「・・・父さん・・・・。」 蓮は瀕死の状態ながらも、目の前にいる父親らしき男性を見ていた。
「さあ、どうするよ?俺と遊んで行くかい?ナンバー2さんよ」 両者ともにらみ合い、動かない。
「・・・・時間の無駄です。ですが、どうしてもというのなら、あなたから始末します。」 無表情の姫香こと「ダークアストレア」は剣をかまえ直した。
蓮の父親らしき男もフック付きのワイヤーをかまえた 「上等だ、そうこなくっちゃあな・・・・」
「・・・・貴方のその武器では私を倒すことなど到底できません。」
その言葉を聞くと、男はニヤリと笑みを浮かべた 「俺はあんたを倒すとは行ってないよ。目ぇ覚まさしてやろうと思ってるだけさ」
「・・・ふざけたことを・・・」 ダークアストレアはそう言うと、襲いかかって来た。
ビュ!! ビュビュッ!!
男はことごとくダークアストレアの攻撃をかわす。 まるで、手の内を見切っているかのように、身軽な身のこなしで振りかざされる刃を避けている。 「この男!! 私を愚弄しているのか!?」
「俺は「男」って名前じゃない。「早乙女 豹童(ひょうどう)」だ、よろしく!」
「早乙女 豹童!?・・・・・やっぱり、父さん・・・」 蓮は彼が自分の父親であることを確信した。
「猿のように飛び回りおって!!私をなめるな!!」 ダークアストレアは剣を振りかざした
「舐めても苦そうだからやめとくよ!」 それに対し豹童は素早く背中からレザーケースにマウントされてあるサバイバルナイフを抜く
ガキィィィン!!
ダークアストレアと豹童の武器がつばぜり合う。
豹童は真剣な顔つきになり、ダークアストレアに顔を近づけ、呼びかける 「・・・姫香!!蓮お兄ちゃんを忘れたか!?お前が大好きなお兄ちゃんは傷つきそこにいるぞ!!」
「・・・また、ザレゴトを!!わたしは・・・・・クッ!!」 ダークアストレアはその言葉を聞くと激しい頭痛が襲ってきた。 「頭・・・・・割れ・・・そう・・・・くっ。はぁはぁ・・・・・・・レンおにいちゃ・・・・ん・・・・」
あまりの激しい頭痛にダークアストレアは膝を付き、悶えはじめる。
「やはりな。姫香の記憶が少し覚醒してきているようだ。・・・・レン!!呼びかけろ!!」
すると蓮は立ち上がり姫香に呼びかけ始めた。 「姫香!!・・・目を・・・・目を覚ましてくれ!!オレだよ、早乙女蓮だよっ!!」
ダークアストレアは頭を両手で押さえ、首を大きく振り続ける。 「・・・・やめろぉ、苦しい!!・・・・・うがぁあああっ!!」
「もう少しだ!!姫香!!」 豹童も呼びかける。
しかし
ズシャアアア!! ズドドーーーーーン!!
大きな雷が辺りに響き渡り、異空間が開き全身に重々しい鎧を着け、フルフェイスの兜で顔を覆った者がその空間から出現した。
「そこまでだ・・・・。」
「!!」 その全身鎧に覆われた者からは威圧感あふれるオーラがほとばしっていた。
「出たか、大ボスさんよ・・・!!」
「ここで、ダークアストレアを失うわけには行かぬ・・・・。さあ、戻るぞ。まだこいつらを始末するのは早い・・・・」
ダークアストレアはゆらゆら立ち上がる 「・・・・ですが、まだ戦闘続行は可能です・・・!」
「・・・・記憶領域の不安定な貴様に何が出来る?、軽率な行動は慎め。ダークアストレア・・・」
「ぎょ、御意・・・・」 するとその屈強な鎧の男はダークアストレアを抱えると後ろを向いた。
「・・・・もう、お帰りかい?、ナンバー1さんよ・・・・」
「待て!姫香を!!」 蓮が叫んだ。
「早乙女 豹童・・・・。貴様の息子レン共々、いつの日か冥途へ案内してやろう・・・・・。 そのときを楽しみに待っているが良い・・・・」
そう言うと、ふたりは異空間の中へ消えた・・・・。
辺りは静まり返った。
「いっちまったか・・・・」 豹童はつぶやいた
蓮はがっくりと肩を落とし、大粒の涙を流しながら悔しい気持ちを口にした 「・・・・・姫香・・・・愛鈴・・・・。俺は救えなかった・・・・・、くそう・・・!!」
「蓮クン・・・」 「蓮様・・・・」 「早乙女・・・・」
