ラムスイーディとの戦いから二日後。 瀬那はいつものように学校へ通う。
レンはまだ、身体の回復が完全でないため、自宅療養中であった。
そんなレンのために学校でクラスはちがっても自分が勉強した授業の範囲のノートを貸したり、レンの机の中の渡されたプリントを彼に届けることにしている。いまさら云うまでも無いが瀬那は結構レンの世話をするのが好きらしい。 さて、その日の授業があっという間に終わり、放課後のことである。 瀬那はレンの教室へ立ち寄り、クラスメートからプリントやテキストを受け取るといつものように、昇降口へ急ぐ。 「今日はレンに何、買っていこっかな・・・・。昨日はたい焼き持ってったから、今日はたこ焼き・・・。う〜ん、ここは思いっきり甘く女の子的に「クレープ」はどうかな・・・?いやいや、今日はシブく「焼き鳥」にしてみようっかな・・・・」 そんな独り言を言いながらローファー(外靴)に履き替え、昇降口を出る。
外の空気をを胸いっぱいに吸い込みながら小走りする。 ふと、何かを思いついたように立ち止まる。 「そうだ、美花も一緒に連れてこっ!!」
瀬那は制服のブレザーのポケットから携帯を取り出すと、播磨美花に電話をかけ始めた。
トゥルルルルル・・・・ トゥルルルルル・・・・
ピッ
「はい、ごきげんよう、瀬那、どうしました?」 播磨美花が電話に応対した。 瀬那は元気よく美花と会話する。 「あ、美花〜っ、いま、学校終わってさ!これから、レンの家に行くんだけど、美花もどお?」 それに対し美花も答える 「はい、いいですね。わたくしもレン様のお顔をお伺いしたかったのでちょうど良かったですわ。 こちらも学校が終わり、今帰るところでしたの・・・」
「よ〜しっ、んじゃ決定っ!・・・どこで落ち合う?」
「そこで、いいと思いますわ・・・」
「はっ?」 瀬那は「眼が点」になってしまった。 「そこって、何所よ!?」 電話口で美花がくすくす笑い出す。なんだか、近くにいるような声がしてきた。
「うしろですわ・・・う・し・ろ・・・」 「えっ!?」 瀬那が後ろを振り返ると、美花が携帯を片手にニコニコしながら立っていた・・・。
「えーーーっ!!、後ろに居たんかいっ!!」 瀬那は大声をだし仰天する。 美花は大笑いしだした 「だって、後ろから追いかけてきてるのに気がつかないんですもの・・・」
それを聞いて瀬那は脱力しつつ、ヘタリこんだ。 「だったら声かけてよーーーっ。ひとりだけ調子に乗って美花に電話してたあたしが恥ずかしーじゃないっ!!、しかも美花、素直に電話出るし・・・」
「すみません、私が声をかけようとしたら瀬那ちゃんが誰かに電話を始めたから、呼びとめるのをやめたんです。そしたらわたしのケータイに電話が掛かってきたものですから・・・・」
「ううっ、ぜんぜん気がつきませんでしたーーーっ!!」 瀬那は赤面しながら叫んだ。
美花は落ち込んで後ろを向き、しゃがみこんで地面に「の」の字を書き始めた・・・。 「すみません・・・・。わたしって・・・・・そんなに存在感無いのかな・・・・」
「だーーーーっ、そんなことないってばっ!!、あたしが気づかなかっただけ〜〜っ!」
ふたりはしばらく見つめ合う・・・ 瀬那が状況のおかしさのあまり吹き出す。 「ぷっ・・・・あははははははっ!!」 美花もつられてこらえきれず笑い出した 「うふふふふっ・・・」
「さあ、行こっか?美花!」 「そうですわね・・・」 ふたりはレンの家の方角に向かい歩き出した。
