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作品名:ニューロン 作者:なゆた

最終回   1
自分が自分で無くなる感覚を求める。
自分の中の数億の細胞が、自分自身を理解できなくなって。

まるで空の上から自分を見つめているような、そんな感覚を。

白い細胞の海を、泳ぐ。
もがいてももがいても抜け出せない、神経の支配。
抜け出したくて、自分を自分で受けとめたく無くて。

自分の存在が解らない。

それでも自分は、ミクロの細胞に流されるままに
この時間を過ごす。

今まで感じた感情…

喜、怒、哀、楽…

外界から感じたと錯覚しているそれらは、自分の中で形成された偽りの情報に過ぎない。

自分の中のリセットボタンは何処にあるのだろう。

シナプスの海を通り、樹状突起を抜けて軸索を伝わり、
自分の中の小さな細胞に伝わって作られた感情。

自分はそれを受け止める事が、できなくて。


笑う事も。
泣く事も。
怒る事も。
喜ぶ事も。


自分には、不要だ。

感じたくない、何もかも。

強い刺激なんて、自分にはいらない…

穏やかに、穏やかにただこの時の流れに乗っていたい。

もう、何も、感じずに。


消し去りたい記憶。
自分という存在。

決して死にたい訳じゃない。

ただ自分は、自分が自分である事に、嫌気がさしてきただけ。


どんなにそう求めても、

小さな小さな細胞の、


支配から人間は、逃れられない。


それでも自分は、

そこからの解放を何よりも望む。


自分が自分でなくなる事を、望む。


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