ナノカも言った。 「YES教に入信しなさい。必ず、魂が救われますよ」 白髪の老人は言った。 「そうです。YES教に入るべきです」 背広を着た男性が言った。 そして、マイクとナノカは、YES教への入信に誘われていた。 少し辟易として、バスは、「ドラマチック・タウン」へと入っていった。 マイクは、外から「ドラマチック・タウン」見ていた。 どうも、郊外に在る、ショッピング・モールらしくて、周りは、見渡す限り 田園地帯だった。そこに、「ドラマチック・タウン」の巨大な建造物が在っ た。外には広大な駐車場があり、多くの車が屋外に停まっていた。 だが不思議なことに、駐車場に買い物客の姿がなかった。普通だったらショ ッピング・カートを持ったりしている買い物客が居るはずだった。それに、駐 車場で車が動いていなかった。 「イノール先生とフミナは「オサイフ・マート」の八階の店長室に居るの か」 マイクは、ゾンビから渡された、タブレット型の端末を見ながら言った。 「マイクさん。私が、電動車椅子のスピードが出るように改造しましょう か」 ナノカは言った。 「そんなことが出来るのか」 マイクは不思議に思って言った。 「はい。簡単な機械なら、直ぐに、修理や改造は出来ます。わたしはマッサ イ・ニュートロンの娘ですから」 ナノカは言った。そして青いコートの内側から、ドライバーと,ハンダごて を取り出した。 「確かに、魔族が待ち構えている、「オサイフ・マート」に入るには、この 電動車椅子のスピードでは危険が大きすぎるか」 マイクは言った。 「直ぐに改造できます」 ナノカは手早く、電動車椅子の機械部分のカバーを取り外して、改造し始め た。そして、フミナが持っているイッチ・フォンとは違う、銀色のスマート・ フォンを取り出して、電動車椅子のコンピュータに繋いでいた。 料理が好きなだけでなくて、機械にも詳しいのか。とマイクは、性格が悪い だけのフミナとの差を感じていた。 いい女って、以外と居る物なんだな、と、しみじみ思っていた。 二十分ぐらいでナノカが行った電動車椅子の改造は終わった。 「はい、出来ました」 ナノカは額に浮き出た汗を水色のハンカチで拭って言った。 「どう改造したんだ」 マイクはナノカに尋ねた。 「まずは、スピードが出るようにしまし た。大体、時速三十キロぐらいは出ます。ただ加速が速いので、気を付けて下 さい」 ナノカは言った。 「判った。試してみる」 マイクは、電動車椅子の操縦レバーを前に押した。途端に物凄い加速で前に 進んでいった。マイクは慌てて止めた。ナノカが走ってきてマイクに追いつい た。 「モンスターと遭遇したときの為に、このタイプの電動車椅子は、急加速が 出来るようになって居るんです。マイクさんが乗っている、この車椅子は、病 院の中で使うように設定されていましたが。モンスターとの遭遇用のプログラ ムを起動しました。ですから、かなりの速さで移動が出来ます」 ナノカは言った。 「そうか、それなら、俺は、何とか、モンスターとも戦えるだろう。今は、 X流の発動法が使えないが。試してみるか?」 マイクは言った。 「マイクさんは格闘家なのですか」 ナノカは言った。 「そうなんだ。格闘家は嫌かい」 マイクは言った。 「いえ、マイクさんは、恩人です。私は自分が人間の心を持った機械だと、 思っていたのに。人間だと言ってくれたのですから」 ナノカは言った。 「X流のソウル操法を試してみる」 マイクは、ソウル操法、発動法を行った。 昨日から今朝にかけてと違って、少し通りが良くなっていた。イノール先生が 出した薬が良かったのかもしれない。 「ある程度動ける」 マイクは、発動法の結果が良くなっていることに気が付いた。両手が今朝よ りも大分動けるようになっていた。 「電動車椅子は急加速するので私が、押していきます」 ナノカは言った。 「だが、ゾンビは、俺一人で来るように言っていた」 マイクは、ナノカに言った。 「でも途中までは、私に、車椅子を押させて下さい」 ナノカは、震えていたが気丈にも、そう言った。 「ナノカ……」 マイクは、ジーンと来て言った。 「だって、私を人間として扱ってくれる、マイクさんに死んで欲しくないん です」 ナノカは右手を胸に当てて笑顔で言った。 「判った。「オサイフ・マート」の入口まで、押していってくれ、そこから 先は、俺一人で行く」 マイクは言った。 「マイクさん。この「ドラマチック・タウン」は一体……まるで人の気配が 在りません」 車椅子を押しているナノカは言った。中央の八階建ての「オサイフ・マー ト」の周りに作られた、様々なアーケードに入っている一階建ての小売店の店 先を見ながら言った。靴屋や、ファースト・フード店、ドラッグ・ストア、フ ラワーショップなどにも人が居なくて、閑散としていた。 「なぜだ。なぜ、店内の灯りが煌々と照っているのに。客が一人も居ないん だ。いや店員も居ない。何があったんだ」 マイクも訝しく思って言った。 「何が在ったのでしょうか」 ナノカは怯えた声で言った。 「何かが起きたんだ。この「ドラマチック・タウン」に」 そして、マイクは電動車椅子を押しているナノカと共に「オサイフ・マー ト」の正面入口まで辿り着いた。 入口には風船を持ったピエロが居た。 薔薇十字教会、聖トマトマ教会付属病院の中庭に現れたピエロと同じだっ た。 「はいはい、よく来ましたね。ここから先は、お一人様だけです。判ります よね」 ピエロは言った。 「お前は、さっき病院に居たピエロと同じなのか」 マイクは漢キャラになって言った。 「ピンポーンです。このピエロめは、ビエロ・Z・クラウニーと言います。 ZはゾンビのZです」 ピエロはパントマイムを、しながら言った。 「魔族なのか」 マイクは、漢キャラのまま言った。 「それは、もう当然です。既に死んでいますから。こんな風に首が外れたり します」 ビエロ・Z・クラウニーは、そう言うと首がポロリと落ちた。そして地面に 落ちた首は喋り続けた。 「なぜ、これだけの広いショッピング・モールで、誰も人がいないんだ」 マイクは言った。 「何故でしょうね。それは、後の、お楽しみです。あなたは、ここで死ぬの ですから、存分に楽しまなければ?ウケケケケケケ!」 突然、ピエロの持っている風船の一つが音を立てて割れ、続いて連続して割 れた。中から、黒いカラスが辺りを覆い尽くすように現れて飛び上がった。 「マイクさん。くれぐれもムリをしないで」 ナノカは心配そうな声で言った。 「ナノカ。俺は君の笑顔を、また見るまで死なないさ」 マイクは漢キャラのまま言った。 「もう、マイクさんったら、こんな時なのにカッコつけ過ぎよ。お願いだか ら死なないで」 ナノカは、マイクに言った。 「大丈夫。行って来る」 マイクは、笑顔で、そう言うと、「オサイフ・マート」の中へと電動車椅子 で加速しながら入っていった。
第十一章 マイク!ショットガンとチェインソーを持って戦え!更に超 兵器だ!
