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作品名:ドラゴンエンブレム 作者:キョウスケ S

第8回   「ミィミ」
「・・・・・」
春の晴天の空を、教室の窓からミィミはじ〜っと眺めていた。
レンの通う私立神楽咲高校に入学してから、数日が経ったが未だレンに会える手がかりさえつかめず時間だけが過ぎてゆくことに、「諦めと苛立ち」を感じ始めていた。

「サオトメ レン・・・・。いない・・・・。このままじゃ、ママに叱られる・・・・。」
ミィミに話しかけるクラスメートや友人はいない。
この学校に入学して以来、クラスメートに愛想良く、振舞うことや友達を作ろうという意思がミィミには無いため、誰も彼女に寄り付かないのである。彼女自体、表情に乏しく、いつも寡黙(かもく)であり話しかけられても喋ろうともしないがために、周りの人が気味悪がっており、近づかないのだ。
いわゆる、クラスで目立たない存在なのだ。中には「ミィミ」の名前がおかしいのか「ミイラ」とバカにする連中もいた。

「おい、ミイラ!(ミィミのこと)、今日、日直なんだろ!?、ちゃんと黒板拭けよ!!」
「気持ちわりぃ、こっち向いたぞ。俺の目を見るなよっ!」

クラスの数人からはからかわれ、嘲笑(ちょうしょう)される始末である。
しかし、ミィミは与えられた「任務」の遂行しか関心がないのでクラスメートのあざけりには動じない。
「うん、わかった・・・・」
ミィミは小さな声で返事すると、前の授業で書き込まれた教卓の黒板を拭き始めた。

「おい、ミイラ!!「黒板消し」なんか使うな!!おまえの舌で舐めて消せよっ」
男子生徒のあざけりに耳を貸すことは無くミィミはだまって黒板を拭き続けた。

「やめなよっ!ミィミさんが可哀想でしょ!!」
ミィミの片を持つ女子もいるようだが、決して親しいわけではない。
「うるせーぞ、女子!! ミイラに示す哀れみなんてねえよ!」
「おめえも、ミイラの仲間かあ?」
嘲笑を繰り返す男子生徒に対し、ミィミの片を持っていた女子は反論できなくなる。

「・・・・・いいの、放っておいて・・・・」
ミィミは静かに女子に「相手にしないで」という意思を伝えた。


こんな日が幾日も続く・・・。
ミィミは自分が請け負った「仕事」の効率の悪さに、落胆しつつあった。
「・・・・早く、帰りたい・・・」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後

午後の授業の終礼のチャイムが鳴ると、帰宅を急ぐクラスメートは教室を飛び出して行く。
他の女子は「今日はどこによって行くの?」とか「あのケーキ屋さんのいちごケーキがおいしい」とか、そんな会話を楽しみながら教室を出て行く。
ミィミはかばんに教科書やテキストを詰め込むと静かに席を立ち、教室を出ようとした。

「ミィミさん、さよなら・・・」
クラスメートの一人の女の子がミィミに声をかけた。しかし、
「・・・・やめときなさいよ、あの子何も喋らないから・・・・・。変に逆恨みされると怖いよ・・・」
と他の女子にたしなめられた。
ミィミはすべて無視しさっさと昇降口に向かった。

いつもなら、放課後,校内を探索し「レン探し」をするのだが、今日はその気力が無かったので家路に急ぐことにした。だが、運が悪かったのか、それとも目を付けられていたのか、先ほど「ちょっかい」を出してきた男子3人が昇降口にいるではないか。
ミィミは目を合わせないようにしながら男子生徒らの横を通り過ぎてゆき、自分の靴箱から外靴を取り出し、靴の中に入っていた誰かが仕込んだであろう「画鋲(がびょう)」を取り除き、履いた。

「おいっ、ミイラ!!何無視してんだよ。」
「ちょっと、付き合えよ。話がある・・・・」

ミィミはそれでも無視しようとした。だが、男子生徒の一人がミィミの頭のリボンをつかんだ。

シュルル・・・・。

ミィミの片方の結んでいた髪がほどけ長い髪の毛が、肩にふれた。
その可愛らしさに男子生徒は一瞬ドキッとした。

「・・・・かえして・・・・」
ミィミは無表情な顔のまま、男子生徒を見つめてつぶやいた。

「な、なんだよ、ミイラのくせに・・・・」
「これ(リボン)を返して欲しけりゃついて来いよ」

リボンごとき大した物ではないように思われるが、ミィミにとってはそれが大切なもののようだった。
ミィミはいわれるがまま、学校の体育館裏まで男子生徒ら3人についていった。

