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作品名:心の詩HarmonyOfHeart第一篇 作者:m.yamada

第2回   4分冊2
「今すぐ行くのですか。この見ず知らずの、自称異世界人と」
 フミナは、マイク・ラブクラウドに嫌悪感を感じて見て言った。
 「ああ、そうだ。これから、ベンガク国際空港から、ブドー共和国行きの、
飛行機に乗ればいい。それでは、フミナは早く、出発してくれ。私の車を、こ
の研究棟の前に回しておく」
 父親は携帯電話を使って、ロボット運転手に指示を送っているようだった。
 「判りました、それでは、気が進みませんが行ってきます」
 フミナは言った。
 「それじゃあ、十二人の娘達を捜す旅に行くか。上手く見つかると良いんだ
けれどな」
 マイク・ラブクラウドは言った。
 「それでは、マイク君。首尾良く、十二氏族の名前を持った娘達を捜し出し
てくれ」
 父親はマイク・ラブクラウドに笑顔で言った。フミナには笑顔を見せたこと
が無いのに、マイク・ラブクラウドみたいな、おかしな少年には笑顔を見せる
のが嫌だった。
「任せて下さいよ。そっちは、そっちで、人脈を使って、十二氏族の名前を
持った娘達を捜して下さい」
 マイク・ラブクラウドも明るく笑顔で言った。男同士で解り合っているのが
嫌だった。どうせ、あと三百六十五日で、世界が滅びるのに、なにを笑って居
るんだか。とフミナは思いながら、マンシュリー教授の研究室を出ていった。
そして、自分の研究室から白いガウンを持ってきて羽織って、車寄せに止まっ
ている、父親のリムジンにマイク・ラブクラウドと一緒に乗った。

第六章、魔族の凱歌。世界を滅ぼせと唸りを上げる。

マカイ帝国、そこは、人間を狩るために生まれた魔族達が住む国。科学文明
が発達した、この世界でも、マカイ帝国は独自の強力な魔力を用いて、人間達
を滅ぼすべく戦っていた。
 ここはマカイ帝国の魔幻空間にある魔帝都ホラーゾン。魔皇帝の城ダビニフ
ス。
そこでは、世界の運命を読みとく、女予言者の、予言の儀が執り行われてい
た。
額に角を生やした妖艶な褐色の肌をした女魔族が長い藍色の髪を振り乱し、
巫女の服を着て予言の儀式を行っていた。辺りに焚かれた青白い篝火の炎が一
段と激しく燃え上がったとき予言は始まった。
「偉大なる魔族の神ドホラーは私に語りかける。
 大いなる厄災の天命星が現れる。
 その者は世界を統べる十二の徴を集める。
 魔族の中からも裏切り者が出。
世界は、破滅へと向かう。
 それは、偉大なる魔族の神ドホラーが定めた、終末の時。
 全ての罪に汚れた業深き人間達が受けねばならない、地獄の炎の洗礼。
 終わりの刻。
 その最終戦争から助かり魔族の天国でコワイダーの饗宴に参加できる者は、
私、魔族の神ドホラーを信じる魔族の眷属達のみ。
 だが、世界の崩壊と共に最後の、魔族の勝利を告げる終わりの刻の予言を狂
わせようとする者が現れる。
その者こそ、厄災の天命星。
故に魔族は、その厄災の天命星を滅ぼさなければならない。
 今はまだ力を持っていない厄災の天命星を。
 我々魔族達が魔族だけが入れるパラダイスに至るために」
魔族の巫女は、そこまで語ると崩れ落ち、目を見開いて倒れた。
崩れ落ちた魔族の巫女を介抱するため魔族の魔司祭達が集まってきた。
一人の年老いた黄緑色の肌をした小柄な魔族の巫女達の長老の女予言者エゴ
シャが魔皇帝の前に出てきた。
 「魔皇帝様、どうやらYES教の神ヤハウェーイが、異世界より、時空震に
よって滅び行く、この世界を救う力在る者を呼びだしたようです」
しわがれた声で話す女予言者エゴシャは言った。
「我々、魔族の使命は、人間を滅ぼすこと。故に我々魔族は、世界の崩壊で
人間を滅ぼすことが出来るなら、それも良しとする」
 魔皇帝ネロは言った。
「魔皇帝様、約束の終わりの刻の日が近づいているのですぞ。後、三百六十
五日後に、この世界は崩壊し、惑星ジーは、跡形もなく消滅してしまうので
す。果たして、それで良いのでしょうか」
 女予言者エゴシャは、左手を腰に当て、右手で杖を突きながら言った。
 「我々魔族は、ドホラー神の勝利の時が訪れることを待ち望んでいる。エゴ
シャよ。偉大なるドホラー神の予言者でありながら。なぜ、世界の崩壊を喜ば
ない。我が身が惜しいのか」
 魔皇帝ネロは言った。魔皇帝ネロは人間達を毛嫌いしていた。その狷介な性
格は、女予言者エゴシャも良く知っていた。だから、魔皇帝ネロの不興を買わ
ないように、慌てて取り繕った。
 「そのような事は在りません。私は、ドホラー神の忠実なる予言者です」
 女予言者エゴシャは、しどろもどろで言った。
 魔皇帝ネロは、その態度を笑った。
「エゴシャよ。人間共を滅ぼすことが出来れば、この世界は崩壊しても構わ
ぬのだ。その事さえ理解できれば良い。今、厄災の天命星は何処に居る。顕眼
のハッカイ」
 魔皇帝ネロは言った。
 痩せた眼鏡を掛けた白い服の男が前に出てきた。骨と皮のような酷い痩せ方
だった。
「任せて下さい、この顕眼のハッカイの目は全てを映し出します。占う場所
はタイカイ洋上空と出てますぞ。そして、このハッカイの目は、飛行機に乗っ
ている事を捉えております。私の目を映し出しましょう」
 顕眼のハッカイは言うと、額に在る第三の目を開いた。そこから光が伸びて
いき、魔皇帝の居城ダビニフスの玉座の間の空中に球状の物体が浮かび上がっ
た。巨大な旅客機が飛んでいる、映像が浮かび上がったのだ。そして、その映
像は旅客機へと近づいていき、窓から中に入って、3人がけの客席に座ってい
る、3人の男女の中から、一人の少年を映し出した。
 「この者が、終わりの刻を阻止しようとする厄災の天命星か」
 魔皇帝は言った。
 「はい、そうです」
 顕眼のハッカイは言った。
 魔皇帝は酷薄そうな笑みを浮かべた。
「それでは、刺客を送り込むとしよう。丁度空を飛んでいるぞ。この名誉あ
る討伐に誰が行くか」
 魔王宮ダビニフスの玉座の間に炎が点り、6人の異形の者達が姿を見せた。
 一人は、竜魔族を束ねる、竜魔王ゴラド。
 一人は、獣魔族を束ねる、獣魔女王ガブリル。
 一人は、水魔族を束ねる、水魔女王ノターウ。
一人は、翼の魔族を束ねる、翼魔王ルシファー。
 一人は、不死の魔族を束ねる、不死王キュラド。
一人は、剣の魔族を束ねる、剣魔王バラリ。
この6人が魔皇帝の配下として、人間達を滅ぼすために、この惑星ジーで戦
いを行っていた。
「その役目、この竜の魔族長、竜魔王ゴラドが」
 竜族を束ねる、中年の男性の姿をしたゴラドが前に出てきた。全身をゴテゴ
テとした、カーニバルのような衣装で覆っている。そして顔は、仮装用の仮面
で隠していた。
