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作品名:カレに代わってピッチャー元カノ 作者:雲翼

第7回   二つの覚醒
「どおおおりゃあああ!」
「ナイスサード」
――フッ……また捕っちまったぜ――
八郎は今日三度目のダイビングキャッチを決め、ニヒルに微笑むのだった。
――それにしても世間ってな冷てえもんだぜ――
八郎はスタンドを見回し苦笑いする。
一回戦での仁の醜態に皆呆れたのか、今日はあの日の三分の一も観客は入っていなかった。
だが。
「ノッてきたノッてきた。ノッきたぜ」
思ったとおり今日の彼は忙しい。
調子のいい時の仁ならば三振の山を築くはずだが、今日はよく打たれる……というより打たせている。
やはりあの投げ込みの疲れが出ているのだろう。
――当たり前えだぜ、あんなに無理すりゃ――
だが、八郎にとっては楽しいことこの上ない。
やっぱ野球はこうでなくちゃ。
――相変わらずふざけて女言葉なんか使いやがって、やつの人間性は今でも許せんが、野球に関しては、話は別だ。試合は手を抜かねえぜ――
「チェスッットオオオ!」
見ろ、この華麗なグラブさばき。
――とにかく人間性は許せんが――
一方牛若は。
「ふんっ!」
「ナイスショート」
――フッ……笑止!ファインプレーなど素人好みのけれんですよ――
体全体がグローブなどとは悠長な話だ。
ショートストップというポジションはファンブルすることすら許されない。
ちょっともたついただけで内野安打になってしまうのですよ。
見よ、この職人芸。
――打球の方角を瞬時に、そして正確に見極め、しっかりと体の真ん中で確実にグローブに収め、一塁へ……しかーも。新品のボールは遠投になるほど変化するから、それも計算に入れて。遠投する――
「ふんっ!」
――基本の積み重ねこそ、美しいんです。まあ、うちの三遊間が鉄壁の鬼門であることを教えてあげましょう――
そしてエンリケは。
――試合したかったんだよなー目蒲学園。ここのチアガールは県内一だぜ、ふふふ……ってまた内野ゴロ打たれやがったよ、めんどくせえな、頼むからチアガールに集中させてくれっての、たまには二十七人連続三振とかできねえのかよまったく。ぶつぶつ……――
そもそもブラジル系の彼がなぜサッカーではなく野球を選んだか。
それは、サッカー場では広すぎてチアガールがよく見えないから、という理由に他ならなかった。
しかも距離が遠い上にサッカーというスポーツは忙しすぎて、じっくり鑑賞しているヒマがないのだ。
それに引き換え野球の、特にファーストのポジションは彼にとって特等席なのである。
距離が近い上に下から見上げられるという余禄までついているのだ。
――これだからファーストのポジションは誰にも渡せねえんだよ――
一応遠藤も。
――これじゃあ俺の出番はないかな、この試合――
俺が君の近くに行けるのは、試合が負けそうな時だけ。
勝てそうな試合は、いつもこうして君を遠くから見ているだけ。
――大鉄――
でも、負けたら、君とはもう一緒に野球ができないんだね。
最近麗華も君のことを完全に見直したみたいだ。
もしかして、気があるのかな。
俺は遠くから二人を見守っているしかないのかな……。
その大鉄は。
「ふふふ……」
マスクの下で頬が緩みっぱなしだった。
――とんだ取り越し苦労だったぜ――
いつものように三振がとれない仁を誰も非難することなく、皆自分のプレーに集中している。
しかもこいつら確実にレベルが上がってる。
それも全員がかなりのレベルだ。
――これもやつのお陰というのは言い過ぎかもしれんが……――
皆、仁というモンスターに呑み込まれまいとあがき続けたお陰で、一人ひとりが強くなっている。
