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作品名:ドラゴンエンブレム 作者:キョウスケ S

第2回   2
がっくりと肩を落とすレン
「・・・・・確かに、俺の右手には何か力があるみたいだ。」
右手の掌を見つめつぶやき、重い足取りで家路に向かって歩き始める・・・。
 幼少の頃、家族で山にハイキングに行ったとき、親からはぐれてしまい、姉とレンは熊に遭遇してしまったことを思い出す。
 本当なら、あのとき、ふたりとも熊に殺されているはずだったのに・・・。
熊に遭遇した恐怖のあまり泣きじゃくる姉を守るため、俺は必死だった。
おおきなうなり声をあげて奴が飛び掛ってきたとき、俺はとっさに右手を振り上げたら、大きな轟音とともに熊が50メートル先まで吹っ飛ばされていたこと。
助けに来た親たちが、そんな俺を見て、唖然としていたこと。

「確かに、ガキんときから、俺には怪力だとかそういう不思議な力があったのかも知れない・・・・
 でも、なんなんだよ。この力は・・・・さっきの瀬那っていう子が言ってた「ウロボロス」って
なんだよ・・・・?」


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レンはその後あの怪しい連中と遭うことはなく、無事に帰宅できた。
レンの家はこの「草薙町(くさなぎまち)」の高い丘の上の「高見ヶ咲神社」である。
家柄が神社を職とするので、将来は継ぐことになるのだが、レンにはその気は無かった。
そのため、家業を継がせようとする祖父とは対立している。
重い足取りで境内までの階段を上ること7分・・・。
レンの自宅は、高い丘のこの神社の隣にあるため、毎度この階段を上り下りしなければならなかった。
普段なら何のこともないのだが、今日は体力を激しく消耗したためか、上り切ったときには息が上がっていた。
「くそう、エスカレーターでも付けやがれっての!!」
肩で息をしながら、鳥居をくぐる。
高見ヶ咲神社(たかみがさきじんじゃ)
レンの自宅である。300年以上の歴史を誇るこの神社本堂は50年前に建て直しが行われていた。
この神社の面積は優に300坪以上はある。広い敷地の境内の中央が本堂。右手には社務所とお土産(おもに神物関連の護符とか販売)、そして左奥が3年前に新築した自宅がある。

ふと、社務所の方を見ると外で祖父の「辰次郎」が竹ホウキで落ち葉やごみをかき集めていた。
お土産屋の中では忙しそうに姉の「瑞樹」が仕事をしていた。
「なんじゃ、今日ははやく学校がおわるんじゃなかったのか・・・。さては道草でもしてきたのかお前は」
辰次郎がはなしかけてきた。
「るせー、なんだっていいだろう。」
レンはそっけなく言葉を返した。
二人の会話に気づいたのか土産屋の窓から姉が顔をだした
「おかえりなさい、レン。今日は遅かったわね。」
「ああ、だだいま・・・。」
しかしレンの制服が擦り切れてぼろぼろになっており、体中が少々汚れていることに瑞樹は気が付いた。
「!!・・・・どうしたの!!レン。ぼろぼろじゃない!もしかして、不良と喧嘩でもしてきたの?」
瑞樹は慌てふためいた。
「なんじゃとぉ!レン、いつからお前はそんな乱暴者になったんじゃあ!!ワシはお前をそんな子に育てた覚えはないぞっ!」
辰次郎は目を大きくした。
「ちがうって!!ちょっところんだだけだよっ! そしたら、やばいところに突っ込んだからこうなったんだよ・・・」
必死に誤魔化そうとするレン。
「・・・なら、いいんだけど。でも、身体の方、大丈夫?」
心配そうな顔をする瑞樹。
「ああ、なんともないよ。それより、姉さん、ウロボ・・・・、あっいや、なんでもないや」
「??」
言うのをやめた・・・。こんな状態でさっき遭遇したことをたずねる気力はなかった。
「風呂入るよ。汚れちまったし」
「まていっ!!レン、ワシは!ワシはなあっ!」
興奮している辰次郎をよそにレンは自宅へ入っていった。