「いえ、竜の魔族長などに任せては、於けません、獣の魔族長、獣魔女王ガ
ブリルが」
2メートルを越す筋骨逞しい巨体の女が言った。燃えるような赤毛で、目の
回りに化粧をしており、胸と下半身を覆う僅かな、鎧以外は全裸に近かった。
 「獣の魔族長などにこそ、任せては於けません。この水の魔族長水魔女王ノ
ターウが行きましょう。それにタイカイ洋は海です、それならば、この水の魔
族長にこそ相応しいではありませんか」
 水色の長く数メートル在るような髪をした女が言った。まだ若く、美しく整
った顔をしていた。水色と白い服が、ゆったりと細身の身体にまとわりつくよ
うにドレープを描いていた。
「失礼。空は、この翼の魔族長の領域です」
 堕天使ルシファーが前に進み出てきた。
外見は金髪の長く真っ直ぐの髪をした、長身の美青年だが、天界を裏切りドホ
ラー神の眷属となったのだ。
「死こそが相応しいので在れば、この、不死王キュラドが命を奪ってきまし
ょう」
 まだ幼い黒い巻き毛の十歳程の美少年が病的に白い肌に青白い顔をして言っ
た。
「全ては剣で断つのみ、この剣の魔族長バラリの魔剣綺羅亜怒で命を奪いま
しょう」
 全身を黒い鎧で覆った。男は、裏地が赤い白いマントを羽織り、黒い刀身の
長剣を両手で持っていた。
魔族長達の、意気上げる姿に、魔皇帝ネロは、笑みを浮かべた。
「偉大なるドホラー神が定めた終わりの刻を食い止めようとする厄災の天命
星の始末には裏切り者が相応しいか。翼の魔族長ルシファーよ。お前の部下が
行け」
「判りました、魔皇帝様、この翼の魔族長の配下の空魔十傑の一人コーイッ
プを使って処刑を行います」
 堕天使ルシファーは言った。
翼の魔族長、堕天使ルシファー配下の、翼角鬼コーイップが前に進み出た。
「魔皇帝様、この空魔十傑、翼角鬼コーイップが、飛行機を墜落させ、見事
に、厄災の天命星を討ち取って参ります」
 コーイップは言った。
 「任せよう。終わりの刻が訪れる、刻の為に」
 魔皇帝ネロは言った。

 第七章、飛行機は飛ぶ。そしてマスターX登場

 マイクはフミナと一緒に、リムジンに乗った。
「おい、フミナ。この世界の車は、みんなロボットが運転しているのか」
マイクは運転席で運転しているロボットを見て言った。
 「気安く私の名前を呼ばないで」
 フミナは言った。
 「それじゃ、なんて呼べば良いんだよ」
 マイクは、フミナの相変わらず険の在る態度に少々ムカツキながら言った。
 「ミス・キョトーと呼べば良いでしょ」
 フミナは、そっぽを向いて言った。
「随分呼びづらい言い方だな。フミナと呼んだ方が呼びやすいだろう」
 マイクは言った。ミス・キョトーなんて、呼びづらいにも程があった。
 「これが、私とアナタの関係を端的に表した呼び方よ」
 フミナは言った。
「何を怒って居るんだよ」
 マイクは言った。
 「いま、世界が時空震で崩壊し掛かっている現実が在るからよ。そしてアナ
タなんかと、一緒に、嫌なブドー国へ旅をしなければならないから」
 フミナは言った。
「いつも怒って居るんだな」
 マイクは言った。
 「私、アナタと口聞きたくないから」
 フミナは言うと口を閉じた。マイク・ラブクラウドは何か言ったが聞かずに
顔を背けた。そしてリムジンの窓から見える、夜景を見ていた。もう7時半だ
った。今日は、異端審問が終われば、家に帰れる筈だったのに、嫌な事になっ
てしまった。世界が時空震で崩壊するとは未だに信じられなかったのだが。
そしてベンガク国際空港からブドー行きのガクモン航空の旅客機にビジネス
・クラスで乗ることになった。流石に、父親のクレジット・カードで、ファー
スト・クラスに乗ることは気が進まなかった。そして空港のターミナルを動く
床に乗って移動していた。八時15分発の、ブドー国イッポン空港までガクモ
ン航空の777便でタイカイ洋を越えての移動だった。
 「いやあ、手ぶらで、飛行機に乗るのは楽と言えば楽だが、どうしてオレは
入管を通れたんだ。パスポートは持っていないぞ」
 マイク・ラブクラウドは言った。
「アナタにも、身分証は在るわよ。犯罪者の護送許可書が。アナタは、異端
審問に掛けられたときの身分が適用されるのよ」
 フミナは、持っているカードの中から、ガクモン王立警察の発行したカード
を見せた。
 「何じゃそりゃ。囚人服着たまま写っているだろ。あの時写した写真が使わ
れているのかよ」
 マイク・ラブクラウドは言った。だが、構わずに、フミナは続けた。
「十二氏族の聖なる文字を持っているらしい人達に心当たりが在るの。この
ガクモン王国の首都、ベンガクの国際空港からブドー国へ旅客機を使って飛ん
で行くわ」
「ブドー国か、どんな国なんだ」
マイク・ラブクラウドは言った。
 「頭の悪い格闘家や剣術家達の巣窟よ。私は行くのは嫌だけれどね。でも、
そこに聖なる文字を持っているらしい人達は居るのよ。魔皇帝ネロと戦う勇者
パーティの話は、有名よ」
 フミナは言った。
 ガクモン航空の777便が見えた。
「この世界にもジェット旅客機があるのか」
マイク・ラブクラウドは言った。
 「当然よ。あなたの世界に在る方が不思議だわ。あなたが本当に、異世界人
だとして」
 フミナはマイク・ラブクラウドの言葉を怪訝に思って言った。そして続け
た。
「私の姉のリスカーナ・キョトーは、魔王討伐の勇者パーティーの女賢者な
のよ。黒炎賢者の称号を持っている。だから、リスカーナ姉様に会って、聖な
る文字を持っていそうな娘を捜し出すのよ」
 そして、ガクモン航空の777便に載った。
フミナが持っている搭乗券に従って席に座った。3人がけの座席で、窓際に
は先に乗客が座っていた。マイクは真ん中の席に座って、フミナが通路側の席
に座った。
「君達も、ブドーへ行くのかい」
 窓際の席には四角いサングラスをかけて、髪の毛をX型に結って、口髭を生
やし、黒い袖無しの空手着を着た筋骨粒々の身体に、足には鉄ゲタを履いてい
た三十代ぐらいの男性がいた。そして新聞を読んでいた、ブドー新聞国際版と
読めた。そして第1面には、時空震が、この時空を滅ぼすと書いてあった。
「あなたもブドーに行くんですか」
 マイクは聞いた。
「わたしの名前はマスターX。X流格闘技の創始者だ」
マスターXは言った。そして握手の手を出した。マイクは何となく握手し
た。その時に、身体に衝撃が走った。何かが、身体の奥底で動き出したようだ
った。マイクは、ソレを押さえた。
「君は見たところ、良いソウルの流れをしている。X流格闘技を学ばない
か。君には素質は在るようだ。この今、握手の際に行った、X流のソウル練
法、発動法によって、君は、簡単に目覚めた、ソウルを操ることが出来たよう
だね」
マイクは、マスターXに言われてハッとした。オレは、ソウルというモノを
操れるのか?
