「夢か…」 ラムは悪夢にうなされていた。 目の前で自分の愛した人が、殺されて行く惨劇を夢の中で、目の当たりにしていた。 「なんで、また、あの夢なんかみるのだろう…もう、遠い昔の話なのに。」 下着とネグリジェは汗で、ぐっしょり濡れてしまい、喉はカラカラになっていた。 時計を見るとまだ午前2時半だった。ラムはベッドから出て、台所に向かう。 おもむろに照明のスイッチを入れ、流しに向かう。ガラスコップを取り出し、水道の蛇口をひねり、水をコップの淵まで注ぎ一気に飲み干した。 ラムは悪夢の惨劇を思い出した。怒りが込み上げ、持っていたガラスコップを壁に叩きつけた。
ガシャーン!!
コップは音を立てて破片が飛び散り割れた。 「くそう!!みんな青二才のせいだ。あいつが倒せないから、あたしは…。」 ラムは苛立ちの矛先をレンに向ける。
「ママ、何の音?」 ミィミが、眠い目をこすりながら、ガラスの割れる物音に気づき起きてきた。 「うっさいわね、起きて来るんじゃないわよ。あんた、コップ片付けておきなさい…」 ラムはうざったそうにぶっきらぼうに答えると、汗を流すためにバスルームへふらふらと歩いていった。
「…」 ミィミはいわれるがまま、黙って割れたガラスコップを片づけはじめた。
ラムはシャワーを浴びながら、邪悪な笑みを浮かべつぶやいた。 「待ってなさい、早乙女レン。もうすぐ血祭りに挙げてやるからねっ」
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翌日、レンと瀬那はいつものように学校へ登校した。
二時限目の授業が終わって休み時間に入り、レンがボンヤリとしている時だった。 「おい、レン、一年生の後輩のかわいい子がおまえに用事だってよっ!」 悪友の洋介が、レンを呼ぶ。
「えっ?一年生の…」 レンが、教室の入り口の所を見るとミィミがじっとこっちを見ていた。
(ミィミ!? なんだろう、またイジメられたのかな?) そんなことを想定しながら、レンは席を立ち、ミィミの所へ行く。
「どした?また、あの野郎どもにやられたのか?」
しかし、ミィミは首を横に振った。 「じゃあ、なんだ?」
ミィミはレンを赤い瞳でじっと見つめる。なんだか、少しだけ悲しい眼をしていることを鈍感なレンにでも、感じ取れた。
(イジメられたのでなければ、なんなんだろ?)
ミィミが口を開いた。 「どうしても、お願いがあるの。今日の夜10時に学校のグラウンドに来て・・・・。大事な話があるの・・・」 「じゅ、10時?」 レンは驚いた。そんな時間にその場所で、女の子が、男に対してなんの用事なのだろう? レンは自分が悪い気を起こしたり、誤解されないために瀬那を同伴させることを提案する。 「あ、ああ、分かった・・・。今日の夜10時、学校のグラウンドだな・・・・。瀬那も一緒でいいか?」 レンは確認を取る。
「うん、分かった・・・。待ってる・・・・」 ミィミは了解すると、さっさと帰っていった。
レンは呆然と立ち尽くす 「変わった娘だなあ。なんで夜中なんかに…」 考えこんでいたら、後ろから、洋介が右腕でレンの首を絞めながら絡んでくる。 「レン、なんだおまえ、瀬那ちゃんがいながら、一年生の娘にまで手を出すなんてよぉ!」 裕也までしゃしゃり出てくる 「レン、きさまぁ、許さん! 貴様はやはり、瀬那ちゃんに相応しくない!「瀬那ちゅわ〜ん」を俺によこしやがれ!!」
「ちがうっつーの!そんなんじゃねぇよっ!」 レンは否定する。 裕也がヘッドロックをかけてくる 「問答無用だっ!、このロリコンめっ!!」
「だーーーっ!!やかましいわっ!!」 レンがヘッドロックを振り払い、逆に右腕で裕也の首を締め上げる。 「あだだだだ!!・・・レン・・・いてーよぉ!!」 裕也は苦しそうな顔をする。
(とりあえず、瀬那にも相談しておかないとな・・・・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 昼休み
今日も天気が良いので、レンと瀬那はまた屋上で二人で昼食を取る。 レンは先ほどのことを瀬那に説明した。
「えっ、ミィミちゃんがそんなお願いして来たの?」 「ああ、なんだか理由(わけ)ありみたいなんだよ。・・・でも、気になるなあ。夜にグラウンドだなんて・・・」 「意外と、天体観測が好きでレンと一緒に観て過ごしたかったんじゃない?・・・・ロマンチックよねえ・・・」 「いや、なんか違う気がする・・・。あの瞳・・・いったい・・・」 瀬那が突然不機嫌になる。 「ふーん・・・。二人きりで楽しんだらいいんじゃない!ロマンチックになったところであんなことやこんなことするんでしょ!!」
「バーカ!!違うよっ!!俺はそんな気は無いし、何かの頼みごとだろ!?だから、誤解を招かないためにもだなあ・・・その・・・瀬那にも一緒にきて欲しくて・・・」 レンは言葉に詰まった
「いっ、一緒・・・!?」 その言葉を聴き瀬那は赤面した。 「な、なによ・・・!!そ、そんなに言うならついて行ってあげるわよ!!か、勘違いしないでよ、バカ!! あくまでも、ミィミちゃんの安全を考えてのことだから・・・・ね・・・」
「な、なに言ってんだよ。俺が「オオカミ」になるわけねーだろーが!!」