皆、傷だらけであり、悔しい気持ちは一同の心を締め付けていた。
豹童はゆっくりと蓮の方に歩いて来た。膝を付き蓮の瞳から涙を優しく拭った。
「父さん、・・・何処行ってたんだよ!?・・・・俺と姉さんは・・・・・ぐすっ」
「すまない、事情があったんだ。本当にすまん・・・・」
「父さん・・・!!」 蓮は感情を御することができなかった。大粒の涙をこぼし、父親の胸の中で泣いた。 父、豹童はただ瞳を閉じて蓮を受けとめることしかできなかった。 蓮はこのとき、ルイードの夢のことを思い出す。ルイードが父親を慕うあの気持ちはきっと こんな気持ちだったのだろうと。
「うわああああああん!!」 そのとき向こうから、壁に隠れていたミィミが泣きながら蓮と父親のところに走ってきたではないか
「蓮お兄ちゃん、あのね、ミィミね・・・。」 ミィミは戦いの中で起こった怖いことや悲しかったこと・・・それらが一気にミィミの小さなハートに押し寄せたせいで感情を処理しきれなくなり、号泣しだしたようだ。 顔は赤くなり、涙と鼻水で顔はぐしゃぐしゃだった。 「あのね、あのね!!ミィミ!!・・・ヒック!!」
蓮と豹童はあっけにとられ、顔を見合わせて笑い出した。 「いやあ、困ったな!!・・・嬢ちゃんがこんなに泣いたら、俺らは泣くに泣けねえなっ!」 父親のその言葉に蓮もプッと吹き出した。 「・・・・だよな。ミィミのほうが泣き上手だぜ・・・・」
「ん?」 ミィミは涙目できょとんとしている
「泣くな、嬢ちゃん。もう大丈夫だ!!」 豹童はミィミの頭をグシグシと撫でた。
「ミィミ、大丈夫か?」 蓮も微笑みかけ、ミィミの涙を拭った。
「ミィミちゃんが泣いたの、あの日以来ですわ・・・」 美花がつぶやいた
「そうだね・・・」 美花の言葉に瀬那もうなずいた
瀬那は豹童に近づく 「蓮くんのお父さん、なんですね・・・・。お久しぶりです。瀬那です」
豹童は瀬那の方を見ると、その成長した姿に喜びつつ返答した。 「おおっ、瀬那か!!大きくなったなあ!・・・・蓮とうまくやってるかあ?」
瀬那はその蓮の父親のあっけらかんとした性格に笑みがこぼれ、こうきり返した。 「はいっ、もう、ラブラブですから!!」 そして胸を張ってみせた。
「おおお、そうか!!よかったなあ!!蓮!!」
蓮は顔が真っ赤になり照れを隠しつつ反論する 「父さん!!違うって!!・・・おれと瀬那はぁ!」
「がはははは!!話はまずあとだ!!・・・・・どれ、久しぶりに帰るか!! 高見ヶ咲神社によっ!」
「って、父さん!!俺の話訊けーーっ!!」
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高見ヶ咲神社
蓮たちはボロボロになりながらも、無事にたどり着いた。
「やっぱ、階段上んのしんどいや・・・・。」 蓮は重い体を引きずりながら、階段を上り続ける。
「ホント、こっちは傷だらけでクタクタなのに、流石に辛いわね・・・。」 瀬那もため息混じりに答えつつも長い階段をのぼり続けている。
一方、美花、ミィミ、豹童は平然と上り続ける。
北条は一番、後ろでへたばっていた。 「キ、キミたち・・・・先に言っててくれ、流石に・・・辛い・・・・」
瀬那が振り返る 「うん、ゆっくり登ってきてね、モヤシクン・・・・」
「あーあ、エレベーターかエスカレーターでも付けりゃあいいのにな!」 豹童が言葉を漏らした。
「父さん・・・・俺もおんなじこと前にも言った・・・・。」
「そっか・・・・。考え方、似てるんだな・・・・。」
二人は顔を見合わせるとプッと吹き出した。
美花が蓮を心配しつつそばによってきた。 「レン様、肩、貸しましょうか?」
「いや、大丈夫だ、このくらい・・・。」
「なあに、階段でくたばったくらいじゃあ、死にゃあしないさ」 豹童はそっけなく答えた。
一同は無事に境内まで登りきった。
「ふう〜、やっと着いたぜ〜。あ〜、しんど!!」
だが、豹童は境内の鳥居のところでそっぽを向いて離れていた。