「X流を学ぶ?オレなんかに教えてくれるんですか」
 マイクは言った。
「何言っているのよ。コレから、世界が崩壊するのよ。格闘技なんか学んで
いる暇なんか無いんだから」
フミナは険のある声でマイクに言った。
マスターXは笑い出した。
「フハハハハハハハハハ!世界崩壊なんのその!X流を極めれば!何も恐れ
る事はないぞ!君程に良いソウルの流れを持っている人間は初めてだ。鍛えれ
ば3日でモノになるぞ」
 「たった3日?」
 マイクは聞き返した。
 「そう、たったの3日だ。X流は、最強の格闘技になるために、最適のカリ
キュラムを組んである、君ぐらいにソウルの流れが良ければ、3日で、そこら
辺の格闘家や剣術家には負けない、強さが手にはいるだろう。そうすれば君は
漢(オトコ、つまりマッチョ)になることができるぞ」
マスターXは言った。
3日で漢になれる?
 マイクは動揺した。そして素早く結論を出した。
「フミナ、オレ、マスターXの弟子になるかも」
 マイクはフミナを見て言った。
 「バカ言わないで!アナタのやることは、十二人の聖なる文字を持つ娘達を
捜し出す事よ」
 フミナは言った。
「でも、たった3日で漢になれるんだ。こんなチャンスはないよ」
 マイクは言った。
「その通り!君ほどにソウルの流れが良ければ、簡単に、X流の基礎を1時
間で会得できる。この飛行機の中で、X流のソウル操法を教えよう。これは、
必殺技を放つ際の基本技術だ」
マスターXは言った。
「必殺技が1時間で身に付く?それじゃ、フミナ、オレ、マスターXの弟子
になるよ」
マイクは、アッサリと弟子になることを決めた。
 「何、勝手に弟子になっているのよ。格闘技なんか学ばないで、スキルでも
学んでいなさいよ」
 フミナは言った。
だが、マイクはフミナに構わずに、マスターXの方を向いた。
 「それでは師匠教えて下さい」
 マイクは言った。
 「よろしい。先ずは、身体のコアを開くのだ。さっき君が開いたコアは、第
三コア。これから1時間で全ての六つのコアを開いていくのだ。一番手っ取り
早い方法が、第三コアを開き下降させて、第二、第一のコアを開いていく。そ
して、第一のコアから、一気に、第一から第六のコアまで開いていく」
マスターXは言った。
 「良く判らないんですけれど」
 マイクは説明が理解できなくて言った。
 「それなら、第三のコアをさっきと同じように開くのだ」
 マイクは、さっきの、身体の奧の蠢きを思いだした。そうすると、身体再び
身体の中で動き出した。
 「そう、それを下に持っていき、下降させ、一気に頭頂部まで持っていく」
 マスターXは言った。
 マイクは、マスターXの言うとおりに、して、蠢きを下に持っていき操っ
た。すると、身体の中に何かが開いていく感覚が起きた。
 「これは一体」
 マイクは戸惑った。
 「さあ、その流れを頭頂部まで持っていくのだ」
 マスターXは言った。マイクは、蠢きを頭頂部まで持っていった。そうする
と、身体が光になったような気分がした。いや、マイクの全身から光が発して
いるのだ。
マスターXは満足そうな顔をした。
 「ほう、やはり、私が見込んだ、だけの事はある。これで君は、体内に流れ
るソウルの流れを操ることが出来る。これで各コアを強化していけば、幾らで
も強力な必殺技を使うことが出来る様になる」
 フミナがマイクを見つめて青ざめた顔をしていた。
 「なんで、格闘家や剣術家が使う必殺技を発するための技術が、僅か、十分
程度で身に付くのよ」
 フミナは横に座ったまま言った。
 「判らないが、マスターXの指導が良いんだろう」
 マイクは全身から光を放ちながら言った。 「いやあ、君は素質が在るぞ。
ソウルの流れが良いから、簡単にX流のソウル操術、発動法を会得できるの
だ。コレだけ早い生徒は初めてだ。先ずは立ち上がって見ればいい」
 マスターXは言った。
 「ほい。判りました。師匠」
 マイクは言うと立ち上がった。するとマイクの身体は上へと飛んでいった。
そして頭が、旅客機の天井に突き刺さった。そして旅客機
の天井と旅客機の外壁の間に頭が出ていた。 なんだコレは。立ち上がっただ
けで、こんなに簡単にジャンプするとは、と、マイクは思った。頭は痛くない
し。なんか、変だった。
マイクは、頭を手を使って、飛行機の天井から頭を抜いた。そして,元のシー
トにストンと落ちたが、身体は、何の痛みも感じなかった。
「どうやら、急に身体がソウルを通したせいでコントロールが難しくなって
いるようだな。ここまで早く、発動法に成功した、生徒は初めてだ。どうや
ら、君は、身体の動かし方を慣らした方が良いようだ」
 マスターXは言った。
「そうなんですか師匠。オレ、こんな才能在ったとは意外ですよ」
 マイクはマスターXに言った。
 もしかして、これが、特殊な力なのか?