レンは真剣な顔つきになる 「ただ、嫌な予感がするんだ・・・・。なんとなく・・・」 瀬那も真面目に返答する 「あたしもなんだ・・・・。あのミィミって子、只者じゃない様な気がするんだ。ちょっと警戒したほうがいいんじゃない?」 「いや、しかし・・・・。でも俺はあの子を疑う気はない。でも、胸騒ぎするんだよな。それにスイーディって言ってたよな、あの子の苗字・・・・」
「ラム・スイーディ!?」 瀬那は驚きつつレンに確認する。 「ああ、やっぱりそうなのかも知れない・・・・。なにか関係がありそうだな・・・。」
「じゃあ、ミィミちゃんもウロボロスの・・・・。」 「わからない、まだそうともかぎったわけじゃない・・・・」
「そうだよね・・・。そういえば、美花もミィミのこと知ってるみたいだし・・・・。」 「そうなのか?だったら美花にもいっしょに来てもらうか?」 「うん、一応、美花も呼んでおくわ・・・・」
二人はミィミに対する疑問を抱きつつも今日の夜、約束の時間にグラウンドへ行くことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 夜10時頃
瀬那とレンが、学校のグラウンドに向かう。 「あれ?、美花は?」 レンは瀬那に尋ねた。 「なんか、会議があるから、少しだけおくれるってさ」
「か、会議…?」 (なんの会議だ?) 「まあ、いいけどさ、美花はミィミと知り合いなんだろ?」
「みたいだね。最近お友達になったんだって。」
「へえー、偶然だな…面識あったなんてな。とか言ってるうちに学校についたな。」
レンと瀬那は校門に立ち尽くす。 夜中の校舎は不気味なくらいの静寂に包まれていた。 「なんだか、気味悪いね…」 「なんだ?もう、怖じ気付いたのか?」 「そんなんじゃないわよっ!さあ、行くわよ」 瀬那は校門の門に足をかけて、よじ登ろうとしたが、立ち止まった。 「どした?」 「…レンくん先に入って…」 「なんで?」 「いいから!先行って!」 瀬那は、顔を赤らめながら答える。たぶん、先に上るとレンにスカートのなかを覗かれてしまうことを警戒してのことだろう。 レンはそのことに気がつくと、ニヤニヤしながら校門に足を掛け、上りはじめた。
「ニヤニヤするなあ!」 「へいへい…おまえも早く来いよ」
ふたりは、校舎をぬけ、グラウンドにまわる。 夜のグラウンドもやはり、暗く気味悪いものだった。 ただっ広いグラウンドの何処にミィミは居るのだろうか。 そんなことを考えながら、とりあえず野球のバックネットがある所へ行ってみる。
「レン君、あそこ!」 瀬那の指さした先にはうごめく人影があった。 それは間違いなくミィミだった。 この暗闇の中、懐中電灯すら持たずに待っていたようだ。 「ミィミ!・・・ミィミなんだな?」 天空の雲から、月明かりが顔を出すと、ミィミの顔がうっすらと見えた。 「・・・早乙女・・・レン…」
「あはははは!!」 その時突然、辺りに響き渡る聞き覚えのある笑い声がこだました。
「!!」 上を見上げるとバックネットの上にラム・スイーディの姿が見えた。 「よくも、ノコノコとやって来たわねぇ!早乙女レン!!」 「その声は!!ラムスイーディ!」 「ど、どういうことなの!?」 「やっぱり、そういうことか! ミィミの苗字を聞いて、気になっていたけど、やはりおまえの子供だったのか!」 「フン、そんなことはどうだっていいわ!、青二才、今度こそ、殺してあげるわ!!」 そういうと、ラムは黒光りする大きな鎌を振りかざした。 「行きなさい、あたしの可愛いサラマンド!!」 ラムの掛け声のあと、廻りは黒い霧に包まれる。レンと瀬那は身構えの態勢に入る。 すると、背後から「白い稲妻のような蛇の形をした、巨大な電流の束のようなもの」が、襲い掛かって来た。 レンたちはギリギリのところでかわす。 「なに!?こいつ!!」 「また来るぞ!」 蛇のような稲妻は生き物のように身体を反転させると、またレンたちめがけて飛んできた。 「くっ!ぶつかる!!」
バリバリバリバリ!! ズドドドォォ!!
レンは左手を突き出し、瀬那をかばい防御膜を張ったが、その衝撃は強く、ふたりの身体に電流のような激痛が走る。
「うわあああっ!!」 「きゃああああっ!!」
あまりの身体のしびれに二人とも地面にひざをつく。 ラムは邪悪な笑みを浮かべながら高々と笑う 「どうだい!!シビレるだろう。あたしのサラマンドは最強さ!!」
電流の蛇は容赦なくまたもや二人に襲い掛かってきた!! 「もうだめ!!」 「くっ!!、これまでか!?」
バリバリバリバリ!! ズドドドォォ!! ・・・・・・バリーンッ!! だが、レンたちに当たる直前、電流の塊はかまいたちに斬られたように消えていった。
「お待たせして、申し訳ございません・・・」
レンたちの前に、火竜剣をかまえた美花が立っていた。
「美花!!」 「ナーイスタイミング!!美花〜っ!!」
「く〜〜っ!新手か!!よくもあたしの可愛いサラマンドを〜っ!!」 ラムは悔しがる。
美花はキッとラムを睨み付けた。 「電気の化け物を『可愛い』だなんて・・・趣味が悪う御座いますわね・・・・」
「うっさいわねえ!!まだまだよっ!!」 ラムはまた、鎌を振りかざすと今度は上空から、先ほどと同じ『サラマンド』が出現する。
ギュオオオオオッ!!