「父さん、どうしたんだよ?」 蓮が、中に入って来ようとしない父親を不思議に思っていた。
豹童は「バツの悪い顔」をし、向こうを眺めつつ答えた 「いや、流石にどんな顔をしてオヤジと向き合えるかどうか考えちまってな・・・」
「あっ、そうか・・・・。」 蓮は父がいなくなったのは半ば祖父辰次郎と喧嘩をしてしまい、以来敵対関係にあること を思い出した。
祖父辰次郎は、しょっちゅう、息子の豹童のことで、小言ばかりを言っていた。 自分が小さいころ、辰次郎と豹童が言い争っていた記憶が蓮の頭をよぎった。 あの頃はなんで喧嘩していたのか理解できなかったが、今ならなんとなくわかった。
「俺にある『竜の印の力』のことだったんだよな・・・・」 蓮がそうつぶやき、うつむくと豹童は近づいてきて蓮の頭をポンっと叩いて言った。 「なあに、気にすんなよ・・・・・。事情は俺がきちんとオヤジに説明するからさ!」
そう話しているうちに、向こうから、辰次郎と瑞樹が走ってきた。
「おお!!蓮!!どうしたことじゃ!!遊園地に行ったのに、傷だらけになりおって!!」
瑞樹も驚きつつ尋ねた 「もしかして、ウロボロスにやられたの!?」
「ああ、ちょっとな・・・。」 蓮がしぶしぶ答えた。
豹童は顔を隠しそっぽを向いていた
だが、姉の瑞樹はそこにいるテンガロンハットをかぶった人が誰なのかすぐに分かった。 「!!・・・・・そんな・・・お父さん!!」
その瑞樹の声を聞き、辰次郎も驚きつつ尋ねた 「なんじゃと!?・・・・馬鹿息子じゃと!?」
辰次郎はテンガロンハットを深くかぶった息子豹童のそばに走り寄ってきた
「まさか!!・・・・お前なのか!? 豹童!!」
豹童は苦笑いしつつ、部が悪そうに挨拶を返した 「・・・・よ、よお・・・、た、ただいま・・・・」
「き、貴様〜〜!!」 辰次郎は豹童のむなくらに掴みかかる。 「この親不孝者がぁ!!何処に行っていたんじゃ!!響子が死んで以来、姿を消しおって〜〜!! どれだけ、貴様を恨んだことか〜〜!。親族もお前をさげすんでおるぞ!!このバカタレがぁぁぁあ!!」
豹童は掴まれたむなくらをいとも簡単にほどいてこたえた。 「黙れ、オヤジ・・・。俺には俺の事情があったんだ。それをこれから話す・・・。」
「なっ、なんじゃとぉ〜。お前のハナシなぞ聞きとうないわいっ!!」
「おじいちゃん!!」 瑞樹が真剣な表情で、辰次郎に訴えかけた。 「まずは、お父さんの話を聞きましょう。・・・・私たちは誤解しているだけかもしれないわ・・・。」 その言葉に辰次郎は冷静さを取り戻し、少し考える 「・・・・わかったわい。・・・話を聞こう・・・・。まず、家の中に入れ。」
そう言うと、辰次郎は背を向け自宅へ歩き出した。
「すまない、瑞樹・・・・」 豹童は小声で瑞樹に礼を言った。
「良かったわ。お父さん、無事で・・・・。おかえりなさい・・・・」 瑞樹は嬉しさのあまり、目に涙を浮かべていた。
「ありがとう・・・。ただいま・・・。」 豹童は瑞樹の涙をそっと拭った。 瑞樹はみんなを促す 「さあ、みんなも大変だったでしょ。傷の手当もしないといけないからどうぞ家へ入ってください。」
美花「すみません」 瀬那「おじゃまします」 北条「かたじけない。お言葉に甘えさせていただくよ」
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蓮たちが、瑞樹と美沙に介抱されている間、茶の間では辰次郎と豹童がにらみあっていた。
「では、なぜ、家を出て行ったかを理由を聞こうではないか・・・」
辰次郎が睨む中、しばらく豹童は目を閉じてから開き口を開いた。 「俺は、響子が亡くなってから色々と考えた・・・。ここにいてても仕方がないという結論に達したんだ。 ・・・・・響子は俺にはっきり告げたんだ 『あなたは竜の印や真竜印を受け継ぐものではない』・・・と それは、俺と響子の子である蓮が受け継ぐことになると・・・・。 俺は最初、戸惑った。・・・・自分には早乙女家伝来より伝わる力を何もそなえることなく、その未知なる力を受け継ぎ、大きな運命を背負わされるのが自分の息子であることを聞いたとき、正直驚いた・・・。