 セイザは驚きながら考えた。
 「まずは、立ち上がるときに、天井まで飛んでいかないようにコントロール
をするべきだな。君の訓練は今から、先ずは、発動法で得た、武術体をコント
ロール出来るようにする事だ」
 マスターXは言った。
 「あのうですね」
 突然女性の声がした。フミナとは違う声だった。
 何となく、不味い予感がした。マイクは声の方向を見ると、金髪のボブカッ
トのフライト・アテンダントが怒って顔でマイク達を見ていた。
 「何でしょうか」
 マイクは不味いような気がして、聞いた。
 「このガクモン航空の機内の中では、格闘技や剣技の必殺技の発動及び、魔
法の使用禁止です。当然の如く、武器弾薬の持ち込みも禁止です」
フライト・アテンダントは言った。
 「不味いな。少しは大目に見てくれないかね」
 マスターXは言った。
 「駄目です。ガクモン航空の規則です。搭乗券に書いてあります。違反した
ら罰金です」
 フライト・アテンダントは言った。
 「フミナ、金出してくれ。クレジット・カード持って居るんだろ」
 マイクは、フミナを見て言った。
 「嫌よ。アナタが、勝手に、格闘技を習って、飛行機の天井に穴を空けたん
でしょ」
 フミナは冷たく、マイクに言った。
 「彼は必殺技を使ったわけではないんだ。それ以前の段階だ」
 マスターXは言った。
 「駄目です。規則は、規則です。このガクモン航空の規則によって罰金で
す」
 フライト・アテンダントは言った。
 「フミナ、やっぱり金出してくれよ」
 マイクは、フミナに頼み込んだ。マスターXは格闘家だから、あまり金を持
っている様には見えなかったのだが。それに師匠に金をせびるのは不味く思え
た。
 「嫌と言ったでしょ。しつこい男ね、この…」
 フミナがマイクに愚痴を言っている途中で、飛行機に振動が走った。そして
揺れて、窓の向こうで火柱が上がっていた。
「何が起きたの」
 フミナは慌てて言った。
 機内放送が入った。
 「私は機長です本機は、第二エンジンが停止しました。これより、高度を下
げます。シートベルトを締めて下さい」
 機長らしい男性の声がアナウンスで入った。
マイクはフミナの真似をしてシートベルトを締めた。
 「これは一体、何だ?アレは翼の魔族か」
 マスターXは言った。
 そして、マスターXは、窓の外を見ていた。
 「魔族ってなんだ?」
マイクも窓の外を見た。
 黒と緑色のコウモリの羽が生えた怪物が、旅客機の翼に取り付いて、エンジ
ンを破壊している様だった。
 「本当に魔族も知らないの。魔族は、人間を滅ぼすために生まれた種族よ有
史以前から人間達は魔族と戦って生きてきているの」
フミナは言った。
その時、マイクと、外の魔族の目があった。
魔族は翼の上を歩いて窓に近づいてきた。
「フハハハハハハハハハハ!この私に任せろ!X流のXは変数のX!強さは
無限大!」
マスターXは、席を立ち上がった。
 魔族は、鉤爪で、旅客旅客機の外壁を切った。文字通り切ったのだ。外壁と
機内の空気の圧力が変わり、外に吸い出されそうになった。だがシート・ベル
トで吸い出されることは避けられた。そして不思議と、マイクは、シート・ベ
ルトの力とは別に、身体が、座席と一体化している感触があった。
マスターXは、荒れ狂う、機内の中で腕を組んで、立っていた。やはり鉄ゲ
タが重いから、吹き飛ばされないのか?とマイクは思った。
 マスターXは魔族と対峙した。
「お前に用はない。このコーイップが狩るべき者は、厄災の天命星のみ」
 魔族はコーイップは言った。
 「フハハハハハハハハ!魔族何する者ぞ!
我が身の力はX流の熱い血の滾りで燃えに燃えて居るぞ!」
マスターXは言った。
「これから十秒で、貴様を殺す」
魔族コーイップは言った。
そして鉤爪を振り回した。すると衝撃波が起きて、旅客機777便の天井が
大きく捲れた。だが、完全に、旅客機は真っ二つにはならなかった。マスター
Xが、魔族コーイップの鉤爪を受けていたのだ。
「フハハハハハハハハハ!その程度の技では効かぬぞ!」
マスターXは叫んだ。
 「コーイップ乱撃脚!」
 魔族コーイップは翼で空中に浮かび上がると、羽で上半身を隠して、回転し
ながら、マスターX目がかけて、足が何本にも見える高速の連続蹴りを放っ
た。
「効かぬわァァァァァァァ!」
マスターXは全ての魔族コーイップの蹴りを受け止めたようだ。
「フハハハハハハハハ!すでに十秒は経ったようだな!魔族コーイップ
よ!」
マスターXは言った。
 「こしゃくな、人間め。それならば、飛行機を落とすまで」
 魔族コーイップは言った。そして空中に翼で浮かんで、回転を開始した.空
中に巨大な竜巻が生じた。
 そして、その竜巻は、マイク達の乗っている、777便へ向かって飛んでき
た。
不味い!