マイクは、「オサイフ・マート」の中に突入していくと電動車椅子の動きを 止めた。 そして中を確認した。 店内は、右手に広大なスーパーマーケットの食料品売場が目に入った。それ も、普通のポテト・シティで目にする規模ではなかった。「オサイフ・マー ト」の食料品売場は、広すぎるぐらいに広かった。世界中の食料品が陳列され ているようだった。郊外型の大型スーパーマーケットの八個分ぐらいの規模が 食品売場だけであった。 そして左手には日用雑貨の売場があった。 だが日用雑貨の売場も八個分ぐらいあった。 だが、これだけ、広大なスペースのスーパーマーケットの中に人が一人も居 なかった。そして、照明が煌々と店内を照らす中、音楽が流れていた。 「…〜 家族で安心 信頼と品質の オサイフ・マート みんなの家計を 応援します 売ります 売ります オサイフ・マート 〜…」 マイクは、つい音楽に、のせられて何となく、買い物カゴを持ってしまっ た。 そしてフト気が付いて。買い物カゴを持つ必要は無いことに気が付いた。 そして買い物カゴを元に戻した。 マイクは、電動車椅子に乗ったまま、店内を移動してエスカレーターを見つ けた。片側に五本も在る大型のエスカレーターだった。だが。電動車椅子で は、エスカレーターに乗れないことに気が付いた。前輪が小さすぎるのだ身体 が元気なら、簡単に昇れるのだが。つくづく、ズルイヤ流忍法を使うジャドー 君の術中にはまったことが悔やまれた。 エレベーターを捜すか? マイクは、エレベーターを捜すために、店内を電動車椅子で高速で移動し た。 その時、突然「オサイフ・マート」の歌が止まった。 マイクも車椅子の動きを止めた。 どうした? そして、子供の声が店内に響いた。 「よく来たな。厄災の天命星よ」 子供の声は店内全体にアナウンスによって響き渡っていた。 そして日用雑貨の売場で新型の洗剤「トランス・クリーナー」を広告してい た、薄型テレビの画面が消えて、そこに、黒髪の巻き毛の十歳前後の男の子供 が映し出された。 「お前は何者だ」 マイクは、店内に響くように大声で叫んだ。 「わたしの名前は六魔王の一人不死王キュラド」 不死王キュラドは言った。 マイクは、六魔王が何であるか判らなかったが、魔族と関わりの在ることは 判った。 「イノール先生と、フミナは何処にいる!」 マイクは叫んだ。 「この「オサイフ・マート」八階の店長室に居る。だが、ここまで来られる かな」 そう言うと、不死王キュラドはバカにした顔で、カメラのフレームから出 た、その背後には、包帯で縛られた、イノール先生とフミナが居た。 そしてカメラがイノール先生とフミナをズームしていった。 まだイノール先生とフミナは生きているようだった。 「それではゲームの開始だ。BGMをスタート」 不死王キュラドの声がした。 そして店内に軽快な音楽が鳴り始めた。 「ワルツ、 ワルツ、 踊れよワルツ、 地獄の断末魔を 響かせろ、 ゾンビが 奏でる 地獄のワルツ ウヒョロロロロロロ!」 怪しいウヒョロロロロのコーラスを聴きながら、マイクは、エレベーター を捜して「オサイフ・マート」の一階を電動車椅子で走ろうとしていた。 その刹那。急に「オサイフ・マート」の照明が全部落ちた。 そして停電の様に真っ暗になった。 そして一瞬の後に照明が回復した。 店内には、無数の買い物客達が居た。 いや、どれも、買い物客とは言えなかった。 みな一様に、黄緑色の肌をして、口から黄色い色の牙を生やしていた。 全ての歯が犬歯になったような鋭い牙だった。そして手の爪は、鋭く長く猛 禽類の様に伸びていた。 「ウガルガガガガガガカ!」 買い物客達は、口々に唸り声を挙げてマイクに向かって突進してきた。 マイクは、慌てて、電動車椅子を操った。 子連れのベビーカーを持った母親がベビーカーを押しながら牙を伸ばして突 進してきた。 そしてベビーカーから、赤ん坊が、飛び出してきて、四つん這いで犬のよう に俊敏に飛びかかってきて、マイクの腕に噛みつこうとした。 「オギャギャギャギャ!」 マイクは反射的に手で押した。 怪物と化した赤ん坊は、勢いが付いたまま吹っ飛んでいってパプリカが山積 みになった棚に突っ込んだ。 「フフフフフフフフフ。どうかな。ゾンビの山盛り、特大スーパーサイズの サービス満点のテイクアウト・メニューの感想は?喜んでいただけたかな」 不死王キュラドの声が店内に響いた。 「不死王キュラド!何をした!」 マイクは叫んだ。 「難しいことではない。この「ドラマチック・タウン」の人間達を全て殺し て、ゾンビに変えたのだ」 不死王キュラドの声は言った。 「まさか、ここにいる人間達は全て死んでいるゾンビなのか!」 マイクは叫んだ。 「その通り。この不死王キュラドが思いついたゲームの為に、今さっき気が 向いたから、みんな殺して作った道具なのだ。どうかね、気に入ってくれたか な?」 不死王キュラドの声は言った。 マイクは、ゾンビ達に追われながら、高速で、電動車椅子を操作していた。 「何て酷いことを!」 マイクは、エレベーターを捜して、飛びかかってくるゾンビ達をX流の発動 法を使って押しのけながら叫んだ。 マイクは、「オサイフ・マート」の一階の大工道具売場でチェインソーを見 つけた。 飾ってあるチェインソーではなくて。実演に使っているガソリンが入っている チェインソーを見つけたのだ。マイクは、チェインソーを手に取った。そして スイッチを入れてエンジンをスタートさせた。 マイクが、チェインソーを手に取ると、いつの間にか。 周りをゾンビ達に囲まれていた。 「フフフフフフフフ。武器は手に入ったが、どうかな?どう、あがいてみせ る?」 不死王キュラドの声がアナウンスで入って言った。 ゾンビ達は、ジワジワと数を増やして、マイクを取り囲むように迫ってき た。 「ウガルガガガガガガカ!」 そして一斉に飛びかかってきた。 マイクは、意を決して、左手でチェインソーを持って、右手で、電動車椅子 の、操作をした。グルグルと、その場で電動車椅子を回転させたのだ。 