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作品名:「誰も書かなかった中国人農業研修生の話」中国人農業研修生の話 作者:しんたろ

最終回   誰も書かなかった中国人農業研修生の話 第7話
中国人農業研修生の話P大根おやじの話

帰ろうと思ったその時、人相の悪いオヤジたちが5人宿舎になだれ込んできた、工場の管理者であった。
「この宿舎には日本人は立ち入り禁止だ」と、すごんで部屋にはいってきた、男達はまさに大根おやじ、迫力では負けそうな勢い、車を農道に止めてあったのが大間違い。
この場は、このオヤジたちに頭を下げて納めるしか策はない、理由と言い訳をしながら事の成り行きを見守った。研修生たちは、オヤジにお茶を出したり、中国語で私をかばったり、あやまったり、こんな事が約1時間。
この殴り込みにはわけがあるようす、ここ数年必ず研修生に逃亡されているとのこと、今年研修生の中から逃亡する者が出ると、来年から研修生を使用する許可が出ないと言う、管理者の義務まで詳しく定められている研修制度、過去に逃げた研修生の分まで、結局とばっちりを受けたわけである。いらだちを抑え、事を荒立てないように、この場は何とか収めた。
言いたいことを言って、研修生に迷惑をかけるような歳でもない、退散が最善の策であった。
冷静に研修生のオヤジたちへの収め方を見ていた、女性研修生に肩を揉まれ、腕を揉まれオヤジは高級中国式エステと勘違い、ばかげた怒りは収まる。この様子では農産加工場での研修生の使い方もかなりの低レベル。
日本へ研修に来る研修生には審査がある、それ以上に日本人として海外からの労働者を使う側の知能レベルと常識のテストが必要であると深く感じた。
この場を収めた中国人研修生の、低レベルオヤジのなだめ方には脱帽であった。さすが4千年の歴史の国、争いごとを収める知恵も見習うものがある。
この場を借りて日本人として謝れるものなら、このばかな研修先を許可した日本国のばかな役人になりかわり、研修生に謝りたい思いである。
日本の役所は、研修生を受け入れる企業側の審査は、書類がそろえば、時間を浪費しながら、どのような研修先企業でも許可する。この事が賃金の不払い、不当な研修の強制などの問題を引き起こす。
今更ながら、外国人研修制度で一番重要なことは、研修先の企業(個人事業者)の質であると思う。
研修先の質が、彼ら研修生の日本人への印象を、良くも悪くもするからである。心やさしく迎え入れた企業のそれさえも無以下にしてしまう。
白永の姉が、すまなそうな顔で農道から手を振り礼をしていた姿が少しつらかった。




中国人農業研修生の話Q急激な賃金上昇の話

白永が帰国してから3週間がたった頃、香港の近くの街から、手紙が届いた。
差出人は白永、牡丹江に住んでいるはずの白永の住所が違っている、手紙にはそのような話はなく、内容はお礼の手紙であった、姉妹の父親も私を歓迎してくれるとのこと、牡丹江へ遊びに来てくださいとの内容だった、その後の張から来た手紙に驚く、白永は旦那と別れ香港の近くの街に住むという。
男と女の仲の事、詮索でしかないが、どこの国も男と女の関係は複雑だ、出稼ぎで稼いだ金が離婚のきっかけとなってしまった。
我が町で働く研修生は、近頃100人を超える、この街の農業にとっては、重要な存在なのである。
労働力である研修生の賃金上昇(経費)は、違いなく北海道の農業を圧迫する、たった一人の研修生をやっとの思いで雇用する農家の現実を、役人は知ろうともしない。
やがて中国からの研修生の数を当然減少へと導く、
労働力の不足は、小規模な農業の切り捨てとなるに違いない。
この事は日本の自給率を低下させ農業の切り捨てとなる、役人は見ぬふりでほったらかす。
中国の役人にしてみると総額では研修生が中国へ持ち帰る金額は上昇すると試算する、しかしこの先日本へ送り出す研修生の数は減少傾向になるに違いない。
日本の農家は、これ以上の経費を出して研修生を雇いたくとも雇えないのである。
どちらの国の役人も全体でしか事を考えず、弱い農民は日本と中国の2つの国で切り捨てられる。
少しでも多くの中国の農民に平等に研修の機会を与え、少しの収入を貧しい民が皆でわけあう、こんな話には日本中国の役人たちはまったく興味がないようだ。
役人たちが何も考えずに作った外国人研修制度である。今更急激に変える事など、無責任もいい加減にしてほしい。
全てはでたらめな研修制度の仕組みを作った役人の責任なのであるから。役人の軽薄と無策により犠牲になるのは、どの時代にあっても弱い者だけである。
数年でようやく最低賃金が10円上がった、こんな率の変化ではないことを、知らぬ顔をするのはやめてほしい。
先にも書いたが、中国農村の年間所得は15万円ほど
日本で働くことで半年で30万円以上、この金額は彼ら中国の農民にとって十分な金額になっていたはずである、この金額を半年で50万円以上に急激に上昇させる事は、あまりにも軽率すぎると役人に警告する。
作品名「誰も書かなかった中国人農業研修生の話」中国人農業研修生の話
中国人農業研修生の話Q急激な賃金上昇の話