 マイクは、青ざめた。竜巻が放つ風圧が機内にも立ちこめた。
 だが、マスターXは冷静だった。飛行機の翼に立ち、翼を切り刻んで飛んで
くる竜巻目がけて、両腰に拳を引いて当てた。
そして、飛んでくる竜巻目がけて、両腕を交差させた。
 「X・ターミネイト!」
マスターXが叫ぶと、両腕から、巨大なX字型の光の衝撃波が飛んでいっ
た。そして竜巻にぶつかると、竜巻は吹き飛んだ。そして、竜巻の中にいた魔
族コーイップは全身が、ボロボロになって、夜の暗闇の下へと落ちていった。
「これぞX流!」
 振り向いたマスターXは、白い歯を見せて笑った。
オレも漢になりてぇ。
 マイクには、あまりにもマスターXが格好良く見えた。
 だがフミナが感激に浸っている、マイクの注意を現状の問題へと振り向かせ
た。
 「何、しているのよ!この飛行機は、今墜落しかかっているのよ!翼が、あ
の魔族のせいで、半分以上なくなっているんだから!」
フミナは相変わらずの険の在る声でマイクに言った。
「お前の魔法で何とかならないのか」
 マイクは言った。
 「私の封印術で出来ることは限られているけれど」
フミナは困ったような声で言った。
機内放送が入った。
「無事にタイカイ洋は渡りました。ブドー国に到着します」
機長の声が入ってきた。
 「どうやら、この飛行機は、無事にブドー国に着いたようだな」
 マイクは言った。
 「フハハハハハハハハ!X流は魔族を相手にしても互角以上に戦える、真の
漢の格闘技なのだ!君は、もう、X流の弟子だから、これから、月謝の相談を
しよう!インターネット・バンキングの利用も可能だ」
 マスターXは自分の席に座ると言った。
 「おい、フミナ。X流の月謝を、カードで支払ってくれ」
 マイクはフミナに言った。
 「嫌よ。何で、私の、お父さんのカードで、アナタが勝手に入った、X流
の、月謝の支払いをしなければならないの」
 フミナは言った。
「だから、これも、きっと、後で役に立つって。この世界は、魔族の様な訳
の判らない人間の敵が居るんだろう。それならば、オレは、一人で自分の身ぐ
らいは守れなければ不味い。ついでにもっと強くなれば、お前も守れるぐらい
の強さが手に入るんだぞ」
マイクは言った。
 「アナタなんかに守って貰う必要は無いわよ」
フミナは言った。
 「だから、X流の月謝を出してくれよ」
 マイクは言った。
「フハハハハハハハハ!X流の月謝は分割ローンも組めるから安心したま
え!」
 マスターXは言った。
 そして飛行機は半分折れた左の翼と右側のエンジンだけで飛んでいった。

   第八章、X流道場、X武藝會舘、そしてマキゲイ登場。

 不味いとは思ったが、マイク達を載せた、ガクモン航空777便は、着陸す
るときに、胴体が真っ二つに割れた。そして火花を散らせて、マイク達の乗っ
た、機体後部は、滑走路を滑っていった。
 そして、消防車と救急車が十台ぐらい集まって来た。この世界でも消防車は
赤いことをマイクは知った。
 「最悪な展開ね。やっぱりブドーなんかに来るから。こんなロクでもないこ
とになるのよ」
 フミナは言った。
 「文句言ったって、しょうがないだろう。聖なる文字を持った娘達を捜すに
は、ブドーが良いって、言ったのは、お前だぞ。フミナ」
マイクは言った。
 「フミナって気安く呼ばないで、ミス・キョトーと呼びなさいよ」
 フミナは言った。
そして、マイク達は、真っ二つになった、ガクモン航空777便から救出さ
れるように降りていった。
そして、飛行機を乗り換え、不時着した、ユウコウ空港から、イッポン空港
へと飛行機を乗り継いで行った。
入管を通り過ぎるとテレビ・カメラとマイクを持ったマスコミがやって来
た。
 「ツブヤケで見ましたよ。「マスターXが魔族と戦っているナウ」という書
き込みが話題になりました」
 女性リポーターが言った。
「どうでしたか、生きている間から「X流最強伝説」と呼ばれている伝説の
マスターXは魔族と戦って」
 男性のリポーターが言った。
「あなたが、勇者パーティに復帰すれば、現在のセイバー・ソードの勇者パ
ーティも魔皇帝討伐の人類の悲願を達成できると言われているのですか。世界
崩壊まであと365日切ったことについて一言!」
 女のリポーターは言った。
 マスターXは手を振った。
 「ああ、私はマスコミは事務所を通して、会見を開くから、事務所通して。
事務所を」
 マスターXは手を振って言った。
 そしてマスコミを振り切ってイッポン国際空港の建物から出ていった。
 「何で、マスターXの後を着いていくのよ!」
フミナは、マイクに言った。
 「それは、3日で漢になるためだ。今、コアの扱い方が判ったオレは、こん
なにからだが、自在に動く。ほれ、見て見ろぴょーん」
 マイクは軽く、ジャンプした。すると5メールぐらいの高さまでジャンプし
た。
 そして降りて着地した。足のクッションも少し膝を曲げるだけで十分だっ
た。
 「なによ。なんで短時間で、格闘家としての高い運動能力を手に入れている
のよ」
フミナはマイクを見て言った。
 「まあ、これも神なる主の計り知れぬ力かもしれぬのだが。まあ、これか
ら、3日で、漢になれるようだし。何等問題はない」
マイクは満足そうに言った。
「大ありよ。格闘家が必殺技を使えるようになるまでには、子供の頃からの
厳しい修行が必要なのよ。それなのに、何で、3日で必殺技が使えるようにな
るのよ」
 フミナは言った。
マスターXは、黒いトランクを持ったまま歩いていたが。後ろを振り向い
た。
 「ところで君の名前は、まだ聞いていなかったな。私の生徒になるのなら
ば、名前ぐらいは知らねばなるまい」
 マスターXは言った。
 「師匠!オレの名前はマイク・ラブクラウドです!」
マイクは言った。
 「そうかマイク君。これから、3日で十分戦える格闘家に育てよう」
 マスターXは言った。
「これから、私達は、勇者パーティーの賢者、リスカーナ・キョトーに会い
に行くんです」
 マスターXはフミナを見た。
 「勇者パーティは、マカイ帝国に魔皇帝を倒す為に作られた国連協定に基づ
いて設立されたVIP待遇のパーティだ。そのメンバーに会うためには、特別
な許可証が必要だ。君は、それを持っているのかね」
