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作品名:「誰も書かなかった中国人農業研修生の話」中国人農業研修生の話 作者:しんたろ

第3回   誰も書かなかった中国人農業研修生の話 第3話
雨のその日は、研修生たちが休みの日であった。
張が同じ牡丹江出身の男とパソコン教室にやってきた。
研修生の休日は、雨の日が多い、農作業ができない日に休みが当たるのだ。
友人も子供へのお土産としてパソコンをほしいという。
中国は一人っ子政策の影響で、子供を大学までの教育を受けさせたいと思う親が急増している。
読者も、上海などの小学校の校門で、子を待つ親を見かけた事があると思う、研修に来ている地方の彼らもまた、日本へ教育費を稼ぎに来ていると話す者も多い。
中国の田舎には、我が子を面倒を見る両親が、農業を営む場合が多い。
中国の農業での所得は年間15万から30万円程度と聞く、日本で働く30万円程度が、副収入となる。
酪農の農家で働く研修生は1年間働くことができる。夫と母に子を預け日本の地で働く若い母親もいた。
1年間で80万円以上働くこの母親は、将来の子供の為の貯金とすると話す。
支給されたお金のほとんどを節約し、残して中国へと帰国する。
研修生がパソコンを選ぶ時は相当迷う、3日ほど迷う者も珍しくはない。
値段の交渉はかなり「したたか」である。
中には、金額を値引きするまで、動かないと豪語し、座り込みをする者もいた、確かに3時間ほど居座っていた、お茶で菓子でつっても、そのまま居座ってしまった、・・意味が解らなかった。値引きの交渉に応じない理由は、ただ一つ、研修生全員にこの事が伝わり、結果大損になるからである。
いくら人の良い中古屋のオヤジとしても、そこまでは無理があった。
しんたろは、パソコンを研修生に売って商う気など全くない、中国人が買うパソコンはすべて2万円の統一価格にして販売する。その大損の価格でさえ値切られる。
それでも交換の交渉まであり、別な新しいパソコンを見ると数日たっていても、交換してほしいと言い始めるしまつ、かなり複雑な商売となる。
故障が当たり前の中国製品、買う時は、かなり慎重なことは仕方がない。
買った後の故障は、買った方の責任のようである。
無料で修理をして、かなりの感謝をされた。売った方の責任があるはずだが、どうもそうではないようだ。
買おうが買うまいが、教室へ遊びに来ることは大歓迎であった。
彼らから商いの信用を得るまでは、かなりの時間と我慢と苦労が必要であった、だが不思議と楽しかった。

その日は、張がかわいい女性を連れてきた、前日、張に女性は研修生にいるのかと尋ねた、連れてくるとの答えだった。
中国人女性の名前は白永、きれいな日本の若い女性のような顔立ちだった、彼女を交えて雨の日は5名以上の中国人がパソコンの前に座りおかしな授業が始まった。
教室に彼らが着ると、必ず「おなかはすいていないの?」と聞く、誰も空腹とは答えない。彼らは、一般の民家に出入りしてはいけないと指導されている、幸いなことに、教室は民家ではない、彼らが気兼ねなく訪れることができる場所となった。
今日も夕食は「まんじゅう」万頭だったと話す、お米は食べなかったのと聞くと、高くて買えないと話す、中国から持ち込んだ、小麦粉を使い、それが主食となる。それもすぐなくなって農協から買った小麦粉が食の中心である。
農協の係員と話す機会があった、10年ほど前には、道端で捕まえた、蛇を食べたりもした、今の研修生は蛇を見たら逃げると笑う。中国の生活の様変わりがうかがえた。
研修生の年齢はさまざま、20代から中に40近くの男性もいた。男たちは、安い酒臭い、教室は異様な匂いで換気が必要であった。
張の連れてきた女性、白永は、この街から30kほど離れた街に姉が働いているという、自由にバスに乗って隣町まで行き、会うことなど許されてはいなかった。
自転車に乗って、姉の働く街まで、会いに行く道を尋ねられた、遠いと答えるしかなかった。
研修生の中には、都会へ逃げ出して不法就労する者もいる、これが毎年のこととなり、車に乗せてもらったり交通機関を利用することは禁止されている。
休日は、働く農家が車で近郊を見学に連れて行くなど、観光はできると、研修生は話す。
彼らの住む牡丹江の地より、この北海道は空気がきれいで素晴らしい処なのだ。
「日本はよい、日本は空気がよい」全員が口にする。
日本人の思う自由な研修生活はなくとも、彼らには、この日本での研修は、農家の親切に支えられ満足な様子であった。


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