高梨 美紀子 30歳 独身 彼氏なし 小柄でふくよかな大系はスーパー勤務によくいるタイプ。 高梨の口癖は語尾に「かも?」を必ずと言っていいほど付けるところである。 「これ、美味しいかも・・」 「なんだか少し頭に来るかも・・・」 「今日は忙しいかも」 この口癖を見れば分かるように田代は短気でもセッカチでもない。 おっとりしていて温厚な性格で個性が強いように見えない。 どちらかと言えば、気が弱いタイプではないのか・・と思ってしまう程である。 が、本当に気が弱い女ならば辞めているだろう。 だから田代の凄いところは一見は気弱いタイプでいながらも意外と心が強い。 ガンコな一面もあると言うところだろうか。 それとも物事を深く考えないところかも知れない。 他人のことにコレと言って興味もなく関心もない。 物事に執着しない性格がスーパーで長期勤務できることなのだろう。 高梨は 人あたりも良い聞き役上手な高梨は敵を作らない為に相談を持ち掛けられることも多かった。 特に木村からはことあるごとに年齢も近いこともあり相談や都合良く使われていたかもしれない。 木村のくだらない男の話や恋愛話に何時間も付き合わされる高梨。 一方、高梨の恋愛は・・・と言うと残念ながら花咲く出逢いはない。 それは 高梨の理想が極端に高いと言うことも原因の一つかも知れない。 高梨は少し世間しらずと言うか、夢見る夢子のようなところがある。 いわゆる イケメンと言われる若い男に恋をする。 高梨の勤務時間は遅番が主ということもあり、仕事仲間も遅番は大学生などが多くなる時間帯でもある。 それだけに会話することも多くなり、メール交換なども当然する。 そして夜番、勤務終了後なども食事ついでに飲み会などもする関係になる。 一回り近く違う大学生に恋をしてしまう高梨。 恋をするのに年齢は関係ないと言え、仲間の中でも恋に落ちる対象はイケメン好青年である。 誰だってイケメン好青年が良いに決まっているけれど。 恋愛ドラマや恋愛少女マンガが好きな高梨はやはり現実もどこか非現実的なものを求めてしまうのであった。 当然、バイト中の大学生も現実、昼間はキャンパスでそれないの女友達もいれば当然のように大学生と言えば合コンは十八番である。 男女関係なく気軽に飲み会やメール交換してフレンドリー感覚は若者ならでは。 物事の考え方や価値観のズレが年齢的にある。 バイト中に見せる大学生の顔は社会にでるまでの練習(社交辞令)的なもの。 高梨にとって厳しい現実をあえて考えないところはポジティブシンキング天然高梨なのだ。 当然、おいしいことばかりなドラマや少女マンガのようなオチにはならない。 それが現実である。 しかし夢見る夢子である純情な高梨を好きになる男もいた。 それはグロッサリー部門チーフである中山。 そう、アキバ系女藤村にチョッカイを出していた中山である。 ポッチャリとした高梨は中山の絶好の獲物となった。 しかもアキバ系藤村より高梨の方が大人だけあり愛想もあるし社会常識的なところもあるから会話もそこそこ合う。 何しろ、絶好の獲物となる時間に高梨は勤務していた。 中山は夜部門の責任者としてラストまで勤務する。 高梨は夜番であるから当然深夜1時まで勤務する。 ヘタをすれば深夜0時からは中山と高梨だけ勤務などもあった。 と、言うより中山が根回ししたとも言える。
深夜(ラスト)まで勤務はシフト的にも人数が集まりにくいこともあるし、また数名でも馴れていれば何の問題もなく営業閉店ができる。 それだけ深夜11時過ぎると御客さんの流れも極端に少なくなる。 高梨の他に40過ぎの主婦のオバちゃんがいても主婦だけに早く帰りたいものだ。 大学生がいたとしても翌朝は学校だとすれば早く帰りたいものだ。 中山は 「もうレジ〆だけだから高梨さんとオレでやるから帰っていいよ」 と自分にとって都合良く言葉を言ってしまうが結果的に大学生にとっても主婦にとっても喜ばしいことなので素直に言葉に甘えて早めに帰宅する。 そして店を閉めると中山は 「ねぇ。飯でも食べに行こうよ」 と高梨を誘う。 高梨も普通に 「いいですよ」 と一つ返事してしまう。