俺には、何の力もない・・・・。宿命により最愛の妻を目の前で殺され、その重い運命を息子が背負うことになることを知ったとき、嫌気が差してきた。
だから、俺は家の伝統に頼らず『自分の手で響子のかたき』を取るため、早乙女家を飛び出したんだ・・・。」
辰次郎: 「馬鹿な!!たとえそうだとしても、お前は早乙女家の血筋を引くもの!!お前には蓮を「来るべき滅びの日」に備えさせるためのつとめがあったはずだ!!」
それを聞き、豹童は声を荒げた 「だから、それが嫌なのさ!!・・・・どこの世界に自分の子供を予言やら伝統やらの名目でその命や人生を差し出させたがる親がいるか!!子供は世界を救うための戦闘兵器じゃない!!」
辰次郎: 「愚か者め!!世界が破滅するんじゃぞ!!人類すべてが滅びるんじゃぞ!!・・・我が早乙女家は人類最後の希望といっても過言じゃないのじゃ!!蓮は選ばれたんじゃ・・・・。神に・・・!!」
豹童: 「だから気に食わないのさ!!・・・たかが言い伝えだけ盲目に信じやがって!!・・・・蓮が神に選ばれた? 世界を救えるのは早乙女家伝来の伝説だけだ?・・・・ふざけるな!世界が滅びようが俺には関係ない!!・・・蓮は俺の子供だ。蓮の人生や将来は本人が決めることだ!!」
辰次郎: 「おまえはそれに嫌気がさして、家を出たとでも言うのか!!この臆病者めが!!」
豹童: 「ちがう!!・・・・俺は、そんな宿命を蓮に背負わさせるつもりはない!!だから、俺自身の手でウロボロスを倒すと誓ったのだ!!」
辰次郎: 「だから、貴様一人でウロボロスを倒す旅に出たとでもいうのか!?無謀じゃ!!このたわけ者!! 奴(ウロボロス)を封じ込めることができるのは、真竜印を受け継いだ者と、五芒星法陣を司ることが出来る選ばれた者だけじゃ!!」
豹童: 「そうかい!!なら、もう望みは絶たれたも同然だな!!・・・・五芒星法陣を司ることが出来る選ばれた者『信』の持ち主である姫香は、今は敵の中だ!!」
それを聞いた辰次郎は驚愕した 「な、な、なんじゃとーーーっ!?「姫香」がウロボロスの中じゃとぉ!?」
豹童は目を閉じて悔しさを胸にしつつ答えた 「そうさ、今は記憶を封じ込められ、「ダークアストレア」と名乗る四天王の一人にされちまったよ・・・・」
「ばっ、馬鹿なっ!?・・・・」
「本当だよ、じっちゃん・・・」 蓮が障子戸を開け、部屋に入ってきた。
辰次郎「蓮!!」 豹童「蓮、体は大丈夫なのか?」
「ごめん、ちょっと話、聞いてた・・・。姫香とは、さっき戦ってきたんだ・・・。記憶を消され、別人のようだった・・・。けど、かすかに記憶を呼び覚ますことができたんだ・・・。姫香はまだ、「死んで」ない・・・!!」
すると豹童は姫香におこった出来事を語り始めた。 「・・・・姫香は、友達を助けるため単身、ウロボロスの拠点へ行ったのだ。・・・・結果的に一人で戦うことはままならず、邪神官エビルバーストにやられた。」
「なぜ、お前がそれを知っている!?」
「・・・・俺はその場所に居合わせたわけじゃない。・・・・彼女(姫香)のサポートをしていた、「白龍」から聞いたんだ・・・・」
「白龍だって?」
「白龍は、姫香が可愛がっていた「シロン」という、猫の体を借りてサポートを行っていた。 だが、単身、敵の本拠地へ向かうと言い出した姫香を止めることはおろか、自らも一緒に乗り込み、 エビルバーストに肉体を破壊されてしまったらしい。・・・・瀕死の状態で脱出してきた白龍は やがて俺と出会い、俺は姫香のことについて事細かく事情を聞いた・・・。 白龍は自分の過ちを嘆いていた・・・。姫香は邪神官エビルバーストに簡単に敗れ、捕らえられてしまったらしい・・・」
「姫香・・・そんな・・・」 蓮は悲しみと姫香を倒した敵に対して怒りがこみ上げてきた。
「白龍・・・。人類に味方をし、ジークフリートとともにティアマットに戦いを挑んだあの、竜神か・・・ 白龍は、今、どこに!?」
