4月20日。新学期が始まり、高校2年になった。俺、「早乙女 レン」は私立神楽咲高校に通う17歳のごく平凡な高校生活をおくる少年だった。しかし、この日を境に僕の運命は大きく変革しようとしていた。 学校が昼で終わり、友達とくだらない雑談を交わした後、俺はいつものように通いつけの喫茶店に向かう。自分にとってはそこは居心地が良く、「地獄の赤鬼(担任の先生)」が出した大量の宿題(おもにレポートだが)を片付けるには「仕事」のし易い場所だからである。(まあ、居心地が良いのでたまに眠くなって、寝てしまうのが常だけど) 今日の天気は快晴。春の澄み渡る空を眺めながら、胸いっぱいに春の空気を吸いこむ。 今日は高校が職員たちの会議の都合で昼で下校となった。午後から時間はたっぷりあるもののとりあえず「赤鬼先生の宿題」をやっつけなければと考えつつ通いつけの喫茶店の扉をあけた。 「いらっしゃいませー!!」 喫茶店のウェイトレスの挨拶をよそに、いつもの席に座る。 この席は窓際であり、日差しが差し込んで休憩するのにちょうど良い所だ。
「さて、はじめるか・・・。」 レンは学校で配られた宿題をかばんから取り出し、そのB4サイズの答案用紙とにらめっこを始める。 新学期が始まって間もないのに、いきなり難しいテキスト・・・・。 ため息を付きたくなってくる。でも、やるしかない。
15分が経ったころ、喫茶店の入り口が開く音がした。 「いらっしゃいませー!!」 ウェイトレスの声が聞こえた後、喫茶店に入ってきたその足音はだんだんと大きくなり こちらに向かってくる。 レンは宿題に集中しているために周りなど見ている余地は無い。 その足音は確かにレンの近くで止まった・・・。
「席、座ってもいい?」 澄んだ女性の声が耳に入ってきた。幻聴か? レンにとって、女性から声をかけられるのはせいぜい身内の姉からでしかない。 まさか、知らない女性から声をかけられるなんて想像もつかないだろう。気のせいだ。
「ねえ、空いてるそこの席座ってもいい?」 気のせいではない・・・。 「あっ、はい・・・・。」 とっさに返事を返すレン。 しかし彼女はレンの同意の返事を聞く前に目の前の席に座っているではないか。 「あ、あのぅ・・・。」 レンは動揺していた。色白で透き通った肌。甘いシャンプーの香りがする栗色のショートヘアに、ガラスの様な透き通った紫色のはっきりとした2つの瞳がレンを見据えていた。 唇は微笑み掛けており、その容姿は「絵の中の少女」のようである。 「おれに、何か用・・・?」 とっさに口からその台詞が出た。しかし、レンは彼女の瞳に吸い寄せられるかのように 彼女を見ていた。 「あなた、早乙女レン君でしょっ」 レンは驚いてしまった。見ず知らずの女性に自分の名を言われてしまったことに。 ネームプレートをつけている訳ではない。学生証を落としてしまいこの人に拾われたのか?? しかし学生証に自分の顔写真は入れた覚えはない・・・。 そんな疑問が頭を一瞬駆け巡った。 「なによ、お化けでもみたような変な顔したりして。女の子に嫌われるぞ」 にっこりと彼女は笑った。 「ああ、ごめん。・・・・突然だったから、つい・・・・。」 レンは未だこの状況に釈然としない・・・。いや、自分の身に何が起きてるのか分からないほど動揺している。 「君、誰?」 とっさに誰なのか確認する。 彼女は自分の胸に右手をあて、自己紹介してきた。
「んーーーーとね。あたし、伊吹 瀬那。よろしくっっ」」
「君、不思議な力持ってるよね?。超能力とか、神通力とか、そういうの・・・。」
はあ? 何を言ってるんだこの女は。レンは耳を疑った。 「不思議な力って・・・何?」 耳を疑いつつ、ここは全うな返答をする。
突然彼女がテーブル越しに乗り出してきた。レンと彼女の顔の近さ5センチメートル。レンの息があがる
「えええええ。知らないんだぁ。あはははは。そういうの感じない?」 彼女は近づいていた身をひっこめるとレンの全うな返答に対し笑いはじめた。
(なんだよ、こいつ・・・・。) 何が言いたいんだ。おちょくっているのか?。この子は頭が変なのか? いまどきよくいる「不思議ちゃん」的な存在なのだろうか・・・・。 レンは彼女のその常識では考えられない反応にイラついた。
「じゃぁ私にチョット付き合ってよ。」 彼女の顔が真剣になった。 「時間が無いの。早く・・・。でないとここ、危ないことになるよ!」
彼女は席を立つと「こっちにおいで」とのかぎり、大きな瞳でレンを外へ出るように誘う。 (おれは、キャッチセールスに捕まったのか・・・。それとも信仰宗教のお誘いにでも引っかかっているのだろうか?) レンは半信半疑に言われるがままに彼女のほうへ向かう。
外に出た。 日差しが暖かく、青い空が目の中いっぱいに飛び込んでくる。 いま、自分は見知らぬ女の子からの誘いを受けているということの緊張を抱いたまま 彼女のうしろを歩き出した。
「どこに、行くの・・・・?」 前方をきびきび歩く彼女に尋ねてみる。
「周りの人を巻き込めないでしょ。いいから、黙って付いてくる!」 彼女の様子は何かに警戒したような顔つきになり、喫茶店からできるだけ離れようとしているようだ。
そのときだった・・・・。
目前から、猛スピードでトラックが突っ込んでくるではないか! 時速は60キロを越えていそうな勢いだ。
キキィィィィッ!!!