「おいっ、ミイラ!!財布持ってんのかあ、ちょっと金貸してくれよ。すぐ返すからさあ。」
「お金・・・・、持ってない・・・・。それよりもリボン・・・返して・・・」

「はあ!?金もってねえって!?、んなわけねえだろ!!昼飯、購買で買ってんだろ?」
「昼食は食べない・・・」
「おまえ、ビンボーか。だよなあ!!ミイラは死人だから金持ってねえよな!飯も喰わねえしよ」
男子学生の一人がミィミの顔にツバをかける。
「おいっ、金無し!!」

「くっ・・・!!」
ミィミは唇を噛んだ。こんなやつら、ママ(ラム・スイーディ)がいれば、あっという間に地獄へ叩き込んでやれるのに・・・・。そう思いながらもこいつらを相手にするのは無駄だと感じたので押し黙っている。

「こいつ、ちょっと表情変わったぞ!!」
「えっ、うそー!?」
「さすがに怒っちゃったかー?」

ミィミの心には煮えたぎる怒りと憎しみに燃えていた。だが、感情を表に出すのはふさわしくないと思い怒りを抑えようとする。
「・・・・リボン・・・返して・・・・、大事なものなの・・・・・ママからのプレゼントなの・・・・」
それを聞いて3人はケタケタと笑い出した。
「イッヒッヒ・・・ママかよ〜!!笑う〜っ。こいつマザコンかあ?」
「ひゃーははははっ!!だったらこうしてやろうぜ。」
そういうと男子の一人がかばんからナイフを取り出しミィミのリボンを切り刻んでしまった!!

ビリビリビリ!!

奪われた片方のミィミのリボンはひらひらと地面に細かくなり落ちた・・・・・。
「・・・・あたしの・・・・」
ミィミは下をむいたままつぶやく。
「ああっ?あんだって?こっち向けや!!」
さらにもう一人の男子がどこから持ってきたのか、白いチョークの粉がついた黒板けしを二つ取り出し、自分の両手にはめた。
「さあ、ミイラちゃん。ママが化粧してあげるわね〜」
そういうと、うつむいたままのミィミの顔を黒板けしでぬたくり始めた。
「ぽんぽんぽんぽん、ぽぽぽぽ〜〜んっ!」
見る見るうちにミィミの顔は真っ白くなってしまった。
「ハハハハハ!!「死に化粧」なんちゃって〜〜!!」

いい加減、ミィミは感情をこらえる事が出来なくなってきた。
「・・・・あたしの・・・・リボン!!・・・・・・返して!!」
ミィミは震える声でそう言うとキッと3人を睨みつけた!!

「うっ!!ミイラが睨んでるぜ・・・・。」
「怖ええっ!!行こうぜ、先公に見つかったらやばいぜ・・・・」
「ミイラ!!もう、学校来んなよっ!!」
そう言うと3人はその場から立ち去っていった。



「あたしの・・・・リボン・・・・。ママの・・・・贈り物・・・・」
ミィミはバラバラになったリボンを拾い上げるとどっと涙があふれてきた。
お気に入りを失った損失感と悔しい気持ちでいっぱいになり、唇を噛み続けていたため、
唇から血がにじみ出た。

ミィミはその情けない姿を直す事も無くふらふらと校門を出た。
下を向いたまま道を歩き続ける。
(この世の人間なんて、みな外道、冷酷、自己中心な奴ばかり・・・・、みんなウロボロスに滅ぼされてしまえばいい!!)
そんなことを思いながら歩いていた。
目頭が熱くなり、涙で視界がぼやけてしか見えない・・・・。
そのときだった。やわらかい何かに頭が当たった・・・・。

「あ、すみません。ぼ〜っとしていたものですから・・・・」
ミィミは声の主の方を顔をあげて見つめたが、涙ではっきりと認識できなかった。
声の主は播磨美花であった。
「まあ!びっくりですわ!!。すごいお化粧ですことっ!?。ちょっと待ってくださいね・・・」
美花はポケットからハンカチを取り出すと、それでミィミの涙を優しく拭った。
ミィミの視界ははっきりとし、目の前にセントマリア女学院の制服を着た、優しそうな金髪の女性を認識できた。
「・・・ママ・・・・」