飛びかかってきたゾンビ達は、次々と、マイクの電動車椅子が回転して振り 回す、チェィンソーで切り刻まれていった。 「フハハハハハハハハ!面白いぞ!面白いぞ厄災の天命星よ!飛び散る血し ぶき!吹き飛ぶ肉片!実に楽しい見せ物だ!」 笑い出した不死王キュラドの声がアナウンスで入ってきた。 マイクは、ゾンビ達の途切れ目を見つけて、そこに、電動車椅子を回転させ ながら走らせた。 飛びかかってくるゾンビ達をチェインソーで切り刻んで前へ進んだ。 マイクはエレベーターを見つけたが。ゾンビ達が沢山いた。 マイクはエスカレーターにもゾンビ達が沢山いるのを見た。 どうすれば二階へ行けるんだ! マイクは焦っていた。 ゾンビが、エスカレーターから降りてきた。 強行突破だ!マイクは、エスカレーターに向かって電動車椅子を高速で走ら せた。 エスカレーターは全て下りに設定されていた。 だから、下りのエスカレーターを逆走するしか無かったのだ。 そしてエスカレーターから降りてくるゾンビ達を次々と、チェィンソーで切 り刻んで、倒して、エスカレーターにゾンビの身体で斜面を作って、その上を 高トルクに設定した、電動車椅子で強引に登っていった。 マイクは何とか二階に昇った。 「よし、良くやった!二階まで辿り着いたな!次は、このゲームで、どんな プレーを見せてくれる?」 不死王キュラドのアナウンスが、二階に響き渡った。 二階にはスポーツ用品売場が在った。 そしてゾンビ達は、皆一様に若かった。そして胸に黄色いワッペンの付いた ハイスクールの制服を着ていた。 「この「ドラマチック・タウン」の近郊に位置する、「聖テモチ・ハイスク ール」の生徒達を部活中に、みんな殺してゾンビに変えて用意した。一階のゾ ンビは、ゾンビ強度一だが。二階のゾンビは、ゾンビ強度二だ。つまり頭が良 く。得意な身体運動を駆使して戦いを挑んでくる。さあ、これがゲームのルー ルだ。もう、エスカレータは使わせないぞ。面白くなくなる。だから、超高速 で稼働させる」 マイクの横でエスカレーターが高速で動き出した。これでは登りようが無か った。 「さあ、あがいて見せろ厄災の天命星」 不死王キュラドの声が響いた。 マイクは、突然ベースボールのボールが飛んできたことに気が付いた。慌て て、頭を低めて避けた。マイクの後ろのエスカレーターに当たってめり込ん だ。 当たれば即死の威力のようだった。 ベースボールのユニフォームを着た生徒は緑色の肌に黄色い牙を剥き出しに して唸った。 続いて紫色の炎を纏ったサッカーボールが飛んできた。 マイクは、車椅子を操って避けた。 そしてスポーツ用品売場の中に入っていった。 何か武器になるモノは無いのか。 マイクは、飛んでくるバレーボールや、アーチェリーの矢をチェインソーで 受けながら電動車椅子で店内を走り回った。 銃! マイクは銃売場に辿り着いた。 銃が在れば、かなり楽になる! マイクは、適当な銃を捜した。 これだ! 口径の大きい、ショットガンだった。弾倉式だった。これなら沢山の銃弾を 入れることができる。 マイクは跳んでくる、ボールや、アーチェリーの矢などをチェインソーで跳 ね飛ばしながら。銃弾の入った箱を手に入れた。 ゲージのサイズも間違いない。マイクは、両膝の間に挟んだ弾倉に、散弾を 右手で詰めた。そして弾倉をショットガンに填め込んだ。 そして薬室に弾を送り込んだ。マイクは、ベースボールのボールを投げてく る、ゾンビ投手目がけて、ショットガンを肩に当てて撃った。 反動がして投手の頭が吹き飛んだ。 いける! チェインソーよりも強力だ! マイクは。血塗れのチェインソーを膝の上に置いて、左手にショットガンを 持った。 ソウルを使って、アーチェリーの矢を放ってくる、黄緑色の肌に黄色い牙の 生えた制服の女の弓使いに向かって、ショットガンを放った。 上手く散弾が当たったのか上半身が吹き飛んだ。 マイクは、ショットガンを使って飛び道具を使うゾンビ達を次々と倒してい った。 そして、マイクは、ガトリング・ガンを見つけた。 五つの銃身が付いていた。 そして給弾ベルトが収められた。箱を見つけた。対モンスター用ダムダム弾 と書かれていた。 マイクは。給弾ベルトをガトリングガンにセットして。 様々な技を使ってくるゾンビ達目がけて撃ち始めた。 ドンドンと、様々なスポーツの道具を持った、ゾンビ達が集まって来た。 アイスホッケーのキーパーの格好をしたゾンビ。 ラグビーのボールを持ったゾンビ。 ベースボールのバットを振りかざすゾンビ。 首のない、馬に乗った、ポロ選手のゾンビ。 床をクロールや、バタフライ、平泳ぎで接近してくる、競泳選手のゾンビ。 スピンしながら、近づき脚から衝撃波を飛ばす、フィギアスケート選手のゾ ンビ。 どうやらゾンビレベル二は、かなり様々な攻撃パターンのゾンビが居るらし かった。 マイクは、ガトリング・ガンを撃って次々と倒していった。 そしてガトリング・ガンは止まった。全ての弾丸を撃ち終えたようだった。 途中から弾の出方がおかしくなっていた。 どうやら、弾丸を撃ちすぎたようだった。 マイクは、倒したゾンビ達の肉片で満ちあふれる、二階を見ていた。 パチパチパチと拍手の音がした。 「見事だ、厄災の天命星よ。このフロアー・2のレベル2ゾンビを銃弾の火 力だけで全滅させるとは。なかなか味気はないが、スコア的には見事だ。十分 に堪能させて貰ったぞ」 不死王キュラドの声がアナウンスで入った。 戦いって空しいな。 と、マイクは銃身が赤くなって熱を持ったガトリングガンを捨てて思った。 マイクは、ショットガンを肩にかけてショットガンの弾薬を電動車椅子の荷 物入れに入れた、そして左手にチェィンソーを持った。 マイクのガトリングガンが放った銃弾で撃ち抜かれた。店内をマイクは、電 動車椅子を操縦しながら移動した。そして、再び、動きがゆっくりとなった、 エスカレーターに電動車椅子を乗せてマイクは三階へと向かっていった。 マイクは「オサイフ・マート」の三階へと上っていった。 第十二章 鋼鉄の乙女の恥じらい!ナノカの秘密!