マスターXは言った。
 「リスカーナ・キョトーは、私の姉なのです、だから、家族として会えるは
ずです」
 フミナは言った。
「そうか、それならプライベートな時間として会えるか。だが、勇者パーテ
ィは人知れず、マカイ帝国との戦いを行うのが本来の姿だ。だが、この世界
は、時空震で滅びようとしている。マカイ帝国の魔族達を滅ぼしても、三百六
十五日後に崩壊してしまうのだからな」
 マスターXは言った。
 「師匠、実は、裏技が在って、聖なる文字を持った十二人の娘達を集めたと
きに、世界の崩壊は止まるらしいんですよ」
 マイクはヘラヘラと言った。
 「何、バラしているのよ、重要な事なんでしょ!」
 フミナがマイクを険しい目で見て言った。
 「いやあ、師匠は信じられるからペラペラと喋っちゃいます」
 マイクは言った。
 「口が軽い男。サイテーね」
 フミナは言った。
マスターXは首を傾げた。
 「YES教の話かな。それとも君の入っている土着の宗教か」
マスターXは言った。
「いやあ、なんか、この世界を創造したらしいんですが、オレは、なんか会
ったらしいんですよ。自分で、なんかと言うのも何ですが」
 マイクは話が通らなくて困って言った。
マスターXは首を傾げて言った。
 「そうか。私は、サッパリ、ワカラン」
 黒いランドクルーザーが止まった。
 車体にオレンジ色の文字でXと書かれている。 
 「どうやら、迎えが来たようだな。今は夜中だ、旅館も開いていないだろ
う。私の、道場の寮に泊まるといい」
 マスターXは言った。
 フミナは険しい顔をした。
「私は、男だけの、格闘技道場の寮に泊まる気は在りません」
「女性の寮生も居る。何等問題はない」
マスターXは言った。
金髪の巻き毛の変なリーゼントのようなアンモナイトのような髪型をした、
顔のデカイ、
二十台前半ぐらいの若い男がランドクルーザーから下りた。
 「マスターX。何ですか、コイツラ」
 若い男は言った。
 「この少年は、良いソウルの流れをしているから、X流を教え込むことにし
たのだマキゲイ」
マスターXは言った。
するとマキゲイは、マイクを変な顔で睨んだ。つまりガンを飛ばした。
「オレは、マスターXの一番弟子、マキゲイ様だ。これから、オレが兄弟子
だからな」
 マキゲイは言った。
 「お願いします」
 マイクは言った。
 「勘違いして居るんじゃねぇぞ。X流は甘くないからな。女連れてチャラチ
ャラしている奴に、X流を学ぶことなんか、出来ないんだよ」
 マキゲイは言った。
 「マキゲイさん。コイツは、どうでも良い女です。在る事情で仕方なく一緒
に仕事をしているだけですから」
 マイクは言った。
 「何よ、その言い方」
フミナが険しい顔で言った。
 「どうでもいい女なら、オレの女にならないか」
マキゲイはニヤニヤ笑ってフミナの肩に手を置いた。
 「女連れてチャラチャラしている奴はX流を学べないんじゃ無いですか」
 フミナはマキゲイの手を外して言った。
「何だよ、この女は。このマキゲイ様が、誘ってやっているのに、有り難が
らずに変な屁理屈を、こねやがって」
「こういう女なんです。マキゲイさん」
 マイクは頷いて言った。
「おーい、マキゲイ。早く車を動かしてくれ。今日は魔族相手に久しぶり
に、X・ターミネイトを行って疲れが出ている」
いつの間にかランドクルーザーの助手席に乗ったマスターXは言った。
「判りました。マスターX」
 マキゲイは言うとランドクルーザーに乗った。
 「それじゃ、俺達も乗ります」
 マイクは言うと、ランドクルーザーの後部座席に、よじ登った。
 「おい、フミナ。一人で、どっかへ泊まるのか、師匠の道場で泊まった方が
良いぞ。魔族が出るかもしれないのだし」
 マイクはフミナに言った。フミナは不機嫌そうな顔をした。
 「私は、嫌だけれど、仕方がないから乗るのよ。リスカーナ姉様が居るとこ
ろに泊めてもらえるとも思えないし」
フミナは言った。
 「まあ、乗りたまえ」
 マスターXは言った。
フミナは、ランドクルーザーに乗った。
そしてランドクルーザーは、進んでいった。
マイクは少しウトウトしていた。
 そしてマキゲイの運転で1時間半ぐらい走ると,夜が明けてきた。もう、外
は、太陽が昇り始めていた。時差のせいか、少し時間の感覚がズレた感じだっ
た。
そして、空港がある郊外から街の中へと入っていった。外では、皆、早朝な
のに格闘技の服や、様々な道着や、ジャージを着たりして、剣を振るったり、
様々なヌンチャクやサイなどの武器を振り回したり格闘技の訓練などをしてい
た。
 「確か君達は、ブドーに来るのは初めてだったな、ここが、ブドー国の首都
イッポンだ」
 マスターXは言った。
「この国の国民は、みんな格闘家や剣術家なの。呆れた光景よ」
 フミナは言った。
 「そう驚く事はない。これが、ブドー国の日常なのだ。時空震による世界崩
壊が起きようとも、武術の鍛錬は死ぬまで続けるモノなのだ」
 マスターXは言った。
「マスターX着きました」
運転をしていたマキゲイが言った。
 「ここがX武藝會舘なのか」
 マイクは言った。看板に大きくX武藝會舘と赤地に金文字で書かれていて、
そして、五重塔の様な形をした、巨大な建物が、コンクリートで造られてい
て、何層も在った。
大体、ドーム球場を十個ぐらい重ねたような形だった。
 「そうだよ。ここが世界最強の格闘技を目指す、X流の道場だ。まだ、お前
の名前聞いていなかったな新入り」
 マキゲイは言った。
 「オレの名前はマイク・ラブクラウドです。こっちの女は、フミナ・キョト
ー」
 マイクは言った。
「はあ?」
 マキゲイは変な声で言った。そして続けた。
 「キョトー?それは、今の勇者パーティの女賢者リスカーナ・キョトーと同
じ姓だ。親戚か何かなのかよフミナ」
 マキゲイは言った。
 「勇者パーティの女賢者、リスカーナ・キョトーは、私の姉です。それにフ
ミナと気安く呼ばないで下さい」
 フミナは言った。
 「ガクモン国出身の女賢者の妹か。何で、そんな奴が、このブドーに来たん
だよ」
マキゲイは言った。
 「マキゲイ。車を車庫に入れるんだ」
 マスターXは、いつの間にか助手席から降りていて言った。