その言葉に美花は眼を丸くし
「はい?」
ととっさに返答した。
「とりあえず、近くの公園に行きませんか?、お顔を直しますから、お口からも血がにじんでますわ」
美花はミィミの手を握ると近くにある公園のトイレにつれていった。
そのとき、美花はミィミの手から「呪縛のオーラ」のようなものをかすかに感じ取っていた。
(この子は・・・・もしや・・・)
いまはそれを気にするよりも美花はミィミの顔を、水でぬらしたハンカチできれいにふき取ってあげ、口元の血を拭い、片方だけしているリボンを外し、自分の愛用のくしで髪の毛をとかし、ポニーテールに結んであげた。
「・・・・はい、これでよし・・・」
ミィミは洗面所の鏡を見るとポニーテールの自分をまじまじと見つめた。
「・・・・いい、これ、・・・・」
「すみません。勝手にポニーテールにしちゃって・・・・。でも、可愛いですよ!」
「・・・でも・・・・ツインテールがいい・・・・。落ち着くの・・・・」
「そうですかぁ・・・・、わかりました。少々お待ちくださいな」
そういうと美花はかばんから自分の髪を結ぶための黒いゴムひもを取り出した。
丁寧にミィミの髪の毛をとかし、ツインテールに形を整え黒いゴムひもでとめた。
「・・・ありがと・・・」
ミィミは少し照れながら下を向き、小さな声で礼を言った。
「どういたしまして」
美花はにっこりと微笑んだ。

それからふたりは公園のベンチに座った。
ミィミは普段は無表情なのだが、今は少し微笑んでるようだった。
「なにか、ございましたか?差し支えなければわたくしに話していただけませんか?」
美花はミィミの顔を覗き込んだ。
「いじめられた・・・・・。あたしのリボン、ママからもらったリボン、ダメにされた・・・・」
ミィミはボロボロに切り刻まれたリボンをポケットから取りだし、それを見せた。
それを見て美花は驚き
「まあ!!なんて、ひどいことを!!」
と叫んだ。

ミィミは手のひらのぼろぼろになったリボンを見ると目頭がまた熱くなっていた。
美花はミィミの正面にまわり、両片に手を置くと、こう言った。
「じゃあ、素敵なリボンを探しに行きましょう!」
「えっ・・・」
ミィミは目を丸くした。

「わたくしが、あなたにぴったりのリボンを見た立ててさしあげますわ!」
二人は公園を出るとショッピングへと繰り出した。

「あ、自己紹介まだでしたね。わたくしは播磨美花と申します。私立セントマリア女学院に通っていますの」
「あたし・・・・ミィミ・・・・」
ミィミは小声で自己紹介した。

「ミィミさんですか。素敵な名前ですねぇ。」

「ママが・・・、付けてくれた・・・・。」

「お父様は?」

「・・・いない・・・」

「すみません。失礼なことを聞いてしまいまして・・・。」

「大丈夫。・・・気にしてない・・・。」

そんなやり取りをしているうちに商店街に着いた。

「ん〜〜、どこに行きましょうか・・・。リボン、リボン・・・・ラッピングのお店じゃないですよね。やはりファンシーショップかな・・・?」
ふたりはファンシーショップに入った。
店内には素敵な女の子好みの小物やアクセサリーが陳列している。
あたりを見回すと小学生の女の子から女子高生のお客でいっぱいだった。

「どれが、よろしいですか。・・・・これもかわいいですわねぇ」
美花は赤色に白い水玉のシュシュを取り出すとミィミの頭にあわせてみた。
「おもしろいかたち・・・これ・・・・なに?」
ミィミはシュシュを知らないようだった。

「これは、『シュシュ』というものです。髪を結ぶのに使ったり、腕にはめても良い、おしゃれなアクセですわ」

「これもかわいいけど、やっぱりリボンが・・・いい。」

「はい、そうでしたら、リボンがあるところに行きましょう」

ふたりは棚にカラフルで色とりどりなリボンが展示してあるところにきた。
「まあ! 素敵でかわいいのがたくさんありますわねぇ」
美花が商品のリボンに見とれていると、ミィミはすぐさま黒いリボンを指差した。
「・・・・これが・・・いい。」

「黒・・・・。ですか・・・。う〜ん、ゴスロリ系や大人らしいシックな感じで選ぶのであればそれもいいですが、ミィミさんにはこちらが似合いそうですわ。」
そう言うと、ピンクに白い水玉模様のリボンを取り出した。
「・・・・実を言うと、わたくしも流行にはうといのでセンスがいまいちかもしれませんが・・・・」
ミィミはそのリボンを見つめると、しばらく考えこんでいたが
「・・・それがいい。選んでくれたから・・・・」
と、そのリボンに決めた。
「じゃあ、それにしましょうね。お金はわたくしが払いますわ」
レジで清算が終わった後、鏡を見ながら購入したそのリボンをつけてみた。
鏡の前には少しだけイメージチェンジした自分の姿が写っていた。
「・・・・・いい・・・」
頬を赤らめながら、ミィミは自分の姿が気に入ったようであった。