美花は腰を落とし、刃を水平にかまえた。 「火竜剣、空烈斬!!」 水平にかまえた刃を前方へ振りかざすとブーメラン状の波状が出て、サラマンドを真っ二つに寸断した!!
「今ですわ!!レン様!!、奴を!!」 「おっしゃ!!、いいかげんにしやがれ!ラム・スイーディ!!」 レンは飛び上がり、ラムに向かい、竜の印が浮かび上がった右拳を突き出す。 「聖竜拳ーーっ!!」 レンの右拳より青い竜の形をしたオーラがラムめがけて発射される。
ブワアアアアッ!!
だが、レンの放った波動はラムに当たるはずだったが、湾曲しあさっての方向に飛んで行ってしまった!!
「なっ!?」 レンの目の前には、赤い瞳を光らせ立ちふさがるミィミの姿があった。
「ミィミ!!」 「ミィミちゃん!!あなたはやはり!!」
ミィミは無表情なまま、両手を広げラムを守るかのように立ちふさがる。 「・・・・レン、帰って・・・・。ママには触れさせない・・・・」
「どけっ!!ミィミ!!俺はラムに伝えなければならないことがあるんだよ!!」 美花もミィミを説得する。 「ミィミちゃん、お願いですからそこをどいてくださいな!!わたくしたちはミィミちゃんとは戦いたくないのです!!」 だが、ミィミは首を振り、言う。
「・・・・あたし、ママの子だし・・・・・ウロボロスの味方だから・・・・」
「ミィミ!!やめろっ!!お前まで、親のやることに加担する必要はない!!」 レンはラムのほうを向き怒号する 「ラム、ミィミはおまえのかけがえのない子供なんだろ!?、なんでこんなことさせるんだ!?」
「フン!!お前に説教される筋合いは無いねっ!!ミィミは自分から望んでるんだよ!!「ウロボロス様への忠誠と世界の破滅」をね!!それにこの子はあたしの実子じゃないんだよっ。拾い子さっ!!」
「だからって!!親の組織のために子供を殺し合いの道具にして良いわけないだろうがっ!!」 「親として、サイテーだわっ!!」 「あなたには、血も涙もないのですか!?」
「うっさいわね!!あんたたちにはカンケイないわよっ!!ミィミはあたしの『盾』だからねぇ。」
レンは怒りで身体が震え上がった 「・・・・・なんだと!!自分の子が『盾』だって!?・・・・許さん・・・てめえにはおしおきが必要だっっ!!」 身体からオーラが湧き上がりレンの力は倍増してゆく。
「おだまりっ!!元はといえば貴様ら人類が腐っているから悪いのさ!!無情に人を殺し、弱者を虐げ、この地上を汚染している腐った政治体制と人類は破滅の力によって皆滅ぶのさ!!」
「それは安易なな考え方だっつーの!!。そういう一部の人間を憎むためにすべてを滅ぼそうだなんて馬鹿げているぜ!!罪のない人を巻き込むな!!おまえだって人間だろーがっ!!」
「ふん、罪があろうがなかろうが人間なんてみなクズの集まりさ!!だからあたしは人間であることをやめたのさ。ウロボロス様に忠誠を誓うことによってね!いわばあたしはクズな人類どもを罰する刑執行人なのさ!!」
レンは反論する 「だまれ!!おまえは今でも人間だ!!おまえには「人に刑を執行する権利」なんてねえんだよ!!」
「うるさーーーいっ!! 青二才に何が分かるのよ!!なめた口利いてんじゃないわよ!!死ねぇぇぇ!!」
ラムは怒り狂い、「サラマンド」を2,3体召還させてきた。 「くたばれぇぇ!!青二才がああ!!」 金ぎり声がグラウンドにこだまする。サラマンドは縦横無尽に駆け回り、レンたちを翻弄する。 美花は空烈斬で応戦し、瀬那も光の弓で応戦するが倒しても倒してもサラマンドはどこからともなく召還され襲い掛かってくる。
「くっ!!これじゃあ、キリがねえ!!」 「消耗戦ですわ・・・なにか策を打たないと・・・・」 「へとへとになりそ〜〜〜っ」
レンはサラマンドの攻撃の隙をかわし、ラムに聖竜拳を放つがミィミに捻じ曲げられてしまうため、一向に当たらない。
「レン様、では、わたくしが!!」
ブワァァァァッ!!