そもそも、弱者同士の馴れ合いやなぐさめ合いをチームワークだなどと称するのは、弱いチームの欺瞞(ぎまん)でしかないのだ。
強い「個」がお互いにしのぎを削り合うからこそ、チームはより強くなるのである。
沢谷香高校ナインは仁という内なる敵と戦い続けた結果、最早まごうかたなき強い「個」の集団……「戦闘集団」へと変貌を遂げていた。
――強くなったもんだ――
まさかこんな逆説的な切磋琢磨の形があったとは。
大鉄は笑いをこらえながら、感嘆のため息を吐き続けていた。
 嬉しい誤算はそれだけではないのだ。
 今日の仁である。
 ――これ、カットボールじゃねえか?――
 大鉄は思わず唸るしかない。
 カットボールとは、「曲がるストレート」である。
 ストレートが甘いコースにきたと見せかけ、バットに当る直前にわずかに曲がる。
空振りよりも打ち損じを誘う変化球である。
 今日の仁は、このボールで三振ではなく凡打の山を築いていた。
 ――こいつ、こんなに器用だったか?――
 大鉄が驚くのは今日の仁が、血豆が潰れて滑る指を逆に利用していることだった。
 先にも書いたが硬式のボールというのは指先の微妙な加減で意外な変化をする。
 指先が濡れていれば尚更であり、そのため、ルールでは故意に指先を濡らす――例えば指を舐めたりなど――ことを禁じているが、出血の場合は不可抗力といえるのである。
 ――アクシデントを逆に武器にしちまうとはな――
 本物の変化球投手というのは、雨の試合こそ真骨頂を見せるという。
 雨に濡れてボールが滑るのを利用して、普段より余計にボールをグイグイと変化させてしまうのである。
 だが、そのためにはそれなりのコントロールと冷静さが必要で、並みの投手であればその変化に自分がついて行けず、投球が乱れ、そのまま崩れてしまうものなのだ。
 現に、この春の大会での仁は、雨で完全に自分を見失い大崩れしているのだ。
 ――こいつも大幅に進歩してるってことか……それにしても――
 このチームは強い。
 鉄壁の守りと、つながる打線、そしてなにより精神的に見違えるほど成長した大エースの存在。
 大鉄は感動のあまり叫びだしたい自分を抑えるのに精一杯だった。
 一生こいつらと野球していたいくらいだ、と本気で思うほどだった。
 最後に麗華は。
 ――うふ、ちょっとずるいみたいだけど、いいよね――
 麗華は血のにじんだ人差し指を見ながらニヤリと笑った。
 先週の一回戦で初球がデッドボールになった理由を遠藤から聞いて、もしかしたらと思っていたらやはり期待が的中した。
 ストレートを投げると、ボールが勝手に曲がってくれるのだ。
 それもほぼ速球の速さで。
 だが、麗華がそれを武器として使いこなせるには、彼女が元々持っていた幾つかの能力が作用していた。
 一つには、麗華は指先が器用なのだ。
 生まれついての器用さにくわえ、中学時代の手芸部と高校でのリラックマクラブで鍛え抜かれた器用さは、野球部員の男子高校生などの比ではなかったのだ。
 そしてもう一つ、麗華には武器があった。
 それは並外れた辛抱強さである。
 ひたすら仁を想い続けて耐えてきた我慢強さ。
 くる日もくる日もクマのぬいぐるみを作り続け、手芸と裁縫で鍛え抜かれた根気よさ。
女性特有の粘り強さといってもいいが、麗華の場合その精神力が並みではないのだ。
 ちょっとやそっとの制球の乱れで麗華の集中力が途切れることは、まずありえないのである。
 つまり、これがなにを意味するか。
 ずば抜けて器用な指先と不屈の精神を持った麗華の魂が、百四十七キロの速球を投げる仁の肉体に宿ったらどうなるか。