「そういえば瀬那は、レン様のお世話をするのが結構お好きなのですね。」
それを聞いて瀬那は赤面する。 「えっ・・・ていうか、その、べっ、べっ、別にレン君のことが好きだからとか そういうんじゃなくて・・・その、な、な、な、なんていうか・・・」 その様子を見て、美花は微笑みながらこう言った 「レン様のこと・・・好きなのですね・・・・」
瀬那の心臓が高鳴り、頬が一気に熱くなった。 「そーーじゃないの!!えっと、その・・・レン君はだらしないから世話焼いてあげないと・・・・だめだからっていうか!・・・ほっとけないのよ!うんうん・・・」
美花は瀬那を覗き込み小声で言った 「そうなんですか、じゃあ、わたくしにも望みはあるのですね・・・・」 瀬那はどぎまぎしながらそっぽを向き、自分の本心をごまかす。 「あたしは別にレン君のこと、ど、ど、どう思ってもいないから、い・・い・・・いいんじゃない?」
その様子を見て美花はニコッと笑う 「お互い、頑張りましょうねっ・・・・」
瀬那はあぶら汗をかきながら返事した 「そ、そーね・・・」 (あーあ、美花がライバルになっちゃったよー)
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しばらく、二人はいろんな雑談をしながら歩いていた。 そして、ひと気のないところにさしかかったときだった。
二人は、妙な気配に襲われた。 美花が真剣な顔つきになり、瀬那に確認する。 「何か居ますわね・・・・。この異様な殺気・・・・。」 瀬那も唾を飲み、返答する 「うん、ちょうどひと気のいないこの道にさしかかってからだわ・・・。なにかがこっちを見てる様な気がするの・・・」
そのときだった。
ビシュ!! ビシュッ!!
二人に手裏剣が飛んできた。
ギンッッ!!
美花は瞬時に火竜剣の封印を解除し、手裏剣をはじき返した。
どこからともなく声が聞こえる 「・・・・さすがは、ジャガー様が言うだけのことはあるな!!」
辺りを見回すと、黄色の装束に身を包んだ忍者が5,6人瀬那と美花を取り囲んでいた!!
「迂闊(うかつ)でしたわ!!」
「また、ウロボロスの連中ねっ!!」
ウロボロスの手下の一人が鎖鎌のぶんどうをを振り回し瀬那に向かって、素早く投げつける。 美花はそれに気づき刀でぶんどうをはじこうとするが、別の方向からも来た鎖に瀬那のかばんが巻き上げられてしまった!!
「ああっ!あたしのかばん返せ!!」
「これがほしけりゃこっちに来い・・・」
装束姿の手下たちは、瀬那のかばんを奪うと近くの林の方に素早く移動し始めた。
美花が瀬那に注意をうながす。 「瀬那!!行ってはだめ!!奴らは自分に有利な場所へ移動して、わたくしたちを罠にはめるつもりですわ!!」
だが、美花がうながす間もなく、瀬那は林の方に走り出していた・・・。 「まて〜〜っ、返せ〜〜!!あたしのかばん〜〜っ!!」
「ああっ、瀬那!!聞いてませんし!!」 美花もやむを得ず瀬那の後を追った。
瀬那は走りながら「光の弓矢」を召還する。 「こんのぉ〜!!返せ〜〜!!乙女のかばん〜〜っ!」
ビシュッ!! ビシュ!!
光の弓矢を放ちながら追いかけるが、さすがに敵には当たらなかった。
気がつけば、林の薄暗い中まで入り込んでいた。 瀬那が立ち止まると、すかさず敵の手裏剣攻撃がはじまる。
ビシッッ!! ビシッビシッ! ビシッビシッビシッ!!