「・・・・俺に事情を告げると白龍は「体の安静と再構築が必要だから」といって、天に消えて行ったよ・・・。」
「くそう・・・姫香がそんなことになっていたなんて・・・!!」
豹童の胸にもやりきれない怒り、悔しさがこみ上げてきた。 「姫香は・・・・自分で『竜の印に導かれし者』としての運命を選んだ。まだ、蓮より若く普通の少女として生きていくことも出来たであろうに・・・・俺は、そんな姫香が不憫(ふびん)でならない・・・。早乙女家の竜伝説だの運命だとかで、あの子の未来は・・・・台無しにされたんだ!!」
「父さん・・・」
「蓮、話を聞いていたなら大方のことはわかっているな・・・。お前はどうしたい?よく考えることだ。 運命を受け入れるか否かは・・・・お前が決めろ・・・・。 お前まで家柄の伝説だの古臭いしきたりに振り回される必要はない!! ・・・・俺が姫香を救い出す!!・・・俺は、一人ででもウロボロスを倒しに行くつもりだ・・・!!」
「愚か者めが!!もう、好きにせいっ!!お前の顔など見たくもないわっ!!」 辰次郎は近くにあった燭台を蹴飛ばすと、部屋を出ていった。
「じっちゃん・・・・」 蓮は呆然と立ち尽くしていた。
豹童は目を閉じたまま正座していたが、立ち上がると自分も部屋を出ようとした。
「父さん、どこにいくの?」 蓮が心配そうに尋ねた
「心配するな、・・・頭・・・冷やしてくるわ。ついカッとなっちまったよ・・・・」 そう言うと豹童は静かに部屋を出ていった。
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辺りはすっかり日が暮れ、暗くなっていた。 美花、北条、瀬那は傷の手当てを受けたあと、それぞれ帰宅した。
夕食後、蓮は縁側に一人座り、夜空を眺めていた。
「・・・蓮」
蓮が振り返るとミィミが立っていた。 「・・・となり・・・・いい?」
蓮は微笑むと、となりに座るよう促す 「ああ、いいぜ・・・座れよ」 ミィミは無言で静かに蓮のそばに座った。
「・・・・怖かったか?」 蓮は昼間、戦闘後にミィミが泣きながら走ってきたことを思い出した。
「・・・・ううん、わからなかった・・・」 ミィミは首を横に振った。
「なんだよ、そりゃ。答えになってねーぞ・・・」
「だって、わからなかったんだもん・・・」
「ぷっ!」 蓮は思わず吹き出した
「・・・どうしたの?」 ミィミが不思議そうに聞いてきた
「くっくっ・・・いやあ、あんときのミィミの顔っていったら・・・・プククク・・・すっげえ涙と鼻水でひでぇ顔してたからついな・・・くくく・・・。」
それを聞くとミィミは頬をふくらませ蓮の腕を思いっきりつねった。
「いだだだだだっ!!わりぃわりぃ!!」
「・・・・もう、知らないっ」 ミィミは不機嫌そうにそっぽを向いた。
「ごめん、ごめん・・・・悪かった。謝るから、許してくれ・・・なっ・・・?」
「・・・うん、わかった・・・許す・・・」 ミィミは向き直り蓮をじっと見つめた。 ミィミの瞳は黙って蓮を見つめていた。蓮はドキッとしてしまい照れを隠すため目線をそらし 夜空を仰ぎ見た。 なにか、会話をしなければと思い心の中で「話題」を探す。
「あ、あれだな・・・・。そういえば、ラムは何してる?」
「・・・・ママ、今は調べ物してる。・・・・集中すると周りが見えなくなるみたい・・・・」
「・・・・ちゃんと、休んでんのか・・・・?「詰めすぎ」は良くねえぞ・・・」 「・・・・大丈夫、たまに息抜きして、私と散歩したり、テレビ観たりしてるから・・・・」 「そっか、ならいいんだ。・・・ラムって、真面目なんだよな。無理しないでほしい」
ミィミが笑みをこぼした。 「・・・・蓮・・・・優しい・・・」 「・・・えっ?」
「・・・・好き・・・・。蓮のそういうところ・・・・」 ミィミが頬を赤らめながらつぶやいた。
それを聞いた蓮の心臓は高鳴り、顔は火照ってきた。
「・・・・なんちゃって・・・うそ・・・」 ミィミは小さな舌をぺろっと出した。
「なんだよ、そりゃ」
「でも・・・・、半分、本当・・・」