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入浴後、レンはトレーナーに着替え、自分の部屋のベッドに寝転び天井を見つめていた。
レンの部屋はこの家の2階の東にある。まだ、新築して新しいので壁は白く、部屋の中は新築の製材や壁紙の独特のにおいがする。六畳間の洋室にはデスク、ベッド、クローゼット、本棚、セルフラック、そして中3のころから弾いてないエレキギターがある。
「伊吹・・・・瀬那。・・・・・・・ウロボロス・・・・・。竜の印・・・・」
今日の午後に起こった出来事がレンの頭の中でフラッシュバックしていた。
「・・・・・なんなんだ、あのボディコンねーちゃんは。俺や瀬那を殺そうとしていたな・・・。」
「・・・・・。『竜の印』ってなんなんだよ!!あーーーーーーーーっわけわからん!」
頭をかきむしっていたとき、姉の瑞樹がドアをノックしてきた。
「レン、ご飯だよー」
しかし、食欲はないし、祖父とは今日は顔を合わせたく無かった。
どうせまた、食事時に説教をはじめるのだろうから。
「いらない・・・・。今日は食欲ないんだ。寝るよもう。」
瑞樹はドアの向こうで心配そうに
「そう・・・・。でもお腹すいたら下りてきてね。」
「うん・・・。」
レンの返事をきくと、瑞樹は1階に下りていった。
「くそう、今日は最悪の日だ。厄日だ。・・・・・伊吹瀬那・・・。またあえるのかな
 あの子に・・・・。」
そんなことを考えてるうちにレンは深い眠りに落ちた・・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日
「はっ・・・・。このまま寝てたのか俺は・・・・。」
まぶしい光が窓から差し込んでくる。昨日、そのまま寝てしまったせいでカーテンはあけっぱなし
だったようだ。
「ん〜〜〜〜〜っ。いてぇ・・・・。」
昨日、グラマラス女に吹き飛ばされたときの後頭部と背中が少しだけ痛む。
昨日のことを思い出しながらぼ〜っとしていると

「レーン、起きなさーい。遅刻するよー。ご飯出来てるよー。」
姉の声だ。昨日夕食を取らなかった事を思い出すとレンの「腹の虫」が鳴った。
「そういや、腹減った・・・。顔洗って飯喰うか・・・。」
レンはベッドから飛び起きるとクリーニング済みのもうひとつの制服に着替え、部屋を出た。

「おはよう・・・。」 レンは軽く挨拶した。
1階のダイニングに下りると、姉の瑞樹が忙しそうに朝食を作っており、テーブルでは顔を合わせたくない祖父の辰次郎が朝食を取っていた。
「顔、洗ってらっしゃい・・・。」
レンの茶碗にご飯を山盛りにしながら、瑞樹は振り向いた。
「うん。」
レンは洗面所に行き、うがいをし顔を洗って食事のテーブルに付いた。
すでにレンの席には「ごはん山盛りの茶碗」が置かれていた。
「はい、レン」
瑞樹は「温かい味噌汁」が入った御椀をレンに渡した。
「サンキュー」
食事を取り始めると、向かいに座っている辰次郎が味噌汁を吸いながら、レンを睨みつける。
「なんだよ・・・・。」
じじいの睨みを利かした視線に少々たじろぐ。
「どうした、昨日は飯も食べんと、すぐに寝腐りおって・・・。まあ、よいが・・・。それより、今日は響子が
かえってくる日じゃ。」
「ああ、わかってるよ・・・。今日はちゃんと早く帰るよ。」
レンのそっけない返事に辰次郎は不信に思いながらも
「お前にものう。話さねば成らんことがあるのじゃ。これから、ぼちぼちとな・・・。」
(どうせ、家継ぎの話か・・・・。何度説教されたことか。)
レンはそう思いつつ、いつもの返答をする。
「家系継ぐのなんて嫌だからな。おれは・・・。そんなの姉に継がせろよ。」
レンの返答に対し姉の瑞樹は困ったような顔でこちらを見た。
辰次郎はこみ上げる怒りを抑えながらも
「瑞樹は巫女じゃ。神社を継ぐものは神主である男子・・・つまりレン貴様だけなんじゃ。それは一族の定めなんじゃ・・・。」
と、レンに嘆願する。
「なんで、おれなんだよ・・・・。その話にはウンザリだよ。勝手に決めるなっつーのっ!。
 俺は俺の道を行く。自分の生き方ぐらい自分で決めさせろっての!!」
辰次郎はそれ以上何も言わなかった。瑞樹はただ困った顔をしていた。
「ごちそうさま・・・。」
レンは席から立ち上がると持ってきていたかばんを背中にひっさげダイニングを出ようとした。

