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作品名:スーパーレディー スーパーで働く女達 作者:さくらん

第5回   5
飯田香苗 45歳 既婚者 子供1名
飯田はサイオスより徒歩数分の距離に自宅から自転車を暴走して通勤する飯田はごくありがちな一般的な主婦パート像である。

旦那と小学1年生の息子と暮らしている。

亭主の職業柄ポスターデザイナーと言う名前の響きは良いがフリーな為、
一定した安定する給料はない。

「あぁ〜もっと安定した給料もらえるような男を亭主に持ちたかったわ〜渡邊さんは亭主が公務員でいいわねぇ〜」
飯田が何気なく言う言葉はプライド高き渡邊にとって最高の誉め言葉である。渡邊と飯田は年令も近いこともあり世間的に仲が良い。
しかし実際のところは分からない関係だと言えそうだ。

渡邊に続き第2のリーダー的ポジションの飯田は渡邊と同様に仕事に情熱派である。
たかだかパートと思えない年令なのかも知れない。

パート週5勤務と言う本当の目的は互いに同じなのかも知れないが稼ぐ目的をあくまで隠しプライドを保つ渡邊に対し素直に
「貧乏はイヤよ〜」
と全面的に感情を出す飯田の違いだけでる。
飯田は若い頃は可愛い顔をしていただろう、と思われるようなクリクリした大きめな目をしている。

しかし45歳ならではポッチャリした体系にショートカットは親しみを感じる。
飯田は見た目だけでなく行動もかなりオバさん化してきている。
試食用のパン売場のパンをやたらツマミ食いしたり弁当用のサービス味噌汁を
「お腹空いちゃったわ〜」と言ってはカウンターに隠れて飲んでいる。
かなりのオバちゃん化現象である。
もちろん暇でレジチーフがいないときである
そんな飯田は憎めないキャラだと思う。

飯田はA型ならではの性格で自分の立場関係なく相手のミスを告げるところだ。
まぁ、よく言えば裏表ない正直なマジメな女性だと思うが、もう少し大人なのだから汚い部分を見せた方が利口ではないか?と思う。

例えば、スーパーマーケットでよく多い売変ミスである。
それはレジ・チェッカーが間違えたのではなく各部門の時点で値段設定のミスから起こっている間違いである
例えば198円のホウレンソウと広告や店舗のPOPなどで書かれている。
当然に御客は198円だと思い購入する、しかしレジを通し購入してレシートを見てみれば238円と言うことがある。
それはチェッカーの間違いじゃなく各部門の時点で設定する金額を開店前に怠ることから起こっているミスになるのだが、
このサイオスは異常なまでに売変間違いが多い店である。
それは社員がしっかりしてないところが1番の原因だと言える。

このサイオスの社員は他のスーパーと違って平均年齢が若いチーフで言うなら32歳
その他の社員にしてみてば20歳そこそこである。
ようするに仕事に関しても学生のサークルの延長しているような感じであり明るく楽しい店内ではあるが商売としてはどうなんだ?と言うような店内である。

そんな中途半端な仕事を飯田は見て見ない振りもできない。レジで修正すれば良いと言うことをしたくない飯田は各部門「モノ申す」と言う感じだ
「また売変ミスよ!どうなってるいの?!シッカリしてちょうだい!こーゆうミスはレジが御客から苦情を言われるのよ!」
と言う状態で各チーフに苦情を言う。
もちろん、この飯田の行動はけして間違っていない。
正義感溢れる行動だと思う。
しかし言葉がストレート過ぎる為と売変ミスの度に怒鳴り込む為に正直各チーフからは「飯田のオバさんはウザイ・うるさい」とマイナスイメージになっていた。
ズル賢い人間は
「忙しいとこゴメンね?これ価格間違っていたので 後で売変してください」
と言い方が柔らかで4回起こったとしても2回は売変の苦情を伝えるだけで2回はレジで修正して状況を飲み込んでいる。
そのように調子良くできない飯田はかわいそうなことに飯田本人にまったく罪はないのだが言葉の伝え方が下手な為に反感を買ってしまう不器用な女性が飯田なのだ。
その性格は社員だけではなく御客さんに対しても同じである

各自お客様が袋を持参して1来店異に金額に関係なくスタンプカードにスタンプを1回押すと言う制度は何処のスーパーでも見かけると思う。
スタンプ50回押したら500円マイナスして御買い物ができるなどと言う特典が付き物であるが御客さんの中にはズルをするセコイ客も多い
例えば100程度の買い物をしてレジに来て購入してもらいスタンプを押す。
そして再び店内に戻り100円の物を購入してスタンプを押してもらう行動である。
もちろん、店としても一言いいたい気持ちはあるが、そのような行動をする御客は見た目からして関りたくない口うるさそうなタイプである。

10言って100返ってきそうな怖そうなオバさんである。
そんな客に対しても飯田はストレートに
「お客様、そのような行動は遠慮願います」
と言ってしまい 何度となくお客とバトルを繰り広げている。
当然 お客は痛いところを指摘されながらも謝れないので収まり付かなくなり
「店長を呼びなさい!!」となる。
店長は商売なので平謝り状態である。