今度は美花がラムを狙い空烈斬を放つ、だが、攻撃は跳ね返されてしまい、レンたちに美花の放った「かまいたち」が戻ってきた。
「うわああああっ!!」 「ちょっとお!!、美花〜っ。あたしたちを殺す気なの〜っ!?」 「・・・すみません・・・・不覚でした・・・」
三人で中央にかたまり背中合わせでサラマンドに対応するも身動きが取れない。 瀬那は頭をふさぎしゃがみこんでしまう。 「いいざまだわっ!!そのままサラマンドの餌食になりなさい!!」
「くそう、なんとかならないのかよぉ!!」 「んっ!?」 そのとき、瀬那は地面に何か書いてあるのに気がついた。あたりをよく見回すと円形やアルファベットがグラウンドに彫られているではないか。 「これって・・・もしかして・・・!!」 瀬那はなにか思いついたように美花に話しかけた。 「なんとかなりそう・・・。」 「・・・はい?」 「よく見て!!、地面に魔法陣が彫られてるのよ!!暗かったから見えなかったけど、この化け物(サラマンド)の明かりのおかげで地面の魔法陣が見えたわ!・・・・化け物はこの魔法陣の半径しか召還できないはず。」
「となると、この魔法陣を消せばいいんですね・・・」 「そ!そういうこと!!」 「でも、どうやって・・・・」 「魔法陣の効力の消失は上から「白字」で線を引けばいいのよ。」 「でも、こんなに巨大な魔法陣を消せるだけの「白い筆」はございませんわよ・・・?」 瀬那はニヒヒっと笑う 「そ・れ・が、あるんだな〜っ。ちょっとまっててね!!、今テレポート使えそうだからいいものもって来る。それまでがんばってね!!」 そういうと瀬那はテレポートを念じ姿を消した。 「げっ!戦線離脱かよっ!?」 「違いますわ。瀬那さんを待ちましょう!!」
ラムは攻撃の手を緩めない。 「ちっ、小娘(瀬那)は仲間をおいて逃げ出したようね。残念ね〜。これだから人間っていうのは頼りにならないのよねぇ・・・。分かったでしょ?・・・青二才!」
「へっ!それはどうかな?」
「いつまでも粋がってんじゃないわよっ!!、そろそろトドメと行こうかしら!!やっておしまい!!サラマンド!!」
そのときだった。 近くにある競技用の物置き小屋から瀬那がうなり声をあげこちらに走ってくるではないか。
「うおおおおおおっっ!!」
ガラガラガラガラガラガラ!!
瀬那は、グラウンドの線引きでよく使用される「石灰の入った線引き車」を手押しながら走り廻る。 瀬那が走破したあと白線が引かれ魔法陣はそのせいで効力が失われサラマンドは姿を消してゆく。
「な、なんですって!?」
レンは瀬那を褒める 「すっげ〜〜っ、やるじゃん!!瀬那!!」
「ぜー、ぜー、どう・・・。いいアイデア・・・でしょ!・・・・ぜーぜー」 瀬那はラムに向かって、指をさし大声で言う。 「言っとくけど、逃げたんじゃないんだからね!!さあ、これであんたも卑怯な手は使えなくなったわよっ!!」
「ふん!!いい気になるんじゃないわよ!!召還獣に頼らなくてもあたし自信の手で貴様らを地獄へ送ってやるわ!!」 ラムはそう言うと懐から、黒い異彩を放つ宝石のようなものを取り出した。 「・・・・これさえあれば、お前たちなんて抹殺してやれるんだからねっ」
「なにをするつもりだ!?」 レンは身構えなおす。
「このダークネスシードであたしは強くなるのさ!!そしてウロボロス様に認めてもらうのさ!!」 ラムはダークネスシードを天高くかざすと強く念じはじめた。 「暗黒の力よ、あたしに最強の力を与えたまえ!!」
ギュワワワワワ!!
ラムの体は不気味な黒いオーラにつつまれはじめた。 「うああああうっ!!」 ラムは自分の身体の血管が張り裂けそうになるほどの激痛が走る。それと同時に力がみなぎってくるのを感じた。 「いいわあ、ゾクゾクしちゃうわ!!・・・・力が・・・力が湧いてくるわ!!・・・これがダークネスシードの効力なのね!!」
「なんだ、あのオーラは!?」 「気をつけてください。闇の力が増幅しているかのようです。」 「ちょっと、やばいんじゃない!?」
「・・・・・ママ・・・・」 ミィミはダークネスシードで変貌していくラムの姿を悲しげに見つめていた。
「フハハハハハッ!! 死ね!!」 ラムの右手からドス黒いオーラの弾が発射された。
ドバババゥ!!
レンはとっさに左手をかざし防御態勢に入ろうとしたが、ラムの放ったエネルギー波のほうが強烈で、ふせぎきることが出来なかった。
「うああああああっ!!」 「きゃあああああっ!」 「くっ!!」 3人はたちまち吹き飛ばされ、広いグラウンドに転がりこんだ。 身体中に電流のような痛みが走り、服は破け、半分火傷を負った状態になる。 「いっ、いてえ・・・。なんて力だ・・・。」 「瀬那、大丈夫ですか?」 「なんとか・・・・でも、立つのがやっとか・・な・・・」
レンは口元の切り傷の血を拭いながら言う。 「もういっぺん喰らったらゲームオーバーだ・・な・・・こりゃ・・・」
「どうだい、あたしの力は!?まだ、本気を出したわけじゃないのよ!!・・・・ふふふ、さあ、いっぱい可愛がってあげるわ!!」 ラムは鎌を振りかざす。鎌の刃の先端から先ほどの黒いエネルギー波が出る。 「そら!そら!そら!」
ドバババゥ!! ドバババゥ!! ドバババゥ!!
