとは思っていなかった。
スーツの体温調節機能は、こんな役目があったのかとしみじみ思った。
VOLD係数は至って低く、3VOLD程だ。
だが、3VOLDと言えど感染者がいる事には間違いない。
こんな砂漠に感染者がいるのかと疑問に思ったが、恐らくは《クイーン》が自分の身を守る為に連れてきた、もしくはあのデカい図体から生み出したんじゃないかというありもしない想像が湧いてきた。
しかし、そんな想像をしつつも歩いていると、バイザーのVOLD係数はドンドン上がっていく。
不安が自分の勇気を追い越しても、俺は歩くのを止めなかった。


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