「これも、さしあげますわ」
わたされた袋を覗いてみると、中には何種類かのシュシュが入っていた。
「・・・シュシュ・・・・」

「使ってくださいな。きっとミィミさんに似合うと思いますわよ・・・」

「・・・・・ありがと・・・・」
ミィミはかすかに微笑み小声でお礼を言った。

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その後、二人は噴水のある公園のベンチに腰掛けた。
「あっ、クレープ食べませんか? あの公園で店を出しているクレープ屋さん、結構美味しいんですのよ」

ミィミはこくんと小さくうなづいた。
「ええっと、何味がお好きですか?」

「・・・・・なんでもいい、まかせる・・・・」

「承知いたしましたわ」
美花はそう言うとクレープを買いに屋台のほうへ歩いていった。


ミィミは空をじっと見つめていた。
(人間も悪い奴ばかりじゃないんだな・・・)
とそう思った。


しかしながら、「さわやかなとき」は長続きしなかった。
嫌味にあふれた聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

「ミイラがいるぜー」
「おお、何してんだよー」

公園の入り口のところから学校の昇降口で絡んできた男子生徒と出くわしてしまった・・・。
ミィミはつくづく運が悪いと思った。

「ミイラ、何してんだよ、公園のベンチ腐るだろうがっ!!座るなよ!!」

「・・・・あなたたちには関係ないわ・・・・」

「ああっ!?なんだってぇ?ミイラが!!」

男子生徒がつかみかかろうとしたそのとき、向こうから声が聞こえた。
「待ちなさい!!ミィミさんに何してるの!?」
美花が両手にクレープを持ちながら走り寄ってきた。

「あんだよ!?セントマリアのおじょうさまかよ!?」
「おめえにはかんけいねぇよ」
「殴られて〜のか、このアマ!」

男子生徒の一人が美花に向かっていった。
美花は両手にクレープを持っていたので、「脚払いの態勢」に入ろうと身構えた。
だが、そのとき、ミィミが美花の前に立ちふさがってかばった。

「どけぇ!!ミイラ!!」
男子生徒が凄んで手を突き出した。
そのときだった。ミィミの眼が赤く光り、向かってきた男子生徒が仰向けに吹っ飛ばされた!!

ドスンッ!!

「ぐあっっ!!」
「なにが起こったんだ!?」

美花は驚いた。ミィミに降りかかってきた「物理的力量」が反対に押し返されているのが美花には見えた。
「なに、この力の反転・・・?」

男子生徒らはミィミが突き飛ばしたのかと思い、いきり立ちながら殴りかかってくる。
「この、アマーーーッ!!」

バキィィィ!!

だが、ミィミに命中するはずのパンチもなぜか当たらず、強い衝撃が男子生徒の顔面に炸裂した。

「痛ってーーー!!」
男子生徒はあまりの痛さに転げまわっていた。眼は腫れ上がり鼻から血を出しながら苦痛にうめいていた。

「お、お、おばけだー!!」
「祟りだー!!」
「殺されるぅー!!」

男子生徒三人は血相をかきながら逃げていった・・・。

美花は唖然としていた・・・。
(この子、何かの呪術にかけられているのかしら・・・・それとも、マギカ(呪術者)なのかしら・・・・。)

「・・・・・大丈夫?」
ミィミは美花に尋ねた。
美花は我に返るととっさに返事を返す。
「ええ、ミィミさんは大丈夫?、とんだ災難でしたね」
姿を見れば怪我ひとつさえしていないことを確認できる。だが、あえてその「不自然な力の反転」についてはミィミに問いただそうとは思わなかった。

二人はベンチに座りなおした。

「はい、どうぞ。マロンクレープですけどいいですか?」
美花は右手に持っていたクレープを差し出した。
「・・・うん、ありがとう・・・・」
ミィミは美花からクレープを受け取ると、その小さな口ではむはむと食べ始めた。
無言のまま、黙々と美味しそうにクレープを食べている。
そんな姿をみていた美花はつい、フフッと微笑んだ。