ナノカは、マイク・ラブクラウドが、一人で、不死の魔族達が待ち構える 「オサイフ・マート」へ入っていく姿を見送った。 マイクさん。 ナノカは切なくなって思った。 マイク・ラブクラウドは、X流の格闘家で、ナノカが大好きな父親と似てい るところは無かったが機械の身体を持ったナノカを精一杯励ましてくれた。 ナノカは、一度死んでロボットとして生まれ変わった後は、家族は父親以 外、バケモノ扱いして、仲の良かった女友達達も皆、ロボットとして扱って人 間としては扱ってくれないでいた。 ナノカにとっては、マイク・ラブクラウドは重要な人になっていた。 玄関のシャッターが閉まった「オサイフ・マート」の内部では絶叫や、阿鼻 叫喚の叫び声や唸り声、銃声の物音がしていた。 ナノカはマイクがどうしているのか不安だった。店内では何が起きているの か判らなかったからだ。 マイクさん。 こんな無茶をして……。 本当に人が良いんですね。 ナノカはマイクの身を案じていた。 「ううーん。どうするのかな、お嬢さん。 お嬢さんもゾンビになったら面白いだろうね」 地面に落ちたピエロ・Z・クラウニーの頭が喋り始めた。 「どういうことですか」 ナノカは怯えて身をすくませながら言った。 「不死王キュラド様は、ドラマが好きなんですよ。面白いドラマを見て楽し むんです。 お嬢さんと、あの厄災の天命星は仲が、よろしい御様子です。そういう人間関 係を引き裂いたり、憎しみあわせたりするように差し向けるのが、不死王キュ ラド様の喜ぶドラマなのです」 ピエロ・Z・クラウニーは言った。 「そんな。嫌です。私は、ロボットです」 ナノカは怯えて後ずさりをしながら言った。 「魔族を侮って貰っては困りますな。機械も不死族のモンスターに変えるこ とが出来るのですよ」 ピエロ・Z・クラウニーは言った。 「まさか」 ナノカは怯えた。 「その、まさかです」 ピエロ・Z・クラウニーは言った。 すると「オサイフ・マート」の入口の前に乗用車が集まってきた。 車のフロント部分に、牙が生えて、ヘッドライトが、吊り上がった目のよう なカタチに変わっていた。そして唸り声の様にエンジン音を上げていた。 「この「ドラマチック・タウン」の駐車場に在る全ての車はモンスター・カ ーと化しているのですよ、お嬢さん。この「ドラマチック・タウン」から逃れ ることなど出来ませんね。ただ轢き殺すのでは面白くない。不死王キュラド様 の、ご期待に添わなければ駄目です」 ピエロ・Z・クラウニーは言った。 そしてピエロ・Z・クラウニーは、落ちている頭を、首から下の胴体に付い た両手が持ち上げると首が在る位置に収めた。 「さあ、キュラド様の下へ連れていきましょう」 ナノカは後ずさったが。ピエロ・Z・クラウニーはナノカの右手首を捕まえ た。 「嫌、やめて下さい」 ナノカはピエロ・Z・クラウニーの手を離そうとした。 だが、凄い力で押さえられていた。 「逃げられませんよ」 ピエロ・Z・クラウニーは二本の指を口に当てて指笛を吹いた。 すると8メートルぐらいの翼の幅がある巨大な漆黒のカラスが降りてきた。 そしてピエロ・Z・クラウニーの両肩を脚の爪で捕まえた。 そして、巨大なカラスは羽ばたき飛び上がった。 「嫌ぁぁあああ!」 ナノカは悲鳴を上げた。 その時、ナノカの身体に異変が起きた。 目に、様々な情報がコンピュータの画面の様に映し出されて。 そして、「システム・ナノカ起動」と表示された。 ナノカは自分の身体が勝手に動き出し事に気が付いた。 「戦闘システム起動・全武装解放」 と目に情報が映し出された。 そして上空から、極太のレーザー光線が降ってきた。ナノカの右手首を捕ま えているピエロ・Z・クラウニーの手首を焼き切った。 ナノカの手を掴んでいたピエロ・Z・クラウニーの手は離れた。そしてナノ カは落下していった。 わたし死ぬの? 一度死んだロボットなのに。 死ぬんじゃなくて 壊れるって言うのかな。 ナノカは、そう思った。 だが、ナノカの目には、「バトル・カーゴ・ユニット」と映し出されてい た。 落下するナノカの身体の下に、白い、巨大な物体が現れナノカを受け止め た。 そして、空へと飛び上がった。 ナノカの目に、父親のマッサイ・ニュートロンの映像が映し出された。 「ナノカ。お前が、これを見ているときは、生命の危機が訪れたときだろ う。そのような時に備えて、ナノカの身の安全を守るために、「バトル・カー ゴ・ユニット」をナノカの頭上、千五百メートルの高度で二十四時間常に飛行 させている。「バトル・カーゴ・ユニット」には様々な、武器が収納されてい る。必要に応じてシステム・ナノカが武装の選択を行う。お前は手を汚す必要 ない。全ての戦闘はシステム・ナノカが行う。ただ、お前は、戦闘プログラム 「システム・ナノカ」に目的を指示すればいい。以上だ」 父親のマッサイ・ニュートロンの映像はそう言うと消えた。 ナノカの目にもう一人の自分が映し出された。 私はシステム・ナノカ。戦闘を行う為に作り出された人工知能だ。 システム・ナノカは言った。 おねがい。マイクさんを助けて。 ナノカはシステム・ナノカに言った。 判った。 そしてナノカの身体は勝手に動いた。そして、「バトル・カーゴ・ユニッ ト」からミサイルを発射した。 「オサイフ・マート」の壁に穴が開いた。その中に、ナノカを載せた、「バ トル・カーゴ・ユニット」は突入していった。
第十三章 不死王キュラドの、お仕置き・ムービー?