それは最早、普通の高校生が打ち崩せるなどというレベルではない。
――か、勝った――
「やった、勝った……勝ったのよ、あたしが……やったあああ」
麗華はこぼれるような笑顔で両手を挙げた。
「ナイスピッチャー」
大鉄をはじめナインがいっせいにマウンドに駆け寄り、麗華をねぎらった。
これも今までの沢高には見られなかった光景である。
「よくやったな」
と、麗華とハイタッチをしながら大鉄が笑う。
「とんでもない、みんながよく守ってくれたからよ、何度も危ない所を助けてもらったわ」
と、麗華は笑顔で答える。
――こいつ、こんなにいいやつだったっけ?――
八郎は麗華とハイタッチしながら首をかしげた。
試合は八対三。
麗華の成績は、奪三振六、被安打七、与四死球三――三失点のうち二点は、エンリケのよそ見によるエラー。
傍目には、ほとんど話題性のない平凡な試合である。
 だが、一流投手としての条件を全て兼ね備えた「怪物」が、この予選の、誰も見向きもしないような凡戦で、非常な難産をチーム全員の助けを借りながら――一人足を引っぱる者もいたが――人知れずひっそりと産声をあげたことは、観客をはじめ誰一人、麗華自身さえもこの時には気づいていなかったのである。

 「跳べ……」
 鳥羽の言葉には感情らしい抑揚がまるでこもっていない。
 パソコンの読み上げ音声のような口調でそれだけ言うと、さっさとその場から離れてしまうのだった。
その顔も、能面のように無表情である。
 「ごっつあんです」
 鳥羽が離れるのを合図のように、二年生たちは一斉にジャンピングスクワットをはじめた。
 「おい鳥羽」
 鳥羽の行く手を主将の七篠が塞いで、その顔を見上げた。
 「もう、いい加減にしてやれよ、大会中なんだぞ」
 「だめだ」
 鳥羽は七篠の目をまっすぐ見返すが、その目にも言葉にも気持ちはこもっておらず、犬の糞でもよけるようにくるりと七篠を回りこんで歩き出そうとした。
 「おい鳥羽」
 七篠は鳥羽の腕をつかんで引き止めようとする。
 「俺の右腕に触んじゃねえ」
 鳥羽は鬼のような形相で、七篠の手を払いのけてにらんだ。
 「俺はあいつらと賭けをしてるんだよ、二年のスタメン、一人の凡打一回につき百回跳べってな……」
 三日月山高校ではスタメンに二年生が二人いた、つまり二人が四打数ノーヒットならば二年生は全員八百回跳ぶことになる。
 だが昨日の試合で二年生のスタメンは二人のうちの片方が一本だけヒットを打ち、また、一応二人とも一本ずつ送りバントを決めたので、今日は五百回で許されていた。
 鬼の鳥羽も犠打の分は許してやるらしい。
 「参考までに教えておくが、エラーは一つにつき五百回だ」
 鳥羽はたっぷりと皮肉を込めて、仏頂面でそう言った。
 七篠は返す言葉がない。
 昨日の試合でエラーをしたのは三年生だったのだ。
 「気持ちは解るが、味方の体力を削るようなまねはよせよ」
 「気持ちが解る……だあ?」
 鳥羽は鼻で嗤ってみせた。
「味方だってんなら三年も跳べよ。俺は失点一点につき千回跳ぶ約束してるぜ」
七篠は実直そうな眉を寄せて強く目を閉じ、鳥羽の言葉を呑み込むように何度も小さくうなずいてから、
「味方だよ」
と言った。
「俺は味方だよ……俺だけじゃない。ここにいる全員がお前の味方なんだよ。でも、打てないものは打てないんだよ、三振やエラーをしたくて試合に出てるやつなんて一人もいないよ。一生懸命やった結果なんだからしょうがないだろ」
「タマは打ったぜ」
鳥羽が言うと、七篠は再び言葉に詰まった。
「なんで打てたんだろうねー、今まで一度もフリーバッティングに混ぜてもらってないタマちゃんが?」
鳥羽は血走った目を見開いてそう言うと、七篠の返事を待たずに歩き出した。