無数に多方向から手裏剣が飛んでくるため、瀬那はよけるのに苦労する。 「痛っ・・・!」 瀬那の右腕を手裏剣がかすり、瀬那は傷を負う。 「あうっ!!」 今度は瀬那の頬を手裏剣がかすめ、瀬那の頬から血が流れてきた。
「瀬那ーー!!」 美花が瀬那の方に急いで走りこみ、多方向から飛んでくる手裏剣を剣で防ぐ。 「大丈夫ですか?」 「うん、なんとか・・・」
薄暗い林の中、手裏剣は容赦なくあちらこちらから飛び交い、瀬那と美花をじわじわと攻めていく。 美花は刀で飛んでくる手裏剣を振り払うのでいっぱいだった。 「このままじゃ、やられますわ・・・」 「・・・ごめん、あたしのせい・・・」
装束姿の敵の声が密林の中にこだまする。 「どうした・・・手も足も出ないか・・・・こんなのはまだ、序の口だぞ・・・」 今度はどこからか丸太が瀬那めがけて飛んできた!! 瀬那はギリギリで回避したがその反動でしりもちを着いた。 「あんっ!!」」 「瀬那!!」 美花は瀬那を守ろうとするが、足が動かないことに気づいた。 「・・・!!、トリモチ・・・!!」 ねばねばするトリモチが美花の足元を捕らえているではないか!! 「・・・・動けませんわ・・・。万事・・・・休す・・・かしら・・・・」
「とどめだっ!!」 手裏剣が多数と丸太が二つ二人めがけて一斉に向かってきた!!
絶対絶命かと思われたそのときだった・・・・。
パアアアアッ!!
瀬那と美花の辺りの地面が光り、手裏剣や丸太が吹き飛んでいく。
どこからともなく男性の声が聞こえてきた。 「・・・・感心しないなあ・・・。よってたかって女の子二人をいじめるなんて・・・・。しかも、原始的かつ姑息(こそく)な手を使って・・・・甚(はなは)だ情けないねえ。ウロボロスっていう連中は・・・・」
「だれだ!?」 装束姿の敵が大声で叫ぶ。
瀬那と美花も唖然とする。 「だれなの!?」
「名乗る者のほどじゃないよ・・・・。だけどあえて名乗るなら『陰陽師(おんみょうじ)』と名乗っておこうかな・・・」
「陰陽師だと・・・!!」 装束姿の敵は刀を構え、辺りを警戒する。
「・・・だから、見えもしない相手に刃を構えても無駄だよ。身の程知らずが・・・・」
そう言うとその声の持ち主はなにやら呪文を唱え始めた。 「・・・・風司りし風神よそのちから、我が前に示せ!!・・・・・風斬りの刃!!」
突然、かまいたちが起こり、装束姿の敵すべてを覆いはじめた。 「うわああああっ!!」 敵は真空の刃に切り刻まれた。
「・・・ちょっと待ってくれたまえ、レディたち・・・・はっ!!」 掛け声と共に美花の辺りの地面から青い炎が沸き起こり、べとべとのトリモチを溶かしていく。 「さあ、今のうちだよ、お嬢様・・・」 美花は動けるようになった。 「今ですわっ!!」 美花は火竜剣をかまえ、装束姿の敵を一網打尽にする。 「火竜剣!!天昇斬!!」
「ぐはあああああっ!!」 敵は斬りきざまれ吹き飛ばされていった。
「くそう、ジャガー様にご報告だ!!おぼえていろ!!」 深手を負った敵一人は捨て台詞を吐くと逃亡した。
「助かりましたわ・・・・。」
「ありがとう!!ねえ、どこにいるの?」
瀬那と美花が辺りを見回した。
「・・・失礼、ここだよ・・・。」 上を見上げると木の枝のところに白い制服姿の黒髪に眼鏡を掛けた、瀬那や美花と同じ年頃の男性が立っていた。 男性は人差し指で自分の眼鏡を直すとスッと木から飛び降りてきた。 「申し遅れた。ボクは北条正光(ほうじょうまさみつ)。陰陽師の末裔で「竜の印に導かれし者」のひとりだ。」
瀬那は驚きつつ尋ねる 「あなたも・・・あたしたちの・・・・仲間・・・なの?」