彼女とレンにトラックは体当たりを掛けてくる!! 「正気かっっ!」 二人は転がりながらも、トラックの突進をギリギリのところでかわした。
「来るわっっ!!」 「なんなんだよっ!!いったい!!」 わけが分からぬまま二人は暴れ狂うトラックに驚いた。
キィーーーーーーーッ!! 二人の真ん中を通り過ぎたトラックは10メートル近くで機敏に反転してきた。
「運転手っ、正気なのかよっっ!!」 「あれは、普通の人ぢゃない・・・。」 そういっている間にもトラックは二人めがけて突進を掛けてきた!!
「くそうっ、なんなんだっ」 「レン、あなたの右手をトラックに向けてかざしてっ! 早くっ!!」 「はあっ!?何言ってんだ。そんなことしてたらトラックにひかれちまうだろうがっ!!」 「いいから、言う通りにしてっ!!。あなたには不思議な力があるはずよ!!。 あたしを信じてっ!! でないとあたしたちが殺られてしまうわっ!!」 二人が二度目にかわしたそのトラックはまたもや背後で反転し、殺気を漂わせながら こちらに向かってくる。 「やばいっ、逃げ道が無い・・・」 考えてる余裕が無かった・・・。 「ええいっ!!どうにでもなりやがれーーーーっ!!」 瀬那の言うとおりにトラックに向けて、その右手をかざす・・・。
そのとき、レンの右手がまばゆい光を放ちその瞬間。青白い閃光がほとばしるっ!!
ヴァアアアアアアア!!
けたたましい轟音を上げ、閃光がトラックを貫く。 トラックは押し戻されるかのように左脇にそれ、電柱に激突した・・・。
シュゥゥゥゥ・・・・。 「やったのか?」 トラックは煙を上げ静止している。
「やっぱりね!!あなたにはあたしと同じように不思議な力があるのよっ!」 瀬那は歓喜に満たされレンの両手をつかみブンブン振り上げた。 だが、喜んでいるのもつかの間。
「へえ・・・。やるじゃない・・・・。さすがは「竜の印」を持つ者の力ね。 ゾクゾクしちゃう・・・・!!」
煙を上げ静止したトラックから「ドスの効いた」女性の声がした・・・・。 黒装束に身を包んだ忍者のようなモノが3人と そして、金髪のグラマラスな女性が姿を現す。
そいつは身長180センチ近くのノッポでセクシーな衣装に身を包み、 厚げのアイシャドウ、 背中には身長くらいの大きさの「死神が持つようなギラギラ光る鎌」を背負っていた。
(こいつ、なんなんだ!? こいつが俺を殺そうとしていたのか・・・・!?)
「・・・・ウロボロス・・・・・。」 瀬那はキッとにらみ付け唇を噛んだ。
「知り合いなのかよ・・・?」 「そんなわけないでしょ!!」
やつは背中からその「死神が持つようなギラギラ光る鎌」を取り出すと 振りかざしてきた!!
ブゥゥンッッ!!
鎌の刃先から赤い閃光がほとばしる!!
その瞬間、瀬那はレンをかばい背中を蹴飛ばした! 「ってぇ!!、何すんだよ!!」
「鎌」から放たれた閃光は瀬那の右脇をかすめ後方のアスファルトを 傷つけながらすり抜けていく。 瀬那は右腕から血をながし、服の袖とスカートのスリットがボロボロになっていた。
「ふん、いいキミ・・・・。可愛い顔して彼氏をかばうなんて、なかなかじゃない・・・・。」 グラマラスな女は不敵に微笑む。
「おまえ、怪我してるぞ!」 「なんでもないわ!これくらい。それよりも、あの力を使うのよ!!そうすればコイツは倒せるわ!!」 真剣な目でこちらを見つめた。 「んなこと言われたって・・・・!」
グラマラスな女は瀬那の言った言葉がシャクに触ったのか。鋭い目つきになる。 「ふん、生意気いっちゃって・・・。今すぐ楽にしてあげる!」 振りかざしたその鎌から2発目の閃光が放たれた!