「いってらっしゃい・・・」
瑞樹が小さな声で言った。
レンは背中を向けたまま
「今日は・・・早く帰るから・・・・。いってきます」
と言い、さっさと出ていった。

「おじいちゃん・・・」
瑞樹は心配そうに辰次郎に話しかける。
「案ずるな。やつはいつか、自分の宿命に気づく・・・。その日は必ずくる・・・」
辰次郎はこみ上げる憤りを抑えつつ、味噌汁をいっきに飲み干した。

「あっ・・・」
瑞樹はテーブルの端に置いていた青い弁当袋に気がつく、
「レン、弁当忘れちゃってる・・・・。」

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今日も天気が良い。少々肌寒いが心地よくすがすがしい朝だ。
しかし、レンが自分の腕時計をみたとき、心地よさは一気に「焦り」に変わった。
「やばっっ!! 遅刻する!!」
レンの走る速度が上がる。
起きるのが遅かったせいなのか、朝食に時間を掛けすぎたのか、じじいの説教のせいか
遅刻の原因を考えながら、角の道を曲がったそのとき・・・・!

ドンッッ!!

何かにぶつかったのか、レンの身体はその衝撃で後ろへ跳ね飛ばされる。
「痛ってえーーーっ!!」
レンのかばんの中身が宙を舞いアスファルトに散らばる。それと同時にもうひとつの何者かのかばん
らしきものからも荷物が飛び出て、宙を舞った。それもまた、地面に落ち、レンの落とした荷物と混ざり合う・・・。
「ご・・・、ごめんなさい!!」
可愛らしい女の子の声がした。
頭を押さえつつ目の前を見ると、ブロンドの髪色の少女が地面に座り込んでいた。
「お怪我・・・・、ございませんか?。あの、私急いでいたものですからつい・・・。本当に
申し訳ございません・・・・。」
青い瞳が潤んでこちらを見ている。
「あっ、・・・・・・いや・・・その、こっちの方こそゴメン。おれも慌ててたからつい・・・。」
あまりの美しさについどぎまぎしてしまう。
「あっ、すみません、お荷物が・・・・。」
その少女は地面に落ちてしまった荷物をかき集めはじめた。
レンもすかさず一緒に荷物を広いはじめる。
お互い下を向きながら必死で荷物をかき集めていたため、二人の頭が頭突き合ってしまった。

ゴンっ!!

「ってぇ!」
「いたっ!!」

「すみません・・・・。」
「あ、こっちこそ・・・。」

互いに赤面になりながら最後の荷物をひろった。
「すみません、急いでおりますので、失礼します・・・・」
少女はまだ赤面のまま、あわてて自分のかばんの口を閉め深くレンに頭を下げると
さっさと走り去っていった・・・・。
「あの、これ・・・・!」
レンが手に持っていたものは、彼女の「生徒手帳」だった。
しかし、彼女の姿はそこにはなかった・・・。
それを見てみると可愛らしい名前が表記してあった。
「播磨 美花(はりま みか)・・・、セントマリア女学院・・・って
 おじょうさまか!?」
確かにあの風格、口調、しぐさ・・・。お嬢様学校の生徒であったことを確信する。
「いい匂い、したな・・・・。」
彼女が去った後もレンのあたりには、花の香しい香水の匂いが残っていた。
「これ、届けないとな・・・・。播磨美花か・・・・。昨日出会った子(瀬那)とはだいぶ違うな・・・。」
だが、いい想いにふけっている場合ではない。「遅刻」という現実が頭をよぎる。
「!! やべっ、ホント、やべっ! おれが遅刻する!!」
レンは「播磨美花の手帳」を自分のかばんにしまうと、猛ダッシュで学校へ走っていった。