そのエネルギー波が連続で3つも射出された!! 美花は自分自身かなりのダメージを負っているにもかかわらず瀬那をかばい、抱き上げなんとか攻撃を回避したが、レンはまともに受けてしまい、吹き飛ばされる。 「ぐはあああっ!!」
「レン君!!」 「レン様!!」
レンは頭から血を流し、地面に倒れこんでしまった。 「もう、・・・だめか・・・・ちくしょう・・・」
「気持ちいいだろ!あたしの攻撃は?もっと痛みを味あわせてあげるわ!!」
レンはふらふらしながら立ち上がった。 「・・・・ラム、ひとつだけ聞きたいことがある。・・・・なんで、そんなにこの世界や人間をさげすむんだ?・・・おまえの過去になにがあったんだ? 血の繋がりはねえかもしんないけどミィミっていう家族がいるだろう? なんで、二人で静かに暮らそうとしないんだよっ?」
ラムは鼻で笑う 「フン!おまえには関係ないが・・・、冥土の土産に話してあげてもいいわ!! ・・・あたしにも、昔、「愛する人」がいたわ。 馬鹿がつくほど正直者で甘ちゃんでさ!! そいつは優しくて、あたしのことをいつも気遣ってくれる人だった。 あたしは彼に惚れて恋仲になった・・・。
結婚する前のある日のことだった。 彼は村を脅かす化け物を退治するためその務めを請け負ったのさ。
あの人は無事に化け物を倒し戻ってきてくれた。村じゅうは喜んだし、あたしもうれしかった・・・・。 だけど、その後のことだった。 村は疫病が流行り、作物は凶作に悩まされ、3度も山賊の襲撃に遭い村は壊滅状態になったわ・・・。 そのとき、星占術者が村にきてこう言ったのさ「災いの原因は守り神を殺したためであると・・・だから、村は壊滅にさらされているのだと・・・。」 村人は化け物を退治するために戦ったあたしの婚約者を憎み「疫病神扱い」したわ。 もちろん彼だけじゃなく彼の親戚、あたしやあたしの家族も迫害の的になったわ・・・。 そして、あたしの愛する人は最後は殺されちまったのさ・・・恩知らずの村人にねっ!! しまいにあたしは村を追い出された。
そのとき、ウロボロスの神官にあったのさ 『曲がってねじけたこの世界と人類は神の制裁を受けねばならないと・・・・おまえには、それを執行する権限がウロボロス様より与えられている・・・・。』てさ・・・・。 あたしは迷わず復讐を誓ったわ・・・。こんな薄情な世界と人間すべてを滅ぼしてやろう・・・と。 ・・・・だから、あたしは『ウロボロス様にお仕えする刑執行人』としていままでやってきたのよ!!」
レンは反論する 「そうか、そうだったのかよ・・・・。でもなあ、さっき言ったとおり、誰しも人を裁き「罪も無い人々」の命をどうこうする権利なんておまえにはないし、俺にだって無い。おまえはそうやって人を殺して何に満足を見いだすんだ? そんなことをすることでおまえの死んだ婚約者が喜ぶのかよ!?おまえのやってることは結局、その婚約者とは真逆だ。その人は『他人のために自らの命の危険をさらしてまで、みんなを助けようとした・・・。だが、てめぇは違う・・・。自らの自己満足のと独善を満たすためだけにすべての人を殺そうとしている!!馬鹿だよ、おまえはっ!!」
「うるさいっ!!人間なんてクズだっ!!」
「じゃあお前を愛した婚約者も『クズ』か!?、お前を産んだ母やお前を大事に育てた親もか!?お前を愛した親友もそうなるのか!?・・・・こどもみたいに「罪も無い人々」にやつあたりするんじゃねえ!!」
「おだまりィ!!なにも知らないくせに説教するんじゃないわよっ、青二才がぁ!!」 気を取り乱したラムは持っている鎌を振りかざしレンに突進し殴りつける。
「ぐふっ!!」
ラムは怒り狂った表情でレンを睨みながら何度も鎌で殴りつける。 「死ね!死ね!死ねぇ!・・・あたしには・・・あたしにはもう、愛してくれる人なんていないわ!!」
レンは痛みをこらえながらラムに言う 「・・・馬鹿やろう、ミィミがいるだろうが・・・ おれもミィミと少しは喋ったけど、ミィミはお前のことを悪くはいわないぞ・・・・。おまえのいうことちゃんと守るしよぉ・・・・。ホント、おまえのことが好きなんだろうな・・・。もうやめろよ・・・こんなことさ・・・。おれの説教に動揺してるってことはお前もまだ優しい心を持った人間なんだよ・・・・。それにさ・・・「憎しみを背負って生きる」ってぇのはつらいんだよな・・・。おまえがどんだけ人を憎んでんのかは知らないけどよ。・・・・・おれはあんたを恨んでない・・・よ・・・。」
レンのその言葉にラムは動揺し攻撃をやめた。涙腺が緩み涙が溢れてくる。 「・・・うるさ・・・い・・・」
「おれも、小さい頃母を亡くした・・・。あんたに殺されたんだっけ・・・・。最初はあんたを恨んだよ・・・。でも、「憎しみを背負って生きる」のがつらくなってさ、恨むのをやめたんだ・・・。だれだって間違いは犯す・・・。復讐を誓ってあんたを殺したってなにもならないじゃないか・・・・。ミィミが悲しむ・・・。だったらあんたと話し合ってこれからどうしていくのか、気持ちを聞きたいって思ったんだ。ウロボロスには立ち向かわなければならないけど、あんたを恨んだり、殺したいっては思わない・・・・」
