外には数十台の救急車。 対感染予防スーツやガスマスクをつけた自衛隊の方々や警察、救急隊員の方々が山の様にいた。 倒れた奴等の周りには《KEEP OUT》と書かれた黄色いテープでバリゲードが作られ、さらにビニール質の物で覆われていた。 その中には対感染予防スーツをきた人が二人いて、自衛隊の方はテロかもしれないといって周りの野次馬を外に追いやった。 勿論、俺は第一発見者の為、その場(その場といっても、警察の奴等に囲まれて安全と言える)で事情聴取が行われていた。
「…だから、いきなり目の前で倒れたんだって!」 「本当か?誰かに殴られていたとかは〜…」 「ないって!!」
聞き分けの悪く、何度も同じ質問を繰り返してくる。 ウンザリしていると、近くで大きな物音と悲鳴が聞こえた。
「あ゛ぁぁぁ!!!」
激痛に苦しみ悶える声といっても過言ではなかった。 最初に倒れていた奴が起き上がり、対感染予防スーツを破り露出された皮膚の部分に喰らいついた。 噛まれた奴の目はドンドン黄色くなり、今喰らいついた奴と同じく目が完全に琥珀色になっていた。
「う゛ゥ…」 「お、おい、大丈夫か?」
と、対感染予防スーツをきたもう一人が話をかけた。 しかし、そんな気遣いも空しく先程喰らいつかれた通りの手順で噛まれ、同様の症状がでていた。 警察や自衛隊は俺の背中を押しつつ、外に出た、が、
「ヴァぁぁルゥゥウ!!!」
外にも奴らがいた。 しかも、中にいた奴よりも多く。 そいつらは一斉に俺達を目掛けて走ってきた。 しかし、無能な自衛隊や警察は銃を撃たない。 発砲許可が無いと撃てないらしい。
「兄ちゃん!兄ちゃんドコ!!?」 「焦んな!ここだ!」
妹の手をしっかり握り、引き寄せる。 既に平常な警察と自衛隊の何人かは症状がでていた。 俺は手を離さず、走った。
「菖蒲は自衛隊のトラックに乗せて貰え!」 「わかったよ!」
自衛隊の方も理解したのか、快くトラックに妹を乗せ走り去った。 取り残されたのは、俺と平常な人が何人か、それと目が琥珀色の奴等大勢。 俺は脱出する方法を探していた。 だが、後ろはゲーセン、前は道路に琥珀色の目が大勢。 上下左右逃げるところがなかった。これが四面楚歌ってヤツかと思うと、正面からタンクローリーが突っ込んできた。 タンクローリーはケツを振りつつも交差点を曲がろうとした。 当然、そのデカい車は琥珀の目をした奴をひき殺しながら曲がった。
「(チャンスだ!)」
俺は走った。 俺の後ろに奴等が追いかけてきている事はわかっているが、このチャンスを無駄には出来ない。 交差点で止まるギリギリまで速度を落としたタンクローリーの後ろ側についている梯子に飛び乗った。
「チッ、邪魔なんだよ!!」
奴等に足を掴まれズボンの裾を破こうとしていたが、掴まれている足を無茶苦茶に振り回した為何とか逃げ切れた。 恐らく、皮膚も触られていないし噛まれてもいないからセーフだろうと思った。 そして減速しつつ交差点を曲がったタンクローリーは、また勢いよく速度を上げた。 アクセルを壊れるくらい強く踏んでるんじゃないか、というほどの速さで振り落とされそうになったが、梯子の裏に回り、梯子で風圧を受け止めてもらう体勢にしたからその心配は要らなかった。
「(どこに行くのか…ハァ…)」
高速道路を走っていると、突然止まった。 不思議に思い梯子から降りて運転手を見に行くと、顔をうつ伏せにしハンドルを握っていた。 その運転手は突然顔を上げると同時に、何か叫んだ。 目も、琥珀色になっていた。
「クソッ!コイツもかよ!!」
嘆いていると、屋外放送をする為の機械から音が発せられた。
「【この言葉がわかる人は自衛隊兵舎前に来てください!目が琥珀色の感染者には触らない、見つかったら逃げて下さい!!】」
聞き慣れた、放送のお姉さんの声。 しかし、緊急事態のせいでいつもの穏やかな声ではなかった。 幸いにも自衛隊兵舎は高速道路を下りた先。 しかし、高速道路には無数の車が止まっており、どれも無人。 感染者は何人かいた。 俺は近くにあった《錆びた鉄パイプ》を拾い上げ、いつでも殴れる様に構えた。
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