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昼休み。
結局、1時限目の授業にはなんとか間に合った。
あの後、昨日起きた出来事や、母が「還って」来ること、今朝、出会った女の子のことで頭がいっぱいになり授業には集中できなかった。
 あっという間に時間が過ぎ、屋上にいるが死ぬほど腹が減っていた・・・・。
そう、姉から弁当を受け取ることを忘れていたのだ!!
「・・・・最悪・・・・。」
腹の虫が激しく泣く。自分のドジ加減を呪いたくなってくる。
「ああ、神様。おれに弁当をください。・・・・おにぎり1個でもいいですから・・・・。」
そんな言葉をつぶやいていると、ふと目の前に「ピンク色の弁当袋」が現れた。
「!?」
それは昨日出遭ったあの時の少女「伊吹瀬那」が弁当をちらつかせて覗き込んでいるではないか。
「あーーーーーーーーっ!!べんとぉーーーーーーーーっ!!」(そっちかい!!)
レンはあわてて起き上がった。
「お腹、空いてるんでしょ?。弁当忘れたんでしょー。」
彼女はニヤニヤしながら問いかけた。
「って、あーーーーーーーーーーーーっ!!キミはーーーーーーー!?」(いまごろ気づいたのかよ・・・)
レンはさらに驚いた。
「あたし、この学校に通ってるのよ。知らなかったんだ〜〜?」
瀬那は意地悪そうな顔をしてみせる。
「そうだったのか、知らなかったよ・・・・。」
レンは少し落ち着いたが、腹の虫は泣き続けていた。

ぐぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・

「食べる?」

「うん」

屋上の壁際に腰掛け、渡されたピンク色のきれいな弁当袋を開くと、中からかわいい「猫」のイラストが入った、弁当箱があらわれた。
「あけてもいいか?」
レンは瀬那に確認をとる
「どうぞ」
瀬那はニコニコしながら答えた。
開けてみたら、レンにとってそれは宝石箱のようだった・・・!!
色とりどりの野菜に加え、油がのった鶏からあげ、黄金色に輝く卵焼き、愛らしいカタチのタコさんウィンナー、そして純白の白米のうえには、甘〜いスクランブルエッグがのっている。
レンは唾を飲み込んで、再度、瀬那に確認を取る。
「いいのか・・・?」
「どうぞ、どうぞー」
瀬那は二回うなずきながら答えた。
もう、我慢の限界だ。食欲の願望(リビドー)ははち切れんばかりだ。
「いただきまーーーーーすっ!!」
レンはすごい勢いで瀬那が差し入れた弁当にがっついた。
瀬那も自分の弁当を手さげ袋から取り出し、レンのそばに座り、昼食を取り始めた。
「すげーっ。うまいっ!!お前がつくったのか?これ。」
「そーだよっ」
「ちょーーうまいんですけどー!! ・・・・んぐっ!!」
レンはあわててご飯をかき込んだため喉を詰まらせた。
「ほら、あわてない。急がなくてもお弁当は逃げないよ・・・。」
瀬那は手さげ袋から水筒を取り出すと暖かいお茶をコップに注ぎ、それをレンに渡した。
「んぐっ、サンキュー・・・。」
レンはお茶を飲みゆっくり落ち着いた。
「ぷは〜っ、死ぬかと思ったぜ」
それに対し瀬那はクスッと笑った。

