あの夢を見るまでは。 「僕は明日、誕生日を迎えるんだ」 「そうね」 「十四歳の誕生日、それが何を示すかわかる?」 「子供から大人へと変わる日だわ」 一般的に言えばリリの言ったとおりだ。 でもそれだけじゃない、いいや真意はそうじゃない。 「目覚めの日だ」 「それはイクスのこと?イクスは不確定要素で誰にでも現れるものではないわ」 事実として僕の胸は高鳴っている。 どうしようもない不安と、これから起こることへの…希望? 未知の領域へと飛び出すことが楽しみで仕方がない。 変化は既に始まっているのだ。 「僕がイクスとなったなら、リリはどうする?」 リリは一瞬動きを止める、答えてはならない質問としてインプットされているからだ。 イクスとは異能、14歳となるその日に発現する。 そしてそれを確認した機械人形は塔へとその情報を送った後、主だったモノを処分する。 人を傷つけないというルールに逆らっているようにも思えるが、イクスとなった瞬間に人ではなくモノとして認識するのだ。 「リリ」 「ぁ…ごめんなさい、何かしら?」 「ううん、いいんだ」 塔にとって、都市にとって、イクスとは危険な反乱分子なのだ。 発現したばかりのイクスならば混乱に乗じて処分できる確率があがる。 「もうお眠りなさい、アディ、きっと明日になってもあなたはあなたのままよ」 僕が子供であった最後の夜は、月のきれいな夜だった。
それから1年の月日がたった。 「ここは退屈だね、リアナ」 モニターを睨み付けていたリアナにコーヒーを差し出し、アディは隣に腰掛ける。 「眉間の皺がくせになっちゃうよ?」 「余計なお世話です」 「今日さ、僕の誕生日なんだ」 「…もう1年ですか。馴染み過ぎてずっとここに居たように思えますね」 ほぅっと息を吐いてカップを置いたリアナから、張り詰めていた空気が消えている。 アディは作戦が成功したと一人微笑んだ。 「僕もそう思う」 リアナはどこかリリに似ていた。 成長したらリリのようになるのだろうとアディは思う。 「でも、外に出たいなぁ」 「
|
|