ラムの声が震えだした 「・・・だから、何だって言うんだい!?・・・・あたしはウロボロス様の・・・・。」 レンが口を開く 「・・・だから、もういい、それ以上過去にとらわれんなよ・・・。俺の命ならいくらでもくれてやる。でも、約束しろ、それが終わったら、ウロボロスから離れてミィミと二人で静かに暮らせよ・・・。お前を愛してくれる人はこれからだって現れるさ・・・・。世界はねじけてても、人の心はまだ、手遅れになってないし、おれはまだ人間に失望なんかしてないよ・・・・。」
ラムは涙をこぼしながら金ぎり声をあげる。 「うるさいっ!!うるさいっ!!やかましいわ!!これで、とどめだよっ!!さようなら、青二才!! サラマンド・ブラッディ・サーーーイズッ!!」
そのときだった。ミィミがレンの前に立ちふさがり両手を広げてラムの放った必殺技を魔力で湾曲させた。
「!!、ミィミ、何するんだい!?」
だが、威力が強いためすべてを回避できず、ミィミの身体もいくらか傷を負い服は破けてしまった。 ミィミはまっすぐラムを見つめ、口を開いた。 「・・・・ママ・・・・もう・・・・やめて・・・・。レン・・・悪くない・・・・。ママ、・・・戦わなくてもいい・・・・」 ミィミは眼に大粒の涙を浮かべながら答えた。 「・・・レンの言う通りだよ。・・・こんな戦いに意味なんてない!・・・ママもレンも争って欲しくない。だから、もう、やめて!」
「ミィミ、あんた…」
レンは静かに答える 「…ミィミの言うとおりだ。俺はあんたをこれ以上、傷つけたくない」
ミィミは説得を続ける 「レンは・・・優しい。学校でイジメられてたあたしに声をかけて助けてくれた・・・・。美花もわたしに優しくしてくれた。瀬那だって・・・」
ラムは声を荒げる 「ミィミ、この恩知らず!冷たく寒い、路頭からおまえを救ってやったのはあたしなんだよ!おま えはあたしとレン、どっちが大事なんだい!?」
普段はもの静かなミィミが、はじめて大声を出した。 「どっちも大切だよ!!どっちも失いたくない!!」
レンも説得を続ける。 「分かってるんだろ?おまえだってこんな悲しい生き方なんて望んでないはずだ。ミィミを悲しませるなよ。復讐するだけの絶望的な人生なんか送る必要ねえよ!そんな、生き方・・・おれがやめさせてやる!!」
「そんなことしたら、あたしの居場所が無くなるんだよっ!もう・・・・もう、戻れないんだよ!!何もかも・・・!!」
「馬鹿野郎・・・居場所なんてのはな・・・自分でつくるんだよっ!!生きることを諦めない限り、居場所がなくなるなんてことは、絶対にない!!」
「うげうっ!!」 そのとき突然ラムは吐血し、へたり込んだ。冷や汗をかき始め汗が血のように滴り、心臓がバクバクし始める。どうやら、ダークネスシードによる「副作用」がラムの体を襲い始めたらしい。 ラムの呼吸が苦しくなり、息が上がる。 「はあっ!!はあっ・・・はあっ・・・・げふっ!!げふ!!」 咳き込むとさらに口から真っ赤な血液が滴る。
「ラム・スイーディ!!」 レンがその状況に驚き、ラムを心配した。
「いったい、どうなっていますの!?」 美花と瀬那もラムの容態の悪化に驚く。
「どうやら・・・・もう、おしまいのようだね・・・・。身体がいう事を利かない・・・・。レン、あたしを殺しな!! あたしの負けだ・・・・。」 身体の震えが止まらず、全身に痙攣が廻る。ラムは死を覚悟した。
「ぎゃあああああああああっっ!!」 ラムは大きな悲鳴を上げた。激痛で身体が硬直し縛られた態勢で立ち尽くす。 背後から大きなドス黒いオーラが吹き出る。
「ママァ!! きゃんっ!!」 ミィミはラムに駆け寄ったが黒いオーラで弾き飛ばされた。
そのとき、どこからともなく声が聞こえてくる 「イヒヒヒヒ・・・・始まったなあ・・・・。禁断のバーサーカーモードがよぉっ!!」
「!?」 レンたちが前方を見上げると、ヴィーザフが腕組みして立っていた。
「おめえは!!」 レンが身構える。
「俺の名はヴィーザフ・ジャガー・ジャック!!ウロボロス様に仕える四天王のうちの一人さ!!」
「なんだと!!四天王だと!?」
「側近の登場ということですか・・・!!」 美花は刀を構える。 「あんたが、ラム・スイーディになにかしたのねっ!!」 瀬那も矢をつがえ、かまえる。
「おおっと、勘違いするなよ、ラムは自分で望んで「禁断の種」を使ったんだよ・・・。二度と戻れなくなる『殺人者(バーサーカー)』になることを覚悟してなあ。・・・・・すべては早乙女レン・・・貴様を倒すためにな・・・。ラムは、お前を殺すまで、肉体が滅ぶまで永久に野獣と化すのさ・・・・。哀れな奴よ・・・。捨て駒にされたことも知らずして、ダークネスシードの実験体になるなんてなあ。イヒヒヒヒヒ・・・・」
レンは怒りに満たされ怒号する。 「ふざけるなあ!!ラムが捨て駒だと!?実験体だって!?おまえは仲間を見捨てるのか!?」
ヴィーザフは鼻であしらう。 「フン!!仲間だと?馬鹿馬鹿しい。こんな下等なメス豚が同士だとでもいうのか?・・・・片腹痛いわ!!」
それを聞いてレンの怒りは頂点に達する。青い光のオーラがレンを包み込み、背後に「竜」のようなものが浮かび上がってくる。 「ゆるさねえ・・・・おまえは絶対にゆるさねえ!!」
「おいおい、お前の相手はその『野獣』だぜ!?そいつを倒せたら相手になってもいいぜ・・・・。無理だろうけどよ・・・。」 ヴィーザフはニヤニヤと笑った。
そのとき、バーサーカーと化したラム・スイーディはその刃を、わが子ミィミに向けてきた!!