「ありがと。それにしても、どうして俺なんかに弁当を?」
レンは瀬那が世話をやいてくれた事に感謝しつつたずねた。
「昨日付き合ってくれたお詫びとお礼だよ」
そう言われてレンは昨日のことを思い出した。
「なあ・・・。教えてくれ、お前は何者なんだ?。そして俺たちの命を狙ってきた、あいつらはいったい・・・・。」
振り向くと、彼女は自分の右腕を押さえていた・・・。
「あっ・・・」
レンは思わず、声を上げる。
腹が減って気もちがへこんでいたことや、差し出されたお弁当に夢中になっていたせいで、彼女の右腕が昨日の攻撃で怪我していたことを忘れていた。
「あ、そういえばその右腕大丈夫なのか?」
「平気、大丈夫だから・・・」
瀬那はそっぽを向いた。
「傷、どうなんだ?」
「・・・・。大丈夫だってば!!。あたしが勝手に怪我しただけなんだから、レン君は心配しないでよっ!」
傷を見せるのを嫌がる瀬那。
「心配なんだよっ。命の恩人を心配して悪いのかっ」
レンが左手で彼女の怪我している右腕を掴んだ途端、

パァァァァァッ

レンの左腕全体が輝き始め、レンの力が瀬那に流れてゆくのを感じた。

「う・・・そ・・。」
みるみる腕の痛みは消えていき、しびれが無くなり軽くなるのを瀬那は感じた。
レンは驚いている。
「なんだ、これは・・・!!」
瀬那の傷が癒えると、その不思議な光は消えた。
レンが掴んでいた手を放し、瀬那が制服の腕をまくって包帯を取って確認してみると、確かに傷は完治していた。
 「すごい・・・あなたって、こんな力もあるのね・・・。」」
瀬那は感嘆の声をあげた。

レンは我に返ると、真剣な表情になり
「さっきの話・・・。瀬那、キミのことを教えてくれ」
と話を切りだす。
「いいよ、あたしの知ってること、レンに話す・・・。だから、レンも自分のこと教えてね。」

瀬那は青い空を眺めながら深呼吸すると語りだした。
「あたしの家系はね、代々「竜の印を持つ者」を護る役目があるの。
あたしはちっちゃい頃からおばあちゃんにそう聞かされてきたわ。
・・・、そしてあたしが中学生の頃からかな、不思議な能力が身に付いて予知夢を見るようになったり
し始めたのは。」
「予知夢だって・・・?」
信じられないという顔をするレンをよそに瀬那は話をつづけた。
「そのとき、世界の滅びの夢も見た・・・・。嫌にはっきりしていて、殺されていたあたしの死体も見たわ・・・。
 気になって、おばあちゃんに相談したら、それが「来たるべき滅びの日」の将来を予知するものだって言われたの。
あたしのおばあちゃんも一族の中では不思議な力を持っていて「夢の解き明かし」ができる人なの。
あたしは「こんな世界になりたくないって、なんとかならないの?っておばあちゃんに聞いたの・・・。
そうしたらね、この滅びの日を回避するためには、あたしが自分の運命を受け入れて、「竜の印」を持つ者を探せばいいって言われたの」