――ほんと、なんで打てたんだ……いや、なんであんなスイングができたんだ――
昨日の試合。
「どうせ延長になるなら、こいつにも打たせてやってください」
自分の次の打者に玉川を代打に送る約束を監督にさせて、鳥羽は打席に向かったのである。
五番打者の代打である。
実のところ鳥羽本人も、やけくそだった。
まさか玉川が打てるとも思っておらず、また、監督がいくらなんでもそこまで鳥羽の意見を呑んでくれるとも思っていなかったのだ。
だがどういうわけか監督は了承し、そして奇跡的に玉川は打った。
いや、鳥羽には奇跡には見えなかった。
玉川のスイングは、当然のように打つべくして打った一振りだったのだ。
鳥羽は玉川の姿を目で探した。
まさか、今日も洗濯しているわけではあるまい。
フリーバッティングのゲージの中にいる玉川を見つけ、鳥羽は歯軋りをするのだった。
――いまさら――
玉川は今日、はじめてそこで打つことを許されたのだった。
三年間野球部に在籍していて、今日がはじめてである。
昨日の試合のご褒美とでも言いたいのか。
それが鳥羽の神経を余計に逆なでするのだった。
――一生懸命だあ?笑わせるぜ、お前らの中の一人でもあいつくらいバット振ったやつがいたかよ――
玉川はこの三年間、ほとんど毎日素振りをしていた。
他の部員が帰った後、全ての雑用を終えてから、一人グラウンドの隅で。
鳥羽が聞いた限りでは毎日二千回以上振っていたらしい。
鳥羽もそれに気づいたのは三年になってからだった。
それは偶然だった。
監督に見つからぬよう、ベンチの陰に隠しておいた携帯電話をそのまま忘れてしまい、探しに戻ったところ、真っ暗なグラウンドの端で玉川が一心不乱にバットを振っていたのである。
鳥羽は呆れながらも、翌日から日の出ている間くらいはつきあい、トスを上げてやったり、時には――本当に気が向いた時だけだが――バッティング投手をしてやったりしてきたのである。
だが、玉川は一向に上達する気配すらなかった。
「おい、俺と代われ」
鳥羽は玉川に投げているピッチャーと交代した。
先ほどから十球ほど玉川のバッティングを見ていたが、ジャストミートが一つもないため、じれったくなったのだ。
「真ん中投げるから、ちゃんと打てよ」
玉川は左打ちである。
彼の父親は野球が好きで、高校までレギュラーで活躍するほどだったらしい。
その父親が、玉川が子供のころに期待を込めてわざわざ左打ちを教えていたのは鳥羽もよく見ていた。
だが、はじめのころこそ熱心に指導していた父親も、一年二年とたち、まるで上達しない玉川に見切りをつけて、五年生になるころには相手をしてくれなくなった。
才能のかけらもない玉川の「左打ち」は、子供のころにはよく同級生たちにからかわれ、鳥羽はその全てを拳骨(げんこつ)で沈黙させたのだが、実は当の鳥羽がそれを最も面白がっているくらいだったのだ。
そしてそれは、中学時代には無性な腹立たしさに変わり、高校生になってからは痛々しく憐れにさえ思えているのだった。
金属バットが軋むような音を立て、まるでバントのようなゴロが内野に転がった。
――スイングの速さだけなら足利よりすげえのにな――
鳥羽は苦笑いする。
玉川は、身を削るほど繰り返した素振りの甲斐があって、スイングのスピードだけは高校生離れしていた。
「なんだよタマ、昨日の振りと全然違うじゃねえか」
鳥羽は二塁から見ていたのでよく分かる。
――昨日はもっとこう、バットが生き物みてえに……――
見ていた鳥羽も半信半疑である。
今でも信じられないが、ボールの方がバットに吸い付いて行くようなバッティング……それはプロでも一流のバッターのスイングだった。
