窓に映る冬景色の中、中学二年生の俺は登校時間10分前にテレビを見ていた。 朝のニュース、め○○しテレビなどが放送されている時間帯だ。 そこに一つ、気になるニュースがあった。
「【次のニュースです、世界的にインフルエンザが大流行中です。お手洗い、マスクなどの予防を―】」
プツンッ
突然、テレビの画面が暗くなった。 何事だろうと周りを見渡すと、玄関付近で仁王立ちの妹がリモコンを持っていた。 恐らく妹が消したのだろうと、理由を聞いてみた。
「何で消すんだよ、まだ時間あるだろ」 「何言ってるの!新学期の初登校だから早くいかないとダメでしょ!」 「ダメって…、誰が決めたんだよ」 「私よ!!」
妹は親父と似て、頑固なところがある。 こうなったらテコでも動かないだろう。 渋々立ち上がり、学校指定のカバンを持ち玄関まで歩いて行った。 コートを着てマフラーを巻き、妹と一緒に外に出る。 思ったより外は寒く、太陽の光は雪に反射され、見慣れた景色はそのせいで美しくなっていた。 学校までは5分ちょっと。家が学校に近い為ラクだ。 校門近くには生徒が沢山いて、その生徒どれもが咳き込んだりマスクをつけていた。 学校の中では先生方まで咳き込んでいて、教室に着き席に座っても教室の後ろの方の座席が見える程、欠席をしている人数が多かった。 だが、俺はさっさと自分の名前が書かれたカードが貼ってある席を見つけ、席に座ろうとした。
「(あったあった)」
神咲 向日葵 (かんざき ひなた) 学年777 (がくねんなんばー らっきーせぶん)
勘の鈍い俺は、ここで異変に気づいた。 俺の席は最前列なのだが、俺の席から後ろは誰も座っていなく欠席になっていた。
「(なんなんだ?おかしいぞ…?)」
不安に思い、隣の席の奴に訳を聞いた。
「テレビで見たでしょ?世界的にインフルエンザが流行ってるって…」 「あ〜、ここまでとは思わなかったんだ」 「アンタはいいわね、馬鹿は風邪をひかない、もとい、馬鹿はインフルエンザにかからない、ってね」
馬鹿にされた気がするが、そんな事より、こんなに多くの人がインフルエンザにかかるか?、と疑問に思った。 しかも、何の前触れもなく、まるで同時多発テロの様に狙い澄まされたかの様に。 ただ、俺は隣の奴に言われた通り馬鹿なので考えるだけで頭が痛くなってきた。 …そして友達とのくだらない話と先生方の授業で時は流れた。
「暇だな」 「そうだね、兄ちゃん」
家には帰らず、近くのゲーセンで屯していた。 ピンボールの台で遊んでいた。 目を離していた時、ピンボールの弾がボーナスゲートを潜った。
「…お、おっしゃ!ボーナス入った!」 「お〜、やったね!」
パチンッ!
軽くハイタッチをして、そのままゲームを続行。
「ゲホッ、ゲホッ…」 「ん?どうした、菖蒲」
妹の名前は菖蒲(あやめ)。 軽く咳をしていたから、彼女の方へ目をやった。 妹はなんでもないよ、という風に手を振った。
「そっか、それならいいけど…」
言葉が終わる前に、呆然とする出来事が起きた。 妹の後ろを歩いていた大人が、血を吹き出し倒れた。 目は変色し薄い黄色になりかけている。
「どうしたの?」 「先にゲーセン出てろ、それと出るまで目ェ伏せてな」 「う、うん」
俺は係員を呼び出した。 騒ぎはアッと言う間に広がり、人だかりができた。 救急車も間もなくついたが、救急隊員が患者の皮膚に触れた途端、その場に勢いよく倒れた。 その救急隊員の目もまた、薄い黄色になりかけていた。
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