三階は、シネマ・コーナーだった。様々な映画をかけている映画館の複合体 だった。どの映画館も規模は大きいようだった。 掛かっている映画は、「歌え、神なる主の賛美歌を」「ある尼僧の一生」 「魔族との戦い」「薔薇十字教会の最強聖騎士ソード・マスター伝説」などだ った。どうやら娯楽の映画もキトウ国の事情を反映しているようだった。 マイクは、映画館の入口が並ぶ通路を電動車椅子で走らせていった。 銀ラメのタキシードを着た骸骨が居た。そして立て看板を持っていた。髪の 毛は金髪で右側の方がワックスを付けているのか跳ね上がっていた。 「お客さん。お客さん。もっと良い映画が在るよ」 骸骨は言った。 「何だ、お前は」 マイクは言った。 「ただの客引きの骸骨です」 骸骨は右手で頭の後ろを押さえて言った。 「ここで何をしている」 マイクは漢キャラになって言った。 「映画の客引きです。タイトルはズバリ「眼鏡っ子VS修道女!お仕置きゲ シゲシ!」です。お気に召しませんか?」 骸骨は、そう言うと、持っている立て看板を裏返した。 イノール先生とフミナが、嫌そうな顔をして、ほっぺたと、ほっぺたを、く っつけている、顔をアップにした写真が映し出された。 「なんだ、その不謹慎なタイトルは!フミナは、どうでもいいが、イノール 先生を巻き込むな!」 マイクは言った。 その時、不死王キュラドのアナウンスが入った。 「厄災の天命星よ。一階と二階のフロアーをクリアーした、ご褒美をくれて やるのだ。 今から、お仕置き・ムービー「眼鏡っ子VS修道女!お仕置きゲシゲシ!」の 試写会に参加させてやる。感謝しろ」 「何で俺が、お前に感謝しなければならないんだ不死王キュラド!はやくイ ノール先生と、ついでにフミナを解放しろ!」 マイクは、漢キャラになって言った。 途端に不死王キュラドは、つまらなそうな不満そうな、すねた声を出した。 「自分の置かれている立場が判らぬようだな。この不死王キュラドが、殺し たいと思えば、いつでも、この二人の女達の命は奪えるのだぞ。つまり、お前 には選択権は無いのだ厄災の天命星よ」 「くうっ、仕方がない。不承不承だが見てやる」 マイクは言った。 「よろしい。素直に従えばよいのだ」 不死王キュラドの声は機嫌を直して言った。 骸骨が近づいてきた。 「ささっ、こちらです。一名様ご案内」 骸骨は、マイクに言った。マイクは、電動車椅子を操って、映画館の中に入 っていった。 映画館はスロープがあって、マイクは、中程の入口から入っていった。 映画館の中は、暗かった。 だが、どこにでも在る映画館のように映写場の外から入る灯りのせいで、あ る程度の物は見えた。 「それでは、映画を始めよう。主演、眼鏡っ子と修道女による。お仕置き映 画を」 不死王キュラドの声が映画館内に響いた。 「ちょっと何するのよ!やめてよね!」 フミナの声が映画館に響いた。 包帯で縛られたイノール先生とフミナの姿が映し出された。 背後に、水商売の女性の格好をした、包帯グルグルの胸のデカイ女が居た。 そしてピンク色の忍者スーツを着た、忍者が居た。 「まずは、眼鏡っ子よ。お前にマカイ・ヨガの恥ずかしいポーズをさせて、 晒し者にしてくれよう」 不死王キュラドは映画館の画面の中で言った。 「何でもします。だから、命だけは取らないで」 フミナは命乞いをしていた。 やっぱり、そう言う女か。 マイクは、映画館の大スクリーンに映し出されて命乞いをする、フミナを見 ながら思った。 「よし、マミー・ミーラ。眼鏡っ子にマカイ・ヨガの「ゾンビ・ホイール」 のポーズをカメラに向かってやってやれ。この不死王キュラドが、この映画の 監督をやる」 不死王キュラドは言った。 「判りました監督」 グラマーな、マミー・ミーラは言った。 「そのぉ「ゾンビ・ホイール」ってぇ何なのですかぁ監督様ぁ」 フミナはキュラドに媚びを売るように言った。 やはり、そう言う女かフミナ。 マイクは再び思った。 「脚を左右に開いて、ぐるりと頭の後ろで踝を交差させて、鼻の穴に左右の 人差し指を突っ込んで、ぐるりと頭から横に1回転するのだ、そして連続して 回転する事で「ゾンビ・ホイール」の完成だ。その姿をカメラで映して、映画 館で晒し物とするのだ。ついでにマカイ帝国のマカイネットと人間界のインタ ーネットでも公開することとなる。どうだ嬉しいだろう。セレブになった気分 は?」 不死王キュラドは言った。 「はい、とても嬉しいです。だから殺さないで下さい」 フミナは涙を流しながら笑顔で言った。 フミナの「ゾンビ・ホイール」… マイクは、げんなりした。 「厄災の天命星よ。なぜ、この二人は、身体から光を発している。この光 は、何の光だ?この不死王キュラドも知らぬ謎の光だ」 不死王キュラドは画面の中で言った。 「知らぬわ!」 マイクは叫んだ。十二氏族の聖なる文字を持った娘達が出会うと起きる怪現 象とは言わない方が良いと思ったからだ。 「それならば、先ずは、この眼鏡っ子の身体に聞いてくれよう。亡霊忍者・ ワルよやれ」 不死王キュラドは言った。 ピンク色の忍者スーツを着た忍者がフミナの前に立った。だが、その足は見 えなかった。 どうやら幽霊のようだった。 「心霊手術ポケット返し!」 その瞬間、亡霊忍者・ワルの手にフミナの白いハンカチが抜き取られてい た。 「え、どうやって、私のハンカチを!私はマミー・ミーラに縛られているの よ!」 フミナは自分の胸を見て驚愕の顔をしていた。フミナの白いダボダボの服は 包帯で胸元を縛られていた。 「全ては死んだ後の修業でござる」 亡霊忍者・ワルはフミナにハンカチを放りながら言った。 「亡霊忍者・ワルの心霊手術は、心臓でも何でも抜き取ることは出来るの だ。「眼鏡っ子VS修道女!お仕置きゲシゲシ!」は、お仕置き・ムービーだ から、後で、その眼鏡っ子の身体に聞いてくれよう」 不死王キュラドは言った。 