「そんなこと言われたって、俺だって全然覚えてないんだよ」
玉川はそう言ってからも、ど真ん中のゆるいボールを凡打し続けた。
三球。四球。五球……。空振りこそないが全てひどいドンヅマリだった。
――このやろう、もたもたしやがって――
鳥羽はだんだんイライラしてきた。
元々打てないならばともかく、現に昨日はできたではないか。
「昨日はできたじゃねえか、なんで一日たったらできなくなってんだよ?」
鳥羽は腹立ちまぎれにわざと玉川の太ももを目がけて、少し強めに投げてやった。
鳥羽としては加減するつもりだったが、ボールが手から離れる瞬間、彼の気性が一瞬出てしまい、それは全力投球に近くなってしまうのだった。
――やばい強すぎるか?でもそこなら怪我もしねえだろ――
「うわっ」
玉川は思わず悲鳴をあげたが、同時に、心地よい快音が糸を引いて、打球は美しいライナーを描き金網に当った。
角度からいえばファールだったが、玉川は体をゴムのようにぐにゃりと捻りながら自分の体に向かってくる鳥羽の速球を打ってしまったのだ。
「なにすんだよシゲちゃん」
玉川は泣きそうな顔で鳥羽を見る。
にらむのではなく哀願するような目である。
「それだよ」
――解った、そういうことだったのか……――
鳥羽は満足そうに一人でうなずきながら投球を止め、その場を去ってしまうのだった。

県立国分寺球場では、今大会四度目の沢谷香高校校歌が流れていた。
地方テレビ局の放送室では解説者が、沢高ナインを絶賛している。
「藤村投手については言わずもがなですが、とにかくこのチームは攻・走・守のバランスが素晴らしいですね、私は春の大会もこのチームの試合を見ていますが、そのころと比べて、藤村投手をはじめメンバー全員が見違えるほど成長しています。例えば一回戦では藤村投手の乱調で非常に苦戦していましたが、春までのこのチームだったら、もしかしたらあのまま押し切られてしまったかもしれません」
「藤村投手もそこから尻上がりに調子を取り戻してきたようですが……」
と、アナウンサーが言葉をつなぐ。
「なんと、二試合連続ノーヒットノーランです。明後日の準決勝では、これまた三試合連続ノーヒットノーランの記録を引っさげて勝ち上がってきました鳥羽投手擁する三日月山高校と対戦するわけですが」
「非常に楽しみな投手戦が期待できますね」
麗華はチームメイトに揉みくちゃにされながら、本人が一番驚いた顔をしていた。
「あれ?今日もヒット打たれなかったんだっけ」
「てんめえ、とぼけくさって、このやろう」
八郎が満面の笑顔で麗華の肩を叩く。
「お前えがみんな三振させちまうから、こちとらヒマでしょうがねえぜ」
「だって、あたしだっていっぱいいっぱいなんだもん、ごめんなちゃーい」
「けっこう余裕あるじゃねえか、このやろ、このやろ」
「痛い痛い、あははは痛いってば。キャッキャッ……」
「すでにマブダチかよ、こいつら、いつの間に?ハチローのやつ、なんちゅうタンサイボー……」
牛若が目を丸くしながら呆れる。
麗華は三回戦と、この準々決勝で、合計三十七の三振を奪っていた。
試合の結果は。
三回戦  六対ゼロ。
準々決勝 五対ゼロ。
最早並みの高校生では、麗華と沢高ナインの勢いを止めることはできなかった。
しかも三回戦の勝利者インタビューで麗華が、
「生きてるって、本当に素晴らしいことなんだと思いました……」
と、思わず漏らした本音が、言葉の真意はともかく、その初々しさと爽やかさから大勢の人々の感動を呼び、麗華はすでに、単なる高校野球県予選という枠をはるかに超えた人気者になってしまったのである。


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