北条は眼鏡の眉間をを人差し指でツイッとあげ、フッと笑みを浮かべた。 「いかにも。ボクも代々伝わる「竜の印を持つ者を守る役目として、その運命を背負い陰陽道を継承する者。「竜の印{ドラゴンエンブレム」をもつ早乙女レンをサポートするためにここに来た。・・・いやあ、うわさには聞いていたが、お二人ともお美しい・・・・そんなキミたちにはこの深紅の薔薇がお似合いだ・・・」 そういうと手品のごとく、右手から深紅の薔薇2本を二人に差し出した。
美花は頬を赤らめ照れる 「まあ、素敵な薔薇ですこと!!・・・それに、「美しい」だなんて・・・めっそうもございませんわ・・・」 瀬那はそっぽを向きシラけていた。 「・・・こいつ、キザ野朗だ・・・・。キモッ!!」
北条は話を続ける 「もう少し、駆けつけるのが早ければ、ボクが事前にあの輩を蹴散らしてやったんだけどね・・・。 いや、喫茶店でティータイムしていたら遅れてしまったよ。レディたちには怖い思いをさせたね。 謝罪するよ」
美花は丁寧に返答する 「いえ、大丈夫ですわ。わたくしたちこう見えても柔(やわ)ではございませんので・・・・。 身を守る術なら、常人より身に付けておりましてよ・・・。」
北条はわざとらしく頭をふる 「おおっと、これは失礼。見くびっていたよ。レディたちもまた『竜の印に導かれし者』・・・ ボクとしたことが、とんだ失敬を・・・。」
美花は首を横に振った。 「いいえ、気にしておりませんわ。助けていただいてありがとうございました。」 瀬那は不機嫌そうに答えた 「その、『レディ』って呼び方、やめてくれる?キモイんですけどーっ!」
瀬那がふと、見上げると、瀬那のかばんは先ほどの敵が吹き飛んだ風圧で高い木の枝にひっかかっていた。 「ああっ!!あたしのかばん、あんなところじゃん!」
「待ちたまえ、ボクにまかせて・・・・」 北条が右手をかざして深い息をつくと、なにやら小声で呪文を唱えはじめた。 すると、辺りは少し強めの強風が沸き起こり、木々がざわざわ鳴り出し、揺れ始めた。 その風で、木に引っかかっていた瀬那のかばんは下に落ちはじめ、ちょうど伸ばした瀬那の両手に着地した。 「・・・・すごい・・・。」 瀬那は自然を操ったかのように見える北条に感心した。 「あ、・・・ありがと・・・」 北条は得意げにフッと笑う 「どういたしまして、レディ・・・・ところで、レディたちはどちらへ?もし、退屈だったらこのボクとこれからお茶でもしませんか?」
瀬那は北条のキザっぷりにイライラしながら返答する。 「・・・ありがとうございますっ!!でも、あたしたちこれからレン君のところへ行きますから結構です!!はいっ!さようなら!!・・・・行こっ!!美花!!」 そういうと、瀬那はきびすを返し、スタスタとその場を去ろうとする。
「ちょうどよかった・・・。実はボクもこれから早乙女家を尋ねようと考えていたところだよ・・・。 せっかくだから、ボクも君たちのボディガードを兼ねて同行させてもらうよ・・・さあ、行こうか、いとしのレディたち・・・・!!」
そういうと北条も瀬那たちのあとをついてきはじめた。
「ついてくんなーー!!」 瀬那が大声で拒否するも北条はまったく耳を貸さずついてくるのであった。
「いいじゃありませんか・・・瀬那、強力なボディガードなんですよ・・・・」 美花はニコニコしながら説得する。 「よろしくお願いしますわ、北条さん・・・」 美花は北条に軽くおじぎした。
「正光でいいよ。でなければ、ボクのこと、「ダディ」って呼んでくれてもいいよ・・・」 (ダディ (Daddy) とは、英語で父親を指す幼児語)
さすがの天然の美花も苦笑いしつつ返答した。 「・・・遠慮しておきますわ、正光さん。「ダディ」というのはあまりにもおかしい呼び方かと・・・・」
「そうかな?ボクはかまわないが・・・」
美花はそっぽを向きながら苦笑い・・・ (おかしな人ですわね・・・)
3人は林を出て早乙女家の方向へ向かい歩き出すのだった。
第11話 END
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