ミィミはクレープを食べる動作をやめて、小声で美花に尋ねた。
「・・・・どうして、私に聞かないの・・・?・・・・・私に化け物みたいな力があることを・・・・。」
それに対し、美花は真実を追求しようとはせず、話を濁した。
「・・・・えっ、さっきの事ですか?。・・・わたくしには『勇敢に暴漢に立ち向かおうとするミィミさん』にしか、見えませんでしたが?」
ミィミは下を向いたまま答えた。
「・・・・ありがとう・・・・。あなただけね・・・。私を『化け物』扱いしないのは・・・・。」
それに対し美花は答える。
「化け物とか、どうとかはわたくしには関係ございませんわ。ただ、ミィミさんがわたくしを身を呈して守ってくださったことに、深く感謝しておりますわ。・・・ミィミさんが守ってくれなかったらどうなっていたことでしょうね・・・・。本当にありがとうございます・・・・。」
ミィミは美花のそのいたわりの言葉に胸が熱くなった。
「・・・・ありがとう・・・・」
震える小さな声でつぶやいた。

ふたりはクレープを食べ終わると、ミィミは立ち上がり、美花に軽くおじぎした。
「・・・・いろいろと・・・・ありがとう・・・・」
美花はクスッと微笑み
「どういたしまして、もうお帰りですか?」
と優しく尋ねた。
「・・・また・・・ね・・・」
ミィミはまた軽くおじぎすると走り去っていった。

美花はミィミのうしろ姿を見えなくなるまで見送っていた。
「不思議な子ですわね・・・・」
美花は真剣な顔つきになり、先ほど起こった出来事を思い出す。
「嫌な予感がしますわ。あの子は何者なのでしょう。もしかして、ウロボロスの・・・・。いや、何事もなければ良いのですが・・・・」

すでに日は暮れ始め、辺りは夕焼けになりつつあった。


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ミィミは家路についた。
玄関のドアを開け、部屋の中に入る。
リビングに行くと、ラムが傷だらけで、横になっていた。
「・・・・どうしたの?」
ミィミが尋ねた。

ラムは天井を見つめながら、うざったそうに答える。
「うるさいわね、見れば分かるでしょ!、青二才にやられたのよ!」
「・・・ふうん。サオトメレン・・・・・そっちにいたんだ。」
部屋を見回すと、黒いローブを着た男が、壁に寄り掛かっていた。
「・・・・だれ?」
その男は、ニヤリと微笑すると口を開いた。
「・・・ママを運んできてあげたのに、「誰?」は無いだろう。大きくなったなあ、ミィミ。」

「・・・・ヴィーザフ」
「久しぶりだよな。以前会った時はまだ、ちっちゃかったよなあ。」

ラムはミィミが違うリボンをしていることに気が付いた。
「あんた、それは?」

「・・・・もらったの。美花、友だちに」

「けっ!クズな人間と馴れ合うんじゃないわよ!」

ミィミはラムを見つめながら
「・・・・ママからもらったリボン、無くしちゃった。ごめんなさい。」
と謝った。
「フンッ!!、リボンなんか、どうだっていいわよ!・・・それよりもミィミ、力を貸しなさい。今度こそ、ふたりであの青二才を倒すのよ!」
「・・・・サオトメレン?」
「そうよ!あのガキ、絶対赦さないんだからねっ!」
「・・・・分かった。」

「ま、せいぜい頑張るんだな。お前には無理だろうけどな。」
ヴィーザフは腕組みしながらそっぽを向いた。

「なんですって!?」
ラムはヴィーザフを睨みつける。

「貴様、そんだけやられてまだ分からんのか?今のお前の力じゃ、勝てないんだよ。だから、俺がウロボロス様に頼まれて、こいつを持ってきてやったんだよ。」
そういうとヴィーザフは黒い宝石の様なものをちらつかせた。
「これは!?ダークネス・シード!!」
ラムは眼を大きくした。

「使うとヤバイ、とっておきのアイテムさ! つまり、このチャンスで、奴を仕留めろってことさ!
だけど、副作用も大きいぜ。・・・さあ、どうするよ?」
ラムは目の色を変えて起き上がった。
「よこしな!!あたしが殺るんだっ!コイツを使って、青二才をぶちのめす!!」
「そうかい、じゃ、頑張りな。ただし、奴を仕留め損なったら、もう、後はないからな!覚悟は決めとけよ・・・」
そういうと、ヴィーザフはそれを置いて、ミィミの頭を撫でて去っていった。

ラムは紅蓮な瞳を燃えたぎらせた。
「ふん、今に見てなさい!!あたしが確実に青二才の息の音を止めて挙げるわ!・・・・イタタタ、ミィミ傷の手当てをしてちょうだい!」
「・・・・分かった。ママ、カッコ悪い・・・」
「うっさいわねぇ、お黙り!!」

ラムは身体の回復を待ってから、レンを仕留めてやろうと、業を煮やすのであった。

第8話 END


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