自分が自分で無くなる感覚を求める。 自分の中の数億の細胞が、自分自身を理解できなくなって。
まるで空の上から自分を見つめているような、そんな感覚を。
白い細胞の海を、泳ぐ。 もがいてももがいても抜け出せない、神経の支配。 抜け出したくて、自分を自分で受けとめたく無くて。
自分の存在が解らない。
それでも自分は、ミクロの細胞に流されるままに この時間を過ごす。
今まで感じた感情…
喜、怒、哀、楽…
外界から感じたと錯覚しているそれらは、自分の中で形成された偽りの情報に過ぎない。
自分の中のリセットボタンは何処にあるのだろう。
シナプスの海を通り、樹状突起を抜けて軸索を伝わり、 自分の中の小さな細胞に伝わって作られた感情。
自分はそれを受け止める事が、できなくて。
笑う事も。 泣く事も。 怒る事も。 喜ぶ事も。
自分には、不要だ。
感じたくない、何もかも。
強い刺激なんて、自分にはいらない…
穏やかに、穏やかにただこの時の流れに乗っていたい。
もう、何も、感じずに。
消し去りたい記憶。 自分という存在。
決して死にたい訳じゃない。
ただ自分は、自分が自分である事に、嫌気がさしてきただけ。
どんなにそう求めても、
小さな小さな細胞の、
支配から人間は、逃れられない。
それでも自分は、
そこからの解放を何よりも望む。
自分が自分でなくなる事を、望む。
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