高梨にとって恋愛対象にならない相手は簡単に物事を考えてしまい返事をしてしまう。 女に対してダラシナイ中山は藤村に接する態度といい、他の女にチョッカイを出している。他の店舗からも中年の女が中山を訪ねてくるなど中山の女癖の悪さは有名な話。 当然、天然の高梨も知っているが、そのターゲットが自分に向いているとは高梨本人は気付かないから警戒もしていなかった。 無知といえば、かなり無知な高梨である。 何度か食事をして適当に話などをして帰宅する中山と高梨・・・ しかし、毎日のように 「食事しょう」 と言う誘いにさすがに天然の高梨も何となく言葉の真相を感じはじめてきたが確実な言葉も本人から聞いてない為、何とも言えない状況ではある。 そんなときに決まって感の良い木村はタイミング良く高梨をお茶に誘う。 「どう、最近、高梨さんは何か店でないの?」 心配心ではない、面白い出来事を探しているだけ。 興味心で聞いているだけである。 「うん、最近、山中さんがチョット・・・」 と何の警戒もなくオシャベリな木村に中山との出来事を話してしまう。 目がランランとして「ネタ」を収穫できた木村はテンション高い。
「それって 絶対に高梨さんのこと好きだよぉ!! いいじゃん!中山と付き合ってみれば?すごーい!」 「別に まだ 好きだとも言われてないし・・ 他に山中さん好きな女性いるみたいだし・・」 引きつりながら笑顔で答えた高梨であるが 時すでに遅し木村はあらゆる職場仲間に一斉にメールをする。 「山中が高梨を食事に毎日のように誘っているらしい! 山中さん、高梨さんを好きだって!! 高梨さんも迷っているらしいよ!もしかしたら、あの2人は付き合うかも!!」 激しい妄想で作られたメール文章は過剰過ぎる。 「えっ?!マジ」「そうなの?!」「だから早く他のスタッフ帰していたの?!」 一夜にして高梨と山中の噂は広がってしまった。 恐るべし木村メール。 3日と過ぎないうちに木村発メールはスーパー全体に感染をすると山中と高梨を見る目が意味深にニヤニヤとしてくる。 木村はダイレクトに面白半分に山中に尋ねた。
「山中さん、高梨さんのこと好きなの?」 「えっ?なんで?」 山中は少し挙動不審に答える。 「だって毎日のように仕事終ってからデートに誘うでしょう? 高梨さんが迷惑だって言っていたよぉ??」 「あぁ・・そう。」 迷惑と聞けば気分悪い山中だった。 一方、木村発メールを受信した高梨が恋している相手の大学生バイトも高梨に 「山中さんと仕事終ってから食事デートしてるんだって? だから毎回2人で残っていたのかぁ・・やるじゃん!」 とても最悪な展開である。 山中は噂が広がり店長からも高梨意外のスタッフを早く帰宅させたことについて説教されて二度と高梨を誘うことはなくなる。 要するに「高梨=おしゃべり」と思ってしまった。 山中に対する恋愛感情はない高梨だが一方的な誤解と始まることもない恋愛に一方的に終止符を刺されたようで高梨としてもプライドもズタズタである。 しかも高梨が片想いしている大学生まで誤解をして面倒な状況である。 ますます、遠くに離れて行く恋愛。 全て信用していた木村が仕組むことだと悟ったのは何ヶ月も過ぎた後である。 木村が男祭りで退社するまで高梨は口癖のように木村の「かも」にされてしまった。 高梨にとって春が穂のかに訪れると木村は悟り木村発メールも届く。
しかし結果として木村から「かも」にされていようと高梨にとって最後まで残れたことは やはり夢見る夢子ならでは恋する相手がいたからだと思う。 木村の邪恋より高梨の純愛の方が強いと言うことだろうか? 実のなる恋だけが強い訳でもなく、実がならない恋でも相手を純粋に愛せれば勝ち。 それで幸せと思う恋愛もあるのだ。 最後に愛は勝つ・・・と言う歌もありますし。
第7話 「勝利かも?」より
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