「えっ?」
「蓮、目を少しの間だけつむってほしい・・・」 ミィミのそのお願いに蓮の心臓の鼓動はまた高鳴ってきた。 蓮は唾を飲み込み言われるがままに目を閉じた。
「蓮、いつもありがとう・・・・ママと私の気持ち・・・・・」
月明かりが照らす縁側にて、蓮の顔とミィミの顔は近づき、やがて重なった。 蓮は自分の右の頬に柔らかい唇が触れ暖かい感触を感じ取った。
「ミ、ミィミ・・・・?」 蓮が目を開けると、ミィミはすでに立ち上がっていた。 かすかにミィミの顔は赤らめていた 「・・・・お休み・・・・蓮・・・・」
「・・・ああ、お休みな・・・」
ミィミはゆっくりと歩いて自分の部屋に戻っていった。
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一方、辰次郎は夕食を取ることもなく本堂で黙って瞑想に入っていた。
目を開け、心の中で響子に語りかける。 しかしそれは自分自身をも 自問自答しているようであった。
「ワシだって望んだわけではないわい・・・・。本当なら蓮や瑞樹にも「普通の人生」を送らせてあげたかった・・・。姫香だって・・・。ワシは、子供たちに恨まれておるのかのう・・・・・。なあ、響子・・・」
年老いた辰次郎の目にも涙が浮かんでいた。
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一方、瑞樹は自分の部屋に父、豹童を招き入れ、二つ布団を敷き、二人共床についていた。
「お父さんと一緒に寝るの、久しぶりだな・・・。」 瑞樹は子供の頃を懐かしく感じつつ父に語りかけた。
「そうだったなあ・・・。あんとき瑞樹は怖がりで俺にしっかりくっついて寝てたよなあ。」 「もう、いつの話ですか!」 「くっくっくっ・・・・わりぃ、わりぃ・・・・。昔のこと思い出しちまったよ。・・・・あんときの瑞樹、可愛かったなあ・・・。」
瑞樹は自分の幼少の頃の恥ずかしい記憶を呼び覚まされ赤面する。 「もう!!お父さん!!」
「なんだよ、可愛いって言われて嫌なのか?・・・・ん?」
「恥ずかしいのっ!」
「はいはい、わかりました・・。くっくっくっ・・・・。」
「お父さんのばかっ!」
それからしばらくふたりとも天井を見たまま、沈黙しつづける。 豹童がふと、口を開いた。
「蓮、どうするんだろ?・・・・あいつ、悩んでるんだろーな、今ころ・・・」
「そうね、きっと悩んでるわ。自分のこと、これからのこと、姫香ちゃんのことでも・・・・。 でも、長く続かないわよ。蓮、すぐに飽きて考えるのやめるから・・・・『あ〜〜〜っ!!わっかんねぇ〜〜っ』、てね・・・。」
「ハハハハ!!だろーな!俺に似てるもんな!」
「クスクス・・・」
「・・・・でもよ、最終的に決めるのはあいつだ・・・。だから、俺は蓮が選んだ道には反対しないし、邪魔するつもりもない・・・・。あいつが自分で「その道」を選ぶなら、それは仕方ないことだし・・・。」
「そうね、蓮がどういう道を選んだとしてもあたしは出来るだけ蓮の力になってあげたい・・・・。」
「そっか、瑞樹は優しんだな・・・・。」 豹童は向こうに寝返りあくび混じりにこたえた 「ふあ〜〜、寝るわ。瑞樹も気にしないで寝ろ。・・・・おやすみ・・・」
瑞樹はクスッと笑うと言葉を返した 「おやすみ、お父さん・・・・」
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そして蓮は・・・・
ベッドに入ったが眠りにつくことができず、考え事をしながら天井を見つめていた。
「俺は・・・・どうしたいんだろう。本当に、運命を背負って生きていく勇気と覚悟はあるんだろうか・・・・。」
横を向き頭をかきむしった 「・・・・ダメだ、考える気しねぇ・・・・。寝るわ・・・・明日考えよ・・・・・」 そう言っているうちに蓮は、眠りに落ちていくのだった。
第22話 END
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