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作品名:誰も書かなかったロシア連邦サハリン州(樺太)の話 作者:しんたろ

第4回   4
サハリンからの帰国の時、コルサコフの港まで見送りに来てくれて、抱きしめてキスをしてくれる女性がいる。
彼女の名はタチャーナ、日本でいう音楽教室の校長先生である。
綺麗な声の彼女は歌がうまい。
幾度となく彼女にリクエストした曲は「100万本のバラ」日本人が大好きなロシアの曲である、他に日本人が知る曲は「1週間・日曜日に市場へ出かけ・・」日本人が知る曲かと思う。彼女に「1週間を歌って」とリクエストをした、音楽学校の校長である彼女はこの曲を知らなかった、
発見であった、インターネットで調べる事となった、確かにロシア民謡となっている・・
北のサハリンでマンモスの化石を見つけたような驚きであった、つまらないことに感動する作者である。
この頃は、日本語のカラオケなどもあって韓国系の日本料理屋などで、カラオケもできる。
ロシア語のカラオケはローマ字に慣れた日本人には勝手が違う1時間もキリル文字を見ていると何とか歌える。
サハリンでは選挙のたびに勤め先の処遇が変わる、毎回訪れるたびに彼女の仕事はかわっていた。
市長選挙のたびに処遇が変わることはサハリンの公務員では当たり前なのだ、
景気が良いせいもあって、副市長は2名から5名ほどに増えた、身内の処遇を最優先にしている様子がうかがえた、次の選挙対策でもある。若いお兄ちゃんが副市長だったり運転手だった男が副市長となることもあると聞く。
利権もかなりであろう、普通のサハリン市民と違いコルホーズなど大規模な農場はペレストロイカ後民営化され世襲となって利権が継続する、油田・漁業権などに限らず樺太ますの捕獲の権利、中古車の船輸送に関しての権利などなど「利権社会主義の国」と私は呼んでいる。この事はロシアに限ったことではないとは思う、戦後からつい最近まで日本もそうであったし、世界中今もなお続く。
タチャーナにはイリーナという娘がいる23歳白系ロシア人、もちろん美人である。
イリーナはウラジオストックの音楽大学に進み、今はユジノの交響楽団に籍を置く。
イリーナを子供の時からみているせいもあってロシアの女性の変身ぶりには感心する。
女性が年頃になると美しくなるのは、万国共通であり
子供がかわいいのも万国共通である。
それにしても、30歳を超えたロシアの母さんたちの太さは万国共通ではなく規格外である。
タチャーナ 音楽学校の歓迎演奏会、泣きながら歌う子供さんもいました

私たち夫婦の両母親はサハリンで育った。
終戦後、国境線を越えたソ連軍は日本人をサハリンから現在の日本へすべてを引き揚げさせたはずであった、日本も引き上げを数年間継続した。

当時、警察官・炭鉱技術者・山林関係者・主産業のパルプ工場(落合現在はドーリンスクに製紙工場があった現在は廃墟となっている)に従事した者・通訳としてサハリンに残された者など、日本時代の産業を維持するためにソビエトは多くの日本人をサハリンの地に残した。
数年で北海道の地を踏めた者は幸福だったもしれない。
私の母は戦後すぐ引き揚げたが、妻の母はサハリンの地でロシア人と共に青春時代を数年過ごした。
多くの日本の子供達も、多感な時期を、サハリンの地で過ごした。
サハリンには戦時中多くの朝鮮人が強制的に労働力として連行されていた。
日本人の思う終戦の記念日は、サハリンの韓国人にとって解放の日となった。
今もサハリンの地で韓国人はその開放の記念日を祝う(戦前からサハリンの北の方にロシア人として住んでいた韓国人は、当時から市民として認められ、戦中日本人が連行した韓国人は旧ソビエト時代は身分が違ったと聞く)
友人にサハリンで中学校時代をロシア人・朝鮮人と共に過ごした者がいた。
彼は父親が林業関係で、数年間サハリンの地に残留した。
学校での、差別は酷いものだった、無論朝鮮人を差別した戦前から、日本人が差別された戦後を彼は中学生として生きたのである。
戦後数年たって、日本人として北海道の地を再び踏むことが出来た者は幸せな方だった。
戦後サハリンの地で韓国人と結婚した日本人も中にはいた。
つまり韓国人の父と日本人の母との2世3世が、今サハリンの地でロシア人として生活する。
戦後サハリンに残留した人たちは、かなりの高齢である。
北海道の行政による交流・樺太の引揚者連盟など、数多くの団体がサハリンとの交流を続ける。
サハリンとの、経済交流はさておき、日本人がまだサハリンの地に残ることは事実である
物心がついた頃から母に聞かされた引き揚げの恐怖、両母親ともサハリンの地には二度と行きたくはないと話す。
いまさら理由は聞かずとも知れる。


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