俺の目には亡霊忍者・ワルの動きが見えなかった。 どうやって、フミナのハンカチを抜き取ったんだ。 「どうだ、素直に、この光の謎を説明しろ。次は、YES教の修道女の番 だ」 不死王キュラドは言った。 「私は、そのような恥辱に遭うのなら、自害して果てます。きっと、自殺を 禁じるYES教の神なる主も判ってくれます。舌を噛みます」 イノール先生は達観した顔で言った。 「スカルトン・バトラー。やれ」 不死王キュラドは言った。 いつの間にか、三階に居た、ラメ服を着た金髪骸骨男が居た。 「何ひょ、したのでふか」 突然、イノール先生の口調がおかしくなった。 「これぞ、ホネ・ホネのマリオネットです」 スカルトン・バトラーは両手を振るって言った。 「これひょ、ふぉね、ふぉねのムァリヲネッチョでふ」 イノール先生は口を動かして、スカルトン・バトラーと同じ事を喋り始め た。 「YES教の修道女よ判ったか。この不死王キュラドに自殺で刃向かおうと しても、この様に身体の自由を奪ってしまうことが出来るのだ。今、お前の額 関節は自由に動けないと言うわけだ。この不死王キュラドの前では絶対服従在 るのみだ」 不死王キュラドは言った。 スカルトン・バトラーは両手を上げた。 イノール先生も、マミー・ミーラの包帯に縛られたまま腕を挙げた。 「次は、マカイ・ヨガ、「ゾンビ・ホイール」のポーズだ」 不死王キュラドは言った。 「ひゃめひぇ」 イノール先生は涙ぐみながら言った。 だが、スカルトン・バトラーは、イノール先生の前で床に正座した。イノー ル先生もマミー・ミーラに縛られたまま、床に正座した。 そして、スカルトン・バトラーは、床で足首を交差した。 イノール先生の足首も交差した。黒い修道服の裾から、白いストッキングに 包まれた形の良い、くるぶしが出てきた。 その時、轟音が走った。そして、映画館が揺れた。 「何の音だ?」 不死王キュラドは言った。 立て続けに轟音が走った。 マイクは不審に思った。 その時、映画館のスクリーンが爆発した。
第十四章 システム・ナノカ登場!一気に八階へ!
白い、コンテナの様な、物体が映画館の椅子を薙ぎ倒して突進してきた。 そのコンテナの上には、ナノカが乗っていた。 「マイク・ラブクラウド。私はシステム・ナノカ」 ナノカは、機械のような声で言った。 「ナノカなのか」 「私は戦闘用の人工知能、システム・ナノカだ。現在、ナノカ・ニュートロ ンの命令に従っている。ナノカは、こう言った。「おねがい。マイクさんを助 けて」と。現在、マイク・ラブクラウドの安全確保は出来る。どうする。この まま、この戦闘エリア「オサイフ・マート」から脱出するか?」 システム・ナノカは言った。 「八階には、不死王キュラドに捕らえられたイノール先生と、オマケのフミ ナが居るんだ。この二人を助け出さなければならない」 マイクは言った。 「つまり、ナノカ・ニュートロンの命令は、 マイク・ラブクラウドの目的を助けると解釈すれば良いのだな」 システム・ナノカは言った。 「そう考えてくれれば助かる」 マイクは漢キャラになって言った。 「よし、それでは、八階へと向かう」 システム・ナノカは言った。 白いコンテナから、マニュピレーターが伸びて、マイクを電動車椅子ごと、 白いコンテナの上部に載せた。 「ミサイル・発射!」 白いコンテナから、ミサイルが飛び出して。 天井を突き破った。そして、マイクと、システム・ナノカを載せたコンテナは 次々と、天井を破っていった。 そして、八階まで辿り着いた。八階は、会議室などが在ったが、システム・ ナノカは、強引にミサイルで破壊しながら先へと進んでいった。 本当にナノカは、ロボットなのか? マイクは、まだ信じられなかった。 店長室と書かれた部屋が目の前に在った。 「オサイフ・マート」のマークが在った。 「突入する」 システム・ナノカは言った。 白いコンテナから、ミサイルが飛び出して、オサイフ・マートの店長室の壁 が吹き飛んだ。 「武器を持て。陽電子砲だ」 ナノカはマイクにマニュピレータから受け取った武器を渡した。 マイクは、白い陽電子砲のグリップを見つけて握ってみた。 白いコンテナのマニュピレーターが、動いて、マイクと、システム・ナノカ は辺り一帯が煙りで包まれた、店長室に降り立った。 ナノカは、バズーカ砲を細い腕に持っていた。片方の手には、長い銃身の武 器を持っていた。
第十五章 不死王キュラドの怒り。6魔王恐怖の実力。
「面白くないぞ!」 不死王キュラドの怒気を含んだ声が響いた。 突然、突風が、店長室の中を駆けめぐった。 煙で覆われていた部屋の中が、一気に、鮮明になった。天井が吹き飛んでい て、店長室の中から、煙が一気に換気されたのだ。 不死王キュラドに捕まったイノール先生とフミナも居た。そして、マミー・ ミーラ、亡霊忍者・ワル。スカルトン・バトラーも居た。 「6魔王不死王キュラドと判明。システム・ナノカは全武装をもって、殲滅 にあたる」 システム・ナノカは、そう言った。 白い、コンテナから、ミサイルが飛び出した。 「脆いぞ!」 不死王キュラドは手をミサイルに向けた。 その瞬間、ミサイルは、拉げて爆発した。 だが、その爆発は、丸い球に変わった。不死王キュラドは、爆発を封じ込め たのだ。 そして、不死王キュラドは人差し指の先に、丸まった爆発を持ってきた。 そして握ると煙が出てきた。 その時異変が起きていた。 イノール先生とフミナの発している光が異常に大きくなって居るのだ。マイ クは、ナノカを見た。ナノカからも光が発せられているのだ。それも今まで見 たことがない強さだった。 「まさか、ナノカも聖なる文字を持っているのか?」 マイクは驚いた。 「どういうことだ。この光は何だ」 不死王キュラドは言った。 「戦闘継続」 システム・ナノカは言った。 そして白い、コンテナから、無数の小型のミサイルが飛び出した。 