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作品名:スーパーレディー スーパーで働く女達 作者:さくらん

第2回   第2話「ヒトラー帝国解散」
サイオスが新規開店に従い社員でチーフに任命された彼女は入社2年目。
石川律子 24歳 独身 彼氏は本社勤務の6才年上スーパーバイザー。
石川は入社して2年目スピード出世である。
24歳の年齢で自分より遥か年上の年齢を何十人と仕切るチェッカーチーフ。
当然24歳である石川に仕切る器などない。石川の熱血奮闘ぶりは新入社員当時から社長の目に止まり注目をされていた。

しかし、それは社員であるアピールである。社長の辞令が彼女を有頂天にしてしまった。自分は「キャアウーマン」と錯覚をする。
確かに石川律子はテキパキ仕事をこなし気合の入れ方が他の社員とも一味違った。
髪の毛はオデコを全開にアピールで後れ毛一つ残っていない一本結び。
ヒール5cm黒皮パンプスをカツカツとコンクリート床に響かせ歩く石川律子。
年上パートに馬鹿にされたら終わりである。そんな感情が過剰に現れて石川律子帝国は女版ヒトラーのように厳しいものであり石川独自指導とルールが決められた。
チェッカー飯田と石川律子を例として紹介、まず出勤したら石川本人に挨拶をする。
「おはようございます。10時〜4時勤務の飯田。勤務に入ります」
まるで自衛隊のような朝の挨拶である。


挨拶される石川は笑顔もなく無表情で一言「おはようございます」
ここは刑務所と勘違いするほど華もない。
勤務前からテンションを下げる挨拶後に待つっていることは石川と一緒に店舗のバクヤードに行き発声練習。
お腹に手をあて接客七題用語を叫ぶ。
石川と距離を2m離れることが義務付け。
2メートル先の石川に聞こえない声では何度でも「もう1回」が繰り返され勤務の許可がでないのである。
それをクリアできない者はレジに立てない。やっとレジに立てたものの、
石川の目は獲物を随時狙っている。
1番台〜5番台レジ周囲をウロウロとパンプスを鳴らし往復してある姿はムチを持っていても違和感ない。
商品をレジに通すスピードも読み上げの声も全てにおいて石川のチェック光線が始まる。商品は左手でお客様のカゴから取りスキャニングして右手で待機カゴに戻すことが義務。その時点で左手は次の商品を捕まえてなければならない。

左手と右手には商品を持っている状態であるそれが出来ていない人間がいれば素早くパンプスを鳴らして石川は背後に寄り添って耳元でお客様関係なしで冷めた口調で一言告げる「飯田さん右手が死んでいる」
「はっ、はい」
これはかなりのプレッシャーである。
そして再び背後から離れて監視状態で往復。今度は声が小さいことを発見する
「飯田さん声がでてない!」
「はっ、はい」
チェッカー飯田は完全射程圏内。

こうなると飯田の方も精神的に動揺してしまい普通にできる作業も出来なくなる。
次は釣銭の札の数え方が気に入らない石川。1万円を頂き9千円をお返しする。
石川ルールでは5千円が1番上になり千円は下である。
飯田は千円を上に5千円を下にしてしまった「飯田さん御札の返し方が違います」
石山からマークされたパートは地獄である。飯田と石川の行動を見続ける御客様としてもある意味地獄である。

豹に睨まれた獲物を助けることも出来ずに見ている気分が御客様。
この石山のマークに絶えられなくなり何人のパート達は心で泣き退社したのだろう。
もはや辞めた人間は死人にくちなしである。社員でありチェッカーチーフの石川律子の指導に耐えられなくなり辞めるパート達に石川本人に文句を告げる人間などいない。
店長としては薄々感づいていたものの
ヒトラー帝国を滅ぼす度胸と誠意はない。
石川ヒトラー帝国は永遠と続くように思われ残留のパート達も覚悟を決めた開店して3ヶ月が過ぎた頃に朗報が流れた。


「石川がアドバイザーに昇格する?!」

薄暗い空に明るい日差しが射したように誰もが満面の笑みとなった。
歯を食い縛り残留したパート達は今日まで耐えたことは間違ってはいなかった。
「残念です!開店当時から一緒に働いてきたチーフでしたから寂しいですけど、これからも頑張って下さい。これ私達チェッカー全員の気持ちです。」
昼と夜の部は一丸になって贈り物を渡した。

普段は働くことも少なく会話も乏しい関係である昼と夜のバイトやパート達だが胸に秘めている思いは国境もなく同じである。
こんなにおめでたい石川の昇進はない。
石川にとってもチェッカー達にとっても意味は違うがおめでたいことに違いはない。
石川本人は自分の指導が間違ってはいない。逆に好かれていた・・と幸せな勘違いをして再び強い女となりサイオス東中野店を満面の笑顔で巣立って行った。
その後、新しく新チーフは入社4年目である28歳の桃山和子である。
至って普通なチーフである。

逆に石川の後だけに異常に優しく感じた。
その後も新たなチーフは新中野に訪れるが、今も石川を越すようなヒトラー女は今後も現れることはないだろう。
各店舗のチーフを指導するバイヤーに昇格した石川律子は本社勤務を拠点として各店舗を巡回している。
パートではなくチェッカーチーフに的を変えて今も先輩後輩関係なく遠慮もなくムチを鳴らしパンプスをカツカツ鳴らし髪はアップにしてスーツで訪れる。
2000年6月「ヒトラー帝国解散」より



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