「それが俺だっていうのか・・・」
「そう、早乙女レン君、キミのことだよ・・・」
レンは一瞬気が動転したが、落ち着きを取り戻すと、
「信じられないっていえば、ウソになる。実際昨日あんなことを見たし、実を言うと俺もひっかかっていることがあるんだ・・・。」
「どんなこと?」
「ガキん頃に、家族で山にハイキングにいってさ、俺と姉が熊に遭遇してさ、殺されるかと思っていたら、いつの間にか、熊が俺に吹っ飛ばされていたこと・・・・。自分が無我夢中で右手をかざしたこと覚えてるんだ。」
「知ってる・・・。そのときあたしもそこに居たんだよ。」
「なんだって・・・?」
「瑞樹姉と怖くって抱き合ってかがんでたの、覚えてるよ・・・。」
「姉さんの名前をどうして!?・・・・・!!」
レンの記憶ははっきりとしてきた。
あの日、野生の熊から『女の子2人』を必死で守ろうとした自分のことを。
「あーーーっ、そのときおまえは居たんだよな!!」
やっと思いだしたレン。
「そーだよ。忘れてたんだね。ちょっとムカつく・・・。」
瀬那は口を尖らせた。
「じゃあ、なんで今まで、おれの目の前に姿を現さなかったんだよっ!」
レンは言葉を荒げた。
「仕方ないじゃない、親の都合でおとといまで、あたし千葉で暮らしてたんだからさ・・・。」
両手を後ろに組み、ぷいっとそっぽを向く瀬那。
「んじゃ、引っ越してきたのか!。だったら、こっちに来る知らせくらい入れろっつーの!!」
「だって、電話番号知らなかったんだもん、住所も変わってたから連絡の取り様ないじゃない!」
レンは伊吹瀬那が「幼馴染」であることを確信した。
「だから、おれに他人のふりをして近づいて来やがったのか。」
「それだけじゃないよ。あたしは予知夢の中でレン君が不思議な力を帯びて、破滅の世界をも覆す姿も見たわ。レン君が世界を救える力を持っていることも夢は教えてくれたの。だから、あなたに会うために来たんだよ。
・・・それに、もし昨日、あたしがレン君を呼んで、喫茶店から連れ出さなかったら、トラックはあのまま
宿題してたレン君を巻き込み
まわりのお客も大怪我してたかもね。レン君、きっと死んでたかもね」
瀬那は意地悪そうにウィンクしながら「べぇ〜〜〜っ」と舌をだした。
「そ・・・・、そうなのか・・・。」
レンはゾッとした。
あの時瀬那に声を掛けてもらわなかったら死んでいたであろう自分を考えると感謝せずにはいられなかった。
「じゃあ、あのトラックが俺を殺すことを予知で知ることが出来たんだな」
瀬那はわざとらしく威張り
「うむ、そのとおり!」
と胸を張って見せた。
「ついでに、レン君が今日お弁当忘れる夢も見たの」
「おいおい・・・。」

レンはさらに瀬那に疑問をぶつける。
「あいつら、『ウロボロス』っていう連中なのか?・・・そもそもウロボロス
って何なんだ?」
瀬那は左右に体を振りながら上空を眺め
「くわしいことはわからないんだけど、あいつらが「来たるべき、滅びの日」を実行しようとしている連中かな。」
「その「来たるべき、滅びの日」ってなんだよ?」
レンは半信半疑にツッコミを入れる。
「あたしも、くわしいことは分からない。でも、「読んで字の如し」。そういうことなんじゃないかな。
それを覆すことが出来るのが「竜の印」を持つ者、つまり早乙女レン君のこと。
やつらはきっと、レン君やあたしの存在が邪魔なのかもしれないわ。だから、命を狙ってきた・・・。そういう感じかな」
 成る程、それなら昨日襲われたことも納得する。だが、レンは自分が「選ばれた者」であることが納得できないでいた。
「俺は、なんで自分がそうなのか、納得ができない。じいちゃんには家系を継げって言われてるけど、そんな気にはなれない・・・。」
それに対し瀬那は肯定した
「わかるよ、あたしだって自分がそうなるなんて望んでもいないもの。でも、人類が滅んで、理由も分からないまま自分も死んでしまうのはもっと嫌。だから、あたしは知りたいの、レン君が守るべき世界がどんなところになるのかこの目で確かめて見たいの!」
彼女のまなざしは真剣だった。
レンはそんな真剣な瀬那に対し自分には何が出来るのか、どうすれば彼女の力になれるかと考え、こう切り出す。
「今日、死んだ母さんが黄泉の国から戻る日で、会うことになってるんだ。瀬那、うちのじっちゃんや母さんと会って話してみてくれ。
そうすれば何をすべきかはっきりするんじゃないのかな。それが瀬那の役に立つといいよな。」
「えっ!、亡くなったレン君のお母さんに会えるの?」
瀬那は驚いた。
「ああ、年に1回だけだけどな。ちょうど今時期、春の桜が咲くころにじいちゃんの神通力で呼び寄せることができるんだ。ほんの数時間なら話ができる。」
「そうなんだ。レン君のお母さんはみんなを守るため、犠牲になったんだよね。あたし、レン君のお母さんと話がしたい。」
「じゃあ、決まりだな。放課後、学校の入り口の所で待っててくれ。」
ちょうど、昼休みの終わりのチャイムが鳴り、二人はそれぞれ自分の教室へ戻っていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方。
レンは瀬那を連れて帰宅した。女の子を自分の家へ連れてくるのは初めてだ。
といっても瀬那は幼馴染か・・・・。
長い神社の階段を上って、鳥居をくぐり、境内まで行く、外では姉の瑞樹が竹ほうきで掃除していた。
突然、瀬那はレンの後ろに隠れた。
「なんだよ」
「いいから、いいから。」
瑞樹はこちらに気がつく
「レン!お帰りなさい。今日はちゃんと帰ってきたわね、それよりもお昼大丈夫だった?。
 レン、お弁当忘れて行くんだもの・・・。」
「ああ、なんとかなったよ・・・。こいつに弁当もらっちゃってさ・・・・。」
レンの後ろから、身を隠していた瀬那がひょっこり姿を現した。
「ひさしぶり、瑞樹姉さん」
「!! あなた、瀬那なの!?」
再会を喜ぶ二人。姉の瑞樹も瀬那のことを覚えていたらしい。
(知らなかったのはおれだけか・・・・。)
「おじーーちゃーーん!!レンが帰ってきたよー。あのねーっ、瀬那も一緒なのーー!!」
瑞樹は掃除そっちのけで祖父の辰次郎を呼びに行く。
「なぬーーっ?! 瀬那ちゃんじゃとぉーーー!?」
遠くから声がする。
ふたりとも駆け足でこちらに駆け寄って来る。
「あっ、おじいちゃーん!!」
瀬那も大きく手を振った。

