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作品名:銀色包装 作者:四畳半男爵

第1回   1
パソコンの前に座って悩んでいた。
もしかしたら、俺は腹が空いているのではないだろうか。

夕飯を軽く済ませたのが19時頃だったはず。19時に夕食を済ませたとして、あれから4時間ほどしか経っていないことになる。
夕飯が軽すぎたのだろうか。
夕飯のメニューは、近所のスーパーで購入してきた、いわゆるのり弁といわれる白飯の上に鰹節と醤油を混ぜ合わせたものをちりばめ、その上から醤油をつけた焼き海苔を申し訳程度に貼り付け、更にその上に白身魚や竹輪の揚げ物と牛蒡のきんぴらと安い名前だけの漬け物を添えただけのリーズナブルなものだったのは確かだ。
しかし、安くてボリュームの無いスーパーの海苔弁の時には、絶対という確率で同じスーパーで購入出来る88円の産瘤メーカーカップ麺を汁物として付け合わせる事にしている。これならば、5,6時間で空腹感を感じる事もないはずだ。
けれども何か腹の辺りがゆるいのだ。腹の調子が緩いのではなく、腹の辺りが隙間だらけという緩さを感じるのだ。

これはやっぱり、俺は空腹感を感じているのではないだろうか。
パソコンの前から離れ、キッチンへ移動する。キッチンの保存食の棚を探ってみるが、月末という事情もあって、空腹感を満足感に変化させられるパワーを秘めた藻のは見あたらなかった。
とりあえずインスタントコーヒーをマグカップに1杯、砂糖をたっぷりいれて戻る事にした。
サイドテーブルにマグカップを置く時、目の端に銀色の小袋を発見した。たしか1年ほど前に貰って食い散らかした外国土産のクッキーだったか、あるいは3年ほど前に貪るように喰っていた産瘤メーカーのバタークッキーかだ。どちらにしろ、食いものの小分けパッケージには違いない。
こうなれば1年前の土産だろうが、3年前のおやつだろうが知った事ではない。喰えるものがあるというのならば、それを口に運ぶのか現状の自然摂理だろう。

マグカップからコーヒーを一口飲む。
口の中が完走していると、クッキーやビスケットのような粉物焼き菓子は口内の水分を全て吸い尽くす悪魔になるからだ。
銀色の復路に刻み込まれたギザギザをしっかり左右の指で挟み込み、ゆっくりと中身を飛散させぬようにゆっくりと捻り切る。ちょっとだけ、香ばしいバターの香りがしたような気がした。
幻の香りだったとしても、いまの準備万端状態ならば、自然と高揚して唾液も増えるという物だ。しっかりと抑えた左右の指先の力を調節し、銀色の小袋を二つの銀の薄いフィルム片にする事が出来た。
後は中身を取り出して食すだけなのだ。ここでクッキーごときでワクワクしている自分を恥ずかしいとは思わない。人間の三大本能の一つを満足させられるかもしれない物なのだから、それなりの興奮はしかたがないと自己弁解しつつ、瓶色の復路に指を突っ込むのだ。

予想外の食感であった。
てっきりバタークッキーだとばかり思っていたものだから、指先に伝わってくる柔らかな完食と、丸味を帯び、つるりとした感覚にコンマ何秒の速度で突っ込んだ指先を引き戻した。
銀色の小袋の外から触った感覚では明らかに、丸い、3枚ほど入ったクッキーかビスケットのようなごつごつというかガサガサと言った感じの食感だったのだが。
もしかしたら、マシュマロとかがコーティングされているような菓子だったのかもしれない。そう思い直して、今度は指を突っ込まずに、テーブルの上にペーパーをひろげて、その上に開けてみる事にした。なにも銀色の小袋から直接取り出す事はないのだと、しっかりと自分の虚栄心だけは満足させて空腹感をスムーズに納得させる最適な方法をしずからが提示して、しずからが行動する事にした。

プリンタに差し込まれたA4のコピー紙をサイドテーブルにひろげ、万が一の事も考慮して、ウエットティッシュも用意した。
ちょっと心を落ち着かせてから、銀色の小袋を開け口をしたに、サイドテーブルの上にひっくり返した。



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