 「まあ、後で聞けばいいよな。早く、マイクとフミナも車から降りろ。マキ
ゲイ様は、これから、寮生達を起こして食事前の朝稽古の指導をしなければな
らないからな」
 マキゲイは言った。
そしてマイクは、マキゲイに文句を言うフミナと共にマスターXの後を着い
ていった。
「師匠。無茶苦茶デカイ建物ですね」
マイクは言った。
 「これが、元、魔皇帝討伐の勇者パーティに居た人間が得る名声と言うモノ
だよ。そして、この惑星ジー上から、私の名声を聞いて、X流格闘技を学びに
来る、人間達が後を絶たず。このような巨大な、道場を建設して、運営してい
るのだ」
マスターXは歩きながら言った。
 「そうですか。オレは、こんなデカイ道場は初めて見ました」
マイクは、階段を昇って正門を潜りながら言った。
 「コレから、君も、朝稽古に参加すると良い。昨日の発動法を会得している
以上、君は、X流の初段ぐらいの力は在る。まずは、発動法で得た力を格闘技
の武技として発揮する訓練をするのだ。君は格闘技を、やったことは今まで一
度も無いと思うが。どうかな?」
 マスターXは言った。
 「その通りです師匠。オレは、今まで、格闘技は一切やったことがありませ
ん」
 マイクは言った。
 「それは動きを見れば判る。格闘技をやった者で無いことは想像が付く」
 マスターXは言った。
 「何、格闘技の練習なんかしているのよ。私達は、リスカーナ姉様に会っ
て、聖なる文字を持っている娘を捜すのが仕事よ」
 フミナが顕の在る声で言った。
 「3日間で漢になれるんだ。オレは師匠にX流を学ぶよ」
マイクは言った。
 「それじゃ、私は、どうするのよ。もう眠たくてくたくた」
 フミナは眼鏡の下の目を瞼の上から押さえて言った。
 「それならば、この道場の寮で睡眠を取ればいいだろう。女子寮も在る私の
方から話を付けておこう」
マスターXは言った。
 そして受付で、フミナが女子寮で眠れるように手続きをした。
「それじゃ私は眠ってくるわ。昨日は、異端審問から、マンシュリー教授の
話を聞いて飛行機に乗って魔族に襲われて、さんざんな一日だったんだから」
フミナは言った。そして女性の職員らしい(それでもXと背中に書かれた白
い道着を着ていたのだが)に連れられて行った。
 「いやあ、オレ、どうも発動法を会得してから、テンションが上がり気味
で。少し眠ったら、元気になって、体調が急上昇しているんですよ」
 マイクは言った。
 「それは、発動法は身体のコンディションを高めていく、練法だからだ。君
は、僅か十分で発動法に成功した。私が教えた生徒の中で一人を除いて最短の
時間だ。それでは、初段コースの部で、君は、朝稽古をしたまえ。発動法を使
えば初段コースでも付いて行けるだろう。発動法は、初段になってから会得す
るのが本来のカリキュラムだからだ。ああ、そうだX流の道着を、用意しなけ
れば。私はコレから、政府の高官と会談が在る。初段の部を指導するニューモ
ンが君の稽古を担当することになる」
 マスターXは、そう言うと、受付で話を通した。
そして、マイクは、やってきたニューモン
から道着を見繕って貰った。サイズは様々だったが。自分の身体に合う、道着
を付けた。白帯だったが。気にはならなかった。マイクは発動法を会得してか
ら、妙に身体の調子が良くて、全身がゴムマリの様に跳ね回るような感じにな
っていたのだ。無性に動き回りたくてしょうがなくなっていた。
 マイクは気合い十分で、X流の初段の朝稽古に参加することになった。
 初段の朝稽古には、千人近くのX流の門下生達が集まっていた。
 ニューモンは、まず、発動法の練習を開始した。そしてマイクは気が付い
た。発動法をやっても、他の生徒達は、あまり、ソウルの流れが大きく無いこ
とに。マイクは、自分が、コアを開いて発しているソウルが他の生徒達よりも
大きいことが判った。
 コレならいける。
 マイクは、比較的簡単に、発動法が上手く言っていることに気分が良くなっ
ていた。
 そして、2人ずつ一組になって,一本組み手を開始することになった。マイ
クは一本組み手が何であるか判らなかった。だが、発動法が上手く行っている
ため。気分良く、身長が2メートル越している大男と対峙しても、全然平気だ
った。
 「一本組み手開始!」
 ニューモンは叫んだ。
 大男は、マイク目がけて、拳を振るった。マイクの顔面目がけての一撃だっ
た。
 マイクは、避ける為に思いっきり飛び退いた。するとマイクの身体は十メー
トルぐらい後ろに高速で吹っ飛んでいった。
 他の一本組み手をしている、道場生に背中から、ぶつかった。
「あ、悪い、スイマセン」
 マイクは謝った。
 だが、マイクと、ぶつかった道場生は、曲がった腕を押さえていた。どうや
ら、骨が折れたようだった。
 ニューモンがやって来た。
 「どうしたんだ白帯」
 ニューモンは言った。
 「背中から、ぶつかったら、この人が打ち所が悪かったのか、怪我したんで
す」
マイクは言った。
腕を押さえて倒れている道場生が気の毒に思えた。よっぽど打ち所が悪かっ
たのだろうとマイクは思った。道場生は、やって来た担架に乗って担ぎ出され
た。
 「総師範マスターXから、発動法が出来ると聞いているが、どうやら、その
ソウル量は、二段以上は在るようだな。それでは、今度は攻撃技をやる番だ」
 ニューモンは言った。
 「判りました」
 マイクは言うと、元の大男の所まで走ろうとしたら、身体が、急激に軽く
て、一っ飛び手で飛んでいった。
 これが発動法なのか。
 マイクは、あまりにも簡単に、身体が動くので動揺していた。
 まるで超人だ。
 マイクは自分が手に入れた能力の一端がようやく理解できた。
「一本組み手開始!」
大男が、防御の構えを取った。
 マイクは、身体が、軽く動くが、力を押さえて軽く、大男目がけて右拳の突
きを放った。
 ガードの上から打った突きだった。
 だが、大男の身体は浮いて吹き飛んでいった。その距離は,約四メートル。
 マイクは自分の身体が、どうやら、確実に強力になっていることに気が付い
た。あの魔族コーイップを倒したマスターXに見込まれたことは、発動法で何
となく、判っていたが、今度はハッキリと、自分の強さとして判った。
 これなら、オレは3日で漢になれる!