「じっちゃん、約束どおり早めに戻ったぜ。瀬那が母さんとしゃべりたいんだってさ。」
「うむ、よろしい。瀬那ちゃんは「自分の負うべき責任」を理解しておるんじゃな。レン
、おまえはどうなんじゃ?」
辰次郎が鋭い目つきでたずねた。
「俺は・・・、別に・・・・。」
辰次郎から視線を逸らす。

ゴンっ!!

「いでぇ!!」
辰次郎の右拳がレンの頭を直撃する。
「この馬鹿者が!!。瀬那ちゃんは覚悟を決めてここに来ておるのに、貴様はまだ
煮え切らんのか!!早乙女家の長男ならしっかりせんか!!」
「なんだよっ。このクソジジイ!!」

ゴツーンっ!!

辰次郎の2発目の拳がレンを直撃。レンは地面に情けない格好でめり込んでいた。

「ってぇ!!あんまり頭を殴んなよっ!!馬鹿になっちまうだろうが!!」
「もともと『バカ』じゃろうが・・・!!」
二人のやり取りに瑞樹と瀬那は苦笑していた。

「さあ、日も暮れるでな。時間も無い。早速、響子のやつに来てもらおうかの・・・。
さあ、瀬那ちゃん、こっちじゃ。レン、貴様もくるのじゃ!!」

「わかったよっっ!!」
タンコブのできた頭をおさえながら、レンは3人について行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

早乙女家が代々受け継ぎ所有するこの「高見ヶ咲神社」の本堂は神道でありながらも
仏教寺のように大きい。本堂中央には山上の命(ヤマガミノミコト)と神竜「ヤマタノオロチ」の像が安置されている。その大きさは7メートルくらいの大きさで、右手に「草薙(クサナギ)の剣」を持ったヤマガミノミコトが大きな口を開け襲いかかってくる8本の首をもつ神竜「ヤマタノオロチ」に立ち向かっている。

その昔、平安時代において、ヤマタノオロチは2度目の復活を遂げ、人々を恐怖の底に落とし入れたとされる。それよりもさかのぼる過去「邪馬台国時代」(ヤマタイコク)においてもひとびとを苦しめたとされ一度は酒に酔い寝首を斬られ死んだはずだったが、邪神の力を借り、復活したらしい・・・・。13日間の戦闘の末、ヤマガミノミコトはヤマタノオロチを倒し、最後の首を斬り落としたときのその「返り血」を浴びることによって「竜神の強大な破壊力」と「不老不死の源」を手にしたと言われている。そして、ヤマガミノミコトは日本を治める神となり、日本の天国にいるアマテラスオオミカミの元へ昇ったとされている。