雨の日、先週の事である。
男女の研修生が、農家の夫婦に連れられて教室にやってきた。
故郷で待つ中学生の子にパソコンを買いたいという。
農家の奥さんは、パソコンができる。とりあえず日本語と中国語の翻訳ソフトの使い方を教えた、農家にとってこの翻訳ソフトはかなり便利、農家の奥さんと、研修生の女性が楽しく使い始める。
その間、農家の経営者と私は来年から変わりそうな研修生制度の事に話題はうつる、私が「今年も何かトラブルはありましたか?」問うと毎年の様に何かが起こっていると話す、あまり語りたくない様子を察し、その事には触れなかった。
農家も研修制度の変化には頭を痛めている様子。
農家の話では、来年から今まで無償だった住宅の家賃を、研修生から住居費を徴収するかたちにすると話していた。
今年以上にはもう払えないし、今までの安い賃金が急に上がったことに何かの策は考えるという。
急に賃金を日本人の最低額を支払う事には無理がある、農家も当然のように対処は考える。
以前は中国の北の農村からの研修生が多かったと話す、今は大連など都会の近くから日本へやってくる研修生が多いと話していた
研修生を集めることには、中国などの派遣会社が関与する、すべてとは言わないことにする、少数のこの派遣会社があくどい事をする。逃げないような供託金などの手法は、制度で禁止されてはいるが、日本へ研修に来るためには親戚から借金をして、この派遣業者にお金を預けて日本で働くことは、よく耳にする話である。
研修生の逃亡を防ぐためにあみ出した手法である。
中国人の友人が話していた、中国では乞食までがビジネスなのだ。
研修生が逃亡する、研修生逃亡ビジネスくらいありそうな気がする。
中国の大連など近くの農村から研修生を集めた方が、経費もかなり安く済む、派遣ビジネス会社の手抜きにより、日本で働く研修生も様変わりしそうである。
作品名「誰も書かなかった中国人農業研修生の話」中国人農業研修生の話
中国人農業研修生の話 ありがとうございました

どのような結論にしようか迷いながらこの文章を書き続けてきました。

張とのかかわりあいの中から、研修制度を作者の思いをこの文面に残したつもりである。

中古パソコン屋を経営するおやじが、中国人研修生にしてあげれることは些細なことでしかない。
ただ研修生が中国に帰って、困らずにパソコンを使う事が出来ることに尽きる。
ただ研修生にかかわりあいを持つことができる、仕事の中で知った中国の田舎からこの街にやってきた研修生の笑顔が大好きだったから、この文章を書いただけである。

このあと、しんたろは、街の人たちが中国語で彼らと話すことができればとの思いから、コンピュータ用中国の会話集を作ることを決心した。


その完成したCDの画面にはこのような文章をかいた

「街で中国人を見かけたらニイハオ(こんにちは)と声をかけてみませんか、彼らはあなたの笑顔が大好きな中国からこの街にやってきた研修生達ですから」
と、この文面が流れる。

お付き合いありがとうございました。


しんたろは性格的に、あまり遠くに向かって石を投げることをする性格ではない。
しかし近くに石を投げても経験から自分に当たり、痛い思いをする可能性があることを知っている。


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