そして不死王キュラド目がけて飛んでいった。 「質問に答えろ!」 不死王キュラドは怒気を含んだ、子供の声で叫んだ。 その刹那。 小型のミサイルは、向きを変えてナノカ目がけて降り注いだ。 爆発が起きた。 「ナノカ!」 マイクは、爆風で吹き飛ばされて、横倒しになった電動車椅子からシステム ・ナノカの方を見た。 ナノカは、ミサイルの爆風で扉を開いた、白いコンテナに、ぶつかってい た。 「どうやら、お前達三人には秘密が在るようだな」 不死王キュラドは言った。 「戦闘継続」 システム・ナノカは言った。 白いコンテナから、極太のビームが飛び出した。 不死王キュラドの目からもビームが飛び出した。そして、ビーム同士はぶつ かった。そして不死王キュラドの目から出たビームが、押し始めた。 白いコンテナのビーム砲の砲身に当たって爆発が生じた。 「猪口才な、人間風情が作った機械が。どうやら光の謎を解明する前に壊し たようだな」 不死王キュラドは言った。 マイクはナノカを見た。 ナノカは、左腕が、無くなっていた。正確には、左腕の二の腕の途中から先 が無くなっていた。そして、機械が露出していた。 そして、ナノカの整った気品在る顔の、左目の辺りが無くなり、機械の目が 露出していた。 「ナノカ大丈夫か!」 マイクは叫んだ。 身体が機械でもナノカはナノカだった。 「損傷を確認、戦闘を継続」 システム・ナノカは言った。 そして、立ち上がった。そして右腕に持った、長い銃身の武器を構えた。 「ほう、まだ壊れていなかったか。何故、お前達三人は光を発するのだ。こ の光は今まで見たことがない光だ。さあ、この不死王キュラドに答えろ」 不死王キュラドは言った。 そして右人指し指を上に向けると、システム・ナノカが宙吊りになった。 「戦闘継続…戦闘継続…戦闘継続…」 システム・ナノカは、宙吊りになったまま言い続けた。 「不死王キュラド。お嬢様方の秘密を聞き出すのに脅しとは野暮というモノ だ」 聞き覚えのある男性の声が天井からした。 「その声は、お前は、ワイズマン」 不死王キュラドは言った。
第十六章 ワイズマンとキュラドの遺恨!過去に何があったのか!
天井から風が吹いた。 「くっ!」 不死王キュラドは痛そうな顔をして、右手を引っ込めた。 その瞬間、宙吊りになっていたシステム・ナノカは地面に落下した。 落ちる直前に風が吹いて、システム・ナノカは、空中に浮いた、そして、ゆ っくりと落下をしてきた。 そして風が吹くとフミナの伯父さんのスグレテ・キョトーが現れてシステム ・ナノカを受け止めた。そしてマイクの所に歩いてきた。 「フミナの伯父さん。どうして、ここへ」 マイクは言った。 「昔からの友人に頼まれてね。だが少し遅かったようだ。この「ドラマチッ ク・タウン」一帯は不死の魔族達に支配されてしまった」 スグレテ・キョトーは倒れたマイクの横にナノカの身体を横たえて言った。 「おのれ、ワイズマン。またしても、お前か」 不死王キュラドは怒りを押し殺した声で言った。 フミナは、伯父のスグレテ・キョトーが、あまりにも丁度良いタイミングで 出てきたため… 疑いを持った。 なぜ、こんなに都合良く、 格好良く、 タイミング良く、 上手い具合に 現れることが出来るの? その時、ふと、父親のヤッパーリ・キョトーの言葉を思いだした。 フミナ。兄貴は、いつも美味しいところを持って行くんだよ。 と言う、酒を飲んでいるときに口にする、ぼやきの言葉を。 兄貴は、いつも美味しいところを持って行くんだよ… 兄貴は、いつも美味しいところを持って行くんだよ… きっと、出てくるタイミングを見計らっていたんだ…かっこいい。 と、フミナは思った。 フミナの父親のヤッパーリ・キョトーは、 ガクモン王立大学の魔法学部の学部長だった。次期学長になることが既に内定 している事はガクモン王立大学の人間は、皆知っていた。 フミナにとって、 キョトー家の家長の父親ヤッパーリ・キョトーの存在は絶対だった。 子供の頃から厳格に躾けられていて、畏怖の念を常に感じていた。 その父親のヤッパーリ・キョトーから全部、美味しい所を持っていくなん て。 ス、テ、キ。 キョトー家の一族としてコンプレックスの在るフミナは、そのキョトー家を 超越している伯父ワイズマンことスグレテ・キョトーに男を感じて、熱い視線 を送っていた。 マイクは、システム・ナノカを見た。確かにナノカの身体は、機械で出来て いた。だが、それでも、さっきまで見せていた人間らしい仕草や言葉は、機械 が発したモノには思えなかった。 ナノカは人間だ。 マイクは思った。 「えーい!止めた!止めた!お前が居たら、 死魔十傑が全員居ても勝てっこない!だから止めだ!お前等帰るぞ!」 不死王キュラドは言った。 スカルトン・バトラーが、骨だけの両手を揉みしだきながら不死王キュラド に言った。 「魔皇帝ネロ様は、厄災の天命星を殺すことを望んでいます。ワイズマンは 殺せなくても、今は、車椅子に乗っている厄災の天命星は殺せるはずです」 スカルトン・バトラーのラメのタキシードの背中から、剣を持った手が4本 左右に伸びた、そしてラメのタキシードのズボンのポケットから、二本の剣を 取り出した。合計六本の剣を構えた。 マミー・ミーラも不死王キュラドに言った。 「厄災の天命星さえ討ち滅ぼせば、この世界は、憎き人間共々時空震で滅び ます」 マミー・ミーラの顔が、ひからびて全身の包帯が波をうって伸び始め、床を 覆い始めた。 「お前達は、全員がワイズマンと戦ったことがないだろう。アイツの強さ は、この不死王キュラドが良く知っている」 亡霊忍者・ワルも言った。 「キュラド様、ワイズマンと言えども、たかが人間でござる」 亡霊忍者・ワルは言った。ピンク色の忍者スーツが黒い色に変わって、顔を 金属製のマスクが覆った。そして金属製の手甲や足甲が、前腕や脛を覆った。 「ほう、君達は、私と戦うのだね」 スグレテ・キョトーは言った。 