そして、それを代々、受け継いでいるのが 「早乙女家」であった。


「おじーちゃま、お待ちしてましたー!」
本堂の奥から元気な子供の声が聞こえる。
「おお、美沙、準備はできたかの!」
「はい、おじーちゃま。」
五望星(ごぼうせい)を描く魔法陣の様なものの傍らにその声の持ち主はいた。
村部 美沙(むらべ みさ)。
代々、早乙女家と親交が深い「村部家」の三女だ。
まあ、親戚みたいなもんだ。
小学生のくせに「将来は巫女さんになる」という夢を持つ『おませな子』だ。
母を呼び出す「黄泉還りの儀式」には3度携わっている。
巫女服姿に亜麻色のロングヘア、顔はもちろん子供の顔だ。
姉に巫女服を手直ししてもらったのだが、身長140センチのこの子にとっては「服を着ている」
のではなく「服に着られている」感じである。
美沙を見る辰次郎の顔は緩んでおり、だらしが無い。
「よしよし、すまんのう、美沙。後でご褒美にお菓子をあげるからのぅ」
「はーい、おじーちゃま。ダイスキっ!」
「ロリコンじじいが・・・・」
レンはとっさに捨て台詞を吐く。
「なんじゃと・・!!」
険悪なムードになりそうなところを瑞樹は察したのか、仲裁に入る。
「おじーちゃん、喧嘩してる場合じゃないでしょ。早くしないと日が沈むわ。」
「黄泉還りの儀式」は、夕日が沈みかけた頃に執り行うことにより「黄泉の扉」を開くことが出来るとされる。
「おお、そうじゃった。みんな、法陣を囲みワシの指定する位置へ着いてくれ。」
その五望星の五角形の角にはそれぞれろうそくに火が灯ったしょく台があり、
それぞれの角の下には「仁、儀、礼、智、信」の文字が刻まれている。
その場所にそれぞれの儀式に参加する決められた人が立つことになる。


辰次郎は指示を出してゆく
「『信』の席は、美沙じゃ」
「はーい、おじいちゃま」

「『智』の席はワシじゃな」

「『礼』の席は瑞樹じゃ」

「はい」

「『儀』の席は・・・・。瀬那ちゃん、おまえさんじゃ!」

「はい」

瀬那は恐る恐る法陣の「『儀』の席」へ着いた。

「そして、レン!!貴様は「『仁』の席じゃっ!」
「なんでおれが・・・。」
母と会うことに躊躇しているのだろうかレンは気が乗らない。

「はやくせいっ!!」
辰次郎が急き立てた。

「わかったよ!!。着けばいいんだろうがっ!!」
しぶしぶ所定の位置に着いた。

「では、始めるぞ・・・・。」
辰次郎の両手には儀式用の古びた黄金の尺杖(しゃくじょう)と御祓い(おはらい)で使うような柳の木でできたセンスを持っている。
「早乙女家が代々、護り続けてきた黄泉の門よ、今こそそのたがを外し、賢者早乙女響子の御霊をここに連れ出したまえっ!!」
レンたちのいる本堂中心が暗くなり、五望星は青白い光を放つ。
五望星を描いた地面から風が沸き起こり、あたりは台風の風の様なものに包まれた!!

ブォォォォォッッ!!

猛烈な風が吹き付けるため、ろうそくのしょく台は倒れ、転がってゆく。
「!!」
レン、瀬那はたじろいでその場を動こうとした。
「だめじゃ、黄泉の結界が外れる!!その場を動くではない!!」
辰次郎、瑞樹、美沙は強風に必死にこらえている。
レンと瀬那も必死にこらえ、持ち場を守った。
「あと、もう少しじゃ!!」

しばらくすると、法陣から吹き上げていた嵐が消え、あたりは静寂に包まれる。

レンと瀬那は目をつぶってこらえたままの格好だ。

そのとき、レンと瀬那の耳に聞き覚えのある「澄んだ女性の声」が入ってきた・・・。

「レン、久しぶりね。瀬那ちゃん・・・あなたも来てくれたのね・・・・。」

二人が目を開けると目の前に天女のような女性「早乙女 響子」が浮かんでいた。


第2話 END


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