その後 飯田に
「飯田さんは間違ってないけど見ないフリしていいから・・」
と店長なりに飯田を気遣いながら説得するが飯田は間違ってないことに納得できない。
「そんな!まともに買って頂くお客様に失礼ですよ!!違いますか?!」
と逆に店長の荻原にキレる。
荻原はタジタジで飯田をなだめる。
渡邊が去ってホッとしていた荻原であるが期待をしていた飯田が渡邊より強いキャラになるとは思いもしなかった。
スーパーマーケットに正義感は必要ない。
矛盾している方が上手く働けるものだ。
オープニング勤務から2年。
正義感が日に日に正義感は強くなりフロントの地位を確実にしてきた飯田に大きな事件が
勤務開始前である午前9時50分に起きた。
開店準備をしている飯田は本日のチラシに目を通していた。
「今日は魚が特売と・・・
ちゃんと鮮魚は売価変更してあるのかしら?
アジの干物とさんまの干物が1枚88円・・・・

飯田はレジのPLUボタンを押して価格チェックを行った。
案の定、魚のボタンを押しても表示される価格は昨日のまま128円である。
チラシに対して表示された価格より40円の誤差が生まれてしまう。
主婦の飯田にとっては大事である。
もし飯田が価格確認をしていなければ10分後には知らぬまま開店してチラシを目当てに魚を買いに来た御客に128円で売ってしまう結果になるのだ。
当然、チラシと違う価格で購入した御客はレジにクレームを言う結果になる。

「まったく!冗談じゃないわよ!」
プリプリした飯田は足早に鮮魚売り場へ足を向かわせた。
トレイにはアジとサンマがたくさん用意されている。
POPも88円と表示されている。
だがレジの売価変更はしていない。
鮮魚のバックルームに勢いよく入り込んだ飯田はヤンキー系チーフ中村の鋭い視線を物ともせずに睨み返した。
「ちょっと!
アジとサンマの価格変更ちゃんと直ってないわよ!128円のままよ!」
魚を裁きながら中村は舌打ちを軽くしながら
再び睨みを効かして巻き舌で言い返した。

「まだ開店までぇよ!
10分もあるだろうぅーが?
それまでに直せば文句ねぇーだろ!」
鮮魚売り場は中村のキレ加減に一瞬シーンとなるほど本日の中村は機嫌が悪い。
そんなこと飯田にとっては関係ない。
何故なら飯田本人は高ぶるテンションでいるので相手の機嫌などに動じないのである。

「開店まで?
ウソ言わないでよ!忘れただけでしょ?!
忘れていたなら忘れていたでスイマセンの一言くらい言いなさいよ!!
毎回毎回、ちゃんと売価変更をしないからレジの人間が御客から怒られるのよ!」
飯田の機関銃のような言葉に再び鮮魚のスタッフ達は氷つきながら視線は恐る恐るチーフである中村に移動すれば中村の顔を赤くなり今にも沸騰寸前である。

飯田の言葉で普通でもキレやすい鮮魚のヤンキー系中村チーフを完全にキレさした。

「うるせぇ!!!このクソババア!
お前、朝のクソ忙しい時間にピーピー騒いで、うるせんだよ!
うるさい態度にみんな迷惑してんだよ!」
負けずと飯田も赤く沸騰して言い返す。
「冗談じゃないわよ!
うるさい?
こっちも好き好んで文句言ってんじゃないわよ!!
ババアですって?!
そこまでアンタに言われる筋合いないわよ!
こんな店、もう願いさげだわ!!!」
「あぁ!!辞めろ!辞めちまえぇ!!」
大きな声で怒鳴り合った飯田は鮮魚のバックルームから勢いよく飛び出して号泣しながら
レジに戻ってきた。
レジチーフの鈴木は飯田の号泣ぶりに
「何ごと?」と驚き話を聞く。
それを見ていたデリカやグロッサリーのスタッフ達も騒然である。
店長もオロオロである。
号泣した飯田はエプロンを勢いよく外して
「私には限界です!辞めさして頂きます!」
泣きながら飯田は一言告げると走って店から出て行ってしまった。
嵐のような出来事である。
周囲は意味も分からぬまま時は開店時刻の
10時を示す。
呆気にとられている時間もなく業務開始

その後、
飯田がサイオスに戻り勤務することはないが
几帳面な性格で生真面目な飯田らしく
しっかり制服をクリーニングしてから提出して退職書類を書きにサイオスに戻った。
飯田は家が近いこともあり嵐のように去ったが買い物には週1回ペースで出没する。
その後の飯田は再び近くの総菜屋でパートをしているらしい。
そしてサイオスのスタッフよりお客としての方が似合っていた。
もちろん買い物後レシートチェックは欠かさない飯田であった。

2006年6月「飯田号泣で店から逃亡」




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