ブワアアアアアアアッッ!!
ミィミは防御の態勢をとったがその華奢な身体では攻撃を防げそうに無い。
バシイイイイイイイッッ!!
強力な電流の波動が襲い掛かる!!絶体絶命かと思ったそのとき、目の前にレンがバリアを張ってミィミをかばい立っていた。
「レン!!」
攻撃がやむとレンはダメージを受けた身体を引きずりながら、ミィミのそばに来て、肩をポンッとたたいた。 「ミィミ・・・・、待ってろよ。今、おまえの母さんを救い出すからな・・・・・」
「レン・・・・」 ミィミは大粒の涙を流し泣くのをこらえながら、レンを見つめた。
「レン君!」 「レン様!サポートいたしますわ!!」
瀬那はミィミの方を向き、にっこり微笑んでこう言った。 「ミィミちゃん、あたしたちにまかせておいて!!ママを助け出してあげるからねっ!!」 美花もミィミを励ます。 「大丈夫ですよ。きっといつものママに戻りますから・・・・安心して・・・」 その言葉を聞くとミィミは口を両手で押さえ、大粒の涙を浮かべた。 ミィミにとってそれは今まで掛けられたことの無い『暖かい励ましの言葉』であった。
「さあ!!いくぜ!!ラム!! 目ぇ覚まさせてやるからなあ!!」
グアアアアアアアアアッ!!
化け物化したラムは口から黒いエネルギー波をレンめがけて複数放ってきた!! 「わたくしにお任せを!!」 美花がレンの前方に出、必殺技を放つ 「火竜剣、天昇斬!!」 美花の放った火柱の竜が次々と飛んでくる黒いエネルギー波を破壊していく。
「あたしも!!」 残ったエネルギー波は瀬那が光の矢で打ち抜くと消滅していった。
グギャアアアアア!!・・・・グギャアアアアア!! バーサーカー・ラムは奇声を挙げつつ無尽蔵に黒いエネルギーの弾を打ち出してくる。
(どうすりゃあいい!?ラムを元に戻すには・・・・!?) そのときレンの耳に母、響子の声が聞こえてきた。
『レン、破壊の力と癒しの力をひとつに・・・・。そうすれば、ラムを呪縛から開放できるはずです』
(かあさん・・・!!)
『ラムを・・・助けてあげて・・・・。レン、あなたのような心優しい息子を産めた事をかあさんはとてもうれしく思います・・・・その力、正しき物事のために奮いなさい。 そして、放つのです「聖竜破邪剛竜拳(せいりゅうはじゃごうりゅうけん)」を!!』
(聖竜破邪剛竜拳・・・・わかったぜ!!かあさん!!)
レンは両腕拳を前に組み、破壊と癒しの力を合わせた。
ものすごいオーラがあたりに放たれ辺りは昼間のように明るくなる。そして地面は揺れ始めた!!
「ラム・スイーディ!!目を覚ませーーー!! 聖竜破邪剛竜拳だーーーーーっっ!!」
ドバアアアアアアア!! ズドオオオオオオオオオオオッ!!
それはすさまじい閃光を放ちラムの体を癒しのオーラが覆い突き抜ける。聖竜のオーラはラムの背後に浮かぶ『黒き得体の知れないドス黒いオーラの塊』を付き抜け、こっぱみじんに破壊していった!!
「ぎゃああああああああああっ!!」 ラムは悲鳴を上げ、倒れこんだ。
黒い霧が消え、あたりは静けさに包まれる・・・
倒れているラムの表情は悪夢から開放されたような『安らかな顔』になっていた。
「ママーッ!!」 ミィミはラムに駆け寄る。 瀬那はラムがまだ生きていることを確認する。 「大丈夫、まだ意識はあるみたい・・・」
美花は胸を撫でおろした。 「良かったですわ・・・」
「ケッ!使えない奴めが!!」 ヴィーザフは右腕から、ラムを始末するための短剣を出すと、ラムの心臓を狙い素早く投げつけた。
ギンッッ!!