「レン!!、はやく手をかざしてっっ!!」 「わかったよ!!こうか!?」
レンはさっきと同じように手をかざしはしたが、なにも起こらない・・・。
ドォォンッ!!
二人とも閃光の爆風で10メートルほど吹き飛ばされてしまった!!
「・・・・いてえ。」 「もうっ!!使えないやつぅ!!」 ・・・・初めてだ。知らない女の子に罵倒されるわ、正体不明のボディコン女にいたぶられるのは・・・。 今日で俺は死ぬのか? なんてこった、こんな最後を迎えるなんて・・・。 そんな考えが頭をよぎる。
「くそうっ!!殺されるくらいならっ!!」 レンはやけくそにその右手をグラマラス女に向けた。 右手がまた輝き、閃光がほとばしった!!
ヴァアアアアアアア!!
「出たっ!?」 だが、放ったその閃光は奴の右脇をかすりもせずに通り過ぎた。 「!!」 グラマラス女はひるんだ。
「いまだっ!!」 そのときを見図らい、瀬那はレンの左肩を掴んだ。 まばゆい光と共に二人は一瞬でその場所から姿を消した。
「ちっ、獲物に逃げられたか・・・。」 グラマラス女は親指の爪を噛みきびすを返すと 「おまえたち、ここらを捜索しな!!まだ、遠くには行ってないはずさ」 3人の黒装束は忍者のようにその場から飛び去った。
「見つけたら、ただじゃおかないよ。激しくいたぶって、ズタズタに切りきざんでやる!!」 紅蓮な瞳は、獲物を取り逃した悔しさと屈辱を受けたことに対する怒りで燃えたぎっていた・・・。
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「大丈夫?」 気が付いたら、夕方になっていた。 瀬那と名乗る女性は心配そうにレンを覗き込んでいた。 どうやら、瀬那がレンと共にテレポートし、危機を脱したようだ。 「ああ・・・。ううっ!」 返事はしたもののちょっと頭が痛い。 さっきの爆風で軽くだが後頭部を地面に打ちつけたようだ。 「なんなんだよ、アイツは・・・・?」 敵なんだろうという認識はあるが、彼女にそいつの身分を尋ねてみる。 「ウロボロス・・・。今はそれしか言えないわ・・・。」 瀬那はそっぽを向きながらそうつぶやいた・・・。 「ウロボロス??」 瀬那はこちらを向きレンの右手を見つめながら 「やっぱり、私が思ったとうりだった。その右手は破壊の力。」 「なんだよ、何いってんだか・・・。」 レンは左手で右の腕をかばいながら返答する。
「あなたは、まだ自分の力に気づいてないだけ・・・。」 瀬那は破れかけたスカートのお尻の塵を払いながら立ち上がると 「帰りましょ・・・・。ここまで来ればやつらは追ってこないわ。」 と言いながらレンに手を差し伸べた。 レンは痛む体をぐっとこらえ、瀬那の差し伸べた手を掴みたち上がる。 「怪我、なんともないのか?」 心配するレンに対し瀬那は 「・・・平気・・・。」 瀬那はうつむいていた。やはり腕の傷が痛むのだろうか?
そんな瀬那に対しレンはこうたずねる。 「キミにもあるのか?、・・・その不思議な力が・・・。」 訳がわからなかった。いや、この起こってしまった出来事自体、 未だに心の中での収集がつかない・・・・。 だが、常識を超えた現象や出来事が起こったことは確かだ。
「うん、あたしも持っているの・・・・。不思議な力。あたしの能力は「予知」・・・予知能力なの。だから、こんなことが起きることも、あなたに力があることも知っていたの・・・。」 レンは自分の身に起こった災難の原因が彼女にあることを知ると怒りがこみ上げ言葉を荒げた。 「なんで、俺を危険な目に遭わせるんだよっ。おまえはそれを知っていたのか!! おまえは誰なんだ!!何者なんだよ!?」 彼女は言葉を続ける 「ごめんね、レン君を試してたんだ・・・。あなたが自分の「竜の印」の力に目覚め、どの位使えてたのか知りたくて・・・。あなたの力が必要なの。お願い、私に力を貸して。世界のため、そしてあたしのためにも・・・・・。」 真剣な表情だった。なにかを訴えかけていたそのまなざしは・・・・。 こいつ、やっぱり本気なのか?
「ごめん、つい、かっとなってしまって・・・・・。」 レンは取り乱してしまった自分に気づき彼女に謝罪した。 瀬那は少し暗い顔をしていたが すぐさまその表情は「最初に見せたあの笑顔」に戻る。 「あたしの方こそごめんね。また、明日あおうね・・・!!」 と言うとレンの目の前から走り去っていった・・・・。
・・・・ 「「竜の印」の力だって? その力を貸してくれ? 世界のため? あの子のため? また明日って!? 意味わかんねーーーーーーーーーーーーーっ!!」 夕焼けが真っ赤に染まる黄昏時。 レンはただ、途方に暮れ、立ち尽くしていた・・・・。
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