 マイクは確信した。
 それから朝の八時まで、X流の稽古は続いた。マイクも、自分の身体が、如
何に強化されているのか判った。マイクは、力をセーブして一本組み手や自由
組み手を戦ったが。それでも、マイクが見よう見まねの受けを行ったり、突き
を放つと、他の道場生達は顔をしかめていた。どうやらマイクは、初段よりも
上の実力が在るようだった。昨日の十分間で会得した発動法一つで、ここまで
差が出るとは思いもよらなかった。
そして朝御飯となった。
 文字通りの巨大な丼メシに牛肉らしい物体が載っかった超特盛り牛丼が朝食
のようだった。ガツガツと食っているマイクだった。本来小食だったマイクだ
が、どうも無性に腹が空いている様だった。
 「どこの流派に入っていた」
 隣りに座った、三十台ぐらいの無精ヒゲを生やした。男の道場生が言った。
 「どこにも入っていませんよ」
 マイクは言った。
「ソウルの操法を教える格闘技や剣技の流派は、世界には腐るほど在る。だ
が、このX流ほど、ソウル操法が出来る確率が高い流派無いと言われている」
 無精ヒゲは言った。
 無精ヒゲが話していると、ニューモンがやって来た。
「道場生マイク・ラブクラウド。私は君の朝稽古の状態を見て初段を与える
ことをマスターXから頼まれている。君は、初段を受けるに相応しい、これ
が、黒帯だ」
マイクは、X流と書かれた、黒帯を受け取った。
 そして、黒帯を腰に巻いた。
 イイ感じだった。
 食堂の中から拍手が起きた。マイクは四方八方に頭を下げた。
なんか簡単に漢になれてイイ感じだった。
X流は楽だな、と、マイクは思っていた。
朝稽古が終わると午前の稽古が始まった。
マイクは、黒帯を締めて、ニューモンの指示に従って初段の稽古に参加した。
朝の稽古と同じような稽古内容だったが。どうして普通の人間が、ソウルを操
れないのか、その方がマイクには不思議だった。
午前の稽古が終わると、マイクは、ニューモンに呼ばれた。ミス・キョトー
が、用事で呼んでいて、マスターXが、外出を許可することになったらしい。
マイクは、X流の道着を着て、フミナが待っている玄関に行った。
「何?その格好で、歩き回るつもりなの」
 フミナは、マイク・ラブクラウドが、白い袖無しの空手着の様なX流の道着
を着ているのを見て嫌そうな顔をして言った。
 「何だよ。このブドー国じゃ、みんな、カラテの道着や、ボクシングのトラ
ンクスで歩き回っているだろ。おかしくないだろ」
 マイクは言った。
「ジャージやラッシュガード着ている人達だっているじゃないの。もう少し
マシな格好で歩きなさいよ」
 フミナは辺りを見回して言った。
「オレはX流の格闘家なのだ」
マイクは言った。
 「もしかしてバカなの。そんな格闘技の稽古着を着てなりきっているようだ
し」
 フミナは言った。
「オレには、X流格闘技の才能があるのだ。発動法で得たソウルで、身体は
頗る快調に動くのだしな。魔族のような人間の敵が居る以上、オレも格闘技が
出来た方が良いに決まっている」
マイクは言った。
 フミナは溜息をつくと、服から携帯電話を取りだした。
 「この携帯電話は、オレンジ社のイッチ・フォンよ、アプリで簡単に、電車
の時刻が判るし。リスカーナ姉様と連絡が取れるの」
フミナは言った。
 「それならば、早く、連絡を取れば良いだろう」
マイクは言った。
 「私は疲れて睡眠を取ったのよ。昨日は、アレだけ滅茶苦茶な事が在ったん
だから。よくアナタは元気ね」
 フミナは言った。
 「いやあ、発動法を会得してから、身体の調子が良くて、ウトウトと仮眠し
ただけで、元気は再びチャージされているのだ」
マイクは言った。
 「もしかしてX流って凄いバカになる流派なんじゃないの」
フミナは嫌そうな声で言った。
 「そんなことは無いぞ。バカになるのではなく漢になる流派なのだ」
 マイクは言った。
 「それじゃ、このX流の道場を出て、リスカーナ御姉様が住んでいる、シハ
ン区まで、ゲダンギリ地下鉄に乗って行くわよ」
フミナは言った。
 「親父さんから預かった、カードは地下鉄で使えるのかよ」
 マイクは言った。
 「それもイッチ・フォンのアプリで検索済みよ。ベーグルの検索を使って、
この、ブドーの電車や都バスなどでは、ツウカと言う電子マネーが使えるの。
それで、父様のカードで、ツウカを買って使えば、良いわけね」
 フミナは言った。
 「それじゃ行くぞ!」
 マイクは腕を振り上げて気合いを入れて出発した。ブドーの首都イッポン
は、様々な格闘技の服を着た者達で溢れていた。

 第九章 町中に魔族が出現する超デンジェラスな市街地!そしてフミナ
の聖なる文字が!謎の美少女剣士登場!

マイクはコンビニでフミナが買った電子マネー、ツウカの青いカードを持っ
て歩きながら周りキョロキョロと見ながら言った。
「いやあ、結構変わった街だと思っていたけれど、通行人の、ほとんどが格
闘家である以外はステイツのニューヨークに近い感じだな」
マイクは言った。
 「カードを持って、歩かないでよ。スリに盗られたらどうするの」
 フミナはマイクを見て言った。
「まあ、いいや、この地下鉄、ケツダン地下鉄線に乗れば良いんだろ?」
 マイクは言った。地下鉄の改札口へと降りていく、エスカレーターに乗って
言った。
「だから、何で、ツウカのカードを出したまま、歩いているのよ」
 フミナは言った。
 「しょうがないだろ。X流の道着には、ポケットが付いていないんだ」
 マイクは言った。
 「それじゃ、私が持っているわよ。元々私の父様の、カードで買った,ツウ
カなんだから」
フミナは言った。
 そして、マイクとフミナは改札口をツウカのカードをかざして、通り、ホー
ムへ降りていく、エスカレーターに乗った。
ホームに辿り着くと、フミナの様子が、おかしくなった。顔が赤くなってい
るのだ。
 「どうしたフミナ。顔が赤いぞ。今頃、漢となったオレの魅力に目覚めた
か」
 マイクはフミナに言った。
 「黙っていて、身体が熱を持っているのよ。こんな酷い熱は初めて。龍・イ
ンフルエンザで三十九度の熱が出てときよりも酷い感じ…」 額を押さえて言
っている側から、フミナは、崩れ落ちるように、倒れた。マイクは、朝と午前
の稽古で身につけた体捌きで倒れかかったフミナを受け止めた。そしてズルズ
ルと倒れていくフミナを、抱え上げた。
「どうしたんだ」
マイクは怪訝に思って言った。
「おかしな所触ったら、後で封印術を沢山かけて、お仕置きするんだから
ね」
フミナは弱々しい声で言った。
 しょうがねぇなと、思いながらもマイクははフミナを抱え上げたまま、寝か
せる場所を捜したが、見つからなかった。駅のベンチは、一つ一つが独立して
いて、デコボコが激しいため寝かせることは難しかった。
「インフルエンザか?それとも、流行の病が、この世界にはあるのか」
 マイクは言った。
 「判らない。背中が焼けるように熱いのよ。そして全身が熱を持っている」
フミナは弱々しい声で言った。
 「背中?」
 マイクが抱えているフミナの背中から光が漏れていることに気が付いた。い
や昨日のマスターXが見せたソウルの光とは別だが、光が出ているのだった。
「電車がホームに入ってきます。白線の後ろまで、お下がり下さい」
その時ホームに銀色に赤いラインの地下鉄が入ってきた。
「聖なる文字が光り出したのか。お前から、光が出て居るぞフミナ」
 マイクは、フミナの背中から光が出ていることに気が付いて言った。
 「どういうこと。この光は、アナタがX流のソウル操法をやっている光じゃ
ないの」
 フミナは言った。
 「いや、オレは発動法はやっていない」
マイクは言った。
 地下鉄が止まった。マイクがフミナを抱えている場所から少しずれたドアの
中から、緑


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