しかし、瞬時に美花が前に出て、刀でその短剣を弾いた。 「そうはさせませんわ!!」 瀬那も光の弓矢をヴィーザフに対し構える 「この人でなし!!あんたなんか、絶対に許さない!!」 レンもまた、ボロボロの身体でファイティングポーズをとった。 「今度は、おめえだ!!」 ヴィーザフは笑い出す 「ふはははっ!!参ったね〜、こりゃあ。貴様ら瀕死の連中に喧嘩を売られてもなぁ・・・。 俺はアンフェアな戦い方はしない。そんなにそいつが欲しいならくれてやるよ。ただし、いずれはお前らと共にそのごみも始末するつもりだけどよ」
「なんだと!!」 レンは拳を強く握り締める。
「ま、今は命が生きながらえただけでもありがたく思え!・・・サオトメ・レン・・・・おまえのもつ『竜の印』の力しっかり見させてもらったぞ!!次に戦えるときを楽しみにしているぞ。それまで首を洗って待っているんだな。貴様の亡き骸をウロボロス様に捧げるのはこの俺様だからなっ!!」
ヴィーザフは後ろを向きその場を去った。
「くそう、あいつ・・・・」
「レン君、それよりラムをなんとかしないと」 瀬那は倒れているラムの手を握り締めた。体温が低下し、冷たくなり始めていることに気づいた。
「レン様、『癒しの力』でなんとかなりませぬの?」
「・・・・おお、やってみるぜ・・・・美花、ちょっと肩貸してくれ・・・・」
レンは美花の肩を借り、引きずりながらなんとか左手をかざし、ラムに触れる。レンの左手から オーラが出て、ラムの体を包む・・・。ラムの顔色は少しだけ良くなった様だった。
「顔色、すこし良くなったみたい。」
「・・・あとは、しっかり介抱しねえとな・・・俺のウチへ運べ・・・・」 レンはミィミのほうを向く 「おまえも・・・来い・・・。」 レンは意識が遠のきはじめた 「やべ、もう、だめだ・・・。あとたのむわ・・・・」 そういうと気を失ってその場に倒れた。
「レン君!!」 「レン様!!」
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「かあさん・・・?」 レンは不思議な真っ白な空間の中にいた・・・。 目の前に母、響子の姿があった。 「レン・・・がんばりましたね・・・・ラムは一命をとりとめました。」
「そっか、よかったな・・・でも、かあさん・・・。あのとき、力を使い果たして消滅したんじゃ・・・?」
響子はフフッと笑った。 「大丈夫です。魂自体は消滅してませんから・・・・。けれどもわたしは現世へ行くことはもう出来ませんが、あなたの持つ「竜の印」の精神に宿ることを許されました。・・・・・影ながらあなたを見守ることが出来るようになったのです。」
「そっか、・・・・でもおれ死んだんじゃねえの?ここにかあさんが居るっつーことはさ・・・・」
「ふふふ、レン、まだあなたにはやるべきことがたくさんあるのよ・・・・。まずは、陰陽師(おんみょうじ)の末裔に会うのです・・・。その者も「竜の印に導びかれし者です。きっと、あなたの助けになるはずよ・・・。」
「陰陽師・・・・?」
響子はレンの前からとおざかる。 「・・・・・わたしはいつもあなたを見守り、あなたを愛しております・・・・」
「かあさん、待ってくれ!!陰陽師って!?」 レンは右腕を伸ばし母を追いかけようとする。
「かあさーーん!」
レンの右手が何か「感触の良い柔らかいもの」を掴んでるかのようだった・・・
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「このドスケベーーっ!!」
バチィィーーン!!
「いってーーーっ!!」
気がついたらレンは布団から起き上がり、右手で瀬那の胸を掴んでいた。
「なんの夢見てたのよーっ!!スケベなことする体力あるんならもう大丈夫ね!!」
「あ・・・・。ごめん・・・・。その・・・・」 レンは瀬那の手跡がついた顔で頭をかきつつ謝罪する。
瀬那はプイっとそっぽを向く。 「知らない・・・!!」
瀬那は立ち上がると部屋の扉を空け、そっぽを向いたまま話す 「心配・・・・したんだからねっ!!・・・・今日、学校だから・・・・行くね・・・。 レン君は今日もお休みにしておくって瑞樹姉さんいってたよ・・・・」
「お、おお・・・また休んじまうな・・・・」
「いってきます・・・・」 瀬那は静かに扉を閉め、一階に下りていった。
レンは瀬那が泣いていることに気がつく 瀬那が立ち上がるとき、頬から涙がつたっているのが見えた
「心配・・・・かけちまったな・・・・」
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「ここは・・・・?」 ラムが目を覚ますと布団に寝ていた。 早乙女家の床の間に運ばれていたようだ 自分の身体を見ると傷の手当がしっかりとされていた。
「・・・ママ・・・・」 横にはミィミが座っていた。 ラムはだまってミィミを見つめる。
ラムは手を伸ばし、ミィミの頭を撫でながらつぶやいた。 「・・・・ごめんね・・・・」
ミィミが小さな声で言った。 「・・・ママ・・・かっこわるい・・・・かも・・・」
ラムはフフッと笑い、ずっとミィミの頭を撫で続け、おだやかに答えた。 「・・・・うっさいわね・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー レンが布団から出て窓を見ると、今日も天気が良かった。
早乙女家の平和な日常が垣間見える 縁側では辰次郎と美花が話をしている。 姉の瑞樹は美沙と一緒に境内を竹ホウキで掃除していた。
レンはフッと笑みを浮かべ、寝床に戻る。 とりあえず今日は傷ついた身体を休めることにした。
第10話 END
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