「殺してみせるよ」 マミー・ミーラは、のたうつ包帯の中で言った。 「お命頂戴」 亡霊忍者・ワルは手刀を構えて言った。 「この六本一組の妖刀6幻殺で切り刻みましょう」 スカルトン・バトラーは六本の剣を構えた。 スグレテ・キョトーは溜息を付いた。 「それでは、フミナに封印術の使い方を教えるか」 スグレテ・キョトーは言った。 亡霊忍者・ワルは瞬間移動をした。 一瞬の内にスグレテ・キョトーの前に、現れた。 だが、亡霊忍者・ワルの手刀は空を切った。 いつの間にか、一瞬の閃光と共にスグレテ・キョトーは背後に回り込んでい たからだ。 そして印を結んだ。 「封印の結界!第222!霊気の鳥かご!」 一瞬の間に、亡霊忍者・ワルは、丸い球状の鳥かごに捕らえられた。 「何でござるか!」 亡霊忍者・ワルは霊気の鳥かごの中で叫んだ。 「所詮は、ワイズマンは魔法使い。妖刀6幻殺の剣の技は防ぎ切れまい」 スカルトン・バトラーは、ブドーの闘技場で見たような、闘気のような物を 全身から放ち始めた。 「この妖刀6幻殺は、遠くから、切りつけることが出来る。防ぎきれるか な」 スカルトン・バトラーは、持っている剣で空を切った。 その瞬間、ナノカと一緒に乗ってきた、白いコンテナが大きく切れた。 マイクは、その威力に驚いた。 「何をした、ワイズマン。このスカルトン・バトラーは、百七十九p切る予 定だった。 つまりお前の身長分。頭の天辺から足の先まで唐竹割にする予定だった。それ なのに一体何をした」 スカルトン・バトラーは、剣の動きを止めて言った。 「秘密だよ」 スグレテ・キョトーは笑顔で言った。 そして印を結んだ。 「封印の結界!第163!堅き鉄格子!」 剥き出しになった鉄骨からと鉄筋が伸びてきて、スカルトン・バトラーを捕 らえた。 「妖刀6幻殺を封じるとは一体何を!」 スカルトン・バトラーは、堅き鉄格子の中で叫んだ。 「このマミー・ミーラの包帯から逃れられると思うのかい。バンデージ・バ イン!」 マミー・ミーラは言った。 そして店長室の床全体を覆うように広がった包帯が、スグレテ・キョトーへ と押し寄せた。 そしてスグレテ・キョトーの全身を包帯が覆った。 「何がワイズマンだ。チョロイもんだよ。 ワルもスカルトンもヤキが回ったね」 そう言いながら、マミー・ミーラは、包帯で覆われた、ワイズマンへと近づ いていった。 そして右腕を曲げた。その瞬間に、マミー・ミーラの包帯で覆われた右腕は筋 肉が膨れ上がり、太くなった。 「終わりだよ。頭を使いな」 マミー・ミーラは、膨れ上がった右腕で、包帯で覆われた、ワイズマンの頭 を殴った。 ワイズマンの頭は、その剛腕一撃で、もげて飛んでいった。 そして包帯で覆われた床に転がった。 「ご忠告ありがとう」 そう、スグレテ、キョトーの声がした。 首がもげた包帯巻のスグレテ・キョトーの影が伸びて、その中から、スグレ テ・キョトーが出てきた。 「一体どうしたんだ!このマミー・ミーラが捕まえたのは一体!」 狼狽するマミー・ミーラは包帯を戻し始めた。 「それは、このピエロ・Z・クラウニーでございます。マミーさん、殴るな んて酷いじゃないですか」 もげた頭の包帯が外れていき、ピエロ・Z・クラウニーの顔が出てきた。 「このゾンビ君は途中で捕まえたんだよ。彼は少々悪さを、し過ぎてね」 スグレテ・キョトーは言った。そして印を結んだ。 「封印の結界!第89!石柱の組み箱!」 床の石が変形して、マミー・ミーラを覆い始めた。 そして石柱の組み箱は完成した。 マミー・ミーラは、ガンガンと石柱の組み箱を内側から例の剛腕で破壊しよ うとした。だが、石柱の組み箱は、びくともしなかった。 「何故だい!ただの石が何で、こんなにも硬いんだい!」 マミー・ミーラの悲鳴が上がった。 「ゾンビ君はどうするんだい」 スグレテ・キョトーは言った。 「いえ、もう十分です」 ピエロ・Z・クラウニーの、もげた頭は言った。 そして、スグレテ・キョトーは、イノール先生とフミナの所へ歩いていっ た。 「さあ、お嬢様方、手を貸しましょう」 そしてイノール先生とフミナの手を取って、立ち上がらせた。 「ありがとうございます」 イノール先生は凛とした声で言った。 「凄すぎです。涙が出ちゃいました」 フミナは涙を流していた。 「相変わらず人間離れしているな」 不死王キュラドは腕を組んだまま横目でスグレテ・キョトーを見ながら言っ た。 「少しは成長したようだな。不死王キュラド」 スグレテ・キョトーは言った。 「身長が伸びただけではないぞ。魔力も成長している」 不死王キュラドは、歩いていき、手を伸ばし、亡霊忍者・ワルを捕らえてい る霊気の鳥かごに触れて破壊した。 「キュラド様、面目ない」 助け出された亡霊忍者・ワルは言った。 「気にするな」 不死王キュラドは言った。 そして次に、スカルトン・バトラーを捕らえている堅き鉄格子を指で切り裂 いた。 「キュラド様、この妖刀の力を破るとは一体…」 助け出されたスカルトン・バトラーは言った。 「気にするな」 不死王キュラドは言った。 最後に、マミー・ミーラを捕らえている石柱の組み箱を殴って破壊した。 「キュラド様、このマミー・ミーラの剛力が通じないとは一体、どのような 魔法を…」 助け出されたマミー・ミーラは言った。 「気にするな」 不死王キュラドは言った。 「さあ、どうする、気は済んだかな。死魔十傑の諸君」 スグレテ・キョトーは言った。 「これが、ワイズマンの実力ですか」 スカルトン・バトラーは、ラメのタキシードのズボンのポケットに剣をしま いながら言った。 「なぜ、この亡霊忍術が敗れたのか」 亡霊忍者・ワルも忍者スーツがピンク色に変わった。 「死ぬほど